オーバースペック
ちょっと息抜きです。(๑´ω`๑)
「にょきっと、にょきっと、にょきっと……」
「……」
私の名前は、モナリー・フルート。
聖女リビエステラ様の身の回りの、
お世話をさせていただいております。
今は、洗濯物を取り込んでいたのですが……。
「──にょ!」
「……ありがとう」
知らない間に、
うさぎさんが洗濯物を畳むのを、
手伝ってくれていました。
ぴっしー。
すごい……ぜんぜん倒れない……。
白いタワーみたいになってる……。
「タオル、畳むのお上手ですね……」
「にょんやぁ☆」
これ、私より綺麗なんじゃ……。
「にょきっと、にょきっと、にょきっと──」
「あ、ブラウスはハンガーにかけるので、畳まなくて良いのですよ」
「にょんにょん?」
やめてくれた……。
まるで言葉が通じているようです。
「あの……あなたのご主人様たちのそばにいなくて、よろしいのですか……?」
なんて、語りかけてみたり。
「にょんやぁ……。にょっきにょき、にょきにょきにょきにょき、にょきっとなぁ……。にょ! にょん! や! ……にょーんにょん、にょーんにょんにょき、にょきっとにょんやぁ……」
(訳:だってさぁ……。あんな所で始まっちゃったら、直視するのも悪いでしょ……。うら! やま! し! ……ぼくも同じ種族のお嫁さん、生きてるウチに見つけられるかなぁ……)
「は、はぁ……」
「にょーん……」
仰ってる内容は、まるでわかりませんが、
何やら、哀愁ただよう表情をしておられますね……。
あれっ……? そういえば、
私も何か、大事なことを忘れているような……?
──ズドドドドドドドドドド……!!
「……!? な、何でしょう、この音は……!?」
「にょきっと」
部屋の外……、お庭の方から!?
私は部屋の大きな窓を開けました。
ガチャ! ゴ、クォォ────……!
「くゆ」
「……」
わんちゃん、何をしていらっしゃるの……?
「──くゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆ!!!」
ズドドドドドドドドドド……!!!
すごい勢いで、土を顔で突いていらっしゃる。
「な、何をしていらっしゃるのかしら……」
「にょきっとにょー」
(訳:種まきだねー)
激しい連打ね……。
ああいう遊びなのかしら……。
「う、うわぁー! このフサフサさん、何をしてるですのぉー!?」
「お庭を耕して、畑にしちゃう気ですのぉー!?」
「くゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆぅぅ──!!!」
──ズドドドドドドドドドドドドド──!!!
……庭を穴だらけにしているワンコちゃんは、
ミルルとチルルに任せるとしましょう……。
ギギキ………ガチャ……ン──。
カチッ──。
「にょきっとにょんやぁー」
「……」
──しゅ────。
うさぎさんが、
ハンカチにアイロンをかけておられます。
「にょ!」
「……はい」
お上手。
「にょ」
このうさぎさん、
あて布の概念を理解しておられる。
「にょ♪ にょ♪ にょ♪ にょっきにょき〜〜♪
にょっきにょ、にょきっとなぁ〜〜♪」
かわいいお歌ですね。
「にょや」
「ハンカチ、全部のばしていただいたんですか……。あ、ありがとうごさいます」
「にょきにょき♪」
従獣には、家事のできるウサちゃんが、
いらっしゃるのですね……。
世界は広いわ……。
そろそろご昼食の用意をしようかと、
キッチンに参りました。
この教会では、誠に僭越ながら、
わたくしがリビエステラ様の食事を、
担当させていただいております。
「あ、あれっ……火の魔石に垂らすオイルが、もしかして切れている……?」
何たる失態。
私の魔法系統は水ですし……。
「にょっき!」
──パチン!
──ボッ!
「……」
うさぎさんが指パッチンをすると、
赤いグローブの指先に、
小さな火が出ました。
「にょやっ」
──ぼぼぼぼぉー。
コンロに火を移してくれました。
「……ありがとう」
「にょきにょき♪」
……すごい指パッチンをお持ちですね。
「にょわー」
「……」
──ジュワァアァ──。
炒め物をしてくれています。
もう、何でもできますね。
私はビン詰めのピクルスを、
開けようとしておりました。
「ぐぐぐ……かたい」
「にょきっと」
「え? コレ? どうするの?」
グッ──ガゴォ!
「にょい」
「……うん」
──ジュワァアァぁぁぁ──……!
「あ、ブラックペッパーかけますよ」
「にょ……──にょっぷしょ──い!!!」
えらい。
ちゃんと後ろを向きました。
「えと……こちらのお皿にお願いできます?」
「にょんにょん」
──かん、かんかん……!
「にょわー」
──ジャアアぁぁ──……。
あ、洗い物もしてくださるのね……。
……ラビットのお手手って、
こんなに器用なものなのかしら。
「モナリー! フサフサわんこちゃん、捕まえたですのー!」
「泥んこだったから、お水で洗ったですのぉー!!」
「かんくゆ」
「えっ、お客様の従獣を水洗いしたのですかっ……!? そ、そのような失礼を……ダメですよ、気をつけないと……」
「えー! モナリーだって、ウサちゃんに色々手伝ってもらってるですのぉー!」
「今も、お皿拭いてもらってるですのぉー!!」
──きゅっ、きゅっ。
「にょきっと」
「……」
ほんとだ。
キッティとアンティに鍛えられし勇者。
₍₍ ( ‾᷄꒫‾᷅ ) ₎₎










