聖女と義賊と狂銀と。
(´・ω・`)だから地の文は
ニガテなんだってば。
碇司令の声ががががが……。
(いったい、なぜ……?)
アンティとマイスナは気づいていなかったのだが、
聖女リビエステラに浮かぶ感情は、
怒りではなく、"極度の緊張"と表すほうが、
より、正しいものだった……!
彼女が部屋から専属メイドを逃がしたのは、
万が一、目の前の義賊と狂銀が、
危険人物だと対応できないからである……!
回復魔法と光属性の攻撃は得意な彼女だが……!
体力には自信が無く……!
自らのみを守ることが、
精一杯だと、そう、判断したのである……!
(なぜ……その名を?)
この国で知る者が、ふたケタもいない、
"葬られし名"────。
それを使って挨拶かまされた聖女の眼は、
警戒心を強め、かなり鋭いモノとなっていた……!
いざという時は、
回復を永続的に使用しながら、
身を守らなければならない……!
リビエステラは、きつく、鋭く……!
絵本の主人公たちを、睨みつけた……!!
──キリッ。
「……(ぷるぷるぷる……)」
「……」
義賊の少女が……、
ぷるぷるしていた……!
何かが、おかしい……!
しかし、まだ睨む……!
──ギラッ……!
「……(じんわりぃぃ……)」
「……」
半泣きのように見える……!
一、二歳は、歳上だろうに……!
てっきり、ナメられてるとも思ったが……!
(……?)
リビエステラは、
政敵のハラのウチを探るように、
無言を貫き、超・睨んだ……!
──ジトォォォオトオオ……。
「 ((((プルプルプルプルプル……!)))) 」
これを見て、動いたのは、
マイスナであった……!
なんの事はない……!
"なんか、やっちまった!"
と、震えるアンティを見て、
えらぃ可哀想になったのである……!
食堂娘とは、また違った、
世間知らずの奔放さが……!
素直な、白銀の言葉を作り出した……!
「アンティは、いい子です」
「……、!?」
「……!」
「私は、少し、わるい子」
いきなり喋りだしたマイスナを、
縋るように見る、半泣きアンティ……!
「──でも。私たち二人でも、知らないこと、いっぱいある。だから──……わるい事は、教えてほしい」
「──……!」
素直な言葉であった……!
( ──…… )
いつもは、教会関係者や政治家たちと、
頻度が低いとはいえ、
いやいや駆け引きを繰り広げる、
聖女リビエステラである……!
この、純粋な銀の声に……!
心の中の氷る思考が、
融解するような感覚を得る……!
そして聖女は、ふと、思う……!
それは、ある、" 推察 "だった────……!
(まさか……悪意が、微塵も無い……?)
「(((プルキンプルキンプルきんプルきんプル……!)))」
いまだ、黄金のバイブレーションを成す、
義賊クルルカンの少女、アンティ・クルル……!
流石に、聖女も察し出す……!
よもや、これは攻撃では、
ないのでは、なかろうか────……!?
「──、……」
聖なる瞳の鋭さは、なりを潜め……!
戸惑いつつも、聖女は、語り始めた……!
「……わたしは」
「「……!」」
「わたしは、聖女です」
リビエステラの、譲歩が始まる……!
「聖女とは……この世で、いちばん心優しい女性とされるものです……だから、一度だけ──。懇切っ、丁寧に、あなた達に……教えてさしあげます。よく、お聞きになって」
厳しさの残る、聖女の声に……!
ぷるぷるアンティは、
深く、ゆっくりと、うなずいた……!
「──はぁ……。"テラリリウム"、というのは……。わたしの産まれ故郷の村の名です。あの村では、皆がこの響きを貰い受け、名のみが個人を表しました──」
アンティとマイスナは、
真剣に耳を、傾ける……!
「幼き私が──……他の皆とは比べ物にならない程の"聖属性適性"を持っている……。そう、わかった時。私を連れ去りに来たクソヤロウ共は、"村とは永遠に縁を切れ"、と吐き捨てました」
「「──!」」
「私の能力は……"故郷"があると、都合が悪いからです」
アンティは、
大きく黄金の眼を揺らめかせる……!
「利用されるかもしれない肉親……。聖女が、あのような小さな村の出身であるという事実……。土地の囲い込み……。様々な未来を、封じ込める必要がありました」
マイスナが、少し悲しい顔になった……!
「別に、あの小さな村が、それほど好きだったわけでもありません……ですが。人並みの家族への情や、言葉にできない複雑な気持ちは持っていました。私の名は、その日から"リビエステラ"のみとなり、故郷の村の名は"無いもの"として扱われました」
「「……」」
「私の"過去の名"、そしてその"村"は、あらゆる権力によって揉み消されています。教会の関係者も、ほんの一部しか知りませんし……この街で知っているのは、モナリーだけです」
金と銀の瞳が見つめる中、
聖女は続ける……!
「私の"認識阻害"のスキルレベルは、Lv.5です。故郷の名や出生を弱みにしないため、幼少に訓練されました」
「「──……」」
真剣な、その凛とした声……!
齢13の少女とは、思えぬ凛々しさ……!
「あなたが……私の"旧名"を持ちだす理由を、私は……2つしか思い描けません」
「っ、……?」
「……?」
聖女は、そっと、囁くように言う……!
確かに、それは"懇切、丁寧"であった……!
「ひとつは──私を陥れようとする者が、あなた達の後ろに付いていて……私を脅しにきたという可能性──」
「「……!!」」
「もうひとつが──あなたが、私の"認識阻害Lv.5"を看破するほどの、とても強力な"鑑定系"のスキルを持っている、という可能性です──」
「……っ、」
アンティが、目の前の小さな少女の、
聡明さを痺れるように感じ取った事は、
想像に、難くないだろう……!
「今でこそ、聖女がほとんど役に立たない平和な時代ですから、ギルドマスターなどを兼任しておりますが──」
朝の、光の揺らめきが、
桃の髪を透かす……!
「──"聖女"にとって、自分のステータスを看破される、という事は……全ての治療対象を危機に晒すという事です。大きな戦いの際──私が隙を突かれて死ぬと、全ての勢力が共倒れになります」
「「──……」」
「さて……。あなた達が、どう転んでも──。私にとって、非常に厄介だということが、わかりますね?」
「「……」」
「以上の理由で、私は"忘れ去られた名"を持ち出される事を、とっても、快くは思いません。何故、その名を知っているのか──。私は、説明を求めています」
「……」
「……」
聖女は、その言葉の通り、
懇切、丁寧に説明し終えた……!
日の神が、
ひと言、黄金に詫びる……!
『────申し訳:ありません……:私が……。』
『>>>ちがうさ……。こういう日もある』
アンティも、もちろん……!
クラウンのせいなどにする気は、
まるで毛頭、微塵、
ひとカケラも無しのツブテである……!
明らかに、"無知は罪"というやつだった……!
聖女のファミリーネームは、
この国の在り方にとって、
スペシャル・グレイテストな、
トップシークレットだったのである……!
「──」
「ぅ……」
「アンティ……」
聖女は、じっとこちらを見ている……!
やらかしンティとしては……!
ここは、誠実に対応したかった……!
"大切なもののために、何かを隠している"……!
アンティは、リビエステラの想いを……!
他人事とは思えぬ程に、
汲み取れる立場だったのである……!
(どう、しよう──……、、、)
だが、どこまで──!
いったい、どこまでを・・・!
本当の事を、言っていいのか……!!
誠実とは、正直なこと──、
"隠さない事"である……!
(あぅ、ぅー……)
今の、アンティ・キティラは。
大きすぎる秘密の、かたまりである……!
誠実と真実の狭間で、義賊は迷った……!
〘------しゃーないのんな……ま;うまいことやるのんなぁー☆〙
〘#……うむ……。判断は……任す。やりたいように言ってみなさい──〙
(、……むゅ……)
それらの言葉に、背を押され……!
アンティは、やはり、いつも通り……!
思うがままを、するだけだ──・・・!!
「……、」
最初こそ、言葉に詰まったが──!
「……後者、です……」
「っ!!」
リビエステラが、興味深く……!
黄金少女を、見貫く……!!
「──。それは……私の持つ、"認識阻害"のスキルを看破するような、"鑑定系"のスキルを持っている、と?」
「…………、は、ぃ……」
「……! ……」
──"分析"という単語は、
もちろん、言わなかったが……!
アンティは初めて、自分から──!
この力を、告白した事となる……!
一度、真摯に対応しようと決めた食堂娘は、
聖女に対して、
その持ち前の"黄金の精神"を、
キラリと、決め込むのだ────・・・!!
「正直に、言いますと……。ここに来るまで、貴女の名前を、まったく知りませんでした……」
「え"っ……」
聖女も、これには驚いた──!
ぶっちゃけ、" そんなやつ、いんのっ!? "
という、レベルであった……!
だが、アンティは、
ちゃんと、あやまるンティである……!
誠実に、言うのであった──……!
「会ってすぐ……名前を調べるために、スキルを使いました……すんません……!」
「は、はぁ……」
「申し訳、ありませんっ……!」
アンティは、座ったまま、
まっすぐな背を倒し、礼をした……!
座礼ではあるが……!
中々、背筋が伸びていて、
気持ちの良い、礼である……!
「……、……てっきり、前者のほうだと思っていたのですが?」
「そっ、それは……ないです……」
「私たち、ヒゲさんに言われて、薬草不足を調べにきただけだよ」
「ひ、ヒゲさん……、あ、あぁ……怒られますよ」
マイスナの、ナイスなフォロー……!
魔人ヒゲイドなど、ヒゲで十分……!
「──……むー? 」
いよいよ、毒気を抜かれた聖女……!
リビエステラは、しげしげと、
あやまりンティを、見る……!!
「んー、最高レベルの"認識阻害"を……無視できる程の、"鑑定"スキル、かぁ・・・」
聖女は、質問をしてみることにした……!
「……名前だけですか?」
「えっ」
「見えるの。名前だけ……?」
「ぐっ……ッ」
アンティと、リビエステラは、
一瞬、見つめ合い……!
つーか、「ぐっ」とか言った時点で、
バリバリの、、、アウトであった……!!
「にひーっ♪」
「ぐぐ、……!?」
そぉれ、みろぉお……!
リビエステラは──微笑んだ……!!
「ふふふっ、ふふ……♪ ぜひ、教えて、いただけますか?」
「ぐぐ、ぐ……」
『>>>あほぉー』
〘------交渉;ヘっタのんなぁ──☆〙
(ぃ、いるあァ……)
呪いの仮面と、精霊王に、
マジ・ムカつきながら……!
アンティは、やけっぱちで、
正直義賊ちゃんと化す……!
「うぅ……。
聖光魔法:Lv.5、回復魔法:Lv.5、
認識阻害:Lv.5、弓術:Lv.3、
話術:Lv.3、鑑定:Lv.1……、
そこまでは、見えましたぁ……」
「パチパチパチ」
「……! ほん、とうに……!?」
聖女は、素直にビックリする……!
マイスナは、可愛く拍手したった……!
「ほぁー……。先月、ステータスを調べてもらった時には、"話術"スキルはLv.2、だったのですが……。私のスキル……レベルアップしているという事でしょうか??」
「お…………恐らく、は……」
「……! ……。へぇぇ──!」
13の幼き聖女は、
すっかり、気持ちを落ち着けている……!
わかったのだ……!
" どうやら、こいつは、
敵では、ないぞ……!? "
もしそうだというなら、
あんまりにも、マヌケが過ぎる……!
流石に、こんな歳下の身に、
ガチ・かしこまりする義賊は、
ただの悪賊としては、三流である……!!
────と、なると、だ。
( あれっ……もしかして。私……。
今……、すっごい面白いモノに、
手が届いてる────?)
────。
興味・・・!
興味、しげしげ・・・!!
しげしげ、リビエステラである・・・!!!
「じ〜〜〜〜〜〜……っ♪」
「((だらだらだらだらだらだら……))」
「アンティ、アンティ、すごく見られてるよ」
興味深げに、
いまだ頭を低く保つ、
アンティ・クルルを見る、
聖女・リビエステラ……!
──────そして、ついに・・・!
「ぷっ、くっく──」
聖女ちゃん──腹筋、崩壊である……!!
「ぶっ、あっはっはっはっはっは……♪」
「……!」
「わらったー」
何やらツボに入った聖女・リビエステラは、
ソファに身体を丸めながら、
けたけたと、笑いだした……!
「つ、つまり……ぁ、あなたは……! アレですかっ……、私に、敬意を払おうとして……ぷっくく! ふァ、ファミリーネームを、スキルで調べちゃって……! そんでもって、思いっきり国際機密事項で、ケンカをガッツリ売っちゃった、そゆぅー、ワケですかっ……♪」
「……、……(チーン)」
「あ──っはっはっはっはっはっはっはっは……♪」
その通りなので、
金パツのツインテールは、
しょげんティである……!!
「それで、さっきから……そんなに萎縮しているのですね……! あ──っはっはっはっは……♪ けらけらけら……♪」
光臨するは、" ごきげんリビたん "である……!
アンティは、神妙に精神統一をした……!
だが、まだ、あやまりンティである……!
「あ──っはっはっは……♪ ぁ、あ、あなたの気持ちを想像すると……! な、なんとも、不憫でなりませんわねっ……♪ くっくく……あ──っはっは……♪」
ソファにて、涙目で、よじれる聖女を見て……!
アンティは、悟りをひらきそうである……!
言われてみると、
座禅を組んでる如来像に見えなくもない、
黄金の、あやまりンティである──……!!
「はぁ、はぁ……。そのチカラ……知っている人は、どれくらいいるのですか?」
「ぐ……。知っている人は、あんまり、いません……」
「はぁー……。そうでしょうねぇ。それ、凄いチカラですよ」
聖女は、笑い涙を拭きながら、
真っ直ぐ、こう言った……!
「流石は──。
マザー・レイズの"聖兵"ですねっ……♪」
「「──っ!?」」
こいつぁ、ややこしそうである……!!
〜〜 つづく 〜〜
てんてんワールド(๑´ω`๑)










