せいじょじらい
いつも何故こんな変なんばっか溢れるのか(笑)
── 『 聖女 』。
言うまでもなく、この世界にて。
光魔法と回復魔法の、随一の使い手である。
その御身から繰り出す御業は、
神に愛されているとしか、言いようが無く。
効果範囲、威力、持続性──……、
どれをとっても、人間離れしているという。
「……、」
現役の学生でもある アンティ・キティラは、
自身の持つ教本に記載のある、
北東地域の歴史の一文を、思い起こした。
" かつて、北東には邪悪なる者が住み、
それらに対抗するがために、
大いなる砦が築かれた──。
傷付く勇敢なる者達のため、
時代の聖女は、砦と共に、添い遂げた── "
答案には、難なく書き連ねてきた、
その歴史の舞台が。
いま、自分たちがいる街だと、
やっと、理解したのである。
(ちくしょう……ここは、"聖女の守る街"なんだ……!)
ひとつひとつの情報が、
実際に訪れ、見、聞き。
点から、線となる──……!
アンティ・キティラは、
安易に、この場所に踏み込んだ事を、
激しく、やっちまった、と思っていた……!
(ヤバい……。貴族様より、よっぽど縁のない存在だわ……)
"貴族"が"社会的特権"を与えられた者たちだとして、
"聖女"は世界から特別視される女性である。
庶民である食堂娘の知る限り、
"彼女"は一人しか存在せず、
その存在は、全ての貴族が知っているのだ──。
(ヒゲイドさん……帰ったら、ヒゲぜんぶ毟り取ってやる……!)
冷や汗をかきながら、アンティは思った。
聡明な彼女だからこそ、理解した。
彼女は……すべての貴族と、パイプを持っている。
絶対に……失礼はできない相手なのである。
「ふふ、あんまり緊張なさらないで。
あなた達より、歳下の女の子なんですから……♪」
「……、……」
「、っ……?」
おろおろとするマイスナのそばで、
アンティは、目が引き攣りそうなのを、
何とか我慢した。
こいつ、エルフかなんかで、
100歳くらいなんじゃないの──!?
──と、思ったほどである。
(大人びていて……絶対に歳上と喋り慣れてやがる……!)
食堂で、接客していたアンティだからこそわかる、
相手の対話力の、底の見えなささ────。
自分より小さな少女に感じた印象は、
" 将来、絶対に裂けるような美人になる、
得体の知れない女 " ──である。
「ふふ、緊張していらっしゃるの?」
ニコニコと笑う小さな少女に、
やはりアンティは、ちくしょうと思う。
(モナリーさん……! しかめっ面どころか、人を食いそうな笑顔を絶やさないんだけど……! これ、怒ってんのか……? ぜんぜんわかんないじゃないの……!)
チラリと、聖女の傍らに立つメイドを見て、
そのメイドも冷や汗を浮かべている。
やはり、聖女はニコニコしている。
明らかな……"接客用"の作り笑いなのだ。
(ツラの皮が厚そうな……うえぇ、参ったな……)
重要なのは、第一声であった。
アンティは、どう話しかけようか、
迷ったのである。
突然と押しかけた時点で、
ある程度の失礼を、やらかしている。
詫びつつも、
情報を引き出さなければいけなくなった彼女は、
金色の背筋を、キリキリさせた。
『────分析しています……。
────何かに:活かせればよいのですが。』
ホッとする相棒の声が聞こえ。
得体の知れない聖女の情報が、
幻影のウィンドゥとなり、表示される。
────────────────────
【 リビエステラ・テラリリウム 】
人間(♀):13歳
ホールエルの街でギルドマスターを務める、
多くの才能を秘めし少女。
称号:聖女
スキル:聖光魔法:Lv.5
:回復魔法:Lv.5
:認識阻害:Lv.5
:弓術:Lv.3
:話術:Lv.3
:鑑定:Lv.1
────────────────────
( 本当に……歳下とはね……! ち……しかも……! )
( アンティ! この子……"鑑定"を持ってる! )
アンティは鎧の内側に汗を滲ませつつも、
やはり、スピードが大事だと腹を決めた。
モタモタして、こちら側を"鑑定"されれば、
世にも不思議なユニークスキルを持っている事が、
目の前の恐ろしい少女にバレるかもしれない。
( 手遅れかもしんないけど、
どっちにしろ、下味はつけないと…… )
バレないために、
もしくは、バレているか確かめるために。
アンティは、挨拶を、
さっさとカマす必要があったのだ。
瞬間に、彼女は、非常に迷った。
まず、お詫びの言葉。
そして、
彼女を────どう呼ぶか。
どちらをえらびますか?▼|
▽ 突然の来訪にも関わらず、
お会いしていただき、心より感謝いたします。
"聖女"リビエステラ────。
▽ この度は、朝方の突然の訪問、
誠に申し訳ございません。
"ミス・テラリリウム"────。
「……」
──アンティが選んだ、第一声は?
「……この度は、朝方の突然の訪問──誠に申し訳ございません──" ミス・テラリリウム "──……」
「 」
「 な っ ・・・!? 」
(えっ?)
メイドのモナリーは、目を見開いた。
アンティは、それを見て、
何かが、おかしいと思う。
彼女が"ファミリーネーム"を選んだのは、
純粋に、名を知らぬままこの場に出てきたことを、
申し訳なく思っていたからである。
もちろん、"聖女"という立場は、
立派な敬称たりえる。
"聖女リビエステラ"という呼び名は、
敬意を表す呼び方として、何ら問題はない。
だが、根っこが食堂娘たるアンティにとっては。
仮に、敬称を付けたとしても、
初対面の人を"呼び捨て"にするのは、
失礼だと感じるにいたったのである。
それ故の、選択───。
────が。
このアンティの選択が。
この後の聖女との関係を、
──大きく、変化させてしまう事となる。
さっきまでニヤニヤと笑っていた聖女は、
目を見開き、
時が止まったように、
黄金を見ていた。
メイドが、言う。
「 あな、た・・・! 何故・・・!? 」
この反応で、アンティは自分が。
確実に、何かを、ヘタこいた、と自覚する。
取り繕う前に、聖女が言う。
「 モ ナ リ ー 、 出 ろ ・・・ 」
「な、何故……!? いったい……!?」
「 ── モ ナ リ ぃ ・・・ 」
「 ……!? は、はぃ……っ…… 」
「 お前は、、、部屋から出て──何も、聞いていない 」
「……」
「 ── ソ ウ ダ ヨ ナ ? 」
(( …… ))
「し・・・・失礼、しま、す・・・」
冷や汗まみれのメイドが、
妙なリズムの足音で、部屋を出た・・・。
残るは、
ふたりの主人公と、聖女である。
「…………」
「「…………」」
(何やらかした何やらかした何やらかした何やらかした何やらかした何やらかした何やらかした何やらかした何やらかした何やらかした何やらかした何やらかした何やらかした何やらかした何やらかした────)
自分がしたであろう失敗を、
混乱したアンティは、気づけない。
「戦争をふっかけに来たの?」
聖女は言った。
(๑´ω`๑;)なんとなくわかるわな










