実直なるロメオの学習 中 さーしーえー
★本日のテーマ
・照れ顔(///ω///)
──まぁ、なんだ。
何が悪かったっつったら、
"実直のロメオ"殿は、
いい意味でも、わるい意味でも、それなりに。
ホールエルの街の──……"有名人"だったのである。
その、彼が。
酒場にいた、怪しい全身ローブの二人に、
話しかける。
── 十二分な、話題性であった。
昼の酒場の視線は、
一気にソコに、
集結する。
ザッ・・・!
「おや……? ロメオ殿が……?」
「! "バカ正直のロメオ"が、誰かに詰め寄ってるぜ!」
「ふぁぁ、今度はなんでしょうか?」
「なんだ? 捕りモノか?」
何度か、凶悪犯罪者をも捕まえたことのある、
"実直なるロメオ"、その人である。
当然、その場の皆は、
また彼が、"トリモノ劇"を始めたのか?
という、思考の流れを発生させる。
渦中にいる、東の英雄と、謎の二人組。
──それは、劇の場面の如く、始まった。
「いきなり失礼。
私は、ロメオ・ホアン・カーン。
この街の治安を任されている冒険者だ」
「「……」」
「最近、この街のすぐ近くの森で、
盗賊が出る事はご存知かな?」
「「……」」
「私は、その盗賊こそが、
このホールエルの街の薬草不足の、
原因だと考えている」
「「……」」
ロメオの方を向いた二人は、
はたから見る分には動じず、
カウンター席に座っている。
(……おい、なんだ? あの小柄な二人組……)
(ジッとして、全然うごかないですね……)
(おひざの上に、クッションなんか乗せてやがんぜ!)
酒場の空気はさらに落ち着き、
ロメオの声は、よく聞こえた。
「どうかな? 君達は、
この街の出身ではないだろう。
盗賊の噂の件は、ご存知なかったかな?」
「「……」」
「声を、聞かせてはくれないのだろうか」
「「…………」」
無言を貫く二人。
ヒソヒソと話す、冒険者たちの声。
(ふうん……全身を布地で隠してるぜ……)
(よく顔が見えないわね。まさか……手配犯?)
(ロメオ殿が、盗賊を追っているということは……)
(……おもしろくなってきたじゃねぇか──)
「 ─ 存じています 」
「!」
凛とした声。
「──女だ!」
酒飲みの冒険者の、誰かが言った。
ひざに白いクッションをのせた方の、
小柄なフードの女性がしゃべる。
「盗賊の噂は、存じ上げております。
それが、何か?」
(ふぅ〜〜う! 可愛い声じゃねぇかぁ〜〜!)
(──しっ! しずかにしてください……)
「……。率直に言おう。
君達が盗賊に関係する存在なのではないかと、
私は思っている」
「「……!」」
「でたぁ〜〜〜〜──! クソ・直球!」
また、酒飲みの誰かが言った。
少々の失笑が見られる。
すぐに静まり、
酒場いっぱいの冒険者たちは、
ローブの二人の出方を待った。
「……誓って、私たちは、
此の度の盗賊騒ぎとは、
関係がございません」
「私たちじゃあ、ないよ」
ここで、どちらも女性だという事が確定する。
ロメオは、すかさず答えた。
「そうだろうな。でも、念のために。
素顔を見せてはくれないだろうか?」
「「……っ、……」」
静まりかえり、
酒のジョッキを持ちっぱなしの冒険者たちは、
動揺した彼女たちの様子を、よく、捉えた。
「お顔は、拝見できるかな?」
「……。訳あって、
このローブを取ることはできません」
「!」
「重ねて言いますが、その盗賊騒ぎとは、
私たちは無関係です」
「……」
今度は、ロメオが考える方だった。
はっきりと顔が見せられないと言われるとは、
思っていなかったのである。
外野から、ヤジがとんだ。
「──よぉー、ねぇちゃんたち……。
酒のつまみに、おっちゃん、
嬢ちゃんたちのキレーな顔が、
見てぇーんだけどなぁー……?」
「ぷくく……」
酔った冒険者のテーブルから聞こえた声は、
もちろん悪ふざけではなく、煽り文句に近い。
「……姿を見せる事は、出来かねます。
お許しください」
「なぜ、そんなに姿を隠す?
盗賊でないなら、堂々と姿を見せてくれ。
そのスッポリと被ったローブを、
脱いでくれるだけでいい」
「「……」」
「不躾なお願いをしているのは分かっている。
だが、必要な事なのだ」
「「……」」
「よく言うよぉぉー……ロメオの奴はよぉぉー」
「ガッハッハッ……これは、大事になったのォォ……」
黒猫の獣人と、ドワーフが言った後。
薬草不足でクエストに行きっぱぐれた、
大人数の集まる中で、
とうとう、雑音は聞こえなくなった。
まるで、演劇の会場の如く、そこは成った。
「顔を見せるだけでいい」
「ロメオ! 顔だけなんて言うなぃ!
ぜんぶ、引っペがしちまえばいい!
まさか、ローブの下は真っ裸ってわけじゃ、
ないだろうぅぅ!?」
「はっはっは……」
「静かにしてくれ。どうだ──……、……!?」
キン、キン、キン、キン────。
ギン、ギン、ギン、ギン────。
ローブのふたりが恐ろしく甲高い音を立てながら、
酒場の入り口に歩き出し────、
サッ──、
サッ──・・・!
「おおっと……!」
「ふふ……知ってた?
東の酒場は、ローブを取らなきゃ出れないの」
「「……」」
ローブのふたりは、
東の冒険者たちに、"通せんぼ"を食らう。
仕方なく、ふたりは、
後ろ向きに、ゆっくりと後ずさった──……。
キン…、 キン…、
ギン…、 ギン……。
「 ──おいおい!
なんだぃ、この"魔よけ鈴"みてぇな音は!
俺の穢れた魂が清まっちまう──!」
──ドッ・アハハハハ・・・!
それなりの笑いが起きた。
聞いた事もない、神秘の足音だったのである。
ロメオが継ぐ。
「……ずいぶんと、
音の響くブーツを履いているんだな……」
「「……」」
「警戒しないで欲しい。
ただ……姿は確認させて欲しいのだ」
こうなったロメオは頑なであり、
しかも、酒場の皆は、
東の英雄を応援する雰囲気が強かった。
ローブの片割れが言う。
「……誓って、こちらの盗賊騒ぎとは、
関係がございません。むしろ私たちは、
それらを調べている身です」
「……!」
(これは……! 怪しい調査団がいたものだ……!)
(ほぅ、そのナリ……足音が天まで響く隠密か……?)
(ぷ、くく、よしなよ! ま、このままじゃねぇ……)
「……盗賊を調べているのなら、
私とは、目的が同じとなる。
仲間のようなものだ」
「「……」」
「だが、仲間の信頼とは、
腹を割った中に生まれると、
私は……よく知っている」
ロメオは説得を試みた。
「頼む……。姿を確認させてもらうだけでいいんだ」
少々、情に溢れ。
しかし、愚直であった。
目線を、送る。
「「 ……、…… 」」
し、、、、、ん。
ローブの二人は、
ロメオ・ホアン・カーンと、
周囲の冒険者たちの沈黙に、
悟った。
「……ぐぬ」
「うう……」
──きぃ、ん・・・!
──ギィ、ン・・・!
「 ──ひとつ、お願いが」
「……!」
ローブの少女は、
実直なるロメオに、懇願する。
「なんなりと」
「 ……笑わないでほしいのです。
できるだけ── 」
「?」
ロメオは首を捻り、
「姿を見て、笑ったりなどしないさ」
素直に、そう答えた。
「「……」」
夏の酒場は、凍ったように音がない。
" はやく脱げ "という、プレッシャー……。
ローブの中から、
金と銀の、ガントレットが覗き、
マントの金具に、手をかける──。
「で、は……」
「ふ、え……」
金のマントの歯車と、
銀のマントの鎖が、
ゆっくりと。
しゅるる・・・、
しゅる・・、
しゅ──。
黄金龍〇〇タの鎧と、
天空鯨ナユタの鎧は、
二人の主人公の羞恥に萎縮し、
美しい、女性のボディラインを惹きたてた。
──ゆるりと脱ぎ捨てる姿は。
──はだける、娼婦に似ていた。
──────しゅら・・・──。
「な……」
ロメオは宣言通り、笑いはしなかった。
──だが。
酒場の皆は──────、、、。
──────ぶっ。
「「ぶぁああああああ────っはっはっはっはっはっはっはっはっはっはッッッ!!!!!」」
「「ギャッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!」」
「「 ろ・ろ・ろ・ロメオ!!!!! こいつぁ、お手柄じゃねぇか、あっはっはっはっはッ、なっははははは!!!!! 」」
「ふきゃははははは!!! 確かに!!! と・盗賊とォォおっ!!! ワルモノのセットたぁぁああ、こりゃ驚いたなっガっははっあっはははっはっは!!!!!」
ぱりーぃいん・・・!
がしゃぁあんん・・・!!
あっはっはっはっは・・・!!!
「ぅぐゅ……」
「ぅゆぅ……」
「「「「「 義賊サマと狂銀サマの、お出ましだぁぁあああああああああああああああ!!!!! 」」」」」
「「「「「 ひゅっぅうううううつうううううううううううううううううううう〜〜〜〜!!!!!!! 」」」」」
酔っ払いたちの、称賛の嵐の中。
もちろん、
アンティ・クルル と
マイスナ・オクセン は、
泣きベソになったという────。
٩(ˊᗜˋ*)و.*・゜
ちょっと、ホールエル滅ぼしてくる!










