最後のニュース
ズズゥン……。
『────解放空間内部の気体構成分析中。
────有毒ガス:無。
────可燃性ガス:無。
────敵影:半径30メルに反応ありません。』
『>>>詳細でたよ。呼吸は可能そうだね。貫通させた岩盤の厚さは8メルってとこかな』
「暗いわ。クラウン、"ぴかぴかどらいぶ"を使う」
『────レディ。
────胸元に使用数を積層してください。』
いつもなら小さな炎をバッグ歯車から出して使うけど、
コレの性能も確かめないとね。
"さいしょのむねあて"の中心にある、
はぐるまのようなマークの上に"ぴかぴかどらいぶ"を出す。
使用数か……とりあえず7枚いっとこう。
「アンティ……? その白い歯車、どうするの?」
「ま、見てなって……」
ま、この"むねあて"については何もわかってないんだけどね。
クラウンが、ゆっくりと呪文を唱える。
『────行きます。
────" は、ぐ、る、ま、ど、ら、い、ぶ "────:
────" モフモルソウル:クラウニング " ────。』
──きゅぅうううんん……。
──きぃぃぃいいいんんん!!!
〘#……! "はぐるまどらいぶ"……? ……それは……〙
──ぎゅぅううういいいんんんんん!!!!!!!
"さいしょのむねあて"の歯車のマークが、
光の紋章のように浮かび上がり、回転し始めている。
それに連動するように、
7枚の"ぴかぴかどらいぶ"が次々と回り出す。
──ぴかぁぁあああ──!!!!!!!
うおっ、まっぶしーなぁ!!
こんな小さな歯車なのに、めっちゃ光るじゃないのよ!!
おー! これいいなぁ……。
あのモフモフさんらから、もっと貰っときゃよかった……。
──ひゅぅん! ──ひゅうん!
=⚙
=⚙
=⚙
=⚙
=⚙ =⚙
=⚙
白く発光する"ぴかぴかどらいぶ"を操り、
真っ暗道の通路の先を照らす。
おお、見える見える!
どれくらい明るさが持続するかな?
「アンティ、こんな事もできるんだね!」
「へっへー、すごいでしょう!」
〘#……ふ、相変わらず面妖な力だ……〙
『>>>はは……この"むねあて"の力のことは、ぼくらも、よくわかってないんです。後輩ちゃんの"歯車法"に影響されて変質してるんじゃないかと睨んでいるんですが……』
〘#……先ほどクラウン君が言っていた、"はぐるまどらいぶ"というのは……?〙
『────申し訳ありません:ギンガ殿。
────その認証コードについては:
────私も完全に理解した上で:
────運用している訳ではないのです。
────ただ:自然に口にしていたというしか……。』
〘#……ふむ。いや、責めているわけではない。ただ、聞き覚えのある言葉なので気になったのだ〙
『────!。』
『>>>えっ!?』
「ちょっとー! おしゃべりもいいけど、ちゃんとゴーレム索敵してよねー!」
「アンティ、ここの道、横が崖になってるよ」
「うげっ、本当じゃん! おっかないわねぇ……」
『>>>せ、先生。聞き覚えのある言葉ってのは……?』
〘#……カネトキは知らぬのか?
──"はぐるまどらいぶプロジェクト"という言葉を……〙
『────。』
『>>>──!? い、いえ……』
〘#……なるほど。君もテレビ離れした若者の一人だったということだ。私達がこちらへ来る当日の朝、ニュースは、この話題で持ちきりだったのだぞ?〙
『>>>──っっ! ニュースって……ぼくらの、世界のですか!?』
「ローザ、ゴーレム見える?」
〘------まるで見えないのん☆
-------ウチが外に出て;いっぱい触手のばすのん?☆〙
「ぅえぇ……? 絵面がキチャナイからヤダ……」
〘------ぷんぷん;失礼しちゃうのんっ☆☆〙
『>>>そのプロジェクトって、いったい……まさか、新作のゲームだったりとか……そんなのですか?』
〘#……何を言っているのだ。"はぐるまどらいぶ"は、国際宇宙ステーションにドッキングされる実験棟の名前だ。多くの加盟国の中で、開発国に日本も選ばれたと朝刊の見出しに大きく取り上げられていた〙
『────:……!。』
『>>>……! う、宇宙ステーション、……?』
〘#……各国が競い合う中、あれだけの共同プロジェクトに参加できる事は非常に価値ある事なのだろう。老朽化したブロックを切り離し、新たな複合式実験棟を接続する……。いくつかの主要な国が、こぞって参加していたはずだ。"はぐるまどらいぶ"という実験棟名称は、日本人の万人が親しみやすいように、ひらがなで表記する事にしたと紹介されていた〙
『────:……。』
『>>>……、ぜんぜん……知りませんでした……』
〘#……私があちらで最後に目にした、とても夢のあるニュースだと記憶している。もし向こうで暮らしていたら、死ぬ間際に面白い物が見られたかもしれんな……〙
『>>>……っ、……そう、ですね……』
〘#……! ……失言だった。許せ……〙
〘------ぬろぬろぬろぬろぬろぉぉお──☆☆☆〙
「ぎゃー!! やめろォ!! だから出てくんなぁ!! 私スライムは苦手なんだってばぁー!!!!」
〘------ドンさまヒドイのん──☆
------スライム差別は良くないのんな──☆☆〙
「なにが差別なもんかぁ!! わたしの素直な気持ちじゃーい!!!」
〘------あぁー;今の傷ついたのん──☆
------ガラスのハートがバリバリのんなぁ──☆〙
「この汁の化身めぇ……あっ、ちょっ!? こっち伸ばすな! ぎゃっ、いやーっ!」
「アンティ、ローザ苦手だ」
『>>>……その宇宙ステーションの実験棟では、どういった……』
〘#……む?〙
『────アンティ:前方にゴーレム発見。
────"ぴかぴかどらいぶ"を集結させます。』
『>>>っ!!』
〘#……いたか!〙
「えっ!? どこ!? ちょ、ローザじゃま!」
〘------今日はやけ酒のんっ☆〙
「アンティあそこ!」
⦅ パ? パミィィイイイ──!? ⦆
「いたぁー!! ずいぶんちっちゃくない!? ユータとかと同じくらいだわ!」
「あ、逃げるよ」
⦅ パミギャァァアア──!! ⦆
「クラウン!! アナライズスキャン!!」
『────投擲。』
────ヴォォオオオンン!
────ヴォォオオオンン!
⦅ パミィィイイイ!?!? ⦆
『────当たりです。
────スキャニング積層:二弾とも命中。
────"スターエメラルド"の魔石内包個体と確認。』
「きたァァあああああ!!!」
「心臓をよこせー」
⦅ パ、パギョォオオオオオオ──!? ⦆
『>>>左側のガケに気をつけな!! 坂道だ、トラップと加速に注意して!!』
〘#……ローザ、そのままマイスナの外装甲と同化しろ。いざと言う時に君の乳化翼はクッション材になる〙
〘------もー☆ 後で1杯おごるのんよ?☆〙
──バサァァああ……!!
うおぁっ!?
ローザが、私とマイスナの腰の左右に、
羽根のようになって流路接続される。
ちょっと光ってるわ!
そうそう、こういう形でいてくれたら綺麗なのよ……。
「まてー心臓ぅー」
「まてごらぁー!!」
⦅ パミグゥオオオオオオアアア──!?!? ⦆
キンキンキンキンキン──!!!
ギンギンギンギンギン──!!!
ガチガチガチガチガチ──!!!
──おっ!? 行き止まりだわっ!!
──チャーンス!!
⦅ パパパパパパパパパ──……!? ⦆
「ふっ……追い詰めたわよ、このチンチクリンめぇ……!」
「あなたの中身は、何色なの……?」
マイスナこわいこわい。
⦅ パパ、パパパ、パパ……、……!! ⦆
「…………」
「…………」
……。
なんか……可哀想だな……。
「……アンティ、やる?」
「えっ!? 私!?」
「ドカンとイッパツ」
「きっ、汚いわよ!? あんた手足もぐとか言ってたじゃないの!」
「正義は力」
「アンタ、見た目だけなら悪の親玉でしょ……」
「……! つーん」
「えっ……!? お、怒らないでよぉ……」
──ガチャリ……!
「「……え?」」
なんの音だ。
チビゴーレムを見る。
⦅ ポキャッ、キャッ、キャ♪ ベロベロヴァー♪ ⦆
こいつ……、壁の、レバーを……!?
──ガゴン・・・!
「「 あっ 」」
私たちの足元が、無くなった。
⦅ ──ポ・ギ・ャ・ア・ゥ──……! ⦆
チビ、首をかっきるジェスチャー。
…………。
「「 ぬああああああああぁぁぁ──!!! 」」
落ちた。
覚えてろ、チビィイイイイイイ──!!!!!!!










