ひみつのじかんちゃん
投稿が遅れたのは、
決してガン✕ソードを全話
見直してたからではありません(`・ω・´)キリッ
比較的きれいなお部屋で、風呂を召喚する。
ことお風呂に関しては、恐るべき電鎖歯車法の技術が結集しまくっている。
溜めに溜めまくった地下水と雨水をろ過した水は、薪や火の魔石なんかが無くてもソルギアの熱で一瞬にして沸くし、排水口はバッグ歯車なので、お湯はすぐに張れて湯船内でどんなに暴れても水位が変わることはない。
ジェット水流マッサージは歯車なので移動可能、どのような角度からも疲れた身体をほぐしてくれる。
電気風呂は、私もマイスナも苦手。先生が好きなので箱庭のお風呂に再現したとのこと。
暴れたり色々して湯船の外に漏れた水分はすぐに格納。
汚れたお湯は片っぱしから入れ替えられ、たとえお湯にお醤油をぶち込んだとしても全く濁ることはない。
部屋が真っ暗でも、ソルギアライト、ホーリーライト、アイスプラズマライト、の三種類から照明が選択可能。
どのライトも、とっても可愛くて綺麗。
何個でも空中にフワフワ出せる。
私がひょい、と歯車の輪っかを出すと、
簡単なお料理と果物ジュースが、中からせり上がってくる。
マイスナが指パッチンすると、ジュースのコップに氷が落ちた。
……──カラン。
「ぜいたくねぇ……」
「さいこうです……」
こうゆーことにチカラ使うのって、いいよねっ。
「……アンティはおっぱいがないことを気にしていますが」
「……お、戦争かな?」
……ちゃぽ──。
「このように……私と噛み合うので、ないってことはないです」
「……ぬ、ぬななっ!?」
「横にスライドすると引っかかりますので──」
「や、やめなさいってばぁ……!!」
──ばしゃあ……!!
こ、この子ったら今日も絶好調のようね!
警戒のために仮面だけは身につけてるけど!
イチバン警戒すべきはこの子だわぁ!
『>>>……こ、こほん……』
『#…………ウォッホン…………』
ほれみれぇ!
今は一応警戒中だから、先輩と先生も音は聞いてんのよぅ!
それなのに、まったくもぉー!
この子ったらぁ──!!
「ぬふふ、アンティは私がいただいた」
「あばば、慎みを持ちなさぁ──い!!」
──ばしゃあ! ばしゃばしゃあ!
狂銀ちゃまと裸のお付き合いをしてたら、
浮遊トラヌコがお風呂タイムに乱入した!
──バタァァアアンンン!!!
「「ひっ!」」
『C7:──にぁあおあ! ドン! オクさんっ! あっ、お楽しみ中でしたかにゃ? ところで隠し階段みたいなの見つけたにゃよ!!』
「うおぅ! ニャーナ! 外でとったんかワレェ!」
「びっくりした……」
〘#……まさか噛み合わせの話になるとは……〙
〘------両者は互角なんのんな──☆〙
『C7:さぁ……さぁ……! トラトラトラにゃ──!!!』
何言ってんだコイツ。
……え? 今から行くの?
はいはい、着ますってば。
「……で、隠し階段ってなによぅ」
「……アンティともっと噛み合いたい」
寝る前のマイスナは、ホントお淑やかさゼロねぇ──!!
清々しいほど欲望に忠実だわ。
ま、まぁ気持ちは、わからなくもないけどお……。
こちとら結晶剣捜索失敗、雪山頂上合戦(ガチ雪合戦)、
ライオンドッキリ(捕食未遂)で疲れてんのんよぅ……。
なのにさ?
目の前には空中浮遊する、うきうき虎猫さん。
……ニャーナたちって、
こっちに出てくるとネコ型に戻っちゃうみたいね。
「で? 知らん間に外出て、何してたのよぉ〜〜」
「はやく寝たいです……」
二人ともフル装備、絵本スタイルでっせ。
マイスナはベッドが遠のいた事にブー垂れてて、
私の金ピカアームに、銀ギラアームを絡ませていた。
『C7:金目のモノ探してたんにゃ!』
「アンタねぇ……」
『C7:仕方にゃいにゃ? 父親が義賊にゃ! 血には抗えんにゃよ!』
『>>>ぼくのせいにすんな……』
『────私の血で:抗いなさい……。』
『C7:そったら、スキャンで壁の中に隠れた階段を見つけたんにゃ!! 凄いにゃ? ワタシんこと褒めていいにゃよ!? あっ、ここにゃ!!』
末っ子の猫娘に小言を言おうとしたら、
現場に着いてしまってタイミングを逃したわ。
……やぁれやれ。
「あ──……、クラウン?」
『────レディ。
────アナライズ:スキャニング。』
──ヴゥゥゥウオオオンンン──……!
透明の板が出現し、正面の壁を透過する。
私とマイスナの視覚に、瞬時に立体情報が反映される。
──ピピピ、ピピ、PON!
「んっ……、確かに中に階段があるわね。壁の継ぎ目が、わからない……?」
「こんなの私、知らなかった! 2階から1階に降りる階段が、こんな所にもあったんだ……」
2年間ここに住んでいたマイスナさんも、
この隠し階段の存在は知らなかったみたい。
そりゃ当然かも。
ホロ視覚情報を切ったら、ただの壁にしか見えないもの!
『────意図的な:施錠流路術式が組み込まれています。
────侵入方法を調査中……。』
『>>>へぇ……! 何だか楽しそうだな……!』
あっ!
もぅ、この義賊さんはぁ。
こういう隠し部屋、やっぱり好きなんじゃないの!
まぁ……、私もそりゃ、ちょっとは気になるけどね。
おねんねの前の、一時の娯楽って感じかな?
「……んで、どうやって中に入るの? 壊すのは簡単だろうけど……」
『>>>んー……流路術式のロックなら……。後輩ちゃん! 髪、少し借りるよ!』
んぁ?
──ふぁさぁ────ぶあっ!
──っ!
私の髪が、壁を這うように拡がって、
触診するように辺りを探り出す!
いいいっ、いきなりねぇー!!
〘#……ふ、やれやれ。興味がある事に素直なのだろうが……レディの髪をいきなりそんな風に扱うものではないぞ、カネトキ?〙
〘------しゃあないやっちゃのん──☆☆〙
『>>>……! これだ! 壁の中に流路術式を見つけたよ! クラウンちゃん、手伝ってくれるかな……?』
『────は:はい……。』
先輩ったら、楽しそうにしちゃって。
やっぱ義賊の血ってやつぅ?
『>>>……へへっ、こういう隠し部屋ってのは……確かにワクワクするよなっ!』
『────そっ:そうですね……///。』
なぁ──に照れとんのじゃー、クラウンっ。
どちくしょ──!!
恋する乙女かっ。
あっ、子持ちでしたね。さーせん……。
うわぁ。私の髪、光ってる光ってる。
──ピカッ!! バシュゅゅゅ──……!
──ギリギリギリギリギリギリギリ……!
「「 わっ! 」」
壁が下に、ゆっくりとスライドしていく……。
大掛かりな仕掛けだわぁ……。
かなり分厚い壁ね……。
ん? 今、少し光ったような……
『>>>……っ!! クラウンちゃん、気づいたかぃ……?』
『────:……はい。
────観測を継続します……。』
「……? とにかく下に降りてみましょーよ。1階のどっかには……繋がっているんでしょう?」
「えへへ、ちょっと楽しみだね!」
『C7:にゃふふ! オタカラ、あるかにゃあー!?』
クニャウンモードのニャーナが、ピトッと私の肩に乗る。
こりゃ、自分で飛ばんかぃ。
『C7:にゃお〜〜ん♪』
「……」
「くらいねー」
……やれやれ、ヌコに怒ってもしょうがねっか。
真っ暗な階段の中を、マイスナとふたりで降りていく。
何も出ないとは思うけれど……少しは警戒しよう。
空飛ぶ歯車から小さな火を出し、幾つか先行させる。
──きゅるるるるる…………!
────きゅるるるるる…………!
……キン、キン……ギン、ギン……。
「……けっこう深いわね。そう見えるだけかな……?」
『────……。』
『>>>…………』
……?
クラウンと先輩が静かだ。
どした……?
「アンティ。壁が変」
「え?」
隠し階段の途中で、マイスナが訴える。
横の壁を見ると──、……っ!
光の筋のようなものが……走っている……?
カクカクと、水色っぽくみえるような──……。
「──っ!!」
これって……!?
「……アナライズ、カード……?」
『────照合しています……確認。
────アナライズカードと非常に酷似した媒体と判明。
────流路媒体との互換性を確認しました。』
『>>>後輩ちゃん、よく聞いてくれ。この階段の入り口のロックにも、アナライズカードとよく似たデバイスが使われていた』
──!!
『>>>こっちの世界で、こんなモンがある場所は珍しい……そうだね?』
「えと……あ、アンティ?」
……えらいモンが出てくるじゃーないのよォ……!
「……私は所詮、田舎の食堂屋の娘よ。世の中の事に詳しいかって聞かれたら、そんなでもないと思う。でも、生まれてこの方15年間、"アナライズカード"なんてモンに出会ったのは、クラウン、あんたが生まれる前日が初めてよ。こんな妙ちくりんなモンは……たったひとつを除いて、私は知らなかったわ!」
『────:……!。』
『>>>……! "たったひとつを除いて"……? 』
アナライズカードと同じ材質を使って、
隠されていた階段、か……。
なぁるほどぉ。
クラウンと先輩が、変な感じになるはずだわ。
『>>>後輩ちゃん……? これに似たモノを、他に知っているって……?』
「なぁーに言ってるのよ先輩……あなたも、よぉく知ってるものよ……」
薄暗い階段の中を、壁に手を沿わせながら降りる。
私たちの手の装甲が、ギャリギャリと、
壁に張り巡らされたアナライズカードを擦った。
──下の部屋にあったのは、
私の世界には、似つかわしくないものだった。
……──ブォおン……!
私たちが部屋に入ると共に、それは起動した。
「……これ」
「光ってる……」
大きな、横長の机。
その上に、展開されている。
言葉で言い表すなら。
──" アナライズカードでできた、光のパソコン "ね……。
「……イニィさんが、お店の売上を計算してるキカイに、ソックリねぇ。こっちの方が、断然デカいけどさ……?」
『────私は……驚愕を提唱します。』
『>>>こんなモンが、"こっち"にあるなんてな……』
「アンティ……これ、何なんだろうね……?」
〘------不思議な形してるのんな──☆〙
〘#……驚いたな……明らかにキーボードとディスプレイが存在しているぞ……〙
"向こう側の世界"の概念に近い形を持つキカイ。
先輩と先生は、かなり驚いてるようだ。
私は、違うことが気になっていた。
「……これ、かなりまずいわよ。この部屋を使ってた人は、確実に大罪人だわ……」
『────アンティ。詳細の入力を求めます。』
『>>>どっ、どういうことだぃ!? なぜそんな事が言いきれる……!』
「ほら……ソコ、見て……」
金の指で、デスクの側を指す。
〘#……これは、ハードディスクの役割を担っている箇所か……?〙
「これ、ここのアナライズカード、歯車のカタチしてるでしょう」
「ほんとだ……アンティの出す歯車に、そっくりさんだね!」
マイスナが、木で出来た箱のようなモノを触ろうとする。
力の加減を誤ったのか、フタのような物が外れた。
──ガコッ……。
「あっ……」
「……っ! 決まりだわ……」
カチコチカチコチカチコチカチコチカチコ
チ チコチカチコチ チカチコチカチ チ
チカチコチ チコチ チカチ チカチコチ
チカチコ チ カチコチ
チカチコチ チ チ チカチコチ
チカチコチ カチコ チカチコチ
チカ チカチコチ コチ
チカ チカチコチ コチ
チカチコチ カチコ チカチコチ
チカチコチ チ チ チカチコチ
チカチコ チ カチコチ
チカチコチ チコチ チカチ チカチコチ
チ チコチカチコチ チカチコチカチ チ
カチコチカチコチカチコチカチコチカチコ
この重なり合う透明の歯車を、私は知っていた。
小さい頃、イタズラをして、よく覗いたからだ。
「この光のパソコンの材料ね……、"じかん箱"を改造して作ってあるわ。しかも、ひとつやふたつじゃない……」
『────概要理解。』
『>>>……! あ、そうかっ、アレかっ……!』
〘#……"時間箱"だと……?〙
『>>>こっちの世界では、ほぼ唯一の"時計"ですよ。ほら、昔、帝国の城の中庭にもあったでしょう?』
〘#……! 思い出したぞっ。異世界にしてはデジタルな印象を受ける道具だと、感じた事がある……!〙
〘------;……☆〙
「アンティ……? えと、それって悪いことなの?」
「っ! 当然よ……。"じかん箱"の術式は、教会が管理してる、めっっちゃくちゃ貴重な術式よ。街に与えられる量も管理されてるし、破損させたら問答無用で牢屋行き……」
「そうなの!?」
「ええ。親も、絶対壊すな! って子供に教えるし……学院の初等科でも生徒に教えるわ。子供でも、誰でも知っていることなのよ。でも……」
改めて、暗闇に規則正しく浮かび上がった、
光の板たちを見る。
「……この透明のパソコンは、明らかに複数の"じかん箱"を改造して作ってあるわ。重罪よ……。バレたら即刻、しょっぴかれるわ……」
『>>>なるほど……きみが昔から知っていた"アナライズカードに似たモノ"ってのは……』
『────"じかん箱"を対象とする。』
……くらくらするわね。
なんで、こんなモンがこんなトコにあんのよ。
なんつったらいいか……。
見つけなきゃ、よかった……。
「マイスナ……アンタがここに住んでたって、誰か知ってる?」
「え……? えと……」
マイスナは、イマイチ、ピンと来てないみたい。
「わ、わたしは逃げる時、古いお屋敷があるかもって……」
「……。アンタが思ってるより、コレはヤバい。この世界の誰もが、この行為を重罪だと、理解しているの。クラウン!」
『────は:はい。』
「……このお屋敷、出て行く時に格納するわよ」
『>>>な! どうしたんだぃ、急に!』
「あのねぇ……どう例えればいっかなぁ……。先輩たちの感覚に例えると、"麻薬の工場"見つけたようなモンなのよ!」
『>>>……っ』
〘#……君たちにとっては、そこまでのこと……なのだな?〙
「コレのそばに、マイスナは2年もいたの……」
「……! アンティ……」
「バレたらヤバいわ……確実に……追求される……」
『────:……。』
そしたら……調べられる。
"紫電"の存在が、調べられてしまう……。
ポタタづる式に、なにもかも……!
いやだ……っ!!
「せっかく……せっかく2人で居られる、居られるのよ……! こんな、こんなモノ、発見されてたまるかぁ……」
「アン、ティ……」
隠し通さなければ、ならない。
ぜんぶ、徹底的に。
それは、正義なんかじゃない。
偽善ですらない!
ただ、私の意志なのだ──。
『────わかりました。』
『>>>クラウンちゃん!?』
『────朝になり:ここを立ち去る時:
────この屋敷の格納を実行します。』
「……ありがとう」
「……」
マイスナは、じっとこっちを見ている。
「……なぁに?」
「……なんか、ヤダな……」
「……! ど、して……?」
「わたしのためって、わかるよ。でも……」
悲しそうな、私の敵。
「……わたしのために、アンティが悪い事してるみたい……」
「……そぅね。そっかもね……」
「あ……! アンティは、正義の味方!」
「……違うわ」
「!」
「わたしは、アンタの味方。そして、義賊の二代目よ」
「……っ!」
「間違っちゃいけない。私は、正義の味方なんかじゃない」
「……!」
「ふふ、アンタが狂銀で、私がその味方をするなら、世界の敵は、私かもね?」
「アンティの、バカ……」
マイスナは悲しい顔をして、それでも私に近づいてきてくれた。
よかった……。
この子に拒絶されたら、冗談抜きで、
私が狂うかもしれない。
「……クラウン。この光のパソコンだけでも、さきに格納できる?」
『────調査を要します。
────主要機関がどの程度:根を張っているか:
────格納範囲を計測します。』
『>>>手伝うよ』
私とマイスナの髪が、光り始めた──。
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