雪山頂上決戦(再) さーしーえー
(●´ω`●)さしえ増えたん♪
────現在、ヴァルター山の上空10000メルトルテ。
サンドイッチ飛行ユニットを解除して、
自然落下を開始する。
──ジャ……コ…………ン!!
「「 ぷはぁ…… 」」
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ソルギアブーストの音は超うるさいから、
パートリッジの街の人に怖がられる可能性大。
魔物と間違えられても困る。
今はあの時みたいに、雷も吹雪も降ってない。
あまり地表の近くでは使わない方がいいかな?
静かに行こぅ。
──ごぉぉぉぉお! と、身体に当たる風。
先輩がアナライズカードで、頭を中心に保護してくれる。
とっとと降りたいので、マイスナと頭を下にして"気をつけ"する。
──はやい。
昔は30メルでもチビったけど、
もう別に10000メルくらい、どうってことないわ。
力抜きゃいいのよ力抜きゃ。
深呼吸、深呼吸。
……これ、クラスの子が同じ状況になったら泣くでしょーね。
『>>>いやぁ……泣くだけじゃすまないと思うけど……』
『────念のために:前もって減速を開始します。』
〘#……賛成だ。このまま落下すると加速し続けてしまうぞ〙
〘------ウチの羽根;出すのんな?? 出すのんな???☆彡〙
む……それは、おっかないわね。
マイスナとアイコンタクト。
くるり……と、身体を半回転させる。
足が下にくる。
──! あっははっ! マイスナ、その髪型!
ぜんぶ上に流れてるわよ!
あっははははははははっは!
お箸で掴んだ麺みたい!
え? わたし?
……うん、まぁ……わたしもか。
──ガチャ、ゴン!
──ギィイン!!
私とマイスナの足、あと脇腹と背中から。
ヨロイの装甲が開いて、
中の空間からノズルが、にょきっとする。
──シュォゴォォ──……!!
──シュォゴォォ──……!!
これは炎じゃなくて、空気ね。
徐々に勢いを増して、噴き出し始める。
ソルギアよりか音は少ないし、何より光が無い。
──オオオオオぉぉぉぉぉ!!
エアブーストで速度を抑えていくと、
独特の浮遊感がある。
不思議。落ちているはずなのにね。
これ、水中でやったら面白そうよね。
「クラウン……もうちょっと後でいいんじゃない? 減速するの」
『────現在:今までの活動の中で:最高高度より地上を目指しています。』
「……つまり?」
『>>>……"ちょっとくらいビビらせろ"、ってことさ。だろぅ?』
『────……:概ね肯定します。』
「ふふ、心配性ねぇー」
ま、慎重かつハートフルな相棒に、
速度制御は任せましょうか。
純粋に景色を楽しむことにする。
あの時とは違って、よく晴れている。
真上から見た山肌は、光と影のコントラストが美しい。
周囲360ドの、空と大地。
その中を、私たちは、落ちる。
世界は、広いわね……。
……この光景を見られるのは、限られた人だけかも。
こんなとんでもない状況で、
すぐ横に、絵本のライバルさんがいる滑稽さ。
私たちは、空で手を繋いだ。
「……からだ、どぅ?」
「……うん。別に今は、凍ってないよ」
「そっか……」
んで、なんで私の身体が発火して、
マイスナの身体が凍結したか、って話になるワケだ。
「もぉー、ぶっちゃけて言うけどさ! 凝りすぎたんだってばぁー!」
「わっ、私もそう思います……」
『>>>ははは……マジかぁー』
〘#……返す言葉がないな……〙
どうやら、高密度のデバイス機構を使い続けると、
けっこう早く身体に変化が起こるみたい。
わたしが熱ダレ。
マイスナが凍結。
めっちゃいっぱい歯車を使ったエンジンや、
鎖とか磁力とか組み込みまくった推進装置とか!
そういうものは、ああなりやすい……ってことよね?
……よーするに、複雑すぎるキカイを造ったら、
それだけ運用期間が短くなるデバイスが出来るってことだわ。
いやまぁ……さっきみたいに、お互いの体温ぶつけ合うのも手だけどさ……ううむ。
ひゅるるるるるるるるぅ〜〜〜〜──!
「とにかく! さっきのエンジンとデバイスは封印なさい! もーちょっと簡略化したデバイスにすること! 飛ぶ度にマイスナとサンドイッチになってたらアホみたいじゃないのよー!」
「っ! わ、私は別に、いいよ……?」
『>>>くっ……男子チームの夢の結晶が……』
〘#……無念だ……〙
「にょきっと!」
「くゆくゆ──♪♪」
……あら、動くぬいぐるみチーム……?
さっきの飛行機のコックピットが気に入ったみたいね。
もぉ、私が乗りたかったっての。
なんでこっちがデバイスの核にならなあかんねや。
あれってその、エンジンの場所でしょ……。
……。
サンドイッチ・エンジン……。
は、はっは、ははは……。
「にょや! にょや!」
あ、こら。あんま暴れんな。
おっ落ちるわよ、もー!
『────アンティ:
────山頂接地まで:後100メルトルテです。』
「おーらい、……うあっ──!?」
バサぁぁあああ……!
マイスナの背中から、
いきなり白い羽根が生えて、ビックリした──!
ろ、ローザの体流を使った、純白の羽根っ……!
背中の鎖の輪っかから出したのか……。
……綺麗ねぇ……。この子の銀の鎧と、よく似合うわ。
はは……この天使みたいな翼が、
ヒールスライムの一部だとは誰も思うまぃ……。
ふわ、り……!
「……風に乗るの、うまいね……!」
「えへへ……アンティも、やる?」
「えっ。や、私はいいわよ。エアブーストで!」
「遠慮しない。ローザ、アンティにも羽根だして!」
〘------了解のんな──☆☆☆〙
『────えっ。』
きゅいん……バサァぁぁああ──!
「わ、わっ!?」
「クラウンさん、ブースト切って」
『────む……:了解しました。』
シュオオオ──……、ピタリ。
おわわわっ!
すごい!?
今……この羽根の空気抵抗だけで、滑空しているの!?
怖くなって、マイスナのもう片方の手も掴む。
「ふふふ。アンティ、慌ててる!」
「ちょ、マイスナ! 手! 離さないでね! 1人じゃムリだかんね!?」
「大丈夫だよぅ。アンティなら、すぐ慣れるのにぃ」
だだだ大丈夫じゃないわぃ!?
いきなり羽根はえて、すぐに動かせるかぁ!
まだこわい! まだ怖いから!
『────着地まで:後40メルトルテです。』
……あ、そんなもんか。
ドニオスの塔と同じ高さね。
いやいやいやいや! まだ安心はできぬ。
下は雪だし、ドニオスみたいに上手く着地は────、
──ぴょん!
「──にょきっとぉぉおおおおおおおぉぉぉぉぉ ……」
…………
「……………?」
「……………?」
「……………くゆ?」
あの子、何を嬉しそうに飛び降りとんのや………?
……。
……雪、初めてなのかな……?
「とと、と……」
「もうつくよ」
……ギュ……!!
…………ギュギュ……!!
私たちも、ほどなく山頂付近に着地する。
おーっと、やっぱり足場は悪いわねぇ。
雪にブーツがめり込むわ。
で、あのうさぎさん、どこや。
「────にょぷっとぽ──!!!!!」
うん、元気そうね。
体、埋まってるわね。
耳だけ雪の上に出てる。
楽しそうね。
『────体温調整機構を展開。』
『>>>おへそやらの保温は任せな。風邪はひかせないよ』
〘------そこは"俺が温めてやるぜ……"とか言うべきのん☆〙
『>>>おまぇ何言ってんの?』←素
『────:っ!?。』
「あ、お願い。ふぅ……同じ場所でも、晴れてるだけで、かなりイメージが違うわね。さぁて……どうやって探そっか??」
「んしょ……こっ、この雪の中から、剣を探すんだよね……?」
そーなのよねぇ──。
う──ん、見事な銀世界。
斜めの滑らかな雪の地面。
ひっっろいなぁ──。
「……で、先輩? どーなのよお?」
『>>>う、うーん……あっちの方だと、思うんだけど……』
「アバウトねぇー」
『>>>しっ仕方ないでしょっ! 今みたいに正確な計器系デバイスなんて無かったんだからぁー!』
女の子みたいな口調で言い訳しないの。
しっかりしてよね、パパぁー!
……まぁ。
ある程度たいへんだという事は、
すでに予想済みっちゃ、予想済みなのよね……。
「……ま、地道に雪の下のアナライズスキャンでもするか。ね、マイスナ?」
「がんばる!」
〜〜 3ジカ後 〜〜
「……帰りましょ」
「お腹減った……」
見つかるかぁ。ばかぁ──。
〘#……そ、そこを何とか。そこを何とかだな……ッ!?〙
「だぁ──って先生!! ここですよ!? このでっっっっかい雪山の中から、剣一本だけを探すんですよっっ!?」
「──ぷぁ!?」
寝転びながらバタバタして、綺麗な雪が宙に舞う。
あ、マイスナ、口んなか入った?
ごめん。
『────現状までは:それらしき反応がありません。』
『>>>おかしいなぁ……あれは山頂に近かった。流石に、ここまで探して無いってことは……』
〘#……う、ううむ……雪崩などで押し流されているなどは……〙
うっへぇ、さらにやる気なくなってくるぅ……。
「にょっきにょきぃ〜〜♪♪♪ にょきっとっとっと!」
「くゆくゆぅ〜〜♪♪♪」
お……。
うさぎとおおかみが追いかけっこしとる……。
元気でいいわねぇ……。
あ、髪濡れちゃう……。
上半身を起こして……。
ヒュ──……、──ボスンッっ!
「──ふぷぁッッ!?」
私のツラに、雪玉が当たって砕け散る。
……。
…………?
「よいしょ……よいしょ……にぎにぎ……。──えぇいっっ!」
ヒュ──……、──ばちャアッッん!
……。
……んぅ〜〜……?
なぁに、マイスナ。
なんで私にぃ、雪玉なげたのかなぁぁ〜〜?
おっ、これは戦争かな??
そんなに白黒つけたーい?
二回、ドタマにクリーンヒットしたわよ?
お姉さん、そろそろ怒るわよぉ〜〜?
ほら、今すぐ謝ったら許してあ────……、
「──ええぃっ!」
ヒュン─────ボンブォォッッ!!!
「──っぱ! おらぁ!! 覚悟しろてめぇえぇえ──!!!」
「きゃ〜〜〜〜〜〜☆」
〜〜 1ジカ後 〜〜
「……はぁ、いっぱい遊んだ。帰ろ」
「お風呂、入りたい……」
クルルカン VS オクセンフェルトの、
雪合戦頂上決戦(山頂だけに)を行った私たちは、
全体力とやる気を使い果たした。
こんだけ空気薄い中、本気雪合戦したかんね。
後悔はない。
〘#……………がっくり〙
『>>>あ、あのっ、日を、日を改めましょう! もうすぐ日が暮れちゃいますし!』
「──えっ!?」
「──ぷぁー!」
あっ、また雪とんだごめん。
勢いよく起き上がり、空の色を確かめる。
かァー! かァー!
「ゆ、夕方、だ……と」
「もー、アンティひどいよぉ」
オレンジ色の雪肌。
ちょっと待て。
今日どこ泊まんねん。
『────『>>>あ』。』
これだよ。これですよ。
たまにこゆことあるよな。
今はパートリッジの街に入りたくないっつってんでしょ。
遊びまくってた私たちも悪いけど、
ちょっと一声かけてくれてもいいんじゃないの新婚さん?
『────も:申し訳ありません。』
『>>>あ、これヤバいね。雪山野宿じゃん』
これですよぉ。
この『>>>別にそこまで深刻じゃなくね?』的な反応ですよ。
ばかやろぉぉぉお!
ちょちょちょ、これどうする。
いや、マイスナが狂銀モードで街に入るのはちょっとNGでしょーよッッ!?
「あ、アンティ……」
「うぅ……どうしよ……? さっきのサンドイッチで空飛ぶ……?」
「あ、あのね……?」
「え……?」
「もし良かったら、ね……? 私がずっと隠れてた、お化け屋敷みたいな家が、あっちにあるよ……」
「……! それって……!」
マイスナが二年間、住んでいた、
氷のお屋敷にお世話になる事にした。
(´∀`*)にょぷっとぽー!!!










