生きる先にある世界 さーしーえー
キリ番連投!!!ヽ(`Д´)ノ+
スタンディング:バイ!!!
recovery・・・complete.
ready?│
#
私は、
罪人だ。
度し難い。
私に与える、
救いなど無い。
彼女を殺しかけ、
それを、彼に託し、
最期に彼に殺させた。
夢の中、少女を守った。
私の、最後の、夢だった。
〘#………… 〙
空間がひらける感覚がし、私は目を開けた。
年甲斐もなく、呆気に取られる。
私は呼吸というものを、
覚えているかどうか、
確認するように、
息を吸った。
〘#すぅ────、ふぅぅ────……〙
胸板が、動く。
────コォ──ンっ……。
〘#──!〙
実家の道場の庭で聞きなれた、
竹と石が打ち合う音。
ここには、よもや鹿はいまい。
〘#……、……。美しい……場所だな……〙
庭園に、いた。
幻覚ではない。
そう、認識している。
これは……松にしか見えぬ。
足元を見ると、中々の大きさの、
瓢箪型の池に架かる、石の橋の上だった。
池には、色取り取りの鯉と、
美しい緑の水草が揺れている。
突然の光景に、動くのを戸惑ったものだ。
ゲコこ、ゲコこ……。
〘#……む〙
この蛙や鯉は、生きているのだろうか……。
しゃがみ、小さな鮮やかな緑の蛙に、指を伸ばす。
背中に弱い毒があるだろうが、今は好奇心が勝つ。
──ピュ! トポンっ……。
逃げられてしまった。
〘#ぅむ……。ここは……あの世なのだろうか〙
異なる世界に飛ばされ、
教え子に申し訳がたたぬ事をした。
このような場所に来る事が、許される身分ではない。
それとも……あれは夢だったのだろうか?
ここは、何度見渡しても、日本の庭園に見える。
自らの長い後ろ髪を、手繰り寄せる。
やはりか。
〘#白銀の髪、だな……〙
白い砂利の先に、朱色が強い建築が見える。
やはり和を感じさせる造りで、
あれはまるで遊廓のような色合いだ。
〘#……地獄なら、私は閻魔に裁かれねばならん〙
美しい庭園を後にすることにした。
渡りに上がる時、白衣を着ていた事に気づく。
ここに来て……昔の仕事着とはな……。
少々、苦笑してしまう。
先程、橋でしゃがんだ時の汚れはないようだ。
革の靴を脱ぎ、石の上に揃えた。
なぜ、向こうの世界の服を着ているのか疑問だが、
汚い剣士の防具や、氷漬けの体よりかは、
閻魔の印象が良いだろう。
私の好きな、粗く編まれた靴下を床材に滑らせ、
庭園と障子の間を進んだ。
〘#やはり……美しい場所だ〙
太陽のようなものが光っているが、
空は、いやに白い。
この光の屈折は、なにか妙に感じる。
庭の外は、囲いがあり外側が見えない。
美しい庭が視界に続く。
──っ、っ、っ。
剣術の真似事を、
前の世界でも後の世界でも長年してきたせいか、
知らず知らずのうちに足音を潜める。
角を曲がる時に、僅かに覗き込み、警戒する。
ふ……無駄なことかもしれんな。
歩く。
渡りの角を、あてもなく。
曲がる、曲がる……曲がる。
鳥居があった。
神の御座す場所か?
ぅ、む……。
まるで、迷路だ。
……?
遠くで、何かが動く気配がしたが、
死角にあり、確認できない。
大きな物が、空を動いているような……。
いや……。
進むしかない時は、兎に角動くに限る。
「……にょきっと?」
〘#……〙
兎のようなものに出会った。
ぴょんぴょん。
「……にょきっとな?」
〘#……〙
とても変わった鳴き声の兎だが、
何やら、喋りかけられたように感じなくもない。
丸々と太っている。
昔から、生き物には嫌われる口だが……。
手を、ゆっくりと、伸ばす。
「にょ……、にょ?」
〘#……〙
てっきり逃げられると思ったが、
丸々と太った兎は、そこにいた。
……フワ。
……。
……ナデナデ。
「にょっきー♪」
〘#ほ……ぅ〙
生まれて初めて、まともに動物に触れたかもしれぬ。
このような感覚だったか。
ふ、裁かれる前に、良い経験をしたと思う。
「にょっきゃー♪」
〘#人懐っこいものだ……〙
赤い手袋をしているということは、
ただの兎ではないだろう。
神の遣いか何かだろうか。
「にょっき! にょっき!」
〘#……? 何を指さしている?〙
兎のよく発達した前脚の指さす方を見ると、
庭の木の上で、フワフワと揺れる白い物が見えた。
「くるるぅ……Zzz」
小さな犬のような生き物が寝ている。
いや……キツネか?
耳や尻尾の付け根に、花が咲いているように見受けられる。
「にょんやぁ~~……」
〘#……おろせばいいのか?〙
「にょっき!」
……私が、こんな頻度で動物に触っても大丈夫だろうか。
次は、逃げられるやもしれん。
が、今から閻魔か神にでも会おうというのだ。
ここに来て、恐れる事もない。
石が埋め込まれた足場に靴下で降り、
そっと、枝の上の犬を抱きかかえることにする。
「……くる、くぁ?」
〘#……兎が迎えに来ているぞ?〙
「にょ! にょきっとな!」
小さな白い犬は、キョロキョロしていたが、
なんと私の腕の中で、また眠ってしまった。
「くるるぁ~~Zzz」
〘#……〙
「にょきっと……」
私に、このような日がくるとは……。
妻とは子供に恵まれぬ内に、
ああなってしまったからな……。
ふむ……。
──ちょいちょい。
「にょきっと! にょきっとな!」
〘#……こっちか?〙
兎が白衣の裾を引っ張るので、ついて行くことにする。
どうせ、何処かはわからぬ。
小さな犬を抱いたまま、足音を殺すのも間抜けである。
おおらかに歩くこととする。
しばらく行き、やはり景色は美しく。
突然に、小さな犬は飛び降りた。
「くるっ☆」
よい瞬発力である。
腕を蹴られてしまった。
「にょっき! にょきっとな!」
トタタタタ……。
ぴょんぴょんぴょんぴょん……。
二匹とも、行ってしまった。
まるでお礼を言ったような仕草をした兎は、
あちらの部屋を指さしていたように思える。
兎にならうことにした。
開いた障子から、中を覗く。
〘#……!〙
黒い、着物のご婦人がいた。
私から見て、左奥に向き、
小さな飴色の木の机の上で、
何やら書き付けているようである。
墨と筆を使う様は、やはり一昔前の日本を思い起こさせる。
私は随分と気配を殺してしまったらしく、
障子から半身をずらすも、ご婦人は気づかなかった。
……。
致し方ない。
声をかける事にする。
〘#すまない……〙
【 ──ハッ……!? 】
たいそう驚かせてしまい、
びちゃん、と、墨が飛び散る。
……悪い事をした。
────シュ!!!
殺気を感じ、手が癖のように出た。
──パシッ……!
【 ──な!? 】
〘#これは……〙
しゃんらしゃんら……、
しゃんらしゃんら……、
掴んだ細腕には、
黄金の爪をあしらった装飾を纏っていた。
ずいぶんと鋭利な刃物に見える。
護身用の道具だろうか。
黒髪に重なり、金の簪が揺れている。
……! 角がある……!
〘#あなたは……鬼か……?〙
【 く……! 離せッ!! 】
──シュパッ──……!
振り払われる手を、無理に止めず、離す。
また、爪の薙ぎが来た。
躱してしまう。
鬼のご婦人は、自らの腕の重心でよろめいた。
【 ……と! 】
〘#──…… 〙
パシッ。
腕を掴み直し、関節を傷めぬように引っ張る。
足が付いた音がした。
離す。
【 ……! 】
〘#……謝罪したい。驚かすつもりではなかった。書き物を、ダメにしてしまったな……〙
【 む…… 】
頭を下げる。
彼女が警戒するのは、当然である。
私がした事は、不法侵入に間違いない。
【 貴様……! 何処から湧いて出よったき! 】
〘#……信じられぬとは思う。気づけば……ここに居たのだ……〙
【 なに……? 】
言葉は流暢に通じる。
やはり、日本人に見える。
少し、訛りが強いな。
〘#名乗らせていただきたい……。私は氷帝 銀我という者だ〙
【 ──っ!? 】
〘#その、恐らくだが……私は死んで、ここに来た〙
【 !! あ、あんの……! 食らわずぅぅ……!! 】
……?
"食らわず"……?
〘#済まない事をしたと思う……望む形で謝罪したい〙
【 ……かまわん。事情は概ね理解した 】
〘#? どういう……〙
【 ある程度の情報は、俺っちらにも共有されとる……せやけど、まさか、あんたはんまで囲うとったとは……言うとけっちゅうんじゃ、ボケぇ……! 】
目の前の角のご婦人は、何やら悪態をついている。
自らを、"俺っち"と呼ぶとは……。
どこの地方の方言かは、よくわからない。
しかし、この化粧に、簪……。やはり、
まるで"花魁に角が付いた"ように見えてしまうな……。
【 やれやれ…… 】
〘#……私は、どうすればよいだろうか〙
【 か。しゃあない。案内したる。ついてきぃさい、せんせぇ──……? 】
〘#……っ!?〙
裂けるように笑ったご婦人は、
私の事を、"せんせぇ"と呼んだ──……!!
誰から……! 私のことを……!?
いや、それとも。
私の"前世"など、
地獄の鬼には、全てお見通しという事か──……?
【 はよこい! 】
〘#……わかった〙
鬼のご婦人は、ドタドタと歩き出した。
乱暴に簪が揺れる。
ついて行くしかないだろう。
ドタドタドタドタ……
トントントントン……
【 ……よう、避けれたな 】
〘#……む?〙
【 俺っちの爪じゃ 】
〘#ふ……生前、愚かな剣術をやっていた。父が酔狂でな〙
【 ほォー……さよか。あんな綺麗に避けられるた、思わなんだ……。さぞ、優秀なお侍やったんやろて 】
〘#く、冗談ではない……私の流派は、本当にどうしようもないものだ〙
【 何故に? 】
〘#……氷のように、成す〙
【 は? 】
〘#斬撃を、ゆっくりと凍る水から動きを得た型で稽古するのだ〙
【 ……か、かかかかかか……なるほどの。聞いたぶんではイカれてやがる 】
〘#何やら聞こえはいいが、要するに……子供が遊びで技を考えるだろう。アレを突き詰めたものだ〙
【 か。じゃが、俺っちの爪は避けよる 】
〘#あなたを子供扱いにするわけではない。……その爪は、自前なのだろうか〙
【 ……とれはせんよ 】
〘#失礼した……〙
歩く。
──。
〘#……くくっ〙
【 なんじゃ 】
〘#いや、済まない。妻の実家に初めて行った時、このように屋敷の中を連れ回された〙
【 ……奥方は 】
〘#……病で〙
【 そうか…… 】
歩く。
──。
〘#……失礼なことを聞く〙
【 ……いやな聞き方やの 】
〘#あなたは鬼なのだろうか〙
【 ……── 】
ご婦人は、止まり、振り向いた。
怒らしたようだ。
【 ……確かにそぅ、呼ばれておったわ 】
〘#……二度と、あなたを鬼とは呼ばない〙
【 か…… 】
振り向き、前に進まれた。
さきほどより、歩幅が広い。
〘#……〙
【 ……おまんさんの世界にも 】
〘#……?〙
【 鬼は、いたか 】
〘#……〙
ドタドタドタ……
トントントン……
〘#ああ。だが……あなたのように、美しくはない〙
ドタっ……。
〘#……足を捻ったのではないか?〙
【 チッ…… 】
何事もなく、歩き始めた。
無事なようだ。
〘#ふ……。今から私は、閻魔大王に会うのだろうな?〙
【 ──ッ!! 】
ピタッ、くるり。
また怒らせたようだ。
【 こ ん な 所 に 、 閻 魔 は お ら ん !! 】
〘#……、……?〙
ずいぶんと、幼さを垣間見るような大声を出された。
はて……、何がいけなかったのだろうか……。
【 ふ、ふんっ!! 】
〘#…………?〙
まずい事をしたようだ……。
『──ミャ?。』
金色の猫の妖怪が浮いている。
『──ミャミャミャ! まさか:その方は……!』
【 ……おーぅ。童、呼んでこぃ 】
『──すぐそこミャ~~! ま:行くミャけど。』
スぃ~~っ……。
猫は化けると、喋るだけではなく飛べるらしい。
【 ……ほれ、行くぞ 】
〘#あ、ああ……"童"とは? 酒呑童子かね?〙
【 かっかっか! あれは鬼の頭領の器ではあらはん! じゃが、盗賊、という所はおうておる!! かっかっかっかっか!! 】
〘#ふ、豪快に笑うものだ……〙
最後に、機嫌をとれたらしい。
歩く。
──。
多くの気配がある。
あれは……居間か。
障子の向こう側から、声が聞こえる。
『>>>う、そ……だろ……!?』
この、男の声は……?
──どだっ、どだだ、ゴツン!!
『>>>いってぇっっ!?』
< 落ち着きぃ >
{{ そこまで、来てるの? }}
『──ミャ。』
『────来ているようです。さぁ──。』
……まさか。
【 ほれ……せんせぇ。おうてこぃ 】
〘#…… 〙
──ダ、ダ、どだんっ!!
『>>>……──!!』
〘#────〙
渡りに転がるように出てきた男は、
金の髪が長く、
左手には、金の刺青のようなものがある。
だが。
よく知っている顔だった。
忘れる……わけがない。
……。
やはり、ここはあの世らしい。
お前がいるのだからな。
『>>>ははは……、マジかよっ……!』
近づく。
彼が、破顔した。
『>>>マジ……かよ"ぉ"……!!』
なんて顔だ。
やれやれ……。
お前は、どうやら、
私を、恨んでいないらしいな──……。
『>>>あ、あ……う"わぁ……!』
手をふらふらと突き出してきたので、
当然、それを両手で、握り返す。
お前にこの後、文句をたくさん言われそうだ。
お互いに、もう死んでいる。
これは、妙な挨拶かもしれん。
だが……それでも、言わせてくれ……!!
〘#……デカくなったな……! カネトキ……!!〙
『>>>せん、せぇええ……!!!』










