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さんみいったい。さーしーえー

久しぶりにいっぱい描きました(●´ω`●)

↑あれぇ




 

 ────私は、守られた──……。




 ボロ雑巾のように寝転びながら。


 目の前には、赤く滲む窓。


 エラーコード(流路断線情報)か、血かは、もうわからない。


 彼女と、離れてしまった。


 噴き出す光の勢いが、方角を示している。


 夜明けのように、光っている────。




 ────OOOOOOOOOOOOOOOO───!




 ゆっくりと、(まばた)きをする。


 破片が(まぶた)に引っかかり、痛い。


 金が、銀に守られたんだ。


 世話はない。


 自分の身体の動かし方を忘れてしまったみたいに、


 何も、動かない。


 視界に映る金の腕は、私に接続されているだろうか。


 装甲は剥がれ、龍の筋組織が見えている。


 寒い。


 なぜ、こんな所に寝転んでいるのかな。


 私が街を飛び出したのは、こんな事をするためなのかな。


 憧れの人と、砕きあって……嘆きあって、


 助けてもらって……。


 私は────……。




 ──目を、閉じる。



 ────。







『────それで:良いのですか。』


「──、…… 」





 幻聴かどうかさえ、わからない。


 口が動いているのか、わからない。


 でも、答えた。




「……そ、の質問は、卑怯、だわ……。

 誰も……"それでいい"なんて、言わないよ……」




 凍ったような身体の中で、(のど)が震える感覚。




『────そうではありません。

 ────私は:あなたの意志を聞いています。』


「…………意、志?」




 閉じた瞳を、僅かに開く。


 金色のまつ毛を、光が()で、


 キラキラと、涙に乱反射する。




『────あなたは:戦ってきた。

 ────自分のために歩き出したはず。

 ────でも:誰かを助けるために戦い続けている。』




 その声は、とてもハッキリと耳に届いた。




『────本当は:

 ────あなたは自分を大切にして:進むべきでした……。

 ────そうではないと:あなたは言うかもしれない。

 ────でも:あなたは多分……自分を犠牲にしてきた。』


「……──そ、……」


『────だから:私は問うのです。』




 声の方に、首を動かす。


 ゆっくりと。




『────あなたの夢は何ですか(・・・・・・・・・・)

 ────あなたの本当にしたい事は:何なのです……?。

 ────それは:誰からも好かれる英雄になる事ですか。

 ────それとも:郵送配達職(レター・ライダー)になって:想いを届ける事?。』


「……! わ、たし……?」


『────難しく:考えないで。

 ────私が聞きたいのは────"あなたが一番、したい事"。』




 ……っ。


 したい、こと?


 ……。


   私が、今、


     一番、したい事。





 ────この眼に、焼き付いている。


 ────あの街で見た、あの子の少し照れた笑顔。





「……買い、物……に」


『────……!。』


「いっしょに……買い物にいき、たい……」


『────……。』


「ご飯を、いっしょに……食べ、たい……!」


『────……。』


「──、ふつうに……!

 笑いあって……手を繋いで……、

 おしゃべりして────……! 」




 そう。


 なにも、特別なんかじゃなくていい。


 当たり前を、したい。





「女の子、同士……! 楽しく、いっしょに……!」


『────……。』





 ただ。


 あの子と、


 わたしで────……!




「 ──いっしょに、世界を……生きていきたい……っ!」


『────……。』




 そうだ。


 そうだよ。


 だから。


 私は……!


 こんな所で、


 へたばってなんか、いられない─────ッ!!!




「──うぁ……!、 ぅぅううおおあああああああああぁぁぁ────!!!」


『────……!!。』




 張り裂けた身体で、立ちあがる。


 激痛。


 咆哮は、苦痛だけではない。


 多分、骨が砕けた足を、


 歯車の骨格で補強する。


 流路を繋ぎ、腕の感覚を、戻す。


 今の私には、それができる。


 人の領域を、逸脱する。


 それでも。


 私の夢は。


 特別なんかじゃ、なくていい────。





「……お願いが、あるの……」


『────:入力を。』


「ぐ、ぅっ……!! ……命を……かけたいのよ」


『────  。』




 痛みに耐えながら、目を瞑り、


 相棒に話しかける。




「あんたは……嫌がると思う。

 あんたは、いつも私を守るから。

 でも……これだけは、ゆずれないのよ……」


『────……。』


「ここで……逃げたら……、

 自分を大切にして、後ろを向いたら……!

 私は、私として、生きて、いけないのよ……っ!」


『────……。』




 相棒は、静かに聞いてくれていた。


 痛みに震え、身体を造り返え、そして、立つ。


 私は、ここにいる。




「"非推奨の行動"だって、わかってる……!

 でも、お願い……わたしと!

 私と、いっしょに──……考えて、ほしいっ……!」




 語りかける。


 情けなく、求めよう。


 助けるために、助けられる事を……!


 私は、特別なんかじゃない。


 みんなと、いっしょ……!!


 だからこそ、みんなで────!!




「考えよぅっ……! 私たちのっ……! 最高の(・・・)ハッピーエンドの(・・・・・・・・)方法(・・)をッッ──……!」


『────……!。』




 肩で、息をする。


 立てているのが、不思議だ。


 視覚上のエラーメッセージを、強制的に排除する。


 まだ身体には、破片が食い込んだままだろう。


 白い胸当てだけが、汚れていなかった。


 膝に手をついて、(うつむ)きながら。


 頼む。




「お願い……、ぅぁ……、します」




 ────……。




『────見くびらないで:ほしい。』


「え……?」


『──── 。』



 ぎゅッ、と。


 私の前で、雪を踏み鳴らす音がした。


 頬を、両手が包む(・・・・・)


 ゆっくりと、顔を持ち上げられた。


 ────…… ?



挿絵(By みてみん)

『────あなたの"一番の夢"を:

 ────私が:推奨しないわけ:ないでしょうっ!。』


「   ……──!?」




 あ!


 え!?


 ……あっ!?




「ぇえっ──……? 」


『────付き合いますよ。相棒。』




 ──女の子がいた。


 確かに、ここに立っている。


 少し釣り目で、私より、少し背が低い。


 頭部には、ネコ耳のような、黄金の。


 システマティックなパーツがセットされている。


 閃光の中に揺れる、セブンスティル(七つ括りの髪尾)



「────……」



 彼女だと、わかっては、いる。


 聞きたいことは、いっぱいある。


 でも、最初に、問うた。




「ねぇ、クラウン……」


『────何でしょうか。』


「ぇ……。なんで、私のワンピース着てるの……?」


『────解。

 ────どっかのバカ義賊が:私の新しいボディを:

 ────真っ裸で創りやがったからですよ。』


「ふぇ……?」




 グラ……。


 おとと……。


 バランスが……。




『>>>ちょ……"バカ義賊"は、ヒドくなぃかぃ?』




 ──ガシッ……!!




「……!!」




 肩が、支えられる。


 首を少しあげて見えるのは、


 高密度ホロ積層の、黄金の光の半身。


 この世で最も有名な。


 ──始まりの義賊。




挿絵(By みてみん)

『>>>やぁ……!

 >>>無茶させたね……!』


「……せん、ぱいっ……!!」




 彼は、さみしそうに笑った。


 その身体を見ると、


 至る所が、アナライズカードで補強されている。


 万全では、ない。


 それでも。




「あああ……!」




 意志に関係なく、嗚咽は、漏れる。


 二人だ。




「──クラウんんぅ……! せ、せんぱぁい……!」


『────お待たせしました。アンティ。

 ────私は:ここにいます。』


『>>>……よく、がんばったな。今、止血を開始してる』




 クラウンが、先輩とは反対側の肩を支える。


 私の身体が、持ち上げられる。


 なぜ、こちら側に二人がいるのか、わからない。


 幻なんかじゃ、なかった。




 ────ピコンっ!



「……っ!」



 クラウンが、アナライズカードを表示させて、


 中の情報を読みとっている。


 彼女の、七つの髪束に見える表面を、


 ヒュンヒュンと、光が通った。




『────……戦闘データと分析データを閲覧(えつらん)しました。

 ────やはり……:アレしかないようです。』


『>>>そうか……。くそ……そうだよな……』


「……!! なにか……、なにか方法が、あるのね……ッッ!?」


『────『>>>!』。』




 二人の表情は、あまり明るいものじゃあない。


 でも、それでも……わかるよ!


 "可能性"の、話をしてるっ!!


 私だけでは不可能な事を!


 いっつも! この二人は!


 共に考えて、助け続けてきてくれたっ……!




「いつも……! 頼りっきりで、ごめんねっ……! でもね……っ!」


『────!。』


『>>>……!』


「可能性があるなら……教えてほしいの……っ!

 あの子と、いっしょにいる方法を……!!」




 首を、持ち上げる。


 ──上を向けっ!!


 まだ、終わってはいないわっ──!!




「お願い……! あなた達が、頼りなの……!」


『────……ふふ。弱気ですね……:珍しい。』


『>>>……! は、はは……そうだね。無理もない』


「……? ……!」




 視界に映る、二人の顔。


 私を見て。


 悲しみの中の、笑顔を浮かべ。


 それでも、言ってくれた。




『────ガツンと:命じてください。アンティ。

 ────言ったでしょう? あなたの意志に:

 ────私はどこまでも:付き合うんですよ。』


『>>>こちとら1回死んでんだ。任せとけ。

   もう1回くらい命懸けで、ブチかましてやるさ』


「は、は……」




 ……。


 すごいなぁ……。 


 不思議な、縁だなぁ。


 だから。


 こんなボロボロでも、


 あきらめられないよ。




「クラウン、先輩」


『────はい。』


『>>>なにかな』



挿絵(By みてみん)



「……"狂銀"、助けるよ────!! 」


『>>>……──承った!!』


『────レディ:オーバー(準備完了以外に無し)。アンティ。

 ────オーダーによる:行動指針の優先項目を更新します。

 ────現状分析完了。作戦行動が組み直されました。

 ────バッドエンドごときが食堂娘にケンカを売るなど:

 ────千年早いと:あの娘に思い知らせましょう。』


「……なんか、新しぃクラウン、ガラわるくなぃ……?」


『>>>……きみのせいだろ?』


「……んぇっ!? ……ははっ」




 すぅ─────……、ふぅ──────……。


 ──……いっちょ。


 やったるか……!





「 ……── 運命の歯車になんか、負けないっ……! 」





 きゅぅぅうううううういいいいいんんん……!!!





『────過去の演算計測値より:パターンフレーム抽出中……。

 ────Download:completed.



 ─────────:作戦行動を開始します。』







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