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" ビンタ作戦 "

(*ノωヾ*)おまたんたん♪





 >>>ながい、

 >>>因縁のようなものが、もうすぐ終わろうとしている。






『────"紫の時限結晶(バイオレット)"を使います。』


「説明して」


『────"紫電"は大きすぎる能力値に対して:全身の流路発達が未熟です。暴走を止めるには:全身に大容量の流路を移植:力の伝導を促す必要があります。』


「……紫の時限結晶にも膨大な容量があるのは理解できる。でもソレは、あなたとは違って容積に限界があるんでしょう? それに、どうやって流路の形成を……?」


『>>>……アンティ。"紫電"の髪は先ほど、きみの髪と接続した。きみとあの子の基礎の身体流路形式は、恐らく同じなんだ』


「……!? あの子も、身体中が流路に……!?」


『>>>いや……まだ未発達だろぅ。恐らく、きみが触れる事で変換された』


「!」


『────あなたが触れた瞬間:彼女の流路は一時的に補完されます。そして頭髪部の流路接続に成功し:脳に達した流路により:お互いの記憶が錯綜した。』


『>>>流路の移植を成功させるチャンスは、そこにしかない』


「……それは?」


『>>>……ギガンティック・ヒールスライムは、太古のレエンの城を、流路の模倣という形で再現していた』


「まさか……」


『>>>紫の時限結晶(バイオレット)は、そのスライムの核になっている……親和性は高いはずだ』


『────"しろいふた"で:アンティの身体流路のコピーを形成・移植し:その容量を"紫の時限結晶(バイオレット)"に落とし込みます。』


「……」


『>>>理解、できるかぃ?』


「……"しろいふた"で私の流路を移植して、もうひとつの"時限結晶"と一緒にプレゼントするってのはわかった」


『────要点がまとめられた回答です。』


「でも……"紫の時限結晶(バイオレット)"の容量が無限ではない事の解決にはなってない! それに……流路を彼女にコピーする操作を、どうやってするの?」


『────私が:行います。』


「……え?」


『>>>きみの"歯車法(はぐるまほう)"と、彼女の"電離法(ぷらずまほう)"を……"同期融合(シンクロユニオン)"のスキルを使って、完全同期させる』


「──!!」


『────シミュレーションでは:これにより"赤の時限結晶(スカーレット)"と"紫の時限結晶(バイオレット)"は接続され:どちらも容量無限の存在になります。』


『>>>そのかわり……アンティ。きみのステータスと、あの子のステータスは、完全に共有化される可能性が高い』


「……」


『────私たちが:唯一見つけた可能性です。』


『>>>……』


「……私とあの子を……」


『────同期させます。』


「……」


『────……。』


『>>>……』


「……それをして、クラウン。あなたは大丈夫なの?」


『────わかりません。私……"歯車法(はぐるまほう)"と"電離法(ぷらずまほう)"が:どのような関係になるかは予測不可能判定。』


『>>>でも、もし流路まで共有化できれば……彼女の身体の負担を、コチラ側でも受け持つ事ができる』


「……!」


『────あなたの覚悟次第です:アンティ。』


「……」



 二つの結晶と、大量の流路を媒体として、

 お互いのスキルと流路を同期させる。

 これが、クラウンちゃんとぼくが考えた作戦だ。


 うまくいけば、大量のコピーされた流路は、

 無限の空間に繋がり、二人の少女は助かる。


 失敗すれば……同期した二人は、同時に死ぬかもしれない。

 スキルの一部であるクラウンとぼくは、崩壊するかもしれない。

 

 文字通り、命懸けだ。



「これは……」


『────……!。』


『>>>……!』


「これは、私のワガママだ」


『────。』


『>>>……はは』


「そこは、譲らない」


『────上等です:アンティ。』


『>>>これを、一蓮托生と言うんだ』


「ありがとう……」




 ─────ォォォオオオンン……!!!




 ────"反射速度(クロックダウン)"による思考加速が、解け始める。


 ぼくらの命がかかった作戦会議が、終了した。






 ────雪と、光。



「……もう、大丈夫」



 んなわけないだろ、と思いつつ、

 ぼくとクラウンちゃんは肩を離す。



『────……。』



 ワンピースに似合わない張り詰めた表情。

 当然だ。

 今、アンティの身体は、

 歯車によって造られた内部骨格フレームが全身に展開し、数十箇所の断裂した神経組織を、アナライズカードの伝達流路で補っている。

 ……満身創痍だ。


 生身に歯車デバイスが干渉しないとはいえ、

 それは、サイボーグに近い修復方法だった。



『────く……。』

『>>>……』



 ギリ……と、クラウンが奥歯を噛み締める。

 彼女は、彼女に最も普通の女の子でいて欲しいんだ。

 人からかけ離れていく王に、冠は震える。


 王は、小さな体で、大きく立った。



「……、……、あなた達の、場所に帰って。

 ふふ、まさかこっちで隣にいてくれるの?

 それはそれで、嬉しいけど」

『────アンティ……。』

『>>>……すまない』



 光の先を、見つめる。

 今から行くのは、あの白い太陽のような場所だ。

 ぼくらの人格が破損したら、彼女は1人になってしまう。

 孤独から彼女を守るため、ぼくらは彼女を1人にする。



『>>>……』

『────:プラットフォームに接続します……。』



 ────きゅオォッ…………!



 足元に大きく、歯車が開き(・・・・・)、

 ぼくとクラウンちゃんが、ゆっくりとシフトダウンする。

 七号機(ニャーナ)の技術の転用で実体化していた高密度肉体情報は、今から、王のサポートのために使われる。

 底無しの、子供用のプールの水に沈んでいくような感覚。


 下に待っているのは、幻影のコックピット。

 ふたりで彼女を支えてきた場所────。



『────"反射速度(クロックダウン)"による思考加速を解除。

 ────アンティ修復率:ボディ73パセルテルジ。

 ────歯車補填率……:14パセルテルジで推移中。』

『>>>コックピット内の形状を、今のぼくらの仕様に改修する。む、クラウンちゃん失礼。髪がちょっと邪魔だな』

『────……。

 ────あなたの義手の流路伝達回路は優秀です。

 ────私との同期に:使わせていただきます。』

『>>>え? ──ぅおっと!』



 ────シュルルルル──! カチカチ……!

 キィ……ィィん……!



『>>>……不思議な光景だ』

『────接続完了。』



 クラウンちゃんの七つの髪結い(セブンスティル)が勢い良くなびき、

 ぼくの金の紡ぎ手(スピナイゲル)に接続される。

 左手を媒体として、心の流れのようなものを感じる。

 とん……と。彼女の背中が、ぼくのお腹に触れた。



『>>>相変わらず、近いな……』

『────殿方にとっては:喜ばしい事では?。』

『>>>は……これが終わったら覚悟しなよ』

『────……ええ:いくらでも。』

『>>>……推進器の構成を猫チームに委託』

『────了解。製造完了まで:約7ビョウセカンド。』



 コンソールに、アンティの身体破損率と、

 歯車法による修繕率が部位ごとに表示される。

 まもなく、止血と応急処置が完了する。

 エラーコードは、真っ赤だ。

 ぼくは、目の前の彼女の肩に手をのせる。

 手が重なった。



『────……。』

『>>>耐え時だ……。』

『────は:い……。』



 ギガンティック・ヒールスライムは強力な治癒能力を持つ。

 この能力をもってすれば、アンティの完全治療は可能だ。

 でも、今、使用するわけにはいかなかった。



『>>>……アンティ。今、きみにヒールスライムを使用する事ができない』

「えぇ……わかるわ。ぶっ倒れるんでしょう?」

『>>>その通りだ。痛覚の一部を遮断している。だが……』

「一部なのは、全てを遮断すると身体中の流路の操作が悪くなるからね?」

『>>>……きみは多分、誰よりも自分の身体を理解してる』



 治癒効果の副作用として、

 治療に消費されたエネルギーは、必ず彼女を失神させる。

 それほど、彼女の外傷は酷い。

 今、アンティが倒れたら全てが終わりだ。

 昏睡している間に、あの子はいなくなるだろう。

 そうは、させない。


 王の金色の手のひらに、紫の輝きがセットされる。



「……これ、どうすればいいの?」

『────彼女に:接触させてください。後はこちらで同期します。』

「つまり……」

『>>>" 近づいて、ビンタ " 』

「ぁは……バールモンキーでもわかる作戦ね?」



 左手の"紫の時限結晶(バイオレット)"を、

 ギュッと握りしめながら────、



「さ……準備は、オーケー……?」



 歯車で造られた身体で、王が尋ねる。

 ぼくらは、答えなくちゃいけない。 

 冠の少女は、ぼくの手を握り、こたえた。



『────レディ(準備完了)。


 ────推進機7基:鋳造複製完了。

 ────身体後方部に空間接続。

 ────スラスター:形成します。』


『>>>耐熱装甲は……任せろ。いけるよ』




 大きく。


 大きく。


 息を吸う、王。


 目指すは。


 あの、雪山を包む。


 クソデカい、プラズマ体だ。





 ────叫べ。






「──そるぎぁぁぁあああああっっ!!!!!!!

 ──ぜんっっっつ、かいっっつつ────ッッ!!!!!」





『──やっっったるニ"ャアァア"ア"ア"ア"ア"!!!!!。』


『『『『『『──ニ"ャォォオオオオオオ────ッッ!!!!!!。』』』』』』





 後方で、破裂する、光。


 つっこむぜ……!!!




『>>>──── 作戦、開始だっっっ ──!!!!!』





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