" 真面目なる変態 " さーしーえー
(´∀`*)茶番回です(笑)
アブノさんの店へ近道の、
人の少ない裏道を行く。
騒がしい街中とは反対に、
ここには人が滅多に通らない。
フォークになってた、
イニィさんに、実体化してもらうことにする。
細い、あまり使われない道には、
陽の光がさし込んできている。
歩くたびに、
建物と、建物の間のわずかなスキマから、
光が、チカチカと、見え隠れする。
秘密の抜け道みたいで、
ちょっと、楽しい。
日差しに区切られた秘密の道。
キ──ン、キ──ンと、
あるいみマヌケな、
私のブーツの足音が、響いた。
ポチポチと、私の後ろをついて歩くイニィさんが、
ちょっと不安そうに、聞いてきた。
{{ ……ね、ピエロちゃん。その、今から行く……へんたいさんは、その……どんな変態なの? }}
「……ん? ……そーね。"悪意のない変態"かな?」
{{ ………… }}
「あ、"芯の通った変態"?」
{{ ……容姿を聞いてもいい? }}
「黒いブーメランパンツに、黒いレザーマスク、手袋、ショートブーツ。後は、細マッチョ!」
{{ ……? それだと、上も下も、肌が露出していることになるわよ? }}
「露出してるよ?」
{{ ……服屋さんよね? }}
ぎゅっ、と、
イニィさんが、マントを掴んてきた。
なに。あら、かわいい。
深紅の瞳でジト目をするイニィさんは、
千年の時を超えてきたとは、思えない。
「もぅ、だいじょーぶ! 見た目はちょっとヤバいけど、清々しいほど変態なだけだって!」
{{ それが問題だと思うんだけど……他のお店は、ダメなの……? }}
「あ、いや……実はね? ガルンを半分くらい作ったのって、アブノさんなのよ」
{{ ええッッ!? }}
「それに、アブノさん、私の素顔を知ってる、数少ない変態だからね。ちょっとね? ガルンも見せてやりたいのよ〜〜! へへへ〜〜」
{{ あ、あの子、ホントに見せて、大丈夫なのっ!?}}
「だいじょぶ、だぁーいじょぶ! お、見えてきたわよ!」
{{ うぅう〜〜!! }}
最低限、身体の模様? で隠れてるとはいえ、
イニィさんは、裸んぼだ。
堂々と人目に晒すワケにもいかんので、
ササッ、と店の中に入る。
……きぃいい……
────、──、──!!!
……、………──。
「ん……? 何やら騒がしいわね……」
{{ ──! あっ……! }}
いたっ、変態だわっ!
アブノさん……!
店の段差に座って、
目の前で手を組んでる。
ありゃ……男の人がいる!
お客さん、かなぁ……?
しげしげと見てみると、えらい特徴的な人だった。
すっごい太ってて、奇妙な髪型だわ。
……なんか根っこの生えたオニオンを、
ひっくり返したような人ね……。
オニオンおじさんの上の服は真っ赤、長袖。
下のパンツは、白。ピッチリ。
腰には……サーベルがある!?
この人……?
「……もう、お帰りください、将軍よ……」
「なんだと!? キサマぁ!! 私が、"ドレッド・アァ・ハィハィ"将軍と知っての発言かあッッ!!!」
あ、アブノさん……。
クレーマーじゃないですか……。
ひぃぃ、面倒くさそーだな……。
イニィさんを見られたらアレなので、
マフラーマントの後ろに、隠す。
……うん。
小柄な私でも、この大きさのマントなら、
ぷに悪魔っ子くらい隠せるわ。
「……お帰りください、ドレッド将軍……あなたの体は、まるで創作意欲を掻き立てない……」
「き、き、キサマぁぁああ! 一部の階級の、質の良い装甲を持つ者を問い詰めて、わぁざわざ来てやってみればァぁああ!!!」
えっ……アブノさんの作った装甲、
どっかに、出回ってんの……?
まさか、ビキニアーマーとかじゃないでしょね。
それとも、バラされて、違う使い方を……?
「おまえの仕事は、客の要望に応えることだろぅッ!! さっさと私の命令を聞くのだッッ!!」
ありゃーなんかヒートアップしてるわね──……。
食堂でも、
ああゆうのは、たまーにあったけど……。
「……作れないものを、何故あなたに作れるのだ……何を言おうと、あなたは鎧を受け取れんよ……」
「なんだとぉお!? この店を見れば、女物の鎧は、よく作っておるようではないかッッ!!」
……そだね。
入り口の特売のビキニアーマー、まだあったね。
前より、安くなってるね……。
{{ ひぇ…… }}
あ……イニィさんが、真横にある、
装甲付きのメイド服を見て、
すっっっごい顔してる。
やっぱ、瞳があると表情、読みやすいわね!
「こんなお遊びをしやがって……ふざけているのか!」
「──むぅ?」
「 真面目にやれ! この変態がああああ!!! 」
──────。
「……────キサマぁ、今ァ、我に何と言ったぁぁァ……?」
「──な!?」
────ズオオオオオぉぉぉぉ。
「あ、立った」
{{ ……ぅぁ }}
え────、
皆さまこんにちは! アンティです!
いま、アブノさんが立ち上がりました!
えー、わたくしめの実体験からですが、
初見で立ったアブノさんを見ると、
けっこう、シャレにならないくらい、
超、コワイです。
アンティ・クルルの!
☆アブノ・マール:レポート☆
はっじまっるよ〜〜!
①身長がけっこう高い。
今まで会った人の中では、地味に高いのよ。
え? ギルマスは別よ。あの人は山よ。
180セルチくらいある『────184セルチです。』
だそうです。今も、逆オニオンおじさんが、
物理的に、完全に上から見おろされてるわ……。
②かなりの筋肉質。
あんな可愛い服を、ちまちま縫っているとは、
到底思えない筋肉量なのよね……。
腹筋、割れすぎ。
今、なんか、全身の筋肉が隆起して、
茹でたコーンみたいになってるわね。
あ、湯気が出てるという意味よ?
アレが目の前に来たら、
そりゃ、ビビるでしょうよぉ……。
③マスクがやばい。
私もまぁまぁヤバいマスク『>>>ちょとお!』
をかぶっているけど、アブノさんの、
インクぶっこぼしたような、
漆黒のレザーマスクにくらべたら、
可愛いもんだ、と言わざるを得ないわね。
あのマスクを見るとね、
「あ、こいつヤバいヤツだわ」って、
一瞬でわかるのよ。
だって、普通じゃないじゃない……。
「……キサマぁは今、"我"に、"真面目にやれ"、と言ったのであるか? 」
「な、な、なんだっ、突然、凄みよって……そっ、そうだっ! こんな、道楽でやってる店など……!」
「……口を慎め。この逆さオニオンが──……」
「な、なんだ、と!?」
「あ、アレなんか怒ったわね」
{{ あわ、あわわ…… }}
『────告。アブノ・マールの全身の流路が、活性化しています。』
『>>>あの人さぁ、自分のコト、"我"って呼ぶ時、なんかその、色んな意味でキマってるよねぇ……』
あ、なんかアブノさん、プルプルしてるわ……。
「……きさまは。きぃ、さァ、まァ、はぁぁ、この素晴らしい、セクシィィィィィィィィ、キラキラコレクションッッ☆ たちが、おぉぉぉふぅざけぇと、抜かしやがるのかァァアアアァァァアアア!!!!!」
「っお……おおお……だってあれなど、メイド服」
「──だまれッッ!! ドレッド・アァ・ハィハィ将軍……
"せくすぃーの狭き者"よ……」
「せ、せく……?」
「 ──その目ん玉で、よォく見るのだぁァ、ドレッド……ここに存在する"キラキラシリーズ"の中に……たったひとつでもおッッ!! "真面目に作っていない"物など、無ぁああいィイイわぁああああああァァアアア"ア"ア"────!!!!!」
うわぁ……絶叫した……。
お店ん中の空気の震えがヤバい……。
「 ──"我"の作りしぃ、可愛い、"せくすぃぃぃ"たちの、素晴らしき、"えくすたしぃぃぃ……!" を感じられぬとは……。キサマは、生きる価値がない」
言いすぎ言いすぎ。
その可愛い装備、
今、店頭で7割引きんなってるやないの。
「まっっったく……。ふぅぉぉお、っはぁぁああ………おまえには、何も見えていなのだなァ……? 」
「き、キサマぁああああ!!! さ、さっきから大人しく聞いていればぁ、ぬけぬけとぉおおおお!!! わ、私が、何を見えておらんと言うのだぁああああ!!!」
「 ──ならば問うてやろう。おまえの奥方の、今日の下着の色はなんだ?」
「な、なな、なんだとっ!?」
…………またんかい。
「そ、そんなものッ、わかるはずがないだろうっ!!」
「……フッ──そんなこともわからんのか……。ならば、我が教えてやろう。今日は"ブルーと白のシマシマきゃるるんレース"だ 」
「ばっ!?」
『────……。』
『>>>……、……。』
……ちょっと待て。
おい、コラ、変態。
おまえどうして、
人妻の下着事情を把握してやがる……。
「てっ……適当な事を言うなァアアアア!!! そんな事が、本当なワケがないだろうぅぅうう!!! 」
「……嘘ではない。おまえの奥方である、"トットト・アルク・ハィハィ"殿は、我が顧客の、"お得意様"の1人であぁる……」
「と、トトがっ!? こんな店にっ!? ば、ばかを言うなっ!!」
「やれやれ……。本来、我がポリシーでは、顧客の秘密を話すのは、せくしぃ☆NGなのだがな……。おい。キサマのお抱えの執事に、"ヨムカ・クネル"という者がいるだろう」
「あ、ああ……」
「──トットト・アルクは、ヨムカ・クネルと毎夜、とてもイチャイチャしている」
「な、何だってぇええええええええ!!!!??」
「──何だってぇええええええええ!!!??」
『────……。』
『>>>…………。』
{{ …………。 }}
な、なんでみんなそんなシーンと……、
それって、浮気じゃないの、浮気ぃ!!
てかこんの変態、顧客の秘密ぶちまけやがったわ!
「ふっ……ヨムカ・クネル氏に何度、トットト・アルク殿の遣いで、我が裏の看板商品、"せくすぃ・きらきら・ぱんてぃ・しりぃず"を、お買い求めいただいたと、思っておるのだ……?」
……ん?
しりぃず……?
「そ、そんな、バァカな……! "トットト"が、"ヨムカ"と、くっついていたなんて……!!? 」
「……"トットト"、"ヨムカ"。
おまえにはこの、一番身近な、
"隠されたせくすぃぃぃわ──どぅっ"さえ、
見つけられないのではないか……
落胆させてくれる……。
この程度の"せくすぃ"力で、
我が至高の作品、"キラキラシリーズ"たちに、
"真面目にやれ"、などと、抜かすとは……
お恥ずかしい観察眼だな……」
「くっ……ぎぎっ、が!!」
「 ──心も、その脂肪のように、"どれっ"とする前に、真面目に痩せるがいぃ……!」
「キサマぁぁああああ!!! 言わせておけばぁああ────!!!!」
────チャきん────!!
「あっ!!」
『────危険。退避を推奨。』
『>>>おいおい、マズいんじゃないの?』
{{ サーベルを抜いたわね…… }}
「おっ、おっ! おまえのような変態が、この、ドレッド・アァ・ハィハィを侮辱して、許されるものかぁあああ! 私の愛刀、"ダレトク"のサビとなるがいい!!」
「……誰得?」
『>>>変な名前……』
「とぉりゃああああああ!!! くらぇええ!! "コピペ真剣"!!」
「ちょ────!!?」
あっ、や、あれ、アブノさん────……!!!
危な────いッッッ!!!
「 ──"愚かな" 」
──ヒュンッ、タンタンタン……!
「おあっ! な、なぜっ!?」
────!?
{{ な、何!? 今の動きっ……! }}
えっ、なに!?
今の、ホントに何!?
アブノさんの体が、揺らめいて、
煙みたいに、
流れたように見えたんだけど……!!
『>>>アンティ!! 今の! "格闘職"の移動スキルだよっ!!』
「ええっ!?」
『────分析完了。
────判定:格闘職スキル:フリッカーステップ。』
ど、どゆこと!?
アブノさんって、服飾店の店長でしょ!?
どして、格闘職のスキルなんてッッ!?
てかアブノさん!
オニオンのおじさんに背中向けて、
止まってんじゃないわよ!
「き、きさまぁあ! 何をしたぁあああ!!!」
────うっわ!!
オニオンおじさんが、アブノさんを、
背後から、"ダレトク"を、繰り出そうと──……!!
「……──真面目にやっているのか? ……ド下手くそであるな」
シュ、パぁああん───……!
また、変な動き……!
「すごっ……。床を、滑って迂回したわっ!?」
『────判定:格闘職スキル:ステキャンセラー。』
『>>>え……あれって、かなり上位スキルじゃなかった……?』
{{ 足が動かないのに、床を滑ったわね…… }}
「き、さ、まっ……? 何者だ……? そのマスク、取るがいい!!」
「やだ」
「……キサマぁああああああああああアアア!!!!!!」
その時、いったい何が、起こったのか。
私の日常は、果たして、大丈夫なのか。
ドレッドおじさんから打ち出された剣。
その、無数の"ダレトク"は、
全て、宙を斬り、
変態を、すり、抜けた。
かすりも、しない。
"ダレトク"は、無意味に、舞う。
「ばかな……!? 残像、だと─……!?」
私には、見える────!!!
変態が、地面を蹴った────!!!
いや、あれは────!!!?
────懐に潜り込む、深き闇の、変態だ──!!
マスクの瞳が、光る───!!!!!
──シュパン、シュパン、シュパン、シュパン、
────シュッパン───!!
「 ──己の"セクシィ"の狭さを、
──悔い改めるがいい── 」
『────判定:格闘職スキルコンボ。
◆フリッカーステップ
+
◆ステキャンセラー
+
◆オーバーラップ
+
◆ダークハンター
────奥義:◆ダークネス=ヘラクレイト:です。』
ど… ど… ど… ど… ど。
────どぎゃごぉおおおおおんんん────!!!!!
──── ─ ─ ─ ─ … … …。
……パラパラ……。
「…………」
『────……。』
『>>>…………』
{{ ………… }}
「むぅ……つまらぬものを殴ってしまったのであるな……」
マール服飾店の屋根に、
まぁるい、穴が、あきました。
……けっこうでかいわ。
いや、アンタ……何やってんねんな。
「……と、とまあ……こういう変態なんだけど」
{{ ……千年間、引きこもってた身としては、キツいわね…… }}
あ、アブノさん、こっち見た。
「 ──おお! 姫ではないかっ!! お久しゅうであるなぁ!!」
{{ ビクッ }}
「いやぁーアブノさん、今日もとばしてるわねぇー!」
「はっはっは! ご無沙汰しているのである! 今日は、"ごーるでんぱんてぃ"の替えですかな?」
「……ねぇ、それってもしかして、"シリーズ"あんの?」
「全28色である」
{{ ……なんで普通にしゃべりかけられるの…… }}
『────……。』
『>>>はは……』
天井から、柔らかな光がさし込む、マール服飾店で。
悪魔っ子は、黄金の義賊の底無しの対話能力を、
実感するのだった。
トットト、ヨムカ(*´ 艸`)(笑)