黄金ビンタサイクロン
【前回の挿し絵の反省】
(´◉ω◉` )肌の色塗り忘れた。
↑こいつまじか
親愛なる、父さん、母さん。
私、山火事で空飛べました。
────ゴォオオオオオオオオ!!!
「……うっさいわね……」
『────第1から第4空間燃焼室に概念構築。ブースト安定値クリア。燃料系:及び機構系が未発達です。』
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>>>急ごしらえにしてはカッコイイよ!
気体から可燃物を得るのは考えたね!
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『────歯車機構不足のため、あまり効率の良いデバイスではありません。"真っ昼間"時に格納した炎である程度の飛行は可能。酸素以外の燃料がありません。』
「えっ……とっとと片付けないと、山火事なくなっちゃうの!」
それはこまるわ!
便利だかんなぁ、山火事……。
シャワーやらお料理に使えないのはやだなぁ……。
「よと、とっ!」
空中でバランスをとる。
な、んとか行けるかな?
側に、コウモリのような翼を広げて、
紫のシルエットが近づいてくる。
バサァァァァ───!!
「! イニィさん!」
「貴方……」
「はは、私も飛べちゃいました……」
「その炎……異常ですね」
「え、そ、そう?」
「……炎からは間違いなく、風と火の魔素を感じます……ですが、魔術に必要な流路が、全く感じられません……」
「あ──……わかっちゃいますか」
さすが、イニィさんの眼には、
流路のコトでは敵わないわね。
私の"眼魔"より遥かに凄そう……
……なんかイニィさん、ものっそい怪訝そうな顔だな……。
「いったいどうなっているの……」
「この火はね? ある"小さな勇者"が、街を守ろうとして起こした"火"なのよ」
「! ……"勇者の火"?」
「そう。一番純粋な、守りたいと思う心の灯した炎よ」
「──……」
ま、街が一つ、丸焦げになるトコロだったけどね?
イニィさんは、ちょっとキョトンとしていたけど、
フゥ、と息をはいて──……
「……やれやれ。よく分かりませんが、それは"魔法"ではなく、"手品"の領域ですわ」
「あら、道化師に手品は付き物ではなくて?」
「……貴方、人の喋り方が伝染るクセがありますわね」
「ごめんあそばせ」
「私はそんな事は言いません! 行きますよ! 私が防御! 貴方が───……!」
「────ぶん殴るッ!! っだねッ!!! クラウン! "強火"ッ!!」
『────レディ。バーニアギア:ブースト開始。』
────ッッゴォオオオオオオオオォォォオオ!!!!
私の背中からすごい音がして、
身体が前向きに進み出す!
空気の味が、走っている時と似てるっ!
前に進んで、風がぶつかっているんだわ!
「──っ! はやい、ですわねッ!」
「! 速さ、おとす?」
「ッ騎士の意地っ!!」
っはは!
そうこなくっちゃね!
ビュオオオオオオオォォオオオ───!!!!!!
悪魔の羽根をクレープみたいに丸めて、
滑空するように加速するイニィさん。
まるで、矢のように、私の側につく。
光を反射する、十字の、杖。
「うわお……」
イニィさん、悪魔になんて、
なりたくなかっただろうけど……
ごめん。
正直、めっちゃカッコイイと思った。
ガルンを中心に、円を描くように、
旋回して、飛ぶ。
ガルンは、三つの目で空中の私たちを追っている。
そろそろかな……。
「! きますよっ!」
「っ!」
────ガルル……ガルルルルロロロロオオオオオオォォォンン───!!!!
─────ピシャン! シャァァァアンンンンッッ!!!
───っ、きたっ!!
ガルンの体からッ! 黒い雷がッ! 4つ!
もちろん、"反射速度"は発動してるっ!
うわ……動きに、規則性がないッ!!
ジグザグ、グネグネと!!
それに、かなり、速いっ!!
まるで、暴れまくる黒いスネークだわっ!!
くっ……! 歯車をたくさん出せたらな……!
私の歯車なら、魔法は吸い込めるし、
この、不規則な雷の軌道にも、
たっくさんの歯車があれば、対応できるのに……!
あああっ、バカ王を本気で殴りすぎたわっ!!!
「杖よ──」
「ッ──!」
────フォウン──……!
イニィさんが、
高速で空を翔ける風の圧をものともせず、
十字架のソレを、胸元に、たぐり寄せる。
一瞬だけ、十字架の杖から、
言葉にし難い不思議な力が、
フワッと周りに拡がるのを感じる。
…………ヴォオオオオオンンッ!!!
────バリバリバリバリッッ!!!
現れた黒と紫の球体!! それに、
まるで黒いスネークが食いつくみたいに、
グネッ!! と、雷が軌道を変えるッッ!!
やりぃッッ!
なんどやっても、同じよっ!
────ガルルルルルゥゥゥウウ!!!
「わぁ、めっちゃ悔しがってんね!!」
ガルンがすたこら怖い顔で、
こちらを威嚇するように、唸る!
あの黒い雷……一度撃つと、
次の攻撃まで、しばらく間隔があくみたいだわ!
……下の"くろいあな"から、
パワーを吸い上げてるのかな……?
「なんにせよ、ちゃ──ぁんすッッ!!」
よぉし、次は、私の番だねっ!!
さぁいく……
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>>>アンティ!
きみの現時点での問題点は
ふたぁーつ!!
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「──うえっ!! えっ、なにっ!?」
急になんなの先輩っ!?
今から攻撃しようって時にっ!?
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>>>ひとぉーつ! 攻撃時の
接地面積が少ないっ!
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「せ、せっちめんせきっ!? どゆこと!?」
『────同意。アンティ、あなたの拳は、怪力の割には、小さすぎるのです。』
「えっ、えっ!?」
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>>>ちいさな拳でズガーン! って
やっても ガルンには
ホクロみたいな穴が開くだけだ!
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「ええっ! さっき殴った時、吹っ飛ばせてたじゃない!」
『────アンティ。あなたのナックルの小ささでは、打撃というより、針での刺突のようになっていました。』
「そ、そんなコト言われてもっ! 今は歯車で拳の巨大化はできないわよっ!?」
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>>>ふたぁーつ!!
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ちょ、ひっひとつめの解決策わッ!!??
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>>>殴る時に 空では踏ん張れない!
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「お、おぅ……」
それは、確かにそうね。
さっきガルン殴った時、
ガルンと一緒に私も後ろに吹っ飛んだわ。
せっかくぶん殴った力が、逃げちゃう感じ……。
『────クラウンギアより、提案:1。』
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>>>はいっ! クラウンちゃん!
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『────攻撃時に、後方バーニア燃焼室を同時爆発。』
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>>>採用っ!!
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「おいこらまてぇえいいいいいッッ!!!」
な、な……
なんつー事を提案するのかなぁっ!
か弱い食堂娘の背中を爆発とかぁ……!
このキンピカマジックアイテムズは何を考えとんのじゃ!!
私の尊厳を返せッ!!
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>>>……いや だって
これまでの行いを考えたら
そんな大したことじゃないでしょ!
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『────ちょっと爆発するだけです。』
「いやっ、ちょっっっと待て! 私はアンタ達を、とぉてぇもぉ信頼しているが、今回は物申したいっ!! 背中を同時爆発ってなによぉ! てかひとつめの解決策はどうしたのっ!! グーで殴ったら、打撃の面積すくなすぎるんでしょ!!」
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>>>パーで殴ればいいんだよ!
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「ちょ…………ちょっと待って!!! 空飛んでから、先輩のテンションがおかしいわ!! どうゆうことなのっっ!? ガルンからしたら、私のグーとパーの大きさとかそんな変わんないでしょ!? 私、まちがったコト言ってないよね、ねっ!!? あとパーじゃ殴るって言わないかんね!? ビンタだかんねッ!? 私にアイツにビンタしろってか!!!」
「うるさいですはやくなさい」
「イイイイ〜〜ニ〜〜ィ〜〜さぁ〜〜ん!!!」
あれ? なんだこれ?
気づけば、逃げ道がないわ?
私は今から、背中を爆発させながら、
あの真っ黒ガルンにビンタすんの?
ちょマジなの。
ハードル高すぎない?
マジなの?
……──ガルルルルロロロロォオオ───……
────ゴロル……ゴロ…… ゴロ……
「!」
『────警告。ガルン:チャージ完了間近と予測。』
「アンティはやくなさい」
「うえええええええ……!!」
イニィさんがピエロちゃんって呼ばずに、
名前で呼んできた。
こわい。
煽りに、遊んでる感が無い。
て、敵前で口喧嘩してごめなさいよ……。
「え───ッッい! どうなってもしんないかんね! いいのねっ!! ホントにビンタすっかんね!!」
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>>>いや いける
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その絶対的な確信はなんなのよ……。
あ──もぅ。
「クラウン。あいつに……そうね、20メルくらいまで近づいたら、爆発でも何でもして、急加速して顔に接近なさい」
『────よろしいのですか。』
「いや言い出したのアンタだかんね……あと、出来れば、後ろの……"ブースト"? を操作して、右からえぐりこむようなカーブで接近したい。」
『────レディ。右側に第2バーニアを配置。』
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>>>指示がえぐい
3ビョウ後おすすめ…… いまっ!!
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「──クラウンッ!!」
『────全燃焼室:バーストトライ。』
ォ、ォ、ォ……──ッ───、
ドォオヴオオオウンッッ!!!
「──ッ」
お腹に響く音がして、
私の身体が、空間を超える。
だいじょうぶ。
私は力を入れてるし、
私は時を重くできる。
『────第2燃焼室:バースト。』
───ュ──ッッ……!
ダァァアアアンンッッ!!!
ひどい音だわ。
真横にある炎が、良く見える。
これダメでしょ。
食堂の一人娘が背負うモンじゃないわ。
噴火って、こんなのなんじゃないの?
ちかづく。
ちかづく。
ちかづく。
三つの目を持つ、バケモンの顔が。
悪いんだけど、おまえ、
ビンタな?
────ガ・ル・ル・ル・ロ・ロ?
────────ここだ。
ギギ、ギギギギギ──。
私の"パー"は、なんというか、
力が入りすぎて、多分だけど、
そう、
─────────"鉤爪"、だった──。
「────おるるらあ」
────。
くるくるくるぅ────……
くるくるくるぅ────……
────ドぉん──……。
「…………」
「…………」
お城の方に、なんか飛んでって、おちた。
……イニィさんのお父さん、だいじょぶかな。
「貴方の……御両親は、神様ですか?」
「やぁめてよね……」
食堂を切り盛りしてるのよ。
ふぅ、とため息をしながら、
空中で止まって、前を見る。
ガルンの顔。
2つの、下顎しかない。
上顎が、飛んでって、無かった。
体。
ねじれて、しぼった巨大雑巾みたいになってる。
……真っ黒の、サイクロンだ。
自分の右手を見て、ぷるぷるする。
『────お見事です。』
─────────────────────────────
>>>ほーら うまいこといったでしょ?
─────────────────────────────
「まるで、前衛的な彫刻のようです」
「……私……私ぃ……」
ガルン、たおした。
もやだ、おうちかえる。
(^_^;)またアンティの乙女心が……










