アンティ、投げたぁああ! さーしーえー
(つд⊂)つ、通天閣をばかにするなァァァ!
……──ガルルルロロオオオオオオォォォンンン……?
目が、あった。
かお、こぇぇええええええええ──!!!
「いくわ」
「!」
背中に押し当てられた、イニィさんの身体が、
なにか、チカラを帯びた気がした。
……──ヴゥオオオオオオンン──……
黄金のグローブに握られた杖!
白と、紫と、金のカラーリングの十字架!
その周りに、時空を押し込めた球体が、
いくつも顕現する!
おっき!
私の身長より大きな玉だわ!
「──かっとばしなさい、ピエロちゃん」
「よしゃ! いくよぉおお────!!」
……ドキドキ、ドキドキ。
せぇ──……のォおお──……!!!
「────ふっ」
……────ぶォオオおおんッ────!!
「──!!? ッく──……」
あまり考えず、
思いっきり、杖を振り抜いた。
一瞬、見えなくなるくらい。
杖を振った勢いで、
イニィさんが、空中でのバランスを、少し崩す。
ごめん。
でも、ここで出し惜しみは、ね?
「やれやれ……──どうです!?」
「──あたるよ!」
……────どぉん、どどどぉおん──……。
「…………」
「…………」
…………ガルルル…………?
────。
「だ、だめっぽい?」
『────ほぼダメージは皆無と予測。』
「やはりですか……キョトンとしていますね」
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>>>! 腕を伸ばしてきたよ!
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「えっ! うわわ!」
ほんとだ!
3本ある内の1本の腕が、私達に迫る!
黒いゆらめきが尾を引きながら、
3本の指が、カッと、開いた!
「避けますね」
「! はいっ!」
ブゥワッ────!!
イニィさんは、悪魔の羽根をもう、
かなり使いこなしてるみたいだ!
横にぐいっと引っ張られるように、
空で、回避する!
すぐ横を、でっかい真っ黒な爪が、
通り過ぎていく──!
……おそい?
攻撃というより、掴もうとした感じだわ!
「やはり、私の時空魔法は、火に油……にもならないようですね」
「あんなに、すごい魔法なのに……」
「いつもより強力なモノを撃てるのですが……悪魔の身体のお陰か、この場に漂う暗黒のチカラのせいか……」
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>>>イニィさんには 空での
移動を受け持ってもらうしかない!
……アンティ えと やれるかい?
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「はっ! ここまできたらね!」
『────警告。ガルン頭部、接近。』
「「!!」」
……────ガルルルロロオオォォォ──……
き、きたぁ!
く、食われるんじゃないの、これ──。
いや、口は開けていない──?
……───ズズズズズズズズ──……
「──!! ガルンの体がっ!」
「前に、進んできていますね」
まずいっ、これ以上進んでいったら、
あっという間に、外に出てしまうかも!
「……イニィさん、ちょっと杖持ってて。殴った後、よろしくね」
「……反動がおそろしそうですね……」
「い、いこうっ!」
─────シュビゅううん──ッ!!!
向かってくる黒い三つ目の顔。
イニィさんが、物凄いスピードで、かっとばす!
右手の金のグローブに、チカラを込めた。
────ガルルルルルゥゥゥウウウオオォォ──……
いまだ。
「───ッッッらぁああああああッッ!!」
ゴッキぃいいいいいいいいん!!!!!
……──ッガルラアアアアアァァァアアァァァッ!!!!?
ごおおおおおっ!
「────!!! くぅぅううううう!!!」
ガルンと、私達。
弾けるように、反対に、吹っ飛び合う。
イニィさんも、私のパンチの反動を、
空中で支えるのは難しかったみたい。
今は、ほとんど歯車を使えないっ。
止まるのは、イニィさんだよりだ!
ぐるぐると、回りながら、空で、話しかける。
「い、ぃ、イニィさん……!」
「……まったく! とんでもピエロなんだから……!」
……──バさぁ──……!!
! すごい!
1回の羽ばたきで、空と地面が、
正しい方向になった!
「た、助かります……」
「貴方とケンカはしたくないわね……」
『────警告。』
「えっ──……」
────!
────!?
時間が……重いっ!
"反射速度"が発動してるッ!
ガルンはっ!?
……なんだアレ。
うしろ、向いてるわ……?
……!? 回ってるっ!?
……──!!!!!
─────しっぽだ!!!
ッだ、めだ! イニィさんじゃ──!!!
ッ、しかた、ないッ!!
ガッ。
「え? ッきゃああッ───!!」
──ぶォン!!
イニィさんの腕を掴み、
遠くに、ぶん投げる。
その瞬間、
「くっ」
────ごぉぉおおおおガガガかしゅっ!!!
振り回された、3本の尻尾が、
私を横殴りにした。
────ぴゅ────んって、吹っ飛ぶ。
『────ガード成功。右腕部:ダメージ:無。』
─────────────────────────────
>>>こわっ なに今のシッポムチ……
アンティ いい反応
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「ふぅ……あっ! やばいっ!! 杖から離れたらっ!!」
イニィさんを回避させるために投げちゃったから、
吹っ飛んでく私から、ずんずん離れてくっ!!
うわわわっ!
未来に強制送還されるっ!!
し、仕方ないっ!
なけなしの歯車を足場にしてっ……!
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>>>アンティ だいじょぶだ!
イニィさんがすぐ 杖を投げた!
キャッチして!
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「なっ投げたっ!? ! わっ! これかっ!」
うわっ、けっこう近くに、
私と並ぶように、杖が飛んでた!
イニィさん……私がぶっ飛ばされたのに合わせて、
杖を投げてくれたのか! やるぅ!
「ととと……! えいっ!」
ガシッと掴んだ!
……えと、どう止まろう……。
ビュウウウウウウウウウ──……!!
ガシッ、ガくん。
「あっ、イニィさん、だいじょぶ……?」
「ッッこっちのセリフですっ!!! 尻尾3つすべて、直撃でしたよ!? 大丈夫なのですかっ!?」
「げんき。つえ、ありがと」
「……ッ! ……私の方こそ、投げてくれて感謝します。ピエロって強いのね……」
「……!? イニィさん、ここって……!?」
「ええ……かなり、都の外周に近い所ですね」
やばいっ!
あの地面、
真っ黒な大地と、普通の土の境い目だわ!
『────防衛ラインまで:距離:39メルトルテ。』
「ガルンはっ!?」
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>>>まだ さっきの場所だ!
でも 雰囲気が変わったよ……
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「!」
……──ガルルルルルウウウゥゥゥゥ──……!!
ゴルロ─… … ゴロ─… … ゴロロ─… …!
「……威嚇、されていますね……」
『────障害と認識されたと予測。』
うわぁ……
また体中で、黒い雷をビシビシさせてる……。
ん? ……あの、雷……なんか、大きくなってない?
「──やば」
『────放電現象に近い性質を確認。警戒してください。』
「──え?」
イニィさんが、似合わない惚けた声を出す。
流路の色で見るのと、実際の目で見るのは、
やはり、ちょっと違うのかな。
「イニィさん、やばい。アレは……ぜったい、くる!」
「? 何がです──……?」
な、何がって────……、
「……────"雷"が、よ!」
「────ッ!!!」
ど、どうやって、避ければッ!!?
そして──……、
……────ガルルルルルゥゥゥウウウオオォォォンンンンッッ!!!
バリバリバリバリバリバリィ─────!!!!
────────────ゴッ!!!!!!!
「──ッ!!」
────黒いイカヅチが、私達に、放たれる───!!!!










