黄金のおへその謎
「かば〜〜」
「は〜〜い、いいこいいこ」
──ぽんぽん。
黄金の義賊は、
神秘の鍾乳洞を魔物に乗って、
どんどん、どんぶらこですよ。
うっわ、ここの水、深いわねー。
覗きこんだら、くらくらするわ。
水が澄んでて空飛んでるみたい。
飲み水用に、ちょっと拝借しよっかな。
ていっ。
────きゅるるるる……トポンッ。
ずごごごごごご────……。
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>>>おみずどろぼう中 ごめんだけどさ
身体の方は大丈夫なのかい?
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……し、失礼なやっちゃな。
これって地下水なんだから、
井戸水みたいなもんでしょ。
私は清い身体よ!
「……筋肉痛のこと言ってんなら、まぁ大丈夫よ。チカラ入れると痛いわね。今日、朝に起き上がる時に"うっ!"ってなったわ」
身体が熱っぽいのは通り過ぎた。
今は上半身を起こしたり、
何か持ち上げたりするとわずかに痛い。
うーん、ヨロイ着てるから、
力量加圧が発動するはずなんだけど。
……もしかして、今ヨロイ脱いだら、
結構ヤバいの……?
ぶるるる……。
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>>>ごめんよ……
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「! も、もぅっ、いきなり湿っぽくならないでよ。大丈夫だってば……」
仮面先輩、私にのり移って、
ラクーンの里で暴れたこと、
なんだかんだ、けっこー気にしてるわね。
いや、アレが無かったら、
ぜったいあそこは切り抜けられなかった。
"先見"の感覚も教えてもらったし。
お手玉とか多分、
カーディフいち、上手くなってるわよ。
むぅ……。
「……クラウン、このヨロイって、私の意志で動かす分には、チカラが加算されるんだよね?」
『────肯。現在も適切な力量が加圧されています。クルルスーツを装着していなければ、幾度かその魔物から、振り落とされていると予測。』
「ま、まじか」
『────先代クルルカン同調時の身体への負荷は、治癒速度が早まる事はありませんが、あなたが自身の意志でヨロイを駆る限り、悪化することは無いと予測。』
「ふむぅ……。ま、寝て治すしかないわねぇ……。このヨロイ、意識してチカラ入れとかないと、防御力が下がるのがコワいわね。おへそとか、あと後頭部も丸見えだし……」
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>>>あ それを言うなら そのヨロイ
背中もけっこうパックリ開いてるよね
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「え!? うそ!? そうなの!? えっ!?」
そ、そう言えば……!
あの変態てんちょお……!!
ちょっと考えて作りなさいよっ!!
急所が増えるじゃないのよ!
『────アンティ。"力量加圧"の効果範囲は、頭部を含めた全身です。』
「──えっ」
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>>>──えっ
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…………。
「──おへそも……?」
『────おへそもです。』
…………。
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>>>うそだぁ……
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『────むっ。』
「え、ちょっと待って、混乱してる。な、なに、じゃあヨロイ着てチカラ入れたら、おへそにも攻撃通らないの……?」
『────解。攻撃は通りますが、防御力は格段に上昇予測。頭部にも同様の傾向有。』
「……筋力とかが、強化されてるってこと……!?」
『────頭部の"力量加圧"による強化が無ければ、"殲滅双光"に耐える事は不可能判定でした。』
──ちょ、まてぃ!!
じゃあ何か!?
生身であの回転おさげ繰り出したら、
私は O★DA★BU★TSU かっ!?
「あああァァァ、アンタなんておっそろしいワザを考案してくれたのよぉ……!」
『────異議。あの場で攻撃を申請したのはアンティでした。』
「いやそうだけどなんでツインテなのよぅ……乙女の髪がぁ……」
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>>>あっはっはっはっはっはっはっ
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ちょ……。
なにを軽快に笑ってんのよ、
こんの仮面さんはぁ……。
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>>>ま いーじゃない!
サキの姐さんが言ってた、
"バネ"と"軸" が
形になってきたね!
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「! それって……」
『 バネ 』が"殲滅双光"、
『 軸 』が"視覚域拡張野"、のことかな?
『────……いえ、クルルカン。大変不服ですが、私はあなたの考案した"視覚域拡張野"を、大変評価しています。』
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>>>最初の『大変』いらなくない……?
おお でもまぁ……
クラウンちゃんに褒められると
素直に嬉しい、かなっ!
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『────"軸"の概念を、自身の座標からの索敵として展開する発想は、私にはありませんでした。』
あら、ベタ褒めじゃない。
珍しいわね。
クラウンが素直にクルルカンの事を褒めるなんて。
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>>>うーん さいしょは
サキの姐さんの言った通り
"歯車の軸"として考えてたんだ
けど 歯車しか出せないからなぁ……
ちょっとヒネって考えたというか……
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「む! ど、どうせ歯車しか出せませんよぉだっ!」
『────あなたの"軸"に対して、私の"バネ"は見劣りします。バネ……"機動力"……なにか……。』
お、おぅ……。
クラウンは、
生身で使うとヤバい狂気のツインテールでは、
なにやら納得していないみたいだ……。
「そ、それよか、いくら筋力的に強化できるからって、おへそが丸見えなのは、私としてはどうかと思うんだけど……」
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>>>あー そのヨロイね
可動域をあげるために
絶妙なバランスで
間引いてあるんだと思う……
あんまり装甲で埋め尽くすと
かえって動けなくなるもんなんだ
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「そ、そんな高度な仕様なの……」
へそと背中、丸見えなのよ……。
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>>>昔 ぼくの着てたヨロイなんか
もっとペラッペラだったよ
その仕様だから 避けたり
飛んだり 跳ねたりやしやすいんだよ
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「えええ──……超、納得いかん……」
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>>>あ──……
なんなら 一時的に歯車で
装甲つくるとか どーう?
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「! なるほど!」
それはいいかもね!
『────! アンティ。』
「ん、なに──……」
「かばぁぁあ───!!」
「え!? う、うわぁあああああ──!!!」
────ゴロりんこ。
────バッシャアァァァアン──!!!
プクプクプク……。
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>>>しずんだね……
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『────……しずみましたね。』










