塔とおわかれ さーしーえー
ザッバァァ……。
「…………」
びっちょびちょやで。
前にカーディフでも、川に落ちたことあったわね。
今は地下水だけど。
今日はしっかり、ぱんつ、はいてるわ。
ちょっともがくと、すぐ足がついた。
さっきと同じような、砂が積もった陸地だわ。
……学院の水泳の授業って、
こういう時のためにあるのね。
どうやら、このかば野郎が、
ここに上陸した時に、身体が傾いて、
転げ落ちたみたい。
割とすぐに足をついたけど、
もちろん、ぱんつはアウト。
いつもはごきげんに、
風になびいているツインテールも、
今は肩にひっついて、
だくだくと水が流れ落ちている。
金色の滝だ。
うん、非常に、べちょべちょだった。
水もちょっと、飲んでしまった。
冷えてて、おいしかった。
でも次からは、沸かした後の物をいただきたい。
……ぽたん。
─────────────────────────────
>>>ぷっくくくくくく……
─────────────────────────────
「……クラウン、そっちの先輩って、濡らせられないの」
『────申し訳ありません。現状では不可能判定です。』
「ちっ」
『────体表及び装備品の過剰水分を格納開始。』
────きゅうううううん……
「かばぁぁ〜〜」
「恩を仇で返すとは、いい度胸ね……」
「かば?」
「……」
きょとんとして、こっちを向いている。
うーん、顔がでかい。
頭が物理的に冷えている。
……んあ、怒ってもしょうがない。
『────水分格納中。気化熱が発生。体温調節に入ります。』
────ボッ!
──────ボッ!
何故かクラウンが、ミニ山火事歯車を出す。
……乾かすためかな?
そして、気づく。
ここ、ずいぶん明るい。
火の明るさが、目立たない。
「光が────」
上から、射し込んでいる────。
「塔────?」
目の前の水の上に、
一本の塔が、建っている。
高い。
後ろは崖で、
上には、ポッカリと空が見えていた。
今、立っている砂の足場は、
後ろの鍾乳洞の水と、
目の前の塔が沈む水を、
分け隔てている。
塔の下の水は、綺麗ではあるけれど、
藻や、草などが混ざり、
周りには、わずかな植物が生えている。
「……ここはあなたの餌場ね」
「かばぁ……?」
目の前に広がるのは、崖の上に登る塔だ。
水面近くで崩れた壁の中に、
階段のようなものが見える。
この魔物が通るには、ちょっと、小さすぎる。
わかったことは、
ここが、この秘密の通路の終わりであり、
この魔物は、ここに閉じ込められているってことだ。
「……ねぇ……あなた、ここから────」
「かばばぁ!」
──でたくなぁい?
そう、聞こうとして、
鳴き声に、止められた。
そんな、気がした。
「──……」
「かばぁ〜〜」
────バチャバチャ。
目の前の水で、魔物が遊んでいる。
水面が揺れ、
そこを中心に、波紋が広がっていく。
前にある、大きな塔まで、
それは届いただろうか。
切り取られた空間の中で、
切なさが、残ってしまっている気がした。
「かばぁ〜〜」
「────……」
─────────────────────────────
>>>アンティ……
彼は 何とか ここでやってきた
ちゃんと ここで 生きてきたんだよ
─────────────────────────────
「……うん……」
『────分析完了。対象名:たれぽんの健康状態:良好と判定。極度の飢餓、精神的負担は、今現在まで見受けられません。』
目の前でバチャバチャ遊ぶこいつは、
確かに元気そうだ。
でも、ここからは出られない。
「……この子を可哀想だと思うのは、ひどい事なのかな……」
ポツリと、そんな言葉がでた。
『────……。』
─────────────────────────────
>>>……それはね たぶん
誰にも決められない
決めることが できないんだよ
でも だからこそ 自分で思った事は
大切にしていいと思うよ
─────────────────────────────
先輩が、ちょっと先輩っぽいことを言った。
『────……アンティ。私は予測します。
────この場所だけの食料で、この魔物が生命活動を維持するのは不可能です。必ず、このような植物の生息するポイントが、このフィールド内に、点在するはずです。』
クラウンが、ちょっと気を使ってくれた。
私は……───励まされてるみたい。
「……うん、うん。そだね……!」
魔物の方に、向きなおる。
「かばぁ?」
「……ここまで、ありがと。私、いくね?」
「……かばぁ!」
「……はは、かばって何やねん……」
ヒゲまみれの顔を、
少し軽めに、手でぽんぽんとした。
尾を引く寂しさがあるけど、
行くことにする。
たぶん、もうすぐだ。
もうすぐ────────。
─────きぃん。
よくわからないうちに、
水辺の塔の方に、歩き出していた。
意識しないうちに、
歯車の道は、水の上に仕上がっている。
何かを考えないようにして、
私は塔まで、無心に歩いた。
────きぃん。
────きぃん。
────きぃん。
────────……。
ほんとうは一蹴りで跳べる距離を、
ゆっくりと、歩ききった。
今は、半分水没した、塔の階段にいる。
後ろを振り向くと、
あの魔物が、まだこっちを、じっと見ていた。
あいつは水に入れるはずなのに、
こっちには、ついてこようとは、しなかった。
……何故か、あいつが、
わたしなんかより、ずっと強いような気がした。
「…………っ」
『────……アンティ。』
…………。
…………。
…………────ッ、よしっ!!
────きゅううううううん──!!
『────!』
─────────────────────────────
>>>あ それ!
─────────────────────────────
「──おぉ────ぃい! かばやろうぅ────ぅ!!!」
遠くの魔物に、声を出す。
「……かばぁぁあああ────……!」
緑と黒の果物を、頭の上で振りかざし、
声を。
「くちあけろぉぉおおオオ────!!!」
「かっっ、ばぁあああ────!!!」
……ははっ! そうよっ! その調子よっ!
そのまま、あけてろよ……?
……せ──の──でぇ──っ!!
「────おるぁあァァッ!!」
────ぶぅおおん──……!!
──────……
…………ばしゃこぉ────んん!!!
すいかは、
見事に、あいつのクチんなかで、
破裂した。
「はは、はははははっ……!!」
─────────────────────────────
>>>うわっ ははは! ひでぇなっ!
─────────────────────────────
『────舌部付根への直撃を確認。』
「っじゃあな────!!! かばやろぅ───!! バイバ────ァイッ!!!」
────ブッシャアアアアア────……!!
赤い汁が、
砂の上に撒き散らかされたのを見届けた私は、
くしゃりとした表情をしながら、
塔の階段を、かけ登った。
(*ノД`*)ノシばいば〜〜い!










