"殲滅双光" さーしーえー
「な、にやら、雰囲気がかわったのぅ……!」
目の前で、黄金の娘っ子が、凄んでいる。
おお……敵の守護像が、ビビっとるのぅ……。
最近の若い娘は、こわいのぅ……。
ワシもおこらせないようにしょう……。
というか娘っ子や、
そのマント、伸びすぎじゃろ?
身長の5倍くらいになっとらんか??
ど、どないなっとんのじゃ、
それの仕組みは……。
「キ、キルルルルッ!!」
む、遺跡の守護像どもが、
一斉に、娘っ子の方に行きよった!!
6体同時とは!
あの娘っ子なら、大丈夫と思うが……
さすがにちと、心配じゃの!
ここは教会、大聖堂じゃあ。
娘っ子は今、真ん前におるっ!
結婚式で、新郎新婦がチュウする所じゃなっ!
当然、目の前には長椅子が並んでおり、
真ん中には、愛しあう者達が通る、
一本の道が出来ておる。
残り6体の守護像たちは、
その道を、自然と一列になって、
娘っ子に襲いかからんとす!
最初の一体がきよる!
娘っ子が────と、翔んだッ!!
ま、前に突っ込みながら、とびよった──!!!
────キィィィィイイインンン!!!
うおおっ!
最初の一体は、蹴りで吹き飛ばされよった!
ワシのハンマーの比ではない!
胴に、溶かした飴のように穴が開きよる!
なんつぅ威力じゃあ──!!
あの娘、拳で岩を砕きよるからのぅ……
足の力は、ゆうにその倍を超すじゃろうて!
じゃ、じゃがしかし、娘っ子よ!
空中に留まり過ぎじゃ!!
それでは、残り5体の攻撃を、避けられぬぞ!
ぅおっ! きよった!
「キルルルアァァァ────!!」
うおっ!
あの軌道では、一発はもろうてしまうじゃろう!
上等なヨロイそうじゃし、大丈夫とは思うが!
もし吹っ飛ばされたら、
打ちどころが悪うなるやもしれん!
き、気ぃつけい! 娘っ────!?
─────ギュルルルルルルルルルッ!!!
「─────なっ!?」
な、何じゃと……?
娘っ子の、身体が……空中で、軌道を変えたっ────!?
「何じゃっ!? 今の、不自然な方向転換はっ!?」
宙に浮いた時、その回避行動は、限られてくる!
蹴りこむ地面が無いからのう!
急な方向転換や、回避は無理のはずじゃ!
じゃが……!
この娘っ子、今、
思いっきり、横にズレよった──!!!
───がァァキィィイイインンン──!!!
「キャ──────!!!」
2体目の肩から先が、無くなりよった──!!
今の拳は、見えなんだ──!
この娘っ子の瞬間加速は、べらぼうじゃな!!
────次がきよる!
やはり、そのままでは、くらうぞ!
「キルキルキルキルゥ────!!!」
「はッ──……」
─────ギャルルルルルルルルルッ!!!
ま、またこの音じゃあ!
ワシも、ドワーフの中では、
いっぱしに戦えるほうじゃあ!
動体視力には自信があるっ!!
全神経を集中して、
娘っ子を見る!!
「! あれは、何じゃあ──!!?」
よく見ると、娘っ子の身体中に──、
金色の輪っかが、回転しておるっ──!!?
今度は見えたどっ!!?
腕、腹、腿……いたる所にじゃあ!!
何じゃあれはァ!?
あの、ヨロイの力、なんじゃろか!?
「キルア、ア、ア、ア──────!!!」
集中してるがゆえ、
時が引き伸ばされたように感じよる!
……ん?
あ、あれは……?
娘っ子のそばに浮く、
あの黄金の光は何じゃあ──!!
────ガチィィンッ!!
────ギャルるるァァァ!!!
かっ!
噛み合いよった──!!
次の瞬間、娘っ子の黄金の身体が、
空中で、明らかに不自然な方向に動きよる!!
女の守護像は、的外れな所を蹴り、
ガラ空きになった体に、
強烈な金の一撃をくらいよった!!
わ、わかった!!
わかうたぞ!!
いや、わからんけど、わこうた!!
あの黄金の娘っ子のヨロイは、
身体中に、高速回転する輪っかがついておる!!
何かはわからんがっ!!
そして、娘っ子は、
空中にも、高速回転する輪っかを出しておる!!
何かはわからんがっ!!
そして、そのふたつ……!
"ヨロイの輪っか"と"空中の輪っか"は、
接触した瞬間、強烈な摩擦を生みやがり、
あの娘っ子の身体を、
強制的に方向転換するのじゃ!
あやつ……どこにでも避けれるど!!
並の素早さではないっ!
常識は崩壊しておるっ!!
前に行ったと思えば真横に!!
上にいったと思えば後ろに!!
「く、"空中立体駆動"……とでも言うんじゃろか……!」
あやつに攻撃など、当たるのか──?
そんな気にさえ、させよる、
常識はずれの動きをしとる──!
ジャンプしたと思うたら、
空中で、自由自在に向きを変えよるんじゃぞ──?
──くぃん────!!
────どぉぉおキィィイインン!!!
「おおおっ───!!!」
また、黄金の娘っ子が、
有り得ない方向に、くねりと曲がり、
守護像に、思いっきりヒザを入れよった!
真上に打ち上がり、
ステンドグラスをバックに、
マヌケにへし折れたシルエットが晒されよる──!
「やつは……"無敵"か……!?」
思わず、言葉がもれる。
いや、本当に無敵かなど、わからん。
でも、今、この瞬間。
そう、信じてしまう何かが、ここにはありよる!
「「キルルヤヤヤ────!!!」」
「──む!」
「な、娘っ子────!!!」
2体の守護像が、娘っ子の左右から、
腕と脚を押さえつけにかかりよった───!!
右のヤツが、右手と右足を、
左のヤツが、左手と左足に、体を絡ませよる!
あの腕力を目にして、
振り払われるのはわかっておろうに!!
あれは、捨て身じゃあ──!!
ごく一瞬でも、黄金の勢いを止めるためのっ──!!
向こうさんも、決死の覚悟と言うわけかっ!!
2体に身体を押さえつけられた娘っ子に、
残り1体の守護像が、手刀を突き出しよる!
いま、娘っ子は、四肢を封じられておる!!
まずいッ───!!!
「む、娘っ、────!!!?」
─────ギャルるるルルルルルアアア!!!
─────ギャルるるルルルルルアアア!!!
なっ───────!!!
娘っ子の頭から、黄金の光がふたつ、
目の前の守護像に伸びよる────!!!
なんじゃあれはァぁぁああ────!!!!?
「────ギルルラぁぁああああ!!!???」
娘っ子の頭から伸びた、2本の黄金の光!!
いや……あれは、回転する黄金の輪が、
重なっておるのか……!!?
目の前の守護像は、削岩されよった!
────けずりとられよったのじゃッッ!!
「────ふんッ!」
娘っ子が、首を振るっ!
頭から生える、"一対の黄金の閃光"は、
左右の守護像に、襲いかかりよる────!!!
「「ギルルラァァァ────……!!」」
一瞬で、砕け散りよった……!!
な、なんと……。
2体の守護像は力が抜け、
その体を、地面に預けよる。
────ガガぁぁぁあああ───ん……!!
空に打ち上げられた、3体目の守護像が、
地面に落ち、上半身と下半身にわかれた。
上半身が、娘っ子の前に転がり、
まだ、のたうち回りよる。
────ガッ。
「あっ、踏みよった」
────バキぃ。
「おおぅ……」
あの娘っ子……
あんなに壊したくないとか言っておいて……。
一度、敵だと認めると、
まったく容赦無いのう……!
まだ、娘っ子の頭からは、
2本の閃光が、垂れておる。
なんと……。
最後の3体を倒したアレの正体は、
まさかの、"アレ"じゃったか────。
「────教えといてやる……」
娘っ子が、床の残骸に、吐き捨てよった。
「────ツインテールは……凶器だ」
『────"殲滅双光":冷却に入ります。』
──────きゅううんんんんんん……。
「…………」
……────大聖堂に、静寂が戻りよった。
ツインテールは、凶器だ……!
あ、ピンクさん達、
合体させるの忘れた……(´・ω・`)










