決裂の先
明くる日の放課後、果実は都内にレッスンを受けに来ていた。メンバーと決裂してから初めてのレッスン。顔を合わせるのも、あれ以降は初めてだ。
誰も居ない練習場で果実はメンバーが来るのを体育座りで待つ。普段は一番乗りしたまま自主練を行っているのだが、この時ばかりはそんな気にもならない。自分の気持ちをどう伝えればメンバーに届くのか。ただそれだけを考えていた。
(時間かけて色々考えてるけど、良い伝え方なんて思いつかないんだよなぁ)
抱えた膝に顔を埋める。伝えたい事は明確に決まっているのに、伝え方が纏まらない。そんなもどかしい気分。
一人で頭を悩ませている内にあっという間に時間は過ぎており。
年季の入った扉が開く音と共に果実以外のメンバーが続々と入室して来た。前回の事件である種吹っ切れたのか、メンバー達は果実に目をくれることもなく平然としている。彼女達からの明確な拒絶であろう。
かといって、果実に引くという選択肢はない。
このまま会話もなく一月のショッピングモールでのライブ、三月のテレビ出演、ひいては卒業を迎える訳にはいかない。喧嘩別れのようになるのは嫌だった。何故なら、果実はメンバー達も一人残らず笑顔にしたいのだから。
「ねぇ、ちょっとだけ話がある」
勢いが大事だと感じた果実は、メンバーが腰を下ろす前に話かける。まさか話掛けてくるとは思いもしなかったのか、メンバー一同はギョッとした顔を浮かべた。
「前回の事だけど。ごめん、私は確かに皆の気持ちは考えられてなかった。自分の夢ばっかり考えて、受け入れてもらうのが当たり前みたいに歩み寄る努力は何もしてなかった。本当にごめん。
今さら仲良くしようなんて言わない。私を受け入れてくれなんて言わない。でもファンになってくれた人を笑顔にしたいっていう気持ちは一緒だと思ってる。だから良いステージを作り上げるために本音でぶつかり合おう。今まで以上に遠慮なく、駄目な所はダメって指摘してほしい。私も皆を追い越すぐらいに努力するから」
もっと良い言葉はあったかもしれない。下手をすれば喧嘩腰に聞こえたかもしれない。それでも果実の紛れもない本音であることに変わりはなかった。
本当の意味で果実の視界にメンバーが入った瞬間。
メンバーは一体何があったんだ、と疑問に思わずにはいられない。つい数日前まで焦りや不安を隠し切れず視界の狭かった果実が、今、眩い程の光を携えた眼で自分達を見据えている。その豹変具合にハッ、とセンターの少女は鼻を鳴らす。
「面白いじゃない。ちょっと前まで素人だったあんたに私達が抜かされる訳ないでしょ? 舐められたものね」
メンバーの瞳が果実へ向く。前回涙を溜めて訴えかけていたセンターの少女は大胆不敵という言葉がピッタリな言動を取り戻していて。
「それじゃあ……。改めてよろしく、夏の華の皆。きっと追い越してみせるから」
果実も応えるように威勢の良い言葉を並べた。




