3の4 闇の国
船出してから30日で、闇の国の南端に接岸した。
海流の関係で、随分大回りをしなければならなかった。空を飛んで直進できれば、結構近いかも知れない距離だ。実際は気流も関係するのでそんなに旨くは行かないだろうが。
この国は以前、俺等の小島に漂着した人間の国だ。だから彼等の国の言葉は猿人が分っていた。
海は凪いでいたので、船旅は快適だった。船の周りには魚人が付き添い、水を補給してくれた。浅瀬があれば、教えてくれる。これからは、陸地だ。彼等に待って貰うことはしないで帰って貰った。
彼等のマナは多くない。早めに龍神の国に帰った方が良い。帰りの水は、現地で補給しなければならないだろう。
俺等の代表は熊人の長の俺になった。猿人になって貰いたかったが、彼等は
「気後れする。」
と言った。そうかも知れない。猿人は小さいから、子供と思われるかも知れない。俺なら体格が良いから、気後れなどしない。
猿人にこの世界の言葉を話せるようにして貰ったので、安心して言葉を掛けることも出来る。
暫く行くと小さな村に行き着いた。
なんて粗末な小屋に住んでいるのだ。こんな処にいたら魔獣に襲われてあっという間に喰われて仕舞う。
「こんにちは。俺等は、龍神の国から来ました。お話をきかせてもらえますか?」
俺が、話しかけた途端、彼等は逃げて行って仕舞った。
「魔獣だ!」
と叫ばれた。どういうことだ?魔獣は自我がない。俺等とは違うものだ。
逃げ遅れた子供がいたので話は聞くことはなんとか出来た。彼等には、名前が一人一人に付けられているという。俺等はカルチャーショックを覚えた。
俺等には個々の名前を付けると言う習慣がなかった。只の種族の区別だけだった。そう言えば遙か昔に俺にも名前が有ったことを思いだした。薄ぼんやりした記憶ではあったが。
俺等は取り敢えず、名前を付けることにした。
俺が『熊イチ』次が『熊ニ』その次が『熊サン』と言った、安直なものだが、取り敢えずは満足だ。
「おい、熊ジュウ。ここからどちらに向かおうか?」
「おう、熊シチ。北に向かえば大きな街もあるだろう。」
と言う具合にお互いを無駄に呼び合い、名前が付いた喜びをかみしめた。
「猿ゴ、もうそろそろ街に着くぞ。俺等はまた魔獣に間違えられるだろうか」
「犬サン。そうかも知れない。お土産を渡してみるか。猫人達が、魔獣の革で作った魔法の鞄だ。きっと喜んでくれるだろう。」
街に着いた。俺等は遠巻きにされて、責任者が来るのを待った。
この街も造りは、簡素だった。人口はそれなりだが、俺等の国の比ではない。
少しがっかりした。この闇の国は自分たちの国の名前を持たなかった。只、国と言っている。
そこで、俺等の付けた名前を言って、彼等の国の名を『闇の国』と定めた。
良い気分だった。俺等の事が認められた、瞬間だった。
この国にいる魔獣も少し倒して見せると彼等は益々、感心して、俺等の事を魔獣とは言わなくなった。
闇の魔法の使い方は未だ余り発展はしていない。
闇の魔法は魔法鞄や、影に隠れて逃げたりと使い勝手の良い魔法なのに、龍神が使い方を教えていないせいか、彼等にとって、魔法などいらないもののように思っているようだった。
ここいらは俺等の国と違い、マナが少ない。
魔獣の住むあたりにしかマナが濃くない。
魔法を使おうにも無理なのかも知れない。使い方は教えてきたが、使いこなせないかも知れなかった。
この国に滞在して分ったことは、俺等の国は最高だ。と言う事だった。
達達は帰路に着いた。




