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鉄格子の裏

1959年秋、モンゴメリーの埃っぽい道をトミー・レイはピックアップトラックで走らせていた。夕陽が地平線に沈む中、道端で騒ぎが目に入った。ホワイトフューリアスの若手メンバー、ジェイクとサム、そして新顔の数人が、黒人男性を地面に押さえつけ、拳とブーツで叩きのめしていた。トミーはトラックを停め、近づいた。「何だ、この騒ぎは?」と彼が問うと、ジェイクが血まみれの拳を上げて答えた。「こいつ、白人の女に口笛を吹いてからかったんだ! 俺たちが黙ってるわけねえだろ!」

トミーは状況を理解し、頷いた。被害者の黒人男性はうめき声を上げ、顔は腫れ上がっていた。ジェイクが続けた。「トミー、女たちを守るのもホワイトフューリアスの役目だろ? こいつに分をわきまえさせただけだ」 トミーは若者たちの目に燃える憎悪を見て、満足感を覚えた。「よくやった。教育が行き届いてる」と彼は笑い、トラックに戻った。背後で黒人男性の呻き声が響いたが、トミーの心には何も響かなかった。彼にとって、これは白人の秩序を守る正義だった。



数日後、町の空気はさらに重くなった。ホワイトフューリアスが引き起こした一連の事件——ジョー・ウィルソンの殺害、ベン・カーターの失踪、ルーファス・ジョーンズのリンチ——が連邦政府の注目を引き、FBI捜査官がモンゴメリーにやってきた。警察署長ハロルド・ケインはトミーを署の裏に呼び、厳しい口調で警告した。「FBIが本気だ。ジョーの件、ルーファスの件、全部嗅ぎ回ってる。今動けば、俺もお前を庇いきれねえ。静かにしてろ、いいな?」 トミーは鼻で笑った。「連邦の軟弱者が何だ。黒人どもの戯言で俺たちを捕まえられると思うか?」 ハロルドは黙ってトミーを睨んだ。



その夜、トミーはホワイトフューリアスの仲間と酒場でバーボンを飲んでいた。ジェイクがルーファスのリンチを自慢し、笑い声が響く中、酒場のドアが開いた。FBI捜査官、ジョン・ハリス(40歳)が一人で入ってきた。背広を着たハリスは、酒場の空気を切り裂くような鋭い目でトミーを見据えた。トミーは酒の勢いで立ち上がり、ニヤリと笑った。「よお、連邦の旦那、俺たちと一杯どうだ?」 彼はバーボンの瓶を差し出し、カウンターにグラスを置いた。

ハリスが席に着くと、トミーは酒を注ぎながら語り始めた。「お前も知ってるだろ? 公民権運動ってのは、黒人どもと白人の歴史的な戦いだ。南北戦争から続く聖戦だよ。俺たちは最前線で戦ってる。お前みたいなよそ者が邪魔すんな。何もなかった、書類にそう書けばいいじゃねえか」 ハリスはバーボンを一口飲み、冷たく答えた。「お前たちはただのクズだ。日頃の不満を黒人に押し付けて、暴力を振るってるだけだ。正義? 笑わせるな」 ハリスはグラスのバーボンをトミーの顔に叩きつけた。

酒場の空気が凍りついた。トミーの顔からバーボンが滴り、怒りが爆発した。「てめえ、俺たちを侮辱するか!」 彼はハリスに殴りかかり、酒場は乱闘に発展した。ジェイクとサムも加勢したが、ハリスは冷静にトミーの腕を捻り上げ、床に押さえつけた。地元警察が駆けつけ、トミーは手錠をかけられて留置場に放り込まれた。酒場の客たちは黙って見つめ、ジェイクは悔しそうに拳を握った。


留置場の冷たい鉄格子の中で、トミーはハロルドに罵られた。「安い挑発に引っかかりやがって! FBIは別件で拘束して尋問するつもりだ。お前が何か喋れば、ホワイトフューリアス全員が終わりだぞ!」 トミーは血まみれの口元を拭い、嘯いた。「証拠なんかねえよ。黒人どもの証言だけで何ができる? 俺は黙ってりゃいいんだろ?」 ハロルドは吐き捨てた。「お前、FBIを舐めるな。連中は証拠を掘り出す。ルーファスの遺体、カーターの失踪、全部繋がってるんだ」 ハロルドは去り、トミーは鉄格子を睨んだ。

留置場の薄暗い光の下、トミーの胸には怒りと不安が渦巻いていた。ホワイトフューリアスの戦いは正義だと信じていたが、FBIの足音は近づいていた。黒人コミュニティの教会では、ルーファスの歌が密かに歌われ、ジョーの妻マリアはFBIに新たな証言を届けていた。モンゴメリーの闇は、ゆっくりと光に晒され始めていた



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