《1》
「今日中に、ですか?」
目の前で手を合わせてくる同僚へ、遠慮がちに尋ねる。
由良心春、二十七歳。
都内大学病院事務部勤務。在籍は総務課総務係、役職はなし。
対する相手は、後輩職員の多賀部さんだ。
無理を言っている自覚がなくもないのか、ひとつ年下の彼女の目は微かに泳いでいる。
「はい。難しいですか?」
立ったまま頭を下げる多賀部さんの視線は、座る私を相手にしているにもかかわらず、かなりの上目遣いだ。
彼女が作成を担当している教授会資料に、定時ぎりぎりになってから差し替えが生じたらしい。
多賀部さんの仕事に手を貸すのは珍しいことではない。ただ今日は、他部門からの問い合わせが朝から相次ぎ、私自身が抱える別件の報告書にもろくに手をつけられていない状態だ。
そっと時計を確認する。
午後六時二十分。今日の帰りは遅くなるかもな、と諦めの気持ちがよぎった。
「本当に申し訳ないんですけど、今日はこれ以上残れなくて……頼める人、由良さんしかいないんです」
零れかけた溜息をなんとか噛み殺す。
そんなふうに頭を下げられては断れない。
総務係の正職員は、係長と私と多賀部さんの三人だ。
他に四名の契約職員がいるけれど、契約職員には残業をさせないという暗黙の規則があり、多賀部さんが残業を頼むとなると、その相手は必然的に私になる。
多賀部さんと隣同士の席で働くようになって間もなく二年、彼女はいわゆる〝陽キャ〟の華やかな美人だ。
そんな多賀部さんとの個別のやり取りには、いまだに強い緊張を覚えてしまう。
角が立たないように。相手を不快にさせないように。
そう頭をひねっては、もう何度も同じ選択を繰り返している。
「分かりました、やっておきます。明日、朝イチでチェックだけお願いできますか?」
「いいんですか!? ありがとうございます!」
「いいえ。困ったときはお互い様ですし」
お互い様、と自分で口にしておいて気落ちしそうになる。
社交辞令だ。私が多賀部さんに、残業を強いてまでなにかを頼んだことは一度もない。とはいえ、そう言っておけば角が立たない。それだけ。
「それじゃあお先に失礼しますね、本当にありがとうございま~す!」
「はい。お疲れ様でした」
資料を共有した後、大きくお辞儀をして、多賀部さんはフロアを出ていった。
その背が見えなくなるまで見送った頃、今度は係長から声がかかった。
「あ、由良さん空いた?」
「はい。なんでしょうか」
「頼んでた来月の懇親会の出欠確認、事務局内の……あれってどうなってる?」
懇親会、と鸚鵡返ししながら頭を切り替える。
多賀部さんから渡された差し替え関連のメモを一旦デスクの横に積み、私は棚から出欠表のバインダーを取り出した。
「ええと、そちらはですね……」
係内で一度回覧の済んだ表には、さまざまな筆跡の丸印がついている。
七人分の枠には、まだ印がついていない箇所もあった。
「保留にしている人がまだふたりいますね」
事情を説明すると、係長は「引き続きよろしく」と短く告げて自席へ戻っていった。
そのまま彼も帰り支度を始め、ああ、今日残るのは私だけみたいだな、と苦笑が零れた。
当院の事務部が抱える業務は多岐にわたる。
中でも私が在籍する総務課総務係は、委員会や会議の資料作成、各省庁への報告、イベントスケジュールの企画や調整、他部署同士のパイプ役、さらにはクレームの初期対応と、さまざまな業務が次から次へと集まってくる部署だ。
担当がはっきりしていない業務も、最後にはだいたい総務課へ、そして我が総務係へと流れ着いてくる。
自席のパソコンに視線を向け直し、共有してもらったファイルを開きながら、多賀部さんのメモを眺める。
外科の教授から指示が入ったという調整は、指摘箇所こそ多いものの、そう複雑ではなさそうだ。これならあまり時間をかけずに終わらせられるかな、と目測を立てる。
自分の報告書は、明日の朝、早めに出勤して済ませればいい。
「じゃあお先します、お疲れ様。あまり遅くならないようにね」
「はい、気をつけます。お疲れ様でした」
少し気遣わしげに係長が退席していき、フロアにはぽつんと私ひとりが残った。
取りかかる前にお茶でも淹れよう、と給湯室へ向かうことにする。
フロアを出ると、多賀部さんともうひとり――秘書室所属の、多賀部さんの同期だ――が、揃ってロッカールームから出てくるところだった。
顔を合わせたら気を遣わせるかも、と咄嗟に柱の陰に隠れる。
「ていうかあんた、急ぎの仕事まだ終わってないんでしょ? 帰って大丈夫なの?」
「あは、さっき先輩に頼んじゃった!」
ぴく、と肩が小さく跳ねる。
隠れて良かった。気まずすぎる。
「今月まだなにも頼んでなくて良かった~、あれもこれもって頼むのは気が引けるし」
「ああ、頼みごと、全然断らない人なんでしょ? 〝便利屋〟の由良さんって秘書室でも有名だよ」
「ね~、由良先輩も嫌なら断ればいいのに。いや断られてたら今日はあたしが困ったんだけどぉ」
遠のいていく笑い交じりの声を聞きながら、全部聞こえてますよ、とつい口元が緩む。
従業員用の出入り口へ向かうふたりの声が完全に聞こえなくなってから、私は再びそろりと足を動かした。
いつからだろう。便利屋、なんていうあだ名がついたのは。
ここ最近の話ではない。今では事務部のみに留まらず、一部の医局スタッフたちにまで知られているらしく、このところはますます気まずい。
仕事も仕事以外の雑用も、人から頼まれたら断れずに引き受けてしまう。私にはそういう癖がある。
なんにしても角が立たないように、と考えがちなこの性格のせいで損をしまくっている自覚はある。
それでも、角が立つのは嫌だからこうしている。
「よいしょ……あれ、軽いな」
茶葉を出そうと棚に手を伸ばしながら、独り言が漏れた。
手に取った茶筒の中には、予想通り、微妙な量の茶葉しか残っていなかった。補充するか、と小さく息をつく。
別に私がやらなくても誰かがやる。
率先してやるのは私くらい、というだけで。
溜息が零れかけ、私は慌てて口を噤んだ。
*
残務を終えてアパートに到着した頃には、時刻は午後九時手前だった。
六月が近づいている。だいぶ日の長い季節になったとはいえ、この時間にもなれば、辺りはどのみち真っ暗だ。
病院事務局の就業開始時刻は午前八時十五分。明日は二、三十分早めに職場へ向かい、今日中に終わらせる予定だった報告書を早急にまとめなければならない。
今日は火曜だ。週の半ばに、普段より早く出勤する日が挟まるのは堪える。とはいっても仕方がない。
「ただいまぁ」
誰もいない木造アパートの玄関で呟き、バッグからスマートフォンを取り出す。
帰り際のロッカールームで確認したときすでに三件入っていた着信履歴は、さらに一件増えていた。
相手は、実家の父だ。
内容は予想できたから、折り返さないまま帰路に就いた。
後回しにしたいという私の我儘のせいで、忙しい父にわざわざ何度も電話させてしまった。申し訳なさと苦々しさが混ざり合い、複雑な気分になる。
父は、大手の製薬会社『岩永製薬株式会社』で専務を務めている。
先日、その関係で私に縁談を持ってきた。本来なら妹が引き受けていた縁談を。
お見合いは今週末に迫っている。
スマホの画面を切り替え、スケジュールアプリを開く。日も迫ってきたことだし、おそらくは日時や場所に関する細かな連絡、もしくはその確認だろう。
メッセージをもらえれば十分だ。むしろそのほうが確認しやすいのに。
胸の奥がちりりと焦げつく。その浅い焦げつきこそが、私の気分を一層塞いだ。
シャワーを浴びる前に用件を済ませてしまいたかった。
急ぎ足で洗面所へ向かい、手洗いを済ませてから、私は再びスマホを手に取る。父の低い声は、三回目のコールの後に聞こえてきた。
『もしもし。心春か?』
「うん。ごめんね、残業で遅くなっちゃって。週末の話?」
『……ああ』
わずかとはいえ、肯定までに間があった。
早々に用件を確認した私が、早く電話を終わらせたがっていると、今のやり取りだけで勘づかれたのかもしれない。
お見合いの場所と時間を確認される間、うん、うん、と相槌を挟むだけに留めた。
別にわざわざ電話でなくても、という程度の情報共有をひと通り済ませてから、父はふっと黙り込んだ。真の用件はここからなのかな、とふと思う。
縁談の相手は、私が勤める病院の医師だ。
当初、妹はかなり乗り気だったらしい。父と同じ岩永製薬に勤める妹は、お見合いの前にうちの病院を訪れ、その医師と接触し、勝手に幻滅し、お見合いそのものを拒否して突っぱねたと聞いている。
困った父は、妹の代わりに、私に白羽の矢を立てた。
私は、妹が相手に迷惑をかけた上で拒否した、妹の〝お下がりの縁談〟を引き受けている。
『心春』
降りていた沈黙を裂いたのは、父の遠慮がちな呼びかけだった。
父の声はどこか申し訳なさそうで、居た堪れなくなる。父自身、引け目に感じてはいるのだろう。
よりによって、相手は私の職場の医師だ。病院には製薬会社の業務という名目で訪れたそうだから、妹はきっと彼に名乗っただろう。名字が同じである以上、私があの子の身内だと割れるのも時間の問題だ。
つまり、今回のお見合いはまず成立しない。
向こうから断ってくる。最初からそう決まっているようなものだ。
私に求められているのは、当日、角を立てることなく妹の失礼を謝罪し、すでに良くはないだろう相手の機嫌を取り持ちつつ、うまいこと立ち回る役回りだ。
「なに?」
『その、なんだ。もし先方から嫌なことを言われたりされたりしたら、そのときは』
「あぁ、大丈夫大丈夫」
父の言葉を遮り、わざと軽い口調を取り繕いながら、私はひと息に続ける。
「サクッと断ってくれると思うんだよね、八坂先生なら」
しん、と再び沈黙が落ちた。
電話越しの父は言葉を失っている。私が悪いことをしている気分になって、居た堪れなさに拍車がかかった。
妹の代わりに割りを食うのは、別に今回が初めてではない。
父はその都度申し訳なさそうにするけれど、結局は押しつけてくるのだから、そろそろ慣れてほしいなと思う。
私が、今回の縁談のせいで今後仕事をしづらくなってしまうかもしれない可能性を、きっと父は懸念してくれている。
それは分かる。でも、この話をなかったことにしてくれるわけではない。
妹を――血の繋がりのない後妻の連れ子を、父は、実の娘である私よりも遥かに可愛がっている。
「ええと、もういいかな。これからお風呂なんだ」
『あ……そうか。すまんな』
「ううん。また連絡するね、おやすみ」
一方的に告げ、半ば強引に通話を終わらせた。
液晶画面の通話終了ボタンを雑にタップした途端、ふ、と苦々しく吐息が漏れる。
――母が亡くなったのは、私が八歳、小学三年生の年だ。
その三年後、父は今の妻、阿佐子お母さんと再婚した。
今回の縁談を先に引き受ける予定だった妹というのが、阿佐子お母さんの連れ子である世梨奈だ。
世梨奈が今回の縁談に乗り気だった理由。それでいて相手に幻滅した理由。そして、お見合いを拒否した理由。どれも簡単に想像がつく。
さっき電話越しに口に出した医師の名と、ついでに彼の顔も思い浮かべる。あの子ならまぁそうなるだろうな、と改めて妹の言動の一部始終に納得してしまう。
脳神経外科の医師、八坂崇大先生。
院内の有名人だ。医師一族の御曹司で、海外帰りのエリートでもある彼は、医療のこと以外はまるで無関心、かつ無愛想な偏屈医師として知られている。
世梨奈は、仕事という建前で〝お見合いの下見〟のために当院を訪れ、八坂先生と個別に接触を図った。
八坂先生の、いかにも冴えない印象の外見が、ぼうっと頭に浮かぶ。
十中八九、世梨奈は先生のビジュアルに萎えたのだ。
医師の家系。海外帰りのエリート。そうしたステータスに惹かれてお見合いの下見をするほど乗り気だったのなら、落差も大きかったに違いない。
分厚い丸眼鏡に、目元がすっかり隠れるくらい無造作に伸びた髪。外見に気を配る気がなさそうな風貌に加え、八坂先生はとにかく無愛想だ。日頃関わりのない一事務員の私でも、取っつきにくそうで怖いな、と感じる程度には。
父の話では、妹は『あんなの詐欺でしょ』とか『態度悪すぎ』とか、自分の言動を棚に上げてかなり憤慨しているらしい。
おおかた、邪魔でもして注意のひとつやふたつ受けたのでは、と尖った想像が働いてしまう。
オブラートに包むという概念を無視した八坂先生の口頭注意……かなり容赦がなさそうだ。私たち院内スタッフはある程度そうした想像ができるけれど、確かに、初対面の部外者はそうはいかないだろう。
はぁ、と溜息が零れた。
職場の医師との縁談なんて、本当なら引き受けたくない。妹が失礼を働いた後だと判明しているのだから、なおさら。
とはいえ相手は八坂先生だ。
特段取り柄のない私のような人間を、彼がわざわざ伴侶に選ぶとは思えない。彼は名門家出身のエリートで、さらにはまだ三十歳を過ぎて間もないのに、すでに腕の立つ名医として数えられている。
現病院長の教え子でもある彼は、病院執行部からの覚えもめでたい。外見も愛想も、医師の実力には関係ない。診察やオペといった医療技術はもちろん、研究者としての評価も相当に高いと聞く。
――それに、八坂先生は、本当は。
冴えない眼鏡の顔がまた脳裏に蘇る。
たった一度だけ、それも一瞬、偶然見かけたことのある彼の素顔も、同時に頭を掠めていく。
「……はぁ」
よぎった記憶を掻き消すために、わざと溜息をついて気を逸らした。
なんにしても、向こうから断ってもらえれば角も立たない。
お下がりの縁談自体は父の面子のためにも無事に成立させ、相手側から断ってもらい、今後の自分の仕事に支障が出ないようにする。それが今回の私のゴールだ。
いつの間にか家族の間でもすっかり便利屋のポジションだな、とうっかり笑いそうになる。自分のことなのに他人事みたいだ。
心の奥では分かっている。妹ばかり可愛がる父に、私は、昔のようにまた私を見てほしがっているのだと。だから実家を離れて数年が経つというのに、私にとって損しかない世梨奈の尻拭い役を、いまだ断れずにいるのだと。
浴室へ向かってシャワーを浴び、ルームウェアをまとって脱衣所を出る。
充電中のスマホを、髪を乾かしながら確認すると、着信履歴とメッセージの通知が届いていた。
両方とも、世梨奈からだった。
ドライヤーを持つ手があからさまに震える。
着信は十分前、メッセージは三分前。メッセージは立て続けに三通届いている。緊張とともに、私は通知からメッセージアプリを開いた。
『こはるちゃん、お見合い頑張ってね』
『同じ病院の先生なんだってね』
『うまくいくようにお祈りしてま~す』
……他人事すぎる。
不自然に明るい絵文字に溢れたメッセージに白々しさを感じてしまい、自然と口元が歪んだ。私が電話に出なかったからメッセージに切り替えたのだろう。
電話だったらなにを言われていたかな、と想像して気が重くなった。
世梨奈は私を好いていない。阿佐子お母さんも。
父が再婚して間もない頃から、ことあるごとに不躾な態度を取られてきた。父の目が届かない場所やタイミングで、ずっと。
昔から、世梨奈は父が大好きな子だった。
私よりふたつ年下のあの子は、当時、優しい父親ができて嬉しくて堪らなかったみたいだ。
ただ、当時の父は、母亡き後に継母を迎えた私のこともよく気に懸けてくれていた。
父を独り占めしたい世梨奈にとって、それが本当に面白くなかったのだと思う。
父が出張のお土産にくれたガラス製のペン立てを、世梨奈が異様なほど欲しがったことがある。『あたしもそれが良かった』とわんわん大泣きされて、どうしたらいいか分からなくて、私はただおろおろするしかなかった。
どうするのが最良だったか、答えは今も出ていない。どちらにせよ、いずれ嫌われていたのでは、という疑念から逃れられずにいる。
長い間、私は我慢を選んできた。
母を亡くして悲しみに暮れる父の姿を間近に見ていたからこそ、阿佐子お母さんと幸せそうに笑い合う父の邪魔をしたくなかった。
だから耐えた。忙しい父に余計な心配をかけたくない――子供ながらにそんな思いもあった。
出張土産の一件後、父に『世梨奈ちゃんの前で私を特別扱いしないで』と強く訴えた。
それを機に、父は私と明確に距離を取り始めたように思う。
父が私を気遣えば気遣うほど、妹は父に隠れて私につらく当たる。阿佐子お母さんも、そのたび世梨奈に寄り添って私を睨みつけてくる。
どうするのが正しいのか、はっきりした答えを見つけられないまま、私たち家族の間に横たわる溝は深まる一方だった。
まだ乾ききっていない髪にドライヤーを当てながら、気が重くなる。
幼い頃のことはあまり振り返りたくない。健気だった小さな自分がどんな顔をしていたか、思い返すたび惨めな気分になるから。
「……仕方ないよね」
自然と、細い呟きが零れた。
私は私で、父に対して引け目を感じている。大学への入学を機に、父の反対を押し切って実家を出たのは他ならぬ私自身だ。
就職先もひとりで勝手に決めた。父から『相談してほしい』と言われていたにもかかわらず。
母が生きていた頃のように父に愛されたい。そう願う気持ちは、確かに今も、私の胸の奥にある。
でも、それは常に〝無理だ〟という諦めの気持ちとセットだ。そして諦めこそ年々強まっていく。今日だって、私を心配してわざわざ電話をかけてきてくれた父へ、素っ気ない言葉ばかり返してしまった。
ドライヤーのスイッチを切り、小さく息をつく。
世梨奈の尻拭い役は今回が初めてではない。華やかな美人である世梨奈には、顔の広い父の影響もあって、頻繁に縁談が舞い込んでくる。
世梨奈が結婚相手に求めるハードルは高い。相手の経歴に気に入らない点がひとつでもあれば、あの子は首を横に振る。
父を介する縁談の場合、毎度相手の顔色を窺いながらそつなくお断りする役が、たびたびこうして私に回ってくる。
そういう場ではかなり気を遣うし、骨も折れる。この手の役回りはそろそろ終わりにしてもらえないかな、というのが私の本音ではある。
けれど、父が私を頼ってくれる機会なんてもうこれくらいしか――そう思うとどうしても断れない。
とにかく角が立たないように。
世梨奈の逆鱗にも、極力触れずに済むように。
慎重に指を動かし、私は、当たり障りのない返信の文面をスマホに打ち込んだ。




