8.聖女、盗賊家業を頑張る
私が盗賊団を手に入れてからひと月が経ちました。
拠点はユーリの手によって快適な環境になり、部下の皆さんの識字率も高まってきました。
そんなわけで、ボスである私も日々の盗賊家業に精を出しています。
「ヒャッハー!! 食べ物と金目の物を置いていってくださいねー!」
「うわっ! なんだコイツ!?」
うら若き乙女を前に「なんだコイツ」とは失礼なオッサンですね。
「もう一度言います。食べ物と金目の物を置いていけば命は助けてあげますよー!」
馬車の上で呆けているバーコードハゲのおっさんに再度そう告げました。
木の影から部下が姿を現し、馬車を取り囲みます。
「おいおい、まさかこの嬢ちゃんが盗賊なんて言わないよな?」
「この人数で俺らを相手しようってのか? 絶対バカだろコイツら」
「全く……どんな相手でも油断はするなって」
「その通りだな」
馬車から四人の男たちが降りてきました。
見た目からして雇われの冒険者でしょう。
相手は四人。
対してコチラは私を入れて五人。
人数的に一人優位ですが……くっ、だめかもしれません。
「ボス。終わりましたよ」
「ご苦労様です」
特に問題もなく制圧できました。
日々ユーリと私が鍛えているのでこの程度の相手は問題ありませんね。
なんかCランクがどうのこうの言っていましたが何でしょうね?
たまには不利な状況になってみたいものです。
なったらなったで、部下の出来が悪いので更なる訓練が必要なだけなんですけどね。
「はーい。ではそこのアナタ、金目の物と王都へ行くまでの食料以外は置いていってください」
「え、あ、わ、わかりました!」
「あとそこに転がっているのも持って行ってくださいねー」
私の部下により身包みを剥がされた護衛を指差し商人らしき男を見逃しました。
流石の私といえども、殺すほどの悪行を行ったりはしません。
それだと我が盗賊団の評判が轟かないので意味がありません。
…………まあ、誰にもバレずに盗賊をするなら目撃者は生かしておく必要はないんですけどね。
しかーし! 今回はとある目的があるので誰も殺さずに王都へ人を送っているのです!
その理由とは何か! それはそのうち判ります。
私の予想ではそろそろな気もしますが……あのボケカス共のことなので後回しにしそうですね。
ここいらで権力者の子息とかがこの道を通ってくれればいいのですが……
<「俺の雇い主は貴族様と繋がりのあるお方だからな! 覚悟しておけー!!」
そんな捨て台詞が聞こえてきました。
どうやら今回のゴミは当たりだったようです。
戦利品を絨毯の上に移動し終わった部下たちに告げます。
「はーい。ではアジトに帰りますよ~」
「「「「「うーっす」」」」」
◇
アジトへ到着。
私たちを出迎えたのは大きな頭蓋骨。
かつて私が殺したこの森の主の物です。
これのおかげで我がアジトへ近寄る魔物はいなくなりました。
悲しいことに人間というのは自然の中では最底辺に近い生き物です。
なので魔物たちからすると、楽に狩れる食べ物として認識されています。
ですがここに森の主の頭蓋骨があればどうでしょう。
誰も彼もが「近寄らんとこ……」となるわけです。
そんなわけで夜は見張りの必要もなく、みんな仲良く就寝できるのです。
「あっ、おかえりなさいボス!」
「ただいま戻りましたよ~。貴方たちは戦利品の仕分けをしてきてください」
「「「「「うーっす」」」」」
絨毯を引き連れた男たちがアジトへ入って行くのを見送り、出迎えてくれたアイリが用意した椅子へ腰掛ける。
するとすぐに肩を揉み始めてくれました。
盗賊活動を終えて疲労困憊なので、こういう労いは実に良いものですね。
「また甘やかしてる……」
「何言ってるんですか。ボスは私たちの恩人なんですよ? ユーリさんが厳しすぎるんです!」
「もっと言ってやってください」
「ほらな、すぐ調子に乗るんだよ。適度に厳しくしないとダメ人間一直線だぞコイツは」
「その時は私たちでお世話します!」
ユーリは眉間を押さえ「やれやれ……」と言いながら私の隣に腰掛けました。
「何かありました?」
「まあな。例のヤツが明日にでも完成するから、そろそろ俺もそっちに加われるぞ」
「それは素晴らしい報告ですね。装備の類はどうですか?」
「奪った装備やら元の装備を直したりして全員分は揃ってるよ」
「よろしい! では二日後から本格的に動くとしましょう。私の見立てではそろそろな気もしますし」
今回襲った連中がどう動くか次第ですね。
本当に貴族と繋がりのある連中なら期待大です。
そのままアイリのマッサージを受け続けてもいいですが、私も準備をする必要があるのでアジトの中へ——
◇
なんということでしょう。
岩肌が剥き出しだった洞窟がたったひと月で素敵なアジトへ早変わり。
壁や天井は木の板で補修され、食料庫、宝物庫、食堂、部下(男女別)の寝室。
そして私とユーリそれぞれの個室が出来上がってるではありませんか!
……まあ出来たのはだいぶ前の事なんですけどね。
「何ブツブツ呟いてるんだ?」
「いえ、アジトの説明を復唱していただけです」
「また訳の分からんことを……」
「私は御夕飯まで寝てるので、あとはお願いしますね~おやすみなさ~い」
「はいはい、お休み」
自室へ戻り、鍵をかける。
部屋には私一人。
やる事は一つしかありませんね。
ベッドの下に隠していた木箱を取り出し、中にしまっていた物を手に取る。
棒状の物の先端を体に押し当てると——
「ブエッ」と拳大程もあるナニカから音が鳴りました。
ふ、ふふふ……な、なんて変な音!
一体何に使うのかさえわからないこのフォルム!
この見た目と性能で値段は酒場のお酒4杯分という無駄に高い値段設定!!
いいですね~、実に良き。
他の何に使うのか分からないシリーズをベッドに広げ、一つ頷く。
うんうん、やはりいいものですね。
ユーリが見たら「捨てろ」と言うんでしょうが、私からすると宝物に匹敵する品々です。
たまたま襲った商人がブエッと鳴る棒を持っていた時は魂が震えました。
きっと運命だったのでしょう。
しかもこの棒は強く振ると先端がびんよよよと伸び、離れた相手へブエッを届けてくれます。
壁に向けて棒を振り、当たる度にブエッと音が鳴る。
それを繰り返しているうちに眠気がやってきたのでそのまま寝ることにしまし——グウzzZZ
◆
セレナの部屋の前で待機していたアイリは、通りかかったユーリに声をかけた。
「あのユーリさん」
「何だ?」
「ボスってなんであんなわけのわからない物を集めているんですか? 今も部屋からブエッブエッと音がしてますし……」
「あー、アイツは感性が人と違うからな。気にするだけ無駄だ。知らないフリしといてくれ」
アイリの疑問にユーリはそう答えた。
「そうそう。セレナが運営資金でそういうのを買おうとしてたら止めてくれ。もしくは俺に報告してくれ」
「わ、わかりました。……あれ、音が」
「ん? ああ、遊び疲れて寝たんだろ。夕飯の準備ができたら起こしてやってくれ。じゃ俺はやる事あるからもう行くぞ」
去っていくユーリを見送り、このまま待機する必要はないと判断したアイリも自分の仕事へと向かった。
部下の男ども 15名 5/15
カイン :盗賊団の元リーダー。強さは団の中で3番目くらいだった。人をまとめるのが上手いのでリーダーになった男。
キース :酔うと誰彼構わすキスをする男だが、元奴隷の女の子たちにはしないくらいの理性は残っている。
クラウド:自分のことを元ソルジャーだと思い込んでいる厨二病患者。
ケビン :特徴なしな男。
コール :コール入ります 迷子の子猫に(Love me do!) はーい今日は(Foo!)あなたに(Foo!) 届ける(Foo!) 魔法の(Foo!) 煌めく夜空とシャンパンタワー




