5.聖女、盗賊になる
「はい、ちゅうも〜く。今日からこの盗賊団は私の支配下になりました! 文句がある方は直ちに名乗り出てください!!」
私の言葉にその場の誰も反論しませんでした。
なので、この盗賊団は私の支配下となりました! テッテレー
「では、私が今日からあなたたちのボスです! 私のことはボスと呼ぶように! いいですね?」
目の前の私の部下たちはポカーンと口を開けています。
あまりの嬉しさに言葉を失ったのでしょう。
仕方のないことです。
なぜなら!
この私の庇護下に入れたのですから!!
「あの……ひとついいか?」
「はいどうぞ。えーっとお名前は?」
「カインだ」
カインと名乗る男。
恐らくこの盗賊団の前のリーダー格だったので、いきなり現れた私に物申したいのでしょう。
いいでしょう。
正面から受け入れ、どちらがボスに相応しいのか決めようじゃあないですか。
シュッシュッとシャドーボクシングをしながら、カインの言葉を待ちます。
「アンタは「ボスと呼んでください」……ボス。ボスは何故俺らの盗賊団を乗っ取ろうと思ったんだ?」
乗っ取るとは人聞きの悪い。
平和的な話し合いの元、私がボスになると決まったというのに——やれやれですね。
「理由なんてありませんよ? 強いて言うなら、あなたたちはそこそこまともな盗賊だった。ただそれだけです」
「……もしも、俺らがまともじゃなかったら?」
「殺します」
奴隷の女の子たちに酷いことは一切していない所を見るに、倫理観はそれなりにまともな人たちなんでしょう。
私だって誰彼構わず悪逆非道の限りを尽くすような連中のボスなんて、なりたくはありません。
そういう連中はサクッと殺すに限ります。
一番最初に出逢ったのがこの方々で助かりました。
盗賊ガチャをする手間が省けましたからね。
私の殺す発言に手下たちは、また押し黙ってしまいました。
空気が悪いですねぇ。
こういう時は体を動かして、さっさと気持ちを切り替えてもらいましょう。
「他に意見のある人はいませんね? ではこれから拠点の掃除をしますよー!」
◇
我が盗賊団の拠点——と言っていいのか……コレはただの横穴ですね。
森の中にある切り立った小さい崖の下に、自分たちで掘ったであろう横穴が一つ。
洞窟の中や外には乱雑に物が置かれ、一番奥には寝床と思わしき草を敷き詰めたスペースがあるだけ。
こ、これは……やりがいしかありませんね…………
「ユーリ」
「なんだ?」
「木材の加工をお願いします」
「わかった。とりあえずベッドと椅子とテーブルあたりから作るか」
何を隠そう、ユーリは鍛治以外にも大工も出来るのです。
店があの状態なのでもっぱら大工現場で日銭を稼いでいました。
なので大工としての腕前はそれなりにあります。
家具の制作はユーリに任せて、私は洞窟の拡張工事をするとしましょう。
「はいはい皆さん。洞窟内の荷物を外に出してくださ〜い」
手下たちが洞窟内から荷物を運び終わり、中に人がいないことを確認……ヨシッ!!
両手を腰の横に引き、呪文を唱えると同時に両手を洞窟へ向かって——突き出す!
「〈輝く爆風〉!!」
セレナの両手から放たれる眩い光のレーザーは洞窟内を蹂躙し、奥深くへとその傷跡を残した。
それは先程までのちっぽけな洞窟が大きな洞窟へと変貌するほどの威力だった。
セレナの両手からは先程の残滓ともいえる魔力の残りカスがチリチリと煌めき消えていく。
「——うん。いい感じですね」
「あ、あ……あわゎぁ…………」
何故か手下たちが地面に座っています。
私を働かせておいて、自分たちは休むとは……まあいいでしょう。
これからのことを考えると、ゆっくり出来るのは今日くらいです。
「では皆さん! 役割を分担しますよー」
手下の15人にはユーリの指示に従ってもらうとして、私は元奴隷の女の子たちを引き連れその場を離れることにしました。
◇
バシャバシャと水飛沫を飛ばしながら、女の子たちと水浴びをしています。
キャッキャウフフ。
皆さんなかなかに汚れていたので綺麗にしないといけませんね。
〈清潔魔法〉を使えば簡単ですが、今の私は水浴びがしたいのです。
川は水が冷たくて心地いいですね〜。
川の中で肩まで浸かっていると一人が意を決したように口を開きます。
「あ、あの……!」
「んー? なんですか〜?」
「く、首輪を取っていただき、ありがとうございます!」
「「「「ごさいます!」」」」
「お気になさらず〜。それでどうします? あなたたちも私の盗賊団に入りますか?」
そう、彼女たちは元奴隷であり正式な盗賊団の一員ではありません。
必要なら生まれた村や町に連れていくのもやぶさかではありません。
乗りかかった船というやつですね。
私がそのことを伝えると。
「いえ……私たちに帰る場所はありませんので……」
おっと、やぶ蛇でしたね。
まあ考えてみれば奴隷だったのですから、親に売られたか、奴隷商に攫われたかのどちらかでしょう。
「我が盗賊団は絶賛入団者を募集中ですよ〜」
女の子たちは一度顔を見合せ、一人が代表して言った。
「雑用でも何でもしますので、どうか私たちを仲間に入れてください!」
私の答えは一つ。
「オーケーですよ〜」
バシャッと水の中から立ち上がり手を差し伸べる。
「私の庇護下に入る貴女たちは今後。何があろうともこの私が助けて差し上げます。これからよろしくお願いしますね?」
「——っ! は、はい!」
新たに手下が5人増えました。テッテレー
◇
水浴びをしてサッパリしたのでアジトへ帰ると。
ユーリが周囲の木を切り倒し、木材に加工。
そしてその木材を使って各自ベッド、椅子、机を作っていました。
「なんだ、もう戻って来たのか? まだ全然出来てないからお前らは休んでてくれ」
「私は自分のベッドを作るので木材をください」
「セレナのはもう作って洞窟の奥に運んであるよ。見て来てくれ」
「さすがユーリですね。さすユリです」
さっそく自分の寝床となるべき場所を確認しましょう。
ほおほお、成程。
なかなかいい出来のベッドです。
王城から持ってきた寝具を早速敷き、寝心地を確かめます。
……うーん、悪くない。
むしろ王城よりも良い寝心地。
さすがはユーリ、私のツボを心得ている。
それじゃあ私は少し昼寝でもしますかね……っと。
グウ……Zzzz——
現段階での倫理観tier
S・ユーリ
A・カイン、女の子5人
B・その他
C
D
E
F・セレナ




