3.聖女、後腐れなく旅立つ
王城から借りた品々を売り払い。
アイテムバッグが身軽になったので旅に必要な物を買うことにしました。
「セレナ。それはいらない。ソレもいらない。いらないって言ってんだろ! 無駄遣するな!!」
ユーリは私が必要と感じるもの全てにいらないという……なぜ? こんなにも何に使うかわからない品々なのに。
コレなんて棒の先端に押すとブエッと 音が鳴るナニカが付いていて……ホント何に使うんでしょうね、コレ。意味が解らな過ぎてたまりません。
そのままユーリの指示に従い食料品や野営用の道具やらを購入。
ついでに荷車も買いました。
これで持ち運べる量は増えるますね。
あの音のなるやつも買えるんじゃ——
「ダメだからな」
「ユーリは意地悪ですね~」
「何に使うんだよあんなの……」
「音は鳴りますよ?」
そんなこんなで準備を進め。
最後にユーリの問題を片付けることにしました。
「なあ……別にいいと思うぞ。一々報告しなくても」
「何言ってるんですか。ユーリを蔑ろにした連中とはいえ、義理は通しておかないと」
「だからって組合長に会いに行かなくても……」
私たちは鍛冶師組合の寄り合い所に向かっています。
なぜそうするのか。
それはユーリの店に対して嫌がらせをしていたゴミ共に、現実を突き付けるためです。
ユーリの店が何故繁盛していないのか、その原因は鍛冶師組合にあります。
以前王都で開催された鍛冶師の腕を競う大会でユーリは優勝しました。
鍛冶師として開業してすぐの出来事です。
もっとも、鍛冶師組合は裏で談合をしていたようです。
談合の結果、本来優勝する予定だったのは組合長の息子だったそうです。
しかしユーリは下っ端の下っ端。
談合の存在を知らずにいたので、そのまま大会に出場。
その結果、空気を読まずにブッチギリで優勝をもぎ取りました。
ちなみに、大会では三つの項目で審査をします。
1、見た目。
2、性能。
3、技術。
ユーリが作った剣はその大会で一番美しく、一番切れ味もよく、そしてなにより失われたとされる技法でなければ現れないという波紋が浮かび上がっていたとのことでした。
実際ユーリも、そういう作り方をしたと語ったそうです。
そんな代物を前に、鍛冶師組合の談合で決められた鉄くず同然の剣とは比べるのも失礼なくらいの差があったそうです。
その結果、ユーリは見事に鍛冶師組合の反感を買うこととなりました。
私はそれを聞いて「バ~カじゃないですか~」と言いました。
実際バカ。
超おバカ。
ウルトラメガトン級のバカ。
バカのハットトリックですね。
鍛冶師組合があれやこれやと妨害工作を行い。
その結果、ユーリの店は閑古鳥の巣になってしまいました。
まあもっとも、ユーリが作った剣を私がお婆さんの店に横流ししていたので、生活には困らないようにしていました。
なのでユーリはもっと私に感謝してもいいくらいです。
崇め奉っても問題ありません。
そしてそんな私は鍛冶師組合を呪いに行きます。
私のユーリをコケにしたことを後悔させましょう。
目的の鍛冶師組合の寄り合い所のドアを蹴破り、ダイナミックエントリー!!
「動かないでください! 一番上の人間を差し出しなさい!!」
「——うわっなんだお前!!」
「カチコミか⁉ お前ら! であえ、であえ!」
わらわらと暇な職人たちが湧いて出てきました。
この私を相手にこの程度の人数とは……いやはや、笑いを通り越して呆れてしまいますね、ヤレヤレです。
「ユーリ。やっておしまいなさい」
「ちょっと黙ろうな? すいません。組合長に話があって来たのですが……」
ザワザワしつつも、人波の奥から一人の男が前に出てきました。
「誰かと思えば、ユーリ・ブレイブ・ルミナス君じゃあないか。一体何の用だ? やっと頭を下げに来たのか?」
「だーれが貴方みたいな小汚いデブに頭を下げるもんですか!! そうですよね! ユーリ!?」
「だからさ、ちょっと黙ろうな? ゴホン。今日は王都を離れることになったので、その挨拶に来ただけです」
すると何故かザワザワし始めました。
「え、お、おいマジかよ……」
「例の技法をもう少しで習得するって依頼主に言っちまったぞ……」
「く、組合長! 話が違うじゃないっすかぁ!」
「そうだそうだ! 小僧の仕事をなくして頭を下げさせたら、俺たちに例の技法を教えるって約束だったじゃないですか⁉」
おやおやおやおや~? 何やら面白そうな展開になってきましたね~? 私こういうの大好きです。
ざまぁっていうんですよね。
組合長はあからさまにぐぬぬっといった顔をしていますね。
「…………アンタが他の連中に何を言ったのか俺にはわからないが、明日王都を出る。だから名簿から俺の名前は消しておいてくれ」
それだけ告げるとユーリは私に「もう行くぞ」と言って組合所を出てしまいました。
私としてはもっと派手なざまぁを見たかったのですが……ユーリがそうしたいのなら素直に従うまでです。
私にとってはどうでもいい連中ですしね。
「ユーリ~、まって下さ~い」
私はユーリの後を追うことにしました。
◇
その夜。
夕食を食べ終わり、そろそろ明日に向けて早めに寝ますかー、というタイミングで——
小屋の外に大勢の人の気配を感じました。
おおかた昼間の鍛冶師組合の連中でしょう。
私の睡眠時間を削るとはいい度胸です。
「セレナは先に寝てて。俺が対応してくるから」
そう言ってユーリは外へ行ってしまいました。
任せろというのなら任せましょう。
私はそのままベッドに横になり目を閉じま——グゥzZZ。
◇
よく寝れました!
床で眠るユーリを叩き起こして、サッサとこの王都を出るとしましょう。
「叩くなよ……朝飯は……外で買えばいいよな?」
「いいですね~。早朝の屋台でいくつか買って食べ歩きしましょうか。ところで昨日はあの後どうなりました?」
「そうだな。あのあと? 話し合いでなんとか解決したよ。もう俺らには関わらないってさ」
「それはそれは大変結構ですね。ところで擦り傷がありますね。〈回復魔法〉」
「……ありがとう。気付いてるな?」
「さあ? なんのことですかね?」
昨日の夜は何やら戦闘音が聞こえた気もしましたが、気のせいでしょう。
小屋の外に点在する血の跡も元からあるものでしょ。
気にしない、気にしない。
私とユーリはボロいながらも思い出のある小屋の前で少し感傷に浸りました。
「お別れですね」
「……そうだな。ボロくても、俺が初めて持った店だからな」
「証拠隠滅のために燃やしときます?」
「やめて。ホントやめて……マジでやめて」
私たちはそのまま王都を出るために歩き出しました。
地面に転がるゴミ——鍛冶師組合の長を踏みつけ。
新たな一歩を踏み出したのです!
のんびり書いてくので、もしよかったらブックマークと星お願いしまーす。




