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異世界マサカー  作者: 香草(かおりぐさ)


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6/12

6 戦い4

 街に戻る間、オレはタニラを背負って歩いた

 軽い

 オレにとっては羽のように軽い

「大丈夫?サキちゃん。 あれだけの戦いの後なのに」

 俺の体が異常なのはタニラにも見られて理解されているだろう

 それでもオレのことを怖がらない

 あの時の少女を思い出した

「もうすぐ、着く」

 道は覚えている。というより一本道だからただ真っ直ぐ進めばいい

 馬車で三時間ほどの距離を歩いて行くわけだが、オレの速さならそこまで時間はかからないだろう

 なにせ走れば馬車より速い

 さっきの戦いからオレは元々どのように自分の体を使っていたのかをしっかりと理解した

 やはりオレは化け物だ

 人間にはあんな動きはできないからな

「これからどうしよう・・・」

 村は滅び、家もなくなったタニラ

 街に住むにもそんな金は多分ない

 オレが何とかしなければ

 金の稼ぎ方など知らない、どうやって稼げばいいのだろう?

 そういったことを考えながら走り続け、街に戻ることができた


「こっちよ。こっちにギルドがあるの」

「ギルド?」

「冒険者のギルド。ここで報告すれば領主様に報告が行くわ」

「分かった」

 タニラと共にギルドに入り、受付らしきカウンターに向かう

 周りには武器を携えた強そうな人々がいるのだが、明らかに人間じゃない者が混じっている

 昨日街を見て回った時にもちらほらいたが、猫が人になったような者、背に翼のある者、耳が長い者もいる

 キョロキョロと彼らを見ていると、カウンターの嬢に声をかけられた

「ようこそ、ご依頼ですか?」

「はい、実は・・・」

 オレが耳の長い種族に見惚れている間にタニラが嬢に話をしてくれている

「終わったわサキちゃん。今日の宿を見つけましょう」

 その後は安い宿を見つけ、なんとか落ち着いた

 落ち着いたからか、タニラはむせび泣き始めた

 無理もない、まだ19の若い娘だ

「タニラ、大丈夫?」

「ええ、ごめんなさいねサキちゃん。もう少しこのままで」

 彼女はオレの肩に寄りかかり、しばらくの間泣き続けた


 翌朝、もう一度ギルドへ向かう

 昨日は遅かったため、事情聴取がまだだったためだ

 ギルドの奥の部屋に案内される。見た目から応接室のようだ

「よく来てくれた」

 そこに座っていたのは大柄な男

 黒い毛並みが美しい二足歩行のクロヒョウだ

 黒い洋服を着ており、それがその体によく似合っていた

「かけてくれ。自己紹介をしておこう。私はエヌマだ。このギルドのギルド長をしている。早速ですまないが、確かポニの村唯一の生き残りだったな? 辛いことを思い出させるかもしれないが、詳しい話を聞きたい」

「はい・・・」

 タニラは馬車で村に戻った時にはすでに村人は皆殺しにされていたこと、異世界人による襲撃であること、その異世界人に襲われたことと、それを()()()()()()()()()()()()()()ことを話した

 オレが戦ったことは伏せてくれたようだ

 別に言ってくれていいのだが、どうやらこの世界で特異な力を持つ者は忌み嫌われているらしい

 理由は火を見るよりも明らかではある

 何せ様々な力を持った異世界人が暴れ回っているんだから

「なるほど、後で調査隊を派遣する。災難だったな。それにしてもその救ってくれた御仁と言うのは一体・・・。む、そうだった、これを渡しておこう」

 エヌマは何かが入った袋を渡した

「これはギルドから異世界人に対する被害を受けたときの保証金だ。引っ越しの費用と、当面の生活費が入っている」

 金か

 確かに着の身着のまま来たオレたちには金がほとんどなかった

 当面の生活費があるというのならば、オレが仕事を探すまでのつなぎにはなる

 かなり助かるというものだ

「人相からここ最近暴れていたセルス・バッグという異世界人に間違いない。不思議な杖によって高火力の矢を降り注がせるという、狂宴円舞に近いと言われた男だな」

「狂宴?」

「あまり興味を持つもんじゃないぞお嬢ちゃん。あれは、人であって人ではない、まさに人でなしの集団だ」

 そう言いながら手を握り締めるエヌマ

 どうやら異世界人に対して彼も被害を受けたのだろう

 そう思うと、俺の中でふつふつと怒りが燃え上がって来た

「ともあれだ、知らないなら一応知っておいて方がいいのも確かか。狂宴円舞はこの世界の病巣だ。異世界人や犯罪者で構成され、人を陥れ、襲い、犯し、殺す。アレは、アレらは、この世界にあってはいけない存在だ」

 ギリギリという歯ぎしりがここまで聞こえるほどに憎しみに満ちた顔をしている

 その憎しみが俺にも伝染した

「そいつらを、殺せば、いいのか?」

「なっ!?」

 エヌマは俺を見て恐怖にひきつった顔をしている

「待て待てお嬢ちゃん。なんだその殺気は・・・。もしかしてお嬢ちゃんも」

「その、エヌマさん、この子は記憶がないんです。自分の名前以外を思い出せないんです。異世界人に襲われた時に・・・」

「でも、少し覚えてること、ある。オレの、大切な・・・」

 だめだ、怒りが、憎しみが、抑えられない

 そこをタニラが抱きしめた

「大丈夫よサキちゃん。大丈夫だから」

 何故だか、オレは、心が軽くなり、落ち着いていった

「フーフー・・・ふぅ・・・」

 そんなオレをエヌマは見つめ

「なあお嬢ちゃん、あんたもしかして」

「こ、この子は村の生き残り、私の娘です!」

「あ、いや・・・。悪かった。事情聴取は以上だ。今回はギルドの迎撃が間に合わなくて申し訳なかった」

 頭を下げるエヌマ

 だが断じて彼のせいではない

 悪いのは・・・

 オレは心に強く、この世界を襲う者を、殺すと誓った

 それにはまず動きやすくてならなくてはいけないだろう

 金もいつ尽きるか分からないし、仕事がてら冒険者とやらになるか

 暴れるのが本分のような職業だとタニラに聞いたが、それならオレにもできる

 帰りがけに登録だけしておくか


「おい、あの子は?」

「間違いない。異世界人だろう。あの殺気、歴戦の気配。並大抵の修羅場ではあそこまでの力は持てますまい」

「やはりお前もそう思うか」

 クロヒョウの獣人エヌマは頭を抱える

「ドゥルク、あの子を見張っていてくれるか? 間違いなくあの子はセルス・バッグを殺している。血の匂いが、したからな」

「それは村人の血じゃ?」

「いや、体に染みついた匂いだ。恐らく、狂宴円舞と同じか、それ以上に殺している」

「じゃああいつは敵か? なんなら俺が」

「お前にどうこうできる相手じゃないだろう。俺でも無理だあれは・・・。とにかく、頼んだぞドゥルク」

「ああ」

 ドゥルクが消え、エヌマは懐からタバコを取り出し、火をつけて吸い始めた

 フーと煙をくゆらせ、少女が何者なのかと考えを巡らせる

「だが、アレに悪意は少なくとも見えなかった。敵となるか味方となるか。まだ判断は早いな」

 タバコを灰皿で消し、応接室を後にした

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