3 戦い2
街に到着したのか、オレは揺り起こされた
「ついたわよサキちゃん」
「ん、ありがと、タニラ」
馬車を降り街の様子を見る
まだ街の外だが、なかなかに大きな街なのだろう。かなりの高さの塀がそびえ立っていた
「ここがこの国で二番目に大きな街、副都ローズよ」
「ローズ?」
「ええ、あなたもしかしてこの国出身じゃないの?」
俺はその問いにうなづく
「そう、じゃあ軽く説明しておくわね。この国はディレード王国ってのは分かる?」
首を横に振る
オレはこの世界のことは何もわからない
「サキちゃん、あなた一体どこから来たの? ディレード王国はこの世界でもかなり大きな国よ? もしかして記憶が?」
記憶喪失か。そう思っていてもらった方が説明が省けていいかもしれないな
オレはうなづいた
「そっか、そこも合わせてみてもらおっか」
タニラはそう言うと金属音のする小袋を取り出し中身を確認している
「う・・・。貯めてたけど仕方ないか。サキちゃんのためだもん」
そう、か
治療師は医者のようなもの、当然金はかかるのだろう
「タニラ、オレ別に痛くない。もう、だいじょ」
「大丈夫じゃないでしょ! 何度も気を失ってるんだから! お金のことなんて気にしなくていいから、ねっ!」
ここはお言葉に甘えておくとしよう
行為は無下にできないから
そこでまた記憶の断片が頭痛と共にかすめる
「ひぃ! たすけ」
俺の鉈が男の胸に深く刺さり心臓を貫いた
その男の傍らには怯えた少女
「う、うう」
震えている
俺は手を伸ばしてその少女を助け起こそうとした
だが彼女は俺を見て恐怖にひきつった顔をした
「フー、フー」
醜い顔、ただれた手
怖がるのも無理はないだろう
踵を返して俺はその場を去ろうと歩き出した
だが
「ま、待ってください! 助けてくれて、ありがとうございます!」
少女が何を言っているのか分からなかった
国が違うからだろう
少女は俺のただれた手を掴むと、ハンカチを取り出した
「怪我してます。これを」
おそらく男が抵抗したときについたのであろう傷
そこにハンカチを巻いてくれる少女
俺はその可愛いピンクのハンカチが巻かれた手をまじまじと見た
「ありがとう、ございます」
まだ震えている
だが、彼女は笑顔を見せてくれた
俺はそのまま歩きだし、その場から霧のように消えた
ハッと気づく
今回は気絶はしなかったようだ
「大丈夫サキちゃん?」
「大丈夫」
オレは彼女と手をつないで、街の門まで歩いた
どうやらここで検問があるようだ
兵士に何かを見せるタニラ
身分証のようなものだろうか?
「よし、通っていいぞ」
あっさりと通れた
オレの身分は証明されていないのだが?
「大丈夫よサキちゃん。あなた私の娘ってことにしといたから」
「娘・・・」
母を思い出す
すると頬を温かいものが伝った
「サキちゃん・・・」
タニラはオレの手をさらに強く握ってくれた
彼女に手を引かれながらオレたちは治療院へと歩いた
治療院に着くとたくさんの人々が出入りしているのが見えた
やはり怪我をしている者が多い
当然と言えば当然だが
「ほら、こっちよ」
手を引かれて治療院に入ったのだが、そこからが長かった
あまりにも治療を待つ人が多いため、オレが見てもらうのに三時間ほどはかかった
周囲の人々は苦しみうめき、そこには負の感情が渦巻いている
だが、治療を終えた人々からは喜びや嬉しさと言った感情が溢れていた
オレの番になり中に入る
そこには白く、フードの付いたローブを来た人物が数人いた
「ではそこへ腰をかけて」
そう言ったのは一番豪華な衣装を着た少年だった
「ちい、さい?」
「なっ! 僕は成長期なだけで小さくない!!!」
突如声を荒げる少年
「いいからそこ座れよこのちび!」
「お前の方が、小さい」
「また小さいって言った! 何だよこいつ! もう治療してやんないぞ!」
「エピル様、お口が悪うございますよ」
「だってこいつが!」
ゴチンと拳骨をされるエピルと呼ばれた少年
「いってぇ、お前のせいだかんな!」
またゴチンと拳骨されている
「いった! 分かったよもう治療したらいいんだろ! で、症状は?」
「すみません聖人様、この子記憶喪失なのと、少し前殺人鬼に襲われて」
「殺人鬼? ポルの村での事件か」
「はい。 この子はそこで血だまりの中気を失っていたのです。もしかしたらその時内部にダメージを負っていたのかもしれないんです」
「どれ」
少年がオレに手を翳すと、その手が光った
「ふむ、特に異常はないぞ。記憶喪失と言ったか? 脳にもダメージはないからそのうち記憶も戻るだろ」
「本当ですか!? 良かったわねサキちゃん!」
「う、ん」
タニラは治療費として金に光るコインを少年に差し出そうとした
「いらんいらん。治療してない奴からもらえるかよ。まあ次小さいとか言ったら百倍もらうけどな」
金を取らない?
どうやらオレは少年を侮っていたようだ
子供だが、その真はしっかりとした聖人にふさわしい人格者らしい
「あり、がとう」
少年に礼を言うと、彼は顔を真っ赤にしてうつむいた
「また怪我したら来い。僕は貧しい者から金はとらないからよ」
笑顔を見せてくれた少年
まともにしているとなかなかに美少年ではあると思う
特に治療する必要もなく終わったが、タニラが安心した顔をしている
オレをここまで心配してくれたのは、母以来だ
「さて、治療代も浮いたことだし、今日はいい宿に泊まって美味しいものでも食べましょ!」
「え、でもそのお金、貯めて、たって」
「いいのいいの、どうせもう、使うこともないし」
使うこともないとはどういうことだろうか?と首をかしげる
「ほら、行きましょう」
宿は恐らくホテルのようなものか
オレに縁遠い場所だったが、まさか初めてのホテルが異界のホテルだとはな
そしてオレはタニラと楽しく街で過ごし、綺麗な宿で眠り、翌朝を迎えた




