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異世界マサカー  作者: 香草(かおりぐさ)


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11/12

11 出会い1

 異世界人犯罪者のエリスに滅ぼされた村の数は20を超える

 それでもまだ少ない方なのだそうだ

 犠牲者の数で言うと5000人を超える

 それだけの数の人間をオレは守れなかった

 元の世界ではオレは感じるままに犯罪者の前に現れ、それを殺害して消えていた

 そういえば、オレに定住地などはなかったな

 あれ? オレはどうやって暮らしていたんだ?

 記憶に靄がかかって思い出せない

 化け物になってからの記憶がずっとあいまいだ

 犯罪者を殺しているときの記憶のみが鮮明によみがえる

「サキ、今回はありがとうね。また何かあったらパーティを組んでよ」

「お前がいれば百人力だからよ! いつでも歓迎するよ!」

 アリーもジュイスもオレを歓迎し、認めてくれている

 そんな二人をよそにフェームはじっとこっちを見ていた

「ほらフェームも!」

「う、うん。サキ、これからもあなたは苦しむと思うし、悩むと思う。それでも、あなたは皆のために戦ってるんだから、胸を張りなさい」

「ありがとう、フェー、ム」

 オレを怖がらないどころか、認めてくれる3人

 彼女たちのおかげでオレの憎しみや怒りも、少し緩和されたような気がする

「またねサキ」

「うん、また」

 家に帰ろう。タニラの待つ家に


 一日ぶりの家だが、なんだか久しぶりな気がする

 家に入ると中には誰もおらず、置手紙が机の上に置いてあった

― 仕事を探しにギルドに行ってきます。タニラ ―

 どうやら彼女は出かけているらしい

 その手紙の横に彼女の作った手料理が置いてある

 どうやらオレのために作っておいてくれたらしい

 それをもちゃもちゃと味わって食べる

「おいしい」

 彼女とは出会ってまだ数日だが、なぜかオレの好みを分かっているかのような味付けだった

 懐かしい母の料理と同じような味付けで、オレはあっという間に食べ終えてしまった

 食休みでしばらく椅子の上でボーっとしていると、扉が開いてタニラが帰って来た

「サキちゃん、帰ってたのね」

「うん、タニラ、ありがとう、ご飯、美味しかった」

「食べてくれたのね。腕によりをかけたんだから!」

 そんなタニラにオレは微笑む

「あ、そうそう、仕事決まったわ。パン屋さんが募集してたから聞いてみたらすぐ決まったのよ」

「パン、屋?」

「ええ、商業区にあるんだけど、すごくおいしそうなパンがいっぱいあってね。ほら、ついでに買って帰って来たの」

 タニラがバスケットに入ったパンを見せてくれる

 フランスパンのようなもの、バケットと言うんだったかな? それに丸い硬そうなパン

 どれもこれもいい匂いがしてはいるが、総菜パンのようなものや、アンパンのような甘いパンはないようだった

 明日から働き始めるらしく、これで補助金が亡くなってからの生活の心配はなくなるだろう

 そしてオレは、討伐依頼を受けて無事達成したことを報告した

「サキちゃんが強いのは分かってるけど、危険だと思ったらすぐ逃げるのよ。何よりも命が大事なんだから」

「うん、大丈夫」

 そもそもオレは死ぬんだろうか?

 あれだけバラバラにされても再生出来た

 頭すら砕かれて生きていられる理屈が分からないが、すでにそういうものだと達観している

 死にはしないかもしれないが、タニラを心配させたくない

 できる限り自分が傷つかない戦い方を学ばなければ

 そのためにも魔物を討伐する依頼をたくさん受けよう

 魔物は多種多様で攻撃方法も異なる

 実戦経験を積むにはこれ以上ない相手だろう

 

 翌日

 早朝にタニラはパン屋へと出かけて行った

 仕込みなどもあるのだろう

 まだ日も登っていなかったが、元気よく出て行った

「オレも、行くか」

 まだギルドは開いていない時間帯だが、街の景色も堪能しつつゆっくりと行けばいいだろう

 まだ街のどこに何があるかは理解できていない

 オレはまずギルドを通り過ぎて住民区へ行ってみることにした

 ここはこの街に住む住人達の家々が連なっている場所だ

 ちなみにオレたちの家は区画によって区切られた地区とは外れている自由区画と呼ばれる場所にある

 この住民区画をさらに進んで貴族区画、そしてその奥、街の中心地に領主の住む屋敷があるらしい

 貴族区まで行く気はないが、オレはギルドが開く時間までブラブラと住民区を見て回った

 そんなオレの背後から誰かが走ってくる音が聞こえる

 なるべく足音を消して走っているのだろうが、丸わかりだった

 そいつはオレにぶつかって来たのだが、難なく交わし、倒れそうになったそいつの襟首をつかんで転ばないように立て直した

「な!?」

 そいつはどうやら人間ではなく、二足歩行する犬だった

「く、放せよ!」

 甲高い声、犬だから性別は分からないが、恐らくまだ幼い子供だろう

「オレに、ぶつかって、どうしようと、思ってたんだ?」

 そいつはオレの目を見て怯えた顔をしている

 別に怒っていないのだが、どうもオレの目は四白眼なため怖がられやすいようだ

「別に、財布を掏ろうと思っただけだよ」

「なぜそんなことをする? 親に、食わせてもらえ、ないのか?」

「親なんてとっくに死んだよ。異世界人に殺されてな!」

 犬はオレの手を蹴り上げて拘束を解き、そのまま走って行ってしまった

 あっという間に見えなくなる

 だが、オレは煙のようにその場から消え、奴の前に現れた

「うわっ!」

 驚き尻もちをつく犬

「な、何なんだよお前!」

 かなり怯えているが、オレは犬の頭を撫でて財布から銀色のコインを三枚ほど取り出して犬に渡した

「これで、何か食え、お腹、すいてるんだろ?」

「施しなんか受けるかよ!」

 犬は再び走ってどこかへ行ってしまった

 まあいい、ロックはしておいた。いつでも会える

 そんなトラブルもあったが、時間になったためギルドまで歩いて向かった

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