10 戦い8
「あたしはエリス! あんたの名前は?」
「サキ」
「それじゃあサキ! 殺してあげる」
「できるものならな」
エリスは手をこちらに向けると、衝撃波がオレの体を襲った
「ぐぁ」
吹き飛ばされ地面に激しく叩きつけられる
普通の人間ならこれだけで死に至るだろう
「あっけなくてすごく残念」
オレに近づいてくるエリス
死んだかどうかを確かめるためなのか、オレの足を蹴った
その瞬間にオレは立ち上がる
「お、生きてる、まだ楽しめる!」
「楽しいか? 罪のない人を殺すのが」
「楽しい!」
また手をこちらに向けて衝撃波を放ってきたが、オレは鉈でそれを斬った
「やるね!」
次は真空波のようなものが飛んできて、オレの両足がくるぶしから断たれた
べちゃっとなまなましい音が響き、オレはまた倒れる
「えい、えい、えい、えい」
倒れたオレにさらに追い打ちをかけるように真空波を撃ち込むエリス
本当に楽しそうに、おもちゃで遊ぶ子供のように、彼女は俺を破壊しつくした
「少しはもった方だけど、結局グチャグチャになって終わっちゃう。キヒ、キヒャハハハハハ!!!」
激しく笑いながら肉片になったオレを踏みつぶし、血まみれになった手を舐める
その直後に、俺は彼女の背後に立った
「は?」
エリスの首にのこぎりが食い込む
「がっぐぶっ、ゲボッ」
口から血の塊が吐き出され、彼女の顔が恐怖で歪む
「な? え? ガフッ」
俺はゆっくりとのこぎりを引いた
ゆっくりと、ゆっくりと、彼女ができるだけ苦しむように
村人や冒険者の遺体はいたぶった形跡があった
その中には子供の遺体もある
怒りが、憎しみが込み上げてきた
「ぎ、やめ」
のこぎりはどんどん首の奥深くに食い込んでいく
ほとんど骨だけでつながっている状態になってようやく彼女は息絶えた
「フーフーフー」
呼吸が深く、荒くなっている
エリスの首を持ち、オレはそこから霧となって消えた
暁の光の3人の前に現れる
「うわ!」
「サキ! 貴方無事だっ・・・た・・・。その首」
「ターゲットだ。他の村と、冒険者は、だめ、だった。ごめん」
3人供黙りこんだ
やはりオレは化け物だ
人を怖がらせる化け物なんだ
「サキ、首は私が持つからこれに入れて」
「え?」
「討伐報告をする。アリー、ジュイスと一緒に先に帰ってて。私は少しこの子と話がある」
この子と言われるほどフェームと呼ばれる少女とは年が離れていないと思うのだが
「分かった。あとでね、フェーム、サキ」
オレはフェームと二人きりになった
彼女は深呼吸するとオレの目を見て話し始めた
「サキ、あなたはなぜあいつを殺したの?」
「村の人、冒険者、皆いたぶられて、殺されてた。だから、怒りと、憎しみで、オレ、分からなくなって・・・。オレは、あいつらと、同じだ。殺しを、楽しいと思ってる、あいつらと同じ・・・。悪を殺すとき、オレは、笑うんだ。相手の肉が裂けて、血が噴き出して、臓物が飛び出て、オレにかかる。その時に、オレは、笑うんだ」
彼女はまっすぐにオレを見つめる
「でも、あなたは楽しいとは思っていないのでしょう?」
その問いにオレは静かにうなづく
「オレは、殺戮に生を、見出すことは、あっても、命を奪う行為を、楽しいとは思わない。たとえそれが、人々を不幸に陥れる、悪だったとしても、命は尊ばれるもの、だ」
「そう、分かったわ。あなたは私達のために怒ってくれた。殺戮者を憎んでくれた。だからもうそんな顔はしないで」
驚いた
涙などもう出ないと思っていた
オレの頬には涙が一筋流れていたんだ
「サキ、二人と合流しましょう。あなたは街を救ってくれた。この村だって、あなたがいなければ私達ともども滅んでたと思う。胸を張りなさい」
少し心が晴れた気がする
オレの殺しは正当とは言えない
悪を討つ、オレのような被害者をもう出さない
そのために動いているとはいえ、所詮は殺人だ
そんなものに正当性もなにもない
街に帰ると二人がギルド前で待っていてくれた
すでに報告はすませ、印はギルドに渡されたようだ
どうやら指名手配犯の場合は首を討伐報酬として渡すこともあるらしい
エリスは指名手配されて日が浅いとはいえ、やっていることは大量殺人
生死問わずと元々なっていたそうだ
だが血まみれで現れたオレは、やはりギルドでは奇異の目で見られた
それをアリーは
「みんな! この子本当にすごいわよ! 単独でエリスを撃破したんだから!」
その一声で周りの目は気味の悪いものを見る目から、憧れと羨望の目に変わった
「まさかこんな小さな子がねぇ」
「すごいぞ嬢ちゃん!」
そんな声が口々に上がる
オレは、賞賛されていいのか?
ただの人殺しのオレが
「あなたが殺しを楽しいと思わない限り、悩み続ける限り。あなたは化け物なんかじゃない」
フェームが言ったその言葉で、オレの胸はスーッと軽くなった
報酬を受け取り、その後は宴会となった
犠牲者は多いが、これでもまだ少ない方らしい
他の国では国ごと滅ぼされた事例もある
オレはこの先も、この世界を蝕む悪と、戦おう
彼らのこの笑顔を、護るために




