第7話:騎士団の特別訓練? 完璧な師匠の唯一の欠点
「……それと、もう一つ。これは私個人の提案なのだが」
ポーションの専属契約の話がまとまったところで、レオン団長がふと表情を引き締めた。その碧眼が、私とライネをじっと見つめる。
「ザックから報告を受けた。森でのウルフ襲撃の際、君たちが素晴らしい剣術と魔法の片鱗を見せたとな。……特にミオ殿、君の身のこなしは未経験者とは到底思えないほど合理的だったそうだ」
(うわあああ、ザックのやつ、そんなことまで団長に報告してたの!?)
あの時の動きは、半分はパニック、もう半分は「読モ時代の体幹」と「ゲーム知識」による無意識の産物だ。団長に褒められるなんて、限界OLの心臓が持たない。
「そこでだ。今後、納品のたびに君たちが王城へ足を運ぶことになる。だが道中には常に危険が伴う。……どうだろう、定期納品の折に、我が騎士団の訓練場を開放しよう。私やザック、あるいは練達の魔術師が、君たちの才を磨く手助けをしたい」
「えっ……騎士団長自ら、指導してくれるってことですか!?」
私は思わず身を乗り出した。これって、ゲームで言えば「好感度イベント」どころか「特殊強化ルート」じゃないか!
「ああ。君たちの錬金術は王国にとっての至宝だ。その身を守る術を身につけてもらうことは、我々にとっても利益がある」
「すごーい! ミオお姉ちゃん、魔法を教えてもらえるんですって! 私、もっと強くなって、お姉ちゃんを守れるようになりたいです!」
ライネがキラキラした笑顔で私の手を握る。可愛い。主人公に守られる姉弟子……悪くない響きだ。
「……ふん、勝手にしなさい。私は関わらないわよ」
今まで黙って話を聞いていたレイカが、ハーブティーを啜りながらそっぽを向いた。
「あれ、師匠は? 師匠の錬金術なら、魔法とかもすごそう……」
私が何気なく尋ねると、レオン団長が少しだけ困ったような、苦笑いにも似た表情を浮かべた。
「……ミオ殿。レイカ殿は、錬金術においては間違いなく世界最高峰だ。だが、それ以外の才能は……その、お世辞にも『ある』とは言い難い」
「ちょっと、余計なこと言わないでくれるかしら」
レイカがジロリとレオンを睨む。
そういえばゲームの裏設定で読んだ記憶がある。レイカは「錬金術に全てのステータスを極振りした」結果、運動神経は壊滅的、魔法も「釜に流し込む」以外は一切使えない、超絶不器用人間なのだ。
「いい? 私は『錬金術師』なの。体を動かすのはあんたたちみたいな筋肉ダルマの仕事でしょ。私はここで、納品用の瓶を磨いてる方が性に合ってるわ」
「ははっ、相変わらずだな。……では、ミオ殿、ライネ殿。次の納品日からは動きやすい格好で来るといい。待っているぞ」
レオン団長はそう言い残し、マントを翻して颯爽と去っていった。
残されたのは、ニヤニヤが止まらない私と、やる気満々のライネ。そして、面倒くさそうに欠伸をする師匠。
「……ミオお姉ちゃん、顔がすごくニヤけてますよ?」
「えっ!? あ、あはは……いや、なんでもないよ! よーし、ライネちゃん、特訓に向けて頑張ろう!」
推しからの直接指導という、前世の徳を全て使い果たしたような展開。
私の異世界ライフ、なんだかどんどん「やりこみ要素」が増えてきたみたいだ!




