第11話:強面のベテラン冒険者。いかつい男は武器を語る
「カーラさん、依頼のあった『特別製・魔法の洗剤』、完成しました!」
「おっ、早いねえ! さすがは噂の錬金術師だ」
後日、私とライネは出来上がった洗剤を納品するために、再び酒場『荒くれ猪亭』を訪れていた。
私たちがカーラさんと話していると、ギィィ、と酒場の重い木扉が開いた。
ドスッ、ドスッ、と重い足音が床を鳴らす。
入ってきたのは、熊のように巨大な男だった。
無数の傷が刻まれた革鎧、背中には使い込まれた巨大な大剣。そして何より、顔の左半分を覆う大きな傷跡と、鋭い眼光が恐ろしい。
(うわっ……めっちゃ怖そうな人……いや、待って。あの傷、あのバカでかい大剣。間違いない!)
私のゲーマー魂が瞬時に彼を特定した。
彼はオルグ。
『アルケミア・クロニクル』において、今はさすらいの冒険者として各地を転々としているが、のちのちプレイヤーの拠点に「武器屋」を開いてくれる超重要&大人気NPCだ!
ライト層で戦闘が苦手だった私だって、彼が打ってくれる高品質な武器にはゲーム中で死ぬほどお世話になった。
「おっ、オルグじゃないか! 遠征から帰ってたのかい。無事で何よりだ!」
カーラが親しげに声をかける。
「ああ。……カーラ、とりあえずエールを頼む。喉がカラカラだ」
地鳴りのような低い声。リアルで見ると威圧感がハンパないけど、周りの冒険者たちはみんな彼に気さくに挨拶をしている。ゲームの設定通り、人望が厚いベテランなんだ。
「ん? カーラ、そっちの嬢ちゃんたちは見ない顔だな」
オルグの鋭い視線が、私とライネに向けられた。
「ああ、この子たちは最近街で噂の『魔女の弟子』さ。腕の良い錬金術師でね」
「ほう……錬金術師か」
オルグはゆっくりと立ち上がり、私の方へ歩み寄ってきた。
そして、私の腰に提げられた短剣──ザックとの特訓のために少しだけ手入れをした古い短剣をジッと見つめた。
「……嬢ちゃん、いい手入れをしてるな」
「えっ? あ、はい! 命を預ける相棒なので!」
ゲーム内で彼が『武器を大切にしない奴』を嫌う設定を知っていた私は、食い気味に答えた。
オルグは目を丸くした後、顔の傷を歪めてニカッと笑った。猛獣の笑顔みたいだけど、どこか温かい。
「ははっ、いい心構えだ。俺はオルグ。しがない冒険者だ。……最近の若い連中は、武器をただの使い捨ての道具だと思ってる奴が多すぎる」
彼は自分の背中の大剣を愛おしそうに撫でた。
「俺もいつか冒険者を引退したら、武器の本当の価値を教えられるような、武器屋でも開きたいもんさ」
(キタキタキタ! 武器屋設立のフラグ発言だー!)
内心で盛大にガッツポーズを決める私。
「嬢ちゃんたち、素材集めで危険な場所に行く時は俺に声をかけな。手入れの行き届いた武器を持つ奴は、無条件で信用することにしてるんだ」
「本当ですか! ありがとうございます、オルグさん!」
頼れるベテラン冒険者にして、未来の優秀な武器屋。
市井の心強い味方と、最高のコネができた瞬間だった。
「……にしても、最近街の鍛冶屋の質が落ちててな。嬢ちゃんたちの錬金術で、良い研磨剤とか作れねえか?」
「研磨剤! はい、得意分野です!」
推しキャラだけじゃなく、お世話になったNPCにも直接会える。
異世界最高かよ、と心の中で叫びながら、私は意気揚々と依頼を引き受けた。




