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【リーガルざまぁ】現行法でタコ殴り!異世界テンプレに泣く、どん底令嬢を救います〜魔王お嬢様弁護士の事件簿〜  作者: lilylibrary
第3章:編入生に魅了の魔法(SNSステマ)で婚約者と学園を奪われた令嬢ですが、情報開示請求で裏業者ごと物理包囲します〜
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第15話 解けた洗脳とビターチョコレート


「麗華! 頼む、僕が悪かった! 全部あの小鳥遊くるみっていう悪女に騙されていたんだ!」


「そうだ! 俺たちも騙されてた! 麗華様をいじめてたのはアイツだ!」


「パパ活女子のくせに清純派ぶって、マジでキモいんだけど!」


学園祭のメインステージ周辺は、数千人の生徒たちによる凄まじい手のひら返しの嵐が吹き荒れていた。


つい数分前まで「天使」と持て囃されていた編入生の小鳥遊くるみは、今や全校生徒から一斉に石を投げられる「魔女」へと転落していた。


「ち、違うの! 私はみんなのアイドルでしょ!? 愛されヒロインなのよぉぉっ!」


くるみがステージの上で純白のドレスを汚しながら喚き散らすが、その声は怒号と嘲笑にかき消されていく。


作られた「魅了の魔法」が解けた後の現実は、どこまでも残酷で、そして滑稽だった。


「麗華、僕たちもう一度やり直そう! 僕にはやっぱり、君しかいないんだ!」


一条司が、すがるような情けない顔で東陰院麗華の足元に這いつくばる。

だが、麗華は美しい金髪の縦ロールを揺らし、ゴミを見るような冷徹な視線を下した。


「触らないでくださいませ。貴方のような、偽物の数字と真実の区別もつかない無能は、私の隣に立つ資格はありません」


「れ、麗華……っ!」


「私は東陰院の人間として、自らの足で立ちます。貴方のような中身のない飾りは、もう金輪際不要ですわ」


麗華が氷のような絶対零度の宣告を叩きつけると、司は完全に絶望し、ステージの床に崩れ落ちた。


その凛とした気高い姿に、今度は生徒たちから「さすが麗華様!」「次期当主の貫禄!」と、手のひらをドリル回転させたような歓声が上がる。



◇  ◇   ◇


……という、見事なまでの悪役令嬢(物理)の逆転劇から数日後。


「――というわけで、彼女たちは現在、自分たちが作っていた甘い嘘の代償を、文字通り骨の髄まで支払わされているようです」


帝都の一等地、『九条院法律事務所』の所長室。

私は、フランスの高級ショコラティエが手掛けた、カカオ九十九パーセントの極上ビターチョコレートを、パキッと小気味良い音を立てて割った。


ひとかけらを口に含むと、一切の甘さを排除した、暴力的とも言えるほどの強烈なカカオの苦味と酸味が舌を刺す。

しかし、その奥底に眠る芳醇な香りと深いコクが、事件解決後の頭脳にピリッとした心地よい刺激を与えてくれた。


「所長……未成年が数億円の損害賠償で人生詰んだ報告書を読みながら、そんな泥炭みたいな真っ黒なチョコ食べるのやめてください。苦くないんですか?」


パラリーガルの木戸くんが、警察からの『書類送検通知』のコピーを整理しながら胃を押さえた。


「失礼ですね。甘ったれた嘘のメッキが剥がれた後には、このカカオ九十九パーセントの容赦ない現実ビターが一番よく似合うのですよ」


私は漆黒のチョコレートをもうひとかけら口に放り込み、熱いブラックコーヒーでそれを流し込んだ。


「さて、木戸くん。その後の『自称・愛されヒロイン』の末路はどうなりましたか?」


「はい。小鳥遊くるみは、偽計業務妨害および名誉毀損の疑いで警察に引っ張られ、現在も厳しく事情聴取を受けています」


木戸くんがタブレットをスワイプし、無惨な炎上記録の最終ページを表示する。


「彼女の資金源だったパパ活相手の富裕層たちも、悪質なステマ工作のパトロンとしてネットで特定されそうになり、蜘蛛の子を散らすように逃げていきました」


「当然ですね。金で買った『魅了の魔法』は、金の切れ目が縁の切れ目です」


「さらに、東陰院グループの法務部が本気を出しまして。くるみの実家に対し、株価下落と名誉毀損の慰謝料として、数億円規模の損害賠償請求を叩きつけたそうです」


木戸くんが、ブルッと肩を震わせながら報告を締めくくった。


「彼女のご両親、すでに家を売り払って自己破産の手続きを進めているとか。……完全に生き地獄ですね」


「同情の余地はありません。彼女が麗華様を社会的に抹殺しようとした時、それと同じ地獄を相手に突きつけていたのですから」


私は黒縁メガネを中指でクイッと押し上げ、冷酷な魔王の笑みを深めた。


「ちなみに、新宿の炎上請負業者も特定されて、司法取引通りに彼女をあっさりと裏切り、警察に全データを提出したようです」


「悪党同士の裏切り合い、極上のエンターテインメントですね。あの男も結局は別の詐欺容疑で別件逮捕されたようですが」


私がクスクスと笑っていると、所長室の重厚な扉がノックされた。


「九条院先生、失礼いたしますわ」


扉を開けて入ってきたのは、見違えるように晴れやかな顔をした東陰院麗華様だった。


学園の制服を美しく着こなし、背筋をピンと伸ばしたその姿は、まさしく頂点に立つ令嬢の威厳と誇りに満ち溢れていた。


「麗華様、お待ちしておりました。生徒会長への見事な復帰、おめでとうございます」


「すべて九条院先生のおかげですわ。あの日、先生が私を絶望から救い出してくださらなければ、私は今頃……」


麗華様は深く頭を下げ、そして、憑き物が落ちたような、眩しいほどに美しい笑顔を私に向けた。


「先生。私、あの学園祭のステージで、すべてを悟りましたの」


「ほう? 何を悟られたのですか?」


「いくら家柄や美貌があろうとも、悪意と嘘の前では無力であること。そして……それらを粉砕する『法律』という名の、本物の魔法の美しさを!」


麗華様は両手を胸の前で組み、熱を帯びた、キラキラと輝く瞳で私を見つめた。


「結お姉様!」


「……お姉様?」


突然の熱烈な呼称に、私が珍しく目をパチクリとさせると、麗華様はズイッと私のデスクの前に身を乗り出してきた。


「私、決めましたわ! 学園を卒業したら、法学部へと進学し、さらに必ず最難関の司法試験を突破して、立派な弁護士になります!」


「ほほう」


「そして、この『九条院法律事務所』で、結お姉様の右腕として働かせていただきますわ!」


「……えっ?」


私の背後で、木戸くんが素っ頓狂な声を上げた。


「ちょ、ちょっと待って麗華さん! 弁護士になるって……東陰院グループの跡継ぎはどうするんですか!?」


「そんなもの、優秀な役員に任せておけばいいのですわ。私には、もっと叩き潰すべき愚か者たちと、学ぶべき現行法がたくさんあるのですから!」


麗華様はフンスッと鼻息を荒くし、完全に『魔王の信者』と化した熱烈な眼差しで私を見つめ続けている。


その真っ直ぐな向上心と、タコ殴りの才能の片鱗に、私は思わず腹の底から笑い声を上げてしまった。


「ふふっ……あははははっ! 素晴らしい。その圧倒的な自信と覚悟、とても気に入りましたよ」


私は立ち上がり、カカオ九十九パーセントのチョコレートをもうひとかけら、麗華様に向かって差し出した。


「ですが、麗華様。うちの事務所は、とても厳しいですよ?」


「望むところですわ、結お姉様!」


麗華様は全く怯むことなく、その真っ黒で苦いチョコレートをパクリと口に含み、一切顔をしかめることなく、誇り高く微笑んでみせた。


「……終わった。僕の平穏なパラリーガル生活が、終わった……」


背後で、木戸くんが「こんな超弩級の武闘派お嬢様が後輩になるなんて……胃薬の致死量を超えてしまう……」と頭を抱えて崩れ落ちたが、私は気にしない。


法という名の剣を容赦なく振るう新たな戦士が誕生したのだ。これほど痛快で喜ばしいことはない。


異世界テンプレの「魅了の魔法」は、現行法のサーチライトと情報開示請求によって完全に無効化された。

匿名という安全圏は粉砕され、愚か者たちは自らが作り出した炎の中に焼かれて消えていった。


「さあ、木戸くん。倒れている暇はありませんよ。次の『異世界テンプレ』被害者が、私たちの助けを待っていますからね」


私は新たな弟子の誕生を祝し、そして次なる愚か者への容赦ない法的タコ殴りを心待ちにしながら、魔王のように優雅に、そして残酷に微笑んだのだった。

第3章『魅了の魔法(SNSステマ)洗脳テンプレ編』、最後までお読みいただきありがとうございました!

SNSの裏で暗躍するステマ業者を、発信者情報開示請求で包囲殲滅しました。

もし、この物語を読んで

「最高にスカッとした!」

「現行法でのタコ殴り、面白かった!」

と感じていただけましたら、ページ一番下の【☆☆☆☆☆】をポチッと押して最高評価をいただけますと、次章(次の事件)を執筆する最大のエネルギーになります!

【ブックマーク】をしたままお待ちいただければ、第4章の連載が始まった際に更新通知が届きます。

月曜19時、魔王弁護士の次の事件をお届けします。ぜひお楽しみに!


そしてもう一つお知らせです。

本日より、同じ「法律ざまぁ」の新作を短期集中連載しています。

★全10話・今週末完結★

『聖剣より六法全書が強い国で警察官になりました~カツ丼に魂を売った元聖騎士と無精髭の警部が、魔王を税務調査で詰ませます~』

https://ncode.syosetu.com/n8703lz/


→異世界×警察バディ×法律コメディ。ケルベロスは狂犬病予防法違反、聖剣は銃刀法違反。週末のお供にどうぞ!

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