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【リーガルざまぁ】現行法でタコ殴り!異世界テンプレに泣く、どん底令嬢を救います〜魔王お嬢様弁護士の事件簿〜  作者: lilylibrary
第3章:編入生に魅了の魔法(SNSステマ)で婚約者と学園を奪われた令嬢ですが、情報開示請求で裏業者ごと物理包囲します〜
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第13話 工作業者への直接訪問と黄金のプラリネ・トリュフ


「おーおー、今日も元気にボットちゃんたちが『麗華様はいじめっ子』ツイートを拡散してるぜぇ。笑いが止まんねえな!」


新宿・歌舞伎町の裏通りにある、薄暗い雑居ビルの四階。


窓にブラインドが下ろされた煙草臭いオフィスで、金髪にジャージ姿の男が、ずらりと並んだモニターを見ながら下品な笑い声を上げていた。


「女子高生のパパ活マネー、マジで美味しすぎ。適当な合成動画作ってネットに放流するだけで、何百万も振り込まれるんだからな」


株式会社サイバー・バズ・プロモーションの代表取締役こと、ネット工作業者の男は、安い缶コーヒーを片手に電子タバコを吹かした。


彼らは自分たちの「仕事」が、絶対に誰にもバレない安全圏からのゲームだと信じて疑っていなかった。


ドガンッ!!!


突然、オフィスの安っぽい鉄扉が、蝶番ごと吹き飛ぶほどの勢いで蹴り開けられた。


「な、なんだぁ!? 警察か!?」


男が電子タバコを口から落として跳ね起きると、そこには信じられない光景が広がっていた。


「失礼いたします。オートロックではありませんでしたので、そのまま入らせていただきました」


土足で踏み込んできたのは、最高級のトレンチコートを羽織り、黒縁メガネをかけた冷徹な女。


その後ろには、威風堂々とした立ち姿のお嬢様と、今にも泣きそうな顔で胃薬を握りしめている気弱な青年が立っていた。


「……てめえら、誰だ! ここは関係者以外立ち入り禁止だぞ! 不法侵入で警察呼ぶぞ!」


男が凄んでみせるが、私は全く動じることなく、無造作に置かれていたパイプ椅子を優雅にハンカチで拭いて腰を下ろした。


そして、持参した漆黒の小箱から、二十四金が贅沢にまぶされた、スイス最高峰のプラリネ・トリュフをつまみ上げる。


「お気遣いなく。警察なら、こちらからお呼びいたしますので」


私は金箔の輝くチョコレートを口に含み、パリッとした極薄のコーティングと、中から溢れる濃厚なヘーゼルナッツの香りを堪能した。


煙草のヤニとエナジードリンクの悪臭が漂う底辺のオフィスに、カカオの芳醇な香りが一瞬にして広がっていく。


「所長……反社のアジトかもしれない場所で、一粒五千円の黄金チョコを優雅に味わうのやめてください。僕の寿命がマッハで縮みます」


木戸くんが震える声でツッコミを入れるが、隣の麗華様は「さすが九条院先生、肝が据わっておられますわ!」と目を輝かせている。


「さて、サイバー・バズ・プロモーションの代表様。私は東陰院麗華様の代理人弁護士、九条院結と申します」


私はチョコレートの余韻を楽しみながら、男に向かって氷のような視線を放った。


「貴方が小鳥遊くるみ氏の依頼を受け、大量のボットを用いて麗華様に対する名誉毀損および偽計業務妨害を行った証拠は、すでに完璧に押さえております」


「なっ……!? べ、弁護士だぁ!? どうやってここを特定したんだよ!」


男の顔から、さっきまでの余裕が完全に消え去り、脂汗が噴き出した。


「プロバイダ責任制限法に基づく情報開示請求です。貴方のIPアドレスも、契約者の本名も、すべて裁判所のお墨付きで丸裸にされていますよ」


私が開示決定書のコピーをテーブルに叩きつけると、男はヒィッと短い悲鳴を上げて後ずさりした。


「う、嘘だろ……! 海外のプロキシを経由して、足はつかないように設定したはず……!」


「素人の浅知恵ですね。指令サーバーの設定ミスという、三流のハッカー以下のずさんな仕事です」


私は足を組み替え、ピンヒールの先端で男のジャージの裾を軽く小突いた。


「貴方の行った工作行為により、麗華様は学園での地位を奪われ、ご実家の東陰院グループの株価にも影響が出始めています」


「偽計業務妨害罪は三年以下の懲役。名誉毀損罪や信用毀損罪も加われば、立派な実刑判決のフルコースです」


「さらに、民事上の損害賠償は数億円規模に上るでしょう。貴方のような薄汚い雑居ビルで細々と生きている人間には、一生かかっても払えない額になると推測されます。ちなみに私が最も得意とする分野です」


私の冷酷な宣告に、男は顔面を蒼白にし、ガクガクと膝を震わせ始めた。


「ま、待ってくれ! 俺はただ、依頼された仕事をやっただけだ! 主犯はあの女子高生なんだよ!」


見事なまでの手のひら返しである。悪党の絆など、現行法の圧力の前ではティッシュペーパーよりも薄い。


「ほう? 依頼されただけ、ですか。では、貴方は『小鳥遊くるみの身代わりとして、一人で刑務所に入り、数億円の借金を背負う』という義理立てをする気はないと?」


私がニッコリと、しかし全く笑っていない魔王の瞳で問いかけると、男は首を千切れるほどの勢いで横に振った。


「当たり前だろ! あんな女のために、なんで俺が人生棒に振らなきゃならねえんだ!」


「素晴らしい。その醜くも合理的な生存本能、私は嫌いではありませんよ」


私は二粒目のプラリネ・トリュフを優雅に口に放り込み、甘美な取引を持ちかけた。


「では、司法取引といきましょうか。貴方が小鳥遊くるみから受け取った『工作の指示書』、『ディープフェイク動画の元データ』、そして『報酬の振込明細』」


「は?」


「これらすべての完全な証拠を直ちに提出し、今後の法的手続きに全面協力するならば……」


私は男の目を真っ直ぐに見据え、悪魔の囁きを落とした。


「貴方個人への刑事告訴および数億円の損害賠償請求は、特別に見送って差し上げてもよいかもしれません」


「ほ、本当か!? 証拠を出せば、俺を見逃してくれるんだな!?」


男はまるで地獄で蜘蛛の糸を見つけた亡者のように、私の言葉にすがりついてきた。


「ええ。弁護士の仕事は依頼人の利益を守ることですので。……ただし、データの隠蔽や改ざんが一つでもあれば、即座に警察に通報いたしますよ」


「全部出す! 今すぐ出すから、逮捕だけは勘弁してくれ!」


男は転がるようにして自分のパソコンに向かい、カタカタと狂ったような猛スピードでキーボードを叩き始めた。


「所長……完全にマフィアの脅迫(尋問)じゃないですか。僕、法学部でこんな交渉術習ってませんよ……」


木戸くんがドン引きしながらツッコミを入れるが、これは立派な『示談交渉』の一環である。


「ほら木戸くん、呆然としていないで、彼が出力するデータをすべて持ち込んだハードディスク(LaCie Rugged)にバックアップしなさい。証拠保全の基本ですよ」


「は、はい! わかりました!」


数分後。男のパソコンからは、小鳥遊くるみの真っ黒な裏の顔が次々と発掘された。


『依頼:東陰院麗華をいじめっ子に仕立てる動画の作成と、SNSでの炎上工作。予算三百万円』


そんな生々しいチャットのやり取りに加え、動画合成の素材として使われた『くるみ自身の泣き顔の自撮り動画』までご丁寧に保存されていた。


「どうですか、麗華様? これが貴女を絶望の淵に追いやった『魅了の魔法』の種明かしです」


私がモニターを指し示すと、麗華様は呆れたように大きなため息をついた。


「……本当に、くだらない。こんな薄汚いお金と嘘のデータで、私の人生を壊そうとしていたなんて」


麗華様は、怯えて縮こまる業者を一瞥し、ふっと冷笑を漏らした。


「一条司様も、学園の皆も、こんな三流の工作に踊らされていたのですね。私が思い悩んでいたのが馬鹿らしくなりましたわ」


「ええ。真実を知れば、魔法などただの手品以下の茶番に過ぎません。……木戸くん、証拠の回収は?」


「完了しました、所長! 振込明細からチャットログまで、完璧にコンプリートです。言い逃れ不可能な致死量の証拠ですね!」


木戸くんが、黒いハードディスクを宝物のように掲げて報告する。


「ご苦労様。さて、サイバー・バズ・プロモーションの代表様。貴方の協力には感謝いたします」


私は立ち上がり、コートの襟を正して男を見下ろした。

「本日のことは、小鳥遊くるみには一切口外しないこと。もし彼女に勘付かれたり、逃亡の手助けをしたりすれば……約束は反故になってしまいますので」


「わ、わかってる! 絶対に連絡なんて取らないし、アカウントも全部消して店じまいするから!」


「素晴らしい。せいぜい、シャバの空気を長く吸えるようお祈り申し上げます」


私は背筋を凍らせるような魔王の微笑みを残し、ヤニ臭いオフィスを後にした。


「九条院先生! これで証拠は完璧に揃いましたわ! すぐにでも学校に乗り込んで、あの女の嘘を暴いてやりましょう!」


ビルの外に出るなり、麗華様が興奮冷めやらぬ様子で鼻息を荒くする。


「焦ってはいけません、麗華様。中途半端な場所で爆弾を爆発させても、ダメージは半減してしまいますから」


私は夜風に吹かれながら、手元にある決定的な証拠の詰まったディスクを軽く叩いた。


「明日から、帝都大学付属学園の『学園祭』が始まりますね。聞けば、後夜祭のメインステージで、彼女と一条様が感動のスピーチをするそうじゃないですか」


「はい……。学園のトップカップル誕生として、全校生徒の前で愛を誓うとか何とか。反吐が出そうですわ」


「素晴らしいじゃないですか。数千人の生徒が集まり、彼女が『悲劇のヒロイン』として最も輝く最高の晴れ舞台」


私は黒縁メガネの奥で、ゾクッとするような冷徹な光を放った。


「そこに、この絶対的な真実を大画面で放映して差し上げましょう。作られた魅了の魔法が解ける瞬間を、全校生徒に特等席で味あわせるのです」


「ふふっ……あはははっ! 最高ですわ、先生! 彼女の絶望する顔が、今から楽しみでなりません!」


麗華様が、お嬢様らしからぬ悪役のような高笑いを新宿の夜空に響かせる。


そう。現行法という武器を手にした令嬢は、理不尽に泣き寝入りするだけの存在ではない。


愚か者たちに特大のカタルシスをお見舞いする、学園祭での公開処刑に向けて、私たちは優雅にタクシーへと乗り込んだのだった。

お読みいただきありがとうございます!

黄金のチョコレートと引き換え(?)に、見事なまでの司法取引(脅迫)が成立いたしました。これで言い逃れ不可能な致死量の証拠が揃いましたね。


いよいよ明日。全校生徒が集まる学園祭のメインステージで、自称・愛されヒロインの「作られた感動スピーチ」を乗っ取る、極上の公開処刑が始まります。

明日のステージジャックが楽しみな方は、ぜひ下部から【星評価】と【ブックマーク】で応援をお願いいたします!

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