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【リーガルざまぁ】現行法でタコ殴り!異世界テンプレに泣く、どん底令嬢を救います〜魔王お嬢様弁護士の事件簿〜  作者: lilylibrary
第3章:編入生に魅了の魔法(SNSステマ)で婚約者と学園を奪われた令嬢ですが、情報開示請求で裏業者ごと物理包囲します〜
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第12話 発信者情報開示請求ととろけるフォンダンショコラ



「あははっ! 見てくださいよこれ。『東陰院麗華は極悪人』ってハッシュタグ、まだ学園のトレンド入りしてますよ!」


「チョロいもんだね。今時の高校生なんて、裏垢で適当な噂と合成動画を数万回拡散してやれば、あっという間に洗脳完了さ」


都内の高級タワーマンションの一室。

夜景を見下ろすレザーソファで、編入生の小鳥遊くるみは、高級シャンパンのグラスを揺らしながら下品に笑っていた。


向かいに座っているのは、派手なブランド物のスーツを着崩した、胡散臭いITコンサルタントの男である。


「ほんっと、おじさんにお金払って『ネット工作』頼んで正解だったぁ。司くんも他の取り巻きたちも、私の健気な嘘を完全に信じ込んでるもん」


「そりゃそうさ。俺たちプロの『炎上請負業者』が、海外のボットを使って一斉に世論を誘導したんだ。魔法にでもかかったように錯覚する罠さ」


男は分厚い札束の入った封筒をポンポンと叩き、くるみと醜悪な笑みを交わし合った。


「これで学園のトップは私のもの! あのウザい生徒会長には、一生ネットのおもちゃとして引きこもってもらうんだからっ!」


絶対の安全圏から他人の人生を破壊していると思い込んでいる、愚かな共犯者たち。


彼らは知らなかった。自分たちがばら撒いたデマの足跡が、現行法という名の冷酷なサーチライトに完全に捕捉されつつあることを。


◇  ◇  ◇


……という、ネットの匿名性を過信した三流悪党の密談から数時間後。


「――というわけで、彼らは現在、自分たちの身元が絶対にバレないと高を括り、タワマンで美酒に酔いしれているようです」


帝都の一等地、『九条院法律事務所』の所長室。

私は、ベルギー産の最高級クーベルチュールチョコレートを使用した、焼き立てのフォンダンショコラに銀色のフォークを入れた。


表面のサクッとした生地を割ると、中から熱々で濃厚なチョコレートガナッシュが、まるでドス黒いマグマのようにとろりと溢れ出す。


添えられた冷たいバニラアイスと熱いチョコの絶妙な温度差が、口の中で完璧なマリアージュを生み出し、脳のシナプスを心地よく刺激してくれた。


「所長。ネットの闇について語る深刻な場面で、お皿の上に甘いマグマをドロドロと流出させるのはやめてください。見ているだけで胸焼けがします」


パラリーガルの木戸くんが、私のデスクに山積みにされた通信記録のログを整理しながら胃を押さえた。


「失礼ですね。この、固い殻を破るとドス黒い本性が溢れ出す様は、匿名アカウントの裏に隠れた人間たちの醜悪な真実を表現しているのですよ」


私はフォンダンショコラを口に運び、極上のカカオの香りを堪能しながら、ソファに座る東陰院麗華様に微笑みかけた。


「さて、麗華様。木戸くんに徹夜で解析させた、貴女を攻撃している数万のアカウント群のデータがまとまりましたよ」


「徹夜させたのは所長じゃないですか……。ええと、麗華さん、こちらのモニターをご覧ください」


木戸くんがタブレット端末を操作すると、壁の大型モニターに、世界地図と複雑な通信経路の図が映し出された。


「学園の裏掲示板やSNSに書き込みを行っているアカウントの大半は、各国のレジデンシャルプロキシを経由して発信元を偽装していました」


「ま、まあ……わざわざそこまでして、私への誹謗中傷を?」


麗華様が、呆れたように上品な扇子で口元を覆う。


「ええ。素人が見れば、発信元の特定は不可能な『鉄壁の匿名陣形』に見えるでしょう」


私は冷たいコーヒーで口の中の甘さをリセットし、黒縁メガネを中指でクイッと押し上げた。


「ですが、彼らはネット工作を大量生産する『粗悪な下請け業者』です。数万のアカウントを一元管理する自動投稿ツールに、致命的な設定ミスがありました」


「ミス、ですか?」


「はい。プロキシのセッションが切れた際のフォールバック処理が未設定でした。深夜帯にプロキシが一斉にタイムアウトした瞬間、数百件の投稿が生のIPアドレス――国内のたった一箇所から送信されていたのです」


モニターの地図上で、海外に散らばっていた無数の赤い点が、一斉に日本の東京都内、ある一箇所へと収束していくアニメーションが表示される。


「まあっ! つまり、この大量の悪意はすべて、都内の一つのパソコンから自動で送信されていたということですの!?」


麗華様が、怒りで金髪の縦ロールをプルプルと震わせながら立ち上がった。


「その通りです。一条司様も学園の生徒たちも、たった一人の業者がキーボードを叩いて作った『偽物の世論』に、あっさりと踊らされていたのですよ」


「情けない……っ! 名門・帝都大学付属学園の生徒ともあろう者たちが、そんなずさんな素人の工作に洗脳されるなんて!」


麗華様の瞳に、同級生たちへの失望と、自分を陥れた業者への冷徹な怒りの炎が宿る。


「さて、敵のIPアドレス(ネット上の住所)が判明した以上、あとは現行法の力で彼らの『物理的な首』を刈り取るだけです」


私はデスクの引き出しから、あらかじめ作成しておいた分厚い申立書の束を取り出してトントンと揃えた。


「プロバイダ責任制限法に基づく『発信者情報開示請求』。ネットの闇に隠れた卑怯者の本名と住所を、強制的に暴き出すチート魔法です」


「通常、開示請求には数ヶ月の手間がかかります。SNS運営会社と、通信回線を提供するプロバイダ、両方を相手に裁判をしなければなりませんからね」


木戸くんが、疲労の色が濃い顔で補足説明を入れる。


「ですが今回は、業者のミスで大元のプロバイダのIPが直接割れています。あとは裁判所に『こいつら犯罪者だから身元を教えろ』と命令してもらうだけです」


「素晴らしいですわ! 九条院先生、すぐにその魔法を発動して、その卑劣な業者を社会的に抹殺してくださいませ!」


麗華様が扇子をバシッと閉じ、獲物を狙う鷹のような鋭い視線を私に向けた。


「ええ、すでに行動は起こしています。……木戸くん、裁判所への仮処分申立ての結果はどうなりましたか?」


私の問いに、木戸くんはドヤ顔で一枚の書類を高く掲げた。


「バッチリです、所長! 大量のボットによる偽計業務妨害と名誉毀損の証拠が完璧だったので、裁判官も一発で開示命令を出してくれました! プロバイダからも、先ほど『発信者の氏名および住所』の開示データが届いたところです」


木戸くんがモニターの画面を切り替えると、そこに一つの法人名と住所がデカデカと表示された。


『株式会社サイバー・バズ・プロモーション』

『東京都新宿区歌舞伎町〇-〇-〇 第十五雑居ビル 四階』


「……新宿の雑居ビル。いかにも、という感じの薄汚い炎上請負業者のアジトですね」


私はフォンダンショコラの最後の一口をパクリと飲み込み、優雅に口元を拭った。


「これで、編入生が使った『魅了の魔法』の正体は、完全に丸裸にされました。あとはこの業者を締め上げ、編入生との繋がりを証明する『取引の証拠』を押さえるだけです」


「九条院先生! すぐにこの会社に内容証明郵便を送りつけて、損害賠償と謝罪を要求しましょう! 警察にも通報ですわ!」


麗華様が興奮気味に立ち上がるが、私は静かに首を横に振った。


「麗華様。お嬢様らしい、とても常識的な発想です。ですが、相手は違法スレスレの裏稼業。内容証明など送れば、一秒でデータを全消去して夜逃げしますよ」


「夜逃げ……! で、では、どうすれば……?」


「決まっています。相手に一切の猶予を与えず、圧倒的な暴力……もとい、合法的な圧力で正面から制圧するのです」


私は黒縁メガネを外し、極上の魔王の笑みを浮かべて立ち上がった。


「木戸くん、タクシーの手配を。今から新宿の雑居ビルに、直接『物理的なご挨拶』に伺いますよ」


「ええええっ!? しょ、所長、またカチコミですか!? 相手は反社かもしれないヤバい業者ですよ!? 僕の命が危ないんですけど!」


木戸くんが涙目で後ずさりするが、私の辞書に「安全第一」という言葉はない。


「ご安心ください。私たちには『刑事告訴』という最強の武器があります。彼らが刑務所行きを恐れるなら、必ず従順な子犬に変わりますよ」


「それに、私も同行いたしますわ! 東陰院の人間として、自分の手で真実を掴み取ってみせます!」


麗華様が、恐怖を微塵も感じさせない凛とした顔で、私の隣に並び立った。


「……お嬢様まで所長に感化されて、武闘派の極道妻みたいになってる……。もう嫌だこの法律事務所……」


木戸くんが胃薬を水なしで飲み込みながら、絶望的な顔でタクシーアプリを開く。


匿名の盾を失い、素っ裸にされた愚かなネット工作業者。彼らがアジトでくつろいでいるところに、現行法という名の重戦車で突撃をかけるのだ。


想像するだけで、カカオ九十九パーセントのチョコレートよりも濃密で甘美な興奮が全身を駆け巡る。


「さあ、麗華様。貴女の誇りを汚したドブネズミたちを、完膚なきまでに叩き潰しに行きましょう」


私は最高級のトレンチコートを羽織り、極上のカタルシスを求めて、いざ新宿の闇へと足を踏み出したのだった。

お読みいただきありがとうございます。

プロバイダ責任制限法による『発信者情報開示請求』。匿名の盾は呆気なく砕け散り、業者の住所と本名が完全に割れました。


次回、魔王が内容証明郵便をすっ飛ばし、ヤニ臭い雑居ビルへ直接「物理的なご挨拶カチコミ」に伺います。

「ざまぁ展開キタ!」「悪徳業者をボコボコにして!」と思っていただけましたら、ぜひ【ブックマーク】をしてお待ちください!

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