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彼女の「腹ドン」がエッチすぎるので、俺たちの高校生活はカオスになります。  作者: 阿井川シャワイエ
1章 霧島優羽

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番外編2-2 ヒヤヤッコとストレッチ(中編)

「ねえ、ナオ……」


「んー、なに?」


 俺の家のリビングで、ミライさんと2人、向かい合ってお茶をすする。

 ヒヤヤッコは現在、2階にある俺の部屋で着替え中で、この場にはいない。


 「着替えはナオの部屋でしたら?」と提案してきたミライさんの様子はどこか不自然で、ヒヤヤッコに聞かれたくない話でもあるのだろうかと思い素直に頷いたわけだが……予想通りだったようだ。


「この前ナオとデートした子って、もしかして玲香ちゃんだった?」


 反応を窺うような上目づかいでそんなことを聞いてきた。


「……っ、ぐふ。いや、違うけど……」


 思わずむせそうになったが、ギリギリで持ちこたえる。


 ミライさんには、優羽さん――というかワルミちゃんが恋人になった件は伝えていない。

 そんな中でいきなり女の子を連れ帰ってきたら、当然そう思うか……。


「じゃあ、誰? やっぱり優羽ちゃん?」


「……うん、まあそうだね」


 少し悩んだものの、素直に答える。


 ミライさんが知っている俺の女友達はその2人しかいないし、お隣に住んでいることもあって優羽さんは最有力候補だったろう。

 一応中学時代はもう1人女友達がいてミライさんも面識はあるが、今となっては物理的に遠い場所なのでデート相手とは思うまい。


 優羽さんとの現在の関係はかなり複雑で、デートを応援してくれたミライさんにも報告できていなかったが、この流れはむしろいい機会かもしれない。

 さすがに全ての事情は伝えられないが、ある程度、話しておこう。


「なんていうかこう……優羽さんに告白して一応OKをもらえて、恋人的な関係にはなれたというか……。まだまだこれから頑張らないといけないんだけどね」


「……そっかそっか。優羽ちゃんとは昔から仲がよかったもんね。良かったじゃない、ナオ。私も応援するから、頑張りなさいよ」


 歯切れの悪い俺の言葉に対し、笑顔で何度も頷いているミライさん。


 多分、彼女が思い浮かべているのとはかなり違う頑張りがこれから必要になるわけだが、まあそこまで説明する必要はないだろう。

 説明できる気もしないし……。


「……それにしてもみんな、あんなに可愛くてスタイルもいいのに、もっときれいになりたいなんて。お年頃って感じだね~」


「ああ、うん。まあ、そうかもねえ」


 ぼんやりと頷く。

 俺の曖昧な態度からなにかしら察するものがあって話題を急に変えてきたのだろうが、そこで更に答えづらい話を持ってくるところがミライさんらしいと思う。


 もっとも答えづらかっただけで、言っている内容に関しては俺としてもほとんど同意見だ。

 趣味研の女性陣はみんな魅力的で、ミライさんに教えを乞う必要なんて無いだろうに……。


 さきほどもヒヤヤッコは、ミライさんと会うなり例の()()()()の依頼をしていた。

 急な話ではあったが、ミライさんは「もちろんいいよ」と笑顔で即答。

 まあ、予想通りの展開ではあった。

 ミライさんはもともと面倒見がいいほうだし、頼まれれば断らないタイプだ。

 ましてそれが得意分野であり、向こうから家まで来てくれるというのだから、ミライさんにしてみれば断る理由こそないというところなのだろう。


 ミライさんはすでに「どうやって教えるか」に考えがいっているようで、俺の適当な相槌を気にした様子もなくブツブツとつぶやいている。


「ストレッチのやり方ならまだ頭に残ってるけど、ヒヤヤッコちゃんかなり期待してたし、私もいろいろと勉強しておかないとな~。美容法に、ファッションに……う~ん、あとはどういうのがいいだろ……」


「別にほどほどで良いと思うけどね……」


 ぼやく。

 この感じだと我が家に趣味研の女性陣が入り浸るのは覚悟しないといけないかもしれない。


 もっとも、今後はミライさんと優羽さんたちで直接やり取りするだろうし、「特別授業」のときに俺がいなくても問題はないはず。

 というかそうなってもらわないと、俺が困る。


 あくまでもミライさんが個人的に優羽さんたちに教えるだけであって、俺も趣味研も無関係にしておかないと、あとが面倒だ。

 少なくともマコトと一緒に、ミライさんから美容法を教わるつもりなんてない。


 ……まあ、想像する分にはちょっと笑えるけども。


 というか考えてみれば今回のストレッチにしたって俺が参加する必要は特にないのでは?

 ウチに来たのだって、ミライさんがいるのが理由なわけで。

 

 ……うん、そうだ。

 ミライさんに全てを任せよう。

 ヒヤヤッコだって、そのほうが気楽なはずだ。


 スッと椅子から立ち上がる。


 ――と同時に、目の前のミライさんも立ち上がっていた。


「あれ? ミライさん……?」


「ナオ、私ちょっと部屋にいるから。いろいろ確認したいことができたの」


「えっ」


「あとのことはよろしくね」


 こちらを見ないままそんなことを言ってくるミライさん。

 全てを任せるつもりだったのに、逆に「よろしく」されてしまった……。


「ん~、実家に置きっぱなしかもしれないな~。こっちに持ってきてるといいけど……」


 なにやら難しい顔をして廊下に出ていくミライさんを、呆然と見送る。


 この感じだとミライさんが戻ってくるまで時間が掛かりそうだ。

 そのあいだ、ヒヤヤッコと2人きりでストレッチ……?


 ……これホントに大丈夫だろうか?

 浮気にならない?


 ……いやでも、ヒヤヤッコは「ストレッチはエッチな物じゃないよ」って言ってたし……。

 ……うん、そうだ。

 ヒヤヤッコを信じよう。


 ストレッチは、エッチではない。

 そしてもちろん、ヒヤヤッコもエッチじゃない。


 ないない同士が掛け合わさってもエッチになるはずがないのだ。

 だから大丈夫。

 ストレッチをするヒヤヤッコをイヤらしい目で見るなんて、そんなことには絶対にならない。

 浮気になる可能性はゼロ。

 子どもの頃からの友達と家で遊ぶだけなのだから、当然のことだ。


 そうやって気持ちを落ち着かせていると。


「わあ~!」


 廊下からミライさんの歓声が聞こえてきた。

 部屋に向かう途中で、着替えが完了したヒヤヤッコと遭遇したのだろう。


「玲香ちゃん、その服かわいい〜!」


「ほ、ホントですか?」


「うん、刺激的でサイコー! あ、私ちょっと部屋にいるから、ストレッチは2人でやっててね」


「あ、えっと、はい分かりました」


 そのヒヤヤッコの返事を最後に廊下は静まり返ったのだが……同時に俺の中で不安が膨らんでいく。


 ――刺激的でサイコー!

 気になったのはミライさんのその言葉。

 

 あのミライさんが「刺激的」とまで言う服装か……。

 これはちょっと覚悟しておいたほうがいいかもしれない。

 いやもちろん、なんの問題も無いだろうが……。


「ナオ君。着替え終わったよ」


 リビングの入り口からヒヤヤッコがヒョイと顔をのぞかせてきた。

 俺の位置から見えるのは、彼女の少し幼さを感じさせる可愛らしい顔だけで、ミライさんに「刺激的」と言わしめた服はいまだに壁に隠れている。


「ああ、そう! 意外と早……かった……」


 気まずくなっては困るので明るく返事をしようとしたのだが……途中でヒヤヤッコがリビングに入ってきたため言葉が途切れてしまった。


「どうかな、ナオ君。似合う?」


 そう言いながら、その場でクルクルと回転してくれるヒヤヤッコ。


「…………」


 思わず無言。

 目をそらした方がいいと理性では分かっていたが、彼女の姿から目が離せない。


 いやいや違う!

 いやらしい意味では断じてない!

 俺は、ただ単に疑問に思っただけだ。

 その疑問を解消するため、彼女の服装をジッと眺めてしまったのだ。


 ……彼女は確かにハーフパンツを用意したと言っていた。

 教室ではっきりとそう聞いた。


 でも、ヒヤヤッコさん……。

 あなたが今履いているそれ、本当にハーフパンツですか……?


 ハーフパンツをさらにハーフにしたくらいの丈。

 そして妙にぴっちりとしたサイズ感。


 ……これ、ホットパンツでは?


 見た目が、すごくスゴイんですけど。

 特にうしろを向いた時のお尻の感じが、インパクト抜群なんですけど。


 あと、ヒヤヤッコさんが着ているその白いTシャツ。

 これも妙にピッタリしてませんか?


 確かにテレビで見たことはありますよ。

 よくこんな格好でヨガとかストレッチとかやってる女性の方っていますよね。

 でも「出るところが出ている」ヒヤヤッコが着ると、身体の強調が凄まじくないですか……?


 特に胸が、いや、これ、ちょ、ええぇ……?

 マジでどうしたらいいんだ……?


「ナオ君? どうかした?」


 不思議そうにこちらを見ているヒヤヤッコ。

 彼女の瞳は純真そのもので、俺としてもなんと言っていいのか分からなくなってしまう。

 少なくとも、俺が今心の中で考えていたアレコレをそのまま伝えるわけにはいかない。


「えっと、その格好は……それってハーフパンツなの?」


 とりあえずホットパンツの件をかなり遠回しに指摘した。

 ピッタリとしたシャツに関しては、もうどうしようもないと思う。

 彼女を傷つけずに問題点を指摘する方法が思いつかないし、俺が見ないようにするしかない。

 だからせめてホットパンツだけでもどうにかして欲しかった。


「あ、これはね、九条さんに選んでもらったんだ。すっごく可愛いでしょ」


「……うん、すっごくカワイイ」


 ホットパンツ姿の彼女は可愛いというよりセクシーの範疇にいると正直思ったが、それでもヒヤヤッコの言葉に頷いてしまった。

 彼女の自慢げな表情が可愛かったからだ。


 しかし冷静になると、彼女の返答は俺の質問とは微妙にかみ合っていないことに気付く。


 九条さんが選んでくれた服……?

 つまり九条さんがハーフパンツと勘違いしてホットパンツを選んでしまった、ということか?

 ヒヤヤッコはよく分からずそのまま受け入れて、こういう状況になった?


 ……いや、しかし、九条さんがそんな間違いをするとは思えない。

 九条さんだけでなくヒヤヤッコにしても、いくら金持ちの令嬢とはいえ、ホットパンツくらい知っているだろう。


 となると……もしかして、勘違いしてるのは俺のほう……?


 マジマジとヒヤヤッコの下半身を眺める。


 俺の知識がないだけで、これはハーフパンツなのだろうか……?

 考えてみると、ハーフパンツの定義もホットパンツの定義もよく知らない……。


 なんとなくホットパンツ=エッチくらいに思っていたが、これはさすがに定義とは言わないだろうし。


 ……うーん……そう考えてみると、俺が知らないだけでこれもハーフパンツな気がしてきた。


「じゃあ、とりあえず私がお手本を見せてあげるね。ナオ君はそこで見てて」


「う、うん……」


 俺が悩んでいるあいだも、ヒヤヤッコはストレッチの準備をしていたようだ。

 ミライさんがリビングの一角に敷いてくれた、トレーニング用の薄手のマットの感触を確かめながら、こちらに笑顔を向けている。


 しかしこの展開はちょっとまずい。

 ヒヤヤッコがストレッチする光景を、俺はただ眺めるだけ。

 彼女が着替えただけで、俺の愚かな脳みそは「もしかするとヒヤヤッコってエッチなのでは……?」と思い始めているというのに。

 ここからヒヤヤッコが動き出すというのだ。

 ストレッチを、行うというのだ。


 ――これはもはやスケベと言っても過言ではないのではないだろうか。


 いや、ごめんねヒヤヤッコ。

 スケベは俺だ。

 ヒヤヤッコでは断じてない。


 そしてストレッチもごめんなさい。

 スケベは俺です。

 ちょっと気が動転して、変なことを考えてしまいました。

 ここからは、ちゃんと真面目にやります。


「うんしょっと……」


 床にペタンと座り開脚をするヒヤヤッコ。

 俺は、そんな彼女をジッと眺める。

 もちろんこれは、彼女が見せてくれる「お手本」をきちんと理解するための行動だ。

 教科書を眺めるのと同じで、そこにいやらしい気持ちなんてカケラも存在しない。


「ういしょっ……ういしょっ……」


 ヒヤヤッコは開脚した状態で、上半身を左右に捻り始めた。


 腕によってグイっと押し潰された、ヒヤヤッコの豊かな胸。

 捻りをやめ、圧迫から解放された――と思った瞬間、逆方向への捻りによって、再び押し潰され形が変わる。


 そんなヒヤヤッコのストレッチを観察し、俺は思った。


 ……いややっぱこれスケベだよ……。

 

 ごめんねヒヤヤッコ。

 これ、スケベです。


「ねえ、ヒヤヤッコ……」


「うん? なに、ナオ君?」


 たまらずストップを掛けた俺。

 ヒヤヤッコはキョトンとしていた。


「あのね、やっぱり俺も実際にやってみようと思うんだ。そうじゃないとストレッチの魅力が分からないよねえ」


「う、うん、それはいいけど……。どうかしたの? なんか泣きそうになってない……?」


 まさかヒヤヤッコのストレッチ姿をいやらしい目で見てしまい、罪悪感に苛まれているとは言えない。


 とりあえず気を取り直して俺もストレッチをしよう……。


前・後編の予定でしたが長くなったので前・中・後編の3つに分けました。

後編は22日か23日に投稿予定です。

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