第5章 無双
「どうもー」
「………………」
謁見の間の時間が、文字通り完全に停止した。
国王アルヴァリオンが、黄金の玉座の上で固まっている。
王妃セレスティアは目を丸くし、側妃ウェンディは露骨に不快そうに眉を跳ね上げた。
壇下に並ぶ三人の重臣たちに至っては、全員が口を半開きにしたまま、誰一人として言葉を発することができない。
最初に我に返ったのは、宰相ロッテルだった。
「……ルクレイン殿下」
「あん?」
「……陛下へのご挨拶は、ただいまのそれだけでございますか……?」
「うん。なんか文句あんの?」
「…………」
ロッテルの厳格そうな頬が、ピクピクと引きつった。
よし。
ルクレイン(黒田律)は、心の中でガッツポーズを作った。
(効いてる、効いてるぞ……!)
この調子だ。
礼儀知らず。
常識ゼロ。
態度最悪のゴミ王子。
まずはそこからだ。
「ルクレイン」
玉座の奥から、重苦しい低い声が飛んできた。
「何だ、その態度は」
「別に? 普通だけど」
「余の前だぞ! この王国の頂点たる国王の前だぞ!」
「知ってるよ。親父だろ?」
「親父ぃ!?!?」
国王アルヴァリオンのこめかみに、極太の青筋がぶちぶちと浮き上がった。
後ろで控えていたマクシミリアンが、胃を押さえて息を呑む。
「……殿下」
「もう親父でいいって言っただろ」
「よくありません」
アルヴァリオンはハァーッと深く、怒りを押し殺すような溜息を吐き出した。
「……まあよい。今はそのような無礼を咎めている場合ではない。問題は北部の水害だ」
「あー、それね」
「忘れていたのか?」
「いや、興味ないだけ」
「…………」
再び、謁見の間が極寒の地に変貌した。
(キタキタキタ……! 猛烈に嫌われてるぞ俺!!)
この調子だ。
もっと遠慮なく暴言を吐いて、評価をドン底まで突き落とせ!
宰相ロッテルが、困惑と苛立ちの混ざった顔で口を開く。
「しかし殿下! 避難民はすでに三千を超えております! 今後の降雨量や河川の氾濫状況についての|《未来視》によるご託宣がいただけなければ、我々としてもどのような規模の予算や兵を動かすべきか判断が――」
「知らねえよ」
「……は?」
「たかが川が溢れた程度の水害で、いちいち俺に答えを聞いてくんじゃねえよ」
ロッテルの顔が、サッと強張った。
「で、殿下! それはいくらなんでも暴論――」
「っつーかさぁ」
ルクレインは面倒くさそうに、謁見の間全体を見回した。
「なんでここにいる奴ら全員、口開けて俺の顔ばっか見てんの?」
「……はい?」
「北部で川が溢れてんだろ?」
「は、はい」
「家とか村も沈んでんだろ?」
「……左様でございます」
「民が三千人も避難して寒さに震えてんだろ?」
「その通りでございますが……」
「で? 現地に直接行った奴はこの中にいんの?」
「…………」
シーン……と静まり返る場内。
誰も答えない。
「……え?」
ルクレインは三人の重臣の顔を、順番に二度見した。
「一人もいねえの?」
「現地の代官からの報告は逐一届いております!」
ロッテルが焦ったように弁明する。
「報告?」
「はい!」
「何で?」
「何で、と申されましても……」
「紙?」
「……書状にございます」
「お前らアホなの?」
ピコンッ!
【スキル|《悪口》発動】
【☠ HIT】
「……っ!?」
ロッテルが、まるで胸を突かれたかのようにガクンと身体を揺らした。
ルクレインの視界に、新しい透明な表示が浮かび上がる。
【ロッテル:精神耐久値 91/100】
また出た。
マクシミリアンやアークの時と同じデバフ表示だ。
だが今は、そんな仕様の確認よりも【親父と臣下に徹底的に嫌われる】という一大ミッションの方が遥かに重要だった。
「川が溢れて民が溺れてんのに、お偉いさん方全員で温かい部屋に集まって紙切れ回し読みしながら、俺が来るのを口開けて待ってたわけ?」
ピコンッ!
【☠ HIT】
「い、いや! しかし殿下の|《未来視》があれば、最も確実で被害の出ない完璧な対応が約束されるのですから――」
「それだよ」
「……はい?」
「何から何まで俺頼みじゃねえか。夏休みの宿題を親に丸投げする小学生かよ」
ピコンッ!
【☠ HIT】
玉座のアルヴァリオンの表情が、怒りから別の何かへと変化していく。
だがルクレインは、そんな変化に全く気づかない。
「未来視があれば~、未来視があれば~ってさぁ! じゃあ何? 俺が明日事故か何かでコロッと死んだら、お前らいったいどうすんの?」
「で、殿下はいらっしゃいますので、そのような仮定は――」
「だからぁ!」
ルクレインのイライラした大声が、広大な謁見の間にビリビリと響き渡った。
「俺がいない時のことくらい、自分らのその頭で考えろよ無能ども!!」
ピコンッ!
【スキル|《悪口》発動】
【☠ CRITICAL HIT】
「……っっ!?」
宰相ロッテルがガバッと胸元を押さえ、血を吐きそうな顔で苦悶した。
だが、ルクレインの暴走は止まらない。
ターゲットを次へ切り替える。
強面の騎士団長ケンタへ向けて、不機嫌そうに指を突きつけた。
「おい、お前。騎士団長だろ?」
「……はっ!」
「暇そうな兵士、いっぱい抱えてんだろ?」
「王国の精鋭が揃っております!」
「今何してんの?」
「現在は王都および城下の警備を強固に――」
「北側で三千人避難して寒さに震えてんのに、王都でお散歩パトロールか?」
「それは……!」
「無駄に剣振ってイキってる暇があるなら、全員北部に送って土嚢でも運ばせろよ脳筋!」
ピコンッ!
【☠ CRITICAL HIT】
「ぐはぁっ……!?」
騎士団長ケンタの巨体が、ガタガタと激しく揺れた。
「で、殿下……」
「何だよ」
「……いえ、何でもございません」
ケンタはバッと固く口を閉ざし、深く頭を下げた。
ルクレインは隣へ目を向ける。
ロマンスグレーの髪に、高級そうな金縁眼鏡。
財務卿モス・グランフェルだ。
「で、眼鏡。お前」
「わ、私でございますか!?」
「財務卿だっけ?」
「左様でございます!」
「金出せよ」
「…………はい?」
あまりにも身も蓋もない直球だった。
「しかし殿下! 騎士団を動かし、さらに大量の食料や物資を北部へ緊急送付するとなれば、相応の莫大な予算が必要となります!」
「だから、その金を今すぐ出せって言ってんだろ」
「国庫にも限界というものが! 財務を預かる者として軽々しく――」
「じゃあこの城のシャンデリア一個売れよ」
「……は?」
ピコンッ!
【☠ HIT】
モスの金縁眼鏡が、ズルッと鼻先までズレ落ちた。
「こんな無駄に広くてバカでかい城なんだからさ、売れる高価な家具とか骨董品なんて山ほどあんだろ」
「で、ですが! 王城には国の『格式』というものが――」
「民の家が水没してんのに、城だけピカピカにしてどうすんだよ」
ピコンッ!
【☠ HIT】
「…………」
「今すぐ腹減って凍えてる奴に、その尊い『格式』とやらを食わせてやれんの?」
ピコンッ!
【☠ CRITICAL HIT】
財務卿モスが言葉を失い、喉を鳴らして絶句した。
――その時である。
「ふっ……」
静まり返った場内に、鈴を転がすような小さな笑い声が漏れた。
「ん?」
ルクレインが不審そうに振り向く。
玉座の隣で、王妃セレスティアが優雅な扇子で口元を隠していた。
その肩が、かすかにプルプルと震えている。
「……今笑っただろ」
「いいえ、笑っておりませんよ」
「絶対笑ったよね?」
「気のせいです、ルクレイン」
「絶対笑っただろ!」
セレスティアは完璧な聖母の微笑みを浮かべたまま、それ以上は答えなかった。
そして、その隣。
側妃ウェンディだけは、先ほどから露骨に不快感を全開にしてルクレインを睨みつけていた。
「…………」
ルクレインは、ウェンディをじろりと見る。
派手だ。
改めて近くで見ると、引くほど派手だった。
胸元には、ジャラジャラと大粒の宝石。
首にもジャラジャラ。
両手の指にも、ギラギラした指輪。
ドレスには、これでもかと金糸の刺繍が施されている。
(こいつ、全身でいくら分の装備してんだよ……)
そして、思い出す。
後々、この女を中心に王家を真っ二つに叩き割る、泥沼の派閥争い。
なら――。
(ついでにこいつにも嫌われとくか)
「なあ」
「……何かしら、ルクレイン殿下」
ウェンディが、ゴミを見るような冷ややかな目を向けてくる。
「お前、指何本あんの?」
「……はい?」
「指輪つけすぎだろキモいな。歩く宝石箱かよ」
ピコンッ!
【☠ HIT】
「なッ……!?」
ウェンディの美貌が、鬼のように引きつった。
「ルクレイン! 控えよ!」
玉座から、アルヴァリオンの怒声が飛ぶ。
だが、ルクレインの毒舌は止まらない。
「その服もいくらしたんだよ。北で民が凍えてるって話をしてる最中に、自分は金糸まみれの服着て涼しい顔か? 趣味悪すぎだろ」
ピコンッ!
【☠ CRITICAL HIT】
「ぶ、無礼な……ッ! なんという無礼な言い草……ッ!」
ウェンディの顔が、沸騰したヤカンのように真っ赤に染まった。
(よし! 100%嫌われた!)
ルクレインは最後に、国王へと向き直った。
「親父も親父だよ」
「何だと!?」
「側妃ばっかり甘やかしてイチャイチャしてんじゃねえよ。嫁さんをもっと大事にしろや」
「なっ……!?」
ピコンッ!
【☠ CRITICAL HIT】
「…………」
国王アルヴァリオンがフリーズした。
側妃ウェンディもフリーズした。
そして――。
「ふふっ、くすくす……!」
今度こそ隠す気もなく、王妃セレスティアが楽しそうに声を上げて笑った。
「やっぱ笑ってんじゃん!」
「ごめんなさいね、ルクレイン。つい……」
「ついじゃねえよ!」
「ですが――」
セレスティアは、実に晴れやかな笑みをルクレインに向けた。
「よくぞ言ってくれました。胸がすっといたしましたわ」
「いやそこ喜ぶところじゃねえから!」
ウェンディが、怒りで血走った目で王妃を睨みつける。
もう一発いっとくか。
「あと、そこの歩く宝石箱」
「……私にまだ何か!?」
「そのまま調子乗って裏でコソコソ派閥作ってると、後で王家めちゃくちゃになってお前追放されるぞ」
「な、何ですって……!? 予言ですか!?」
「知らんけど」
「知らないのですか!?!?」
知っている。
原作ゲームのルートで知っている。
だが、説明する気なんて微塵もない。
『随分と好き勝手言い放題だな、小僧……』
腰の短剣アークが、引いたような呆れ声を漏らした。
「三本目は黙ってろ」
『三本目と呼ぶなと言っておろうがぁぁ!』
ルクレインは再び、アルヴァリオンを挑発するように見上げた。
「で?」
「……何だ」
「どうすんの?」
「何をだ」
「俺の処分だよ」
ルクレインは、両腕を大げさに広げてみせた。
「国王に向かって親父呼ばわりして、臣下全員を無能バカ扱いして、側妃まで歩く宝石箱って煽り倒したんだけど?」
「…………」
「普通に考えて、王族としてアウトだろ。一発退場だろ」
アルヴァリオンのこめかみに、再び太い青筋がピキピキと浮かび上がる。
来た来た来た!
(よし……! 追放確定! 田舎ニート生活バンザイ!!)
「……そこまで言っておいて、ただで済むと思っているのか」
はい、テンプレの怒りセリフ入りましたー!!
「別に? 好きにすれば?」
「何だと……?」
「第二王子の立場剥奪でも何でも好きにすりゃいいだろ。俺を辺境にでも追い出せば?」
「殿下!!」
マクシミリアンが、珍しく切迫した大声を上げた。
だが、ルクレインの勢いは止まらない。
「こんな失礼で性格悪い奴、王族に置いておく必要なんて一切ねえだろ! さあクビにしろ!」
完璧だ。
これ以上ない、暴言ラッシュ&自主退場アピール。
(田舎! ニートライフ! 毎日ゲーム三昧!)
「じゃ、俺は部屋に帰るから。追放の書類できたら呼んでー」
「……待て」
「あ? 今度は何だよ」
アルヴァリオンはルクレインを鋭い目で見つめたまま、長い沈黙を守っていた。
やがて――。
「……確かに、その通りだな」
「は?」
ルクレインのドヤ顔が、ピタリと止まった。
「我らは……あまりにもお前という存在に甘え、頼りすぎていた」
「…………はい?」
嫌な予感がした。
猛烈に、吐き気がするほどの嫌な予感が胃を襲う。
「何か問題が起きれば、ルクレインに尋ねる。未来視を使わせる。そして、お前が提示した『完璧な答え』にただ従う……」
「いやいや」
「お前がいれば絶対に間違いはない。いつしか我が国の指導層は、それを当たり前の前提として思考を停止させていたのだ」
「いやいやいや!」
アルヴァリオンが、力強く玉座から立ち上がった。
「その結果、我らは自ら現場を見、自ら頭を悩ませるという、人として当然の努力すら怠っていた……!」
「違うって! 単に俺がお前らをバカにしただけだって!」
宰相ロッテルが、ガバッと力強く拳を握りしめた。
「……殿下のおっしゃる通りでございます……!」
「言ってねえよ!」
「私は宰相という重責にありながら、現地へ赴くことすら頭になく、ただ殿下の未来視というカンニングペーパーを待っておりました……何という恥ずかしさ……!」
「だから! お前らをアホって罵っただけだって!」
「そのお言葉、生涯の教訓として深く胸に刻みます!」
「刻むな頼むから!!」
騎士団長ケンタが、一歩前へ踏み出してきた。
「私も直ちに全軍を再編成いたします!」
「勝手に話進めるなよ!」
「精鋭五百を即座に北部へ急行させ、避難誘導と堤防の補強作業に当たらせます! 剣など捨て、土嚢を運びますぞ!」
「いや、俺は土嚢運べってただの嫌味で――」
「必ずや期待に応えてみせます!」
「人の話を聞けぇぇぇ!!」
財務卿モスが、キリッとした顔で金縁眼鏡を押し上げた。
「私も直ちに緊急特例予算を編成いたしましょう!」
「お前まで!? 頼むから正気に戻れ!」
「王城の美術品を一部売却し、食料、毛布、医療品を最優先で買い占めて現場へ送り込みます!」
「だから俺、そんな具体的指示出してねえって!!」
アルヴァリオンが、深く力強く頷いた。
「ロッテル!」
「はっ!」
「直ちに現地へ赴き、被害状況と避難経路をその目で確かめてまいれ!」
「承知いたしました!」
「ケンタ!」
「はっ!」
「兵五百を率いて北部へ飛べ! 救助と堤防補強を最優先とせよ!」
「承知!」
「モス!」
「はい!」
「国庫を開け! 必要な物資の調達に金を惜しむな!」
「直ちに!」
「…………」
ルクレインは開いた口が塞がらないまま、呆然と三人を眺めた。
「……なんで?」
誰も、ルクレインの問いに答えない。
それどころか、全員が「国を救う英雄」のような熱い眼差しを漲らせている。
(なんでこいつら急にヤル気満々になってんの!?!?)
アルヴァリオンが、温かい眼差しでルクレインを見つめた。
「ルクレイン」
「……何だよ」
「……礼を言うぞ」
「やめて、マジでやめて」
「お前のおかげで、余も臣下たちも目が覚めた」
「一生寝ててくれよお願いだから!」
ピコンッ!
【☠ HIT】
アルヴァリオンの眉が、ピクリと動いた。
だが、怒らない。
それどころか、何かを深く噛みしめるように目を閉じた。
「……先ほど、お前は言ったな。第二王子の立場を剥奪しても構わぬ、と」
「言った言った。今すぐ剥奪して」
「王族の身でありながら、国王と重臣の怠慢を真っ向から糾弾する。それがどれほど危うい行いか、お前ほどの者が分からぬはずがない」
「いや全然分かってなかったけど」
「つまりお前は――第二王子という地位も、己の身の安全もすべて投げ打つ覚悟で、我らに忠言してくれたのだな……!」
「違ぇよ!? 捨てたかったんだよ! 純粋に地位を捨てたかっただけ!」
「……地位など惜しくもない、と申すか……!」
「そういう意味じゃねえええ!!」
アルヴァリオンの目に、うっすらと光るものが浮かんだ。
「民のためならば王族の身分すら要らぬ、か……。余は、良い息子を持った」
「持ってない! そんな息子どこにもいない!」
壇下では、宰相ロッテルが目頭を押さえ、騎士団長ケンタが男泣きに肩を震わせている。
財務卿モスに至っては、眼鏡を外して袖で涙を拭っていた。
後ろを見れば、マクシミリアンまでそっとハンカチを取り出している。
「お前もかよマック!」
アルヴァリオンは目元を拭うと、どこか愛おしそうな笑みを浮かべた。
「ははは! これからも遠慮はいらんぞ!」
「遠慮しかしたくないよ!」
「思ったことがあれば、余にも臣下にもバシバシと言ってくれ!」
「嫌だよ絶対言わないよ!」
「頼りにしているぞ、我が息子よ」
「頼るなあああああ!!」
ルクレインは、勢いよく後ろを振り向いた。
「マック!!」
「はい」
「なんで!? なんでこうなるの!? 俺、完璧に悪口言ったよね!?」
マクシミリアンはハンカチをしまうと、どこまでも穏やかな微笑みを浮かべた。
「殿下の真摯なお言葉が、皆様の固く閉ざされた胸に届いたのでしょう」
「悪口しか言ってねえっ!!」
「飾らない本心だからこそ、皆様の魂を揺さぶったのでございます」
「意味分かんねえ!?」
『なかなかやるではないか小僧! これぞ真の王の器というものだな!』
腰のアークが、感心したように高笑いする。
「鉄くずは黙ってろ!!」
*
重臣たちがルクレインを見る目は、最初とは完全に別物へと変貌していた。
宰相ロッテル。
財務卿モス。
騎士団長ケンタ。
彼らはもう、誰一人として言葉を発しない。
ただ、涙に濡れた目で、あまりにも眩しい『真の指導者』を見るようにルクレインを見つめていた。
これまでのルクレイン殿下は、未来を見通し、常に正しい答えを与えてくれる完璧な存在だった。
だが――今日の殿下は違う。
あえて答えを与えず、叱咤し、突き放し、自分たち自身に考えさせた。
それも、自らの地位すら投げ打つ覚悟で。
(このお方は、我々の想像を超える高みへと至られた……!)
三人の目には、もはや尊敬を超えた畏敬と忠誠が宿っていた。
「…………」
ルクレインは、その全員からの熱すぎる視線に気づき、顔を歪ませた。
(……なんでこいつら、さっきより目ぇキラキラ輝かせてんの……? 宗教??)
嫌われるはずだった。
最低最悪のクズ王子として、国政から叩き出されるはずだった。
なのに――。
ルクレインの目の前に、見たこともない巨大なシステムウインドウがドカンと出現した。
【王国内評価が爆発的に上昇しました】
【王国内評価 +150】
「…………は?」
「評価上がってんじゃねえかあああああああ!!!!」
謁見の間に、ルクレインの絶望に満ちた悲鳴が虚しく響き渡ったのだった。




