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第32話 ショートカット

「……遅い」


 ドラコの低い声が、黒の牢獄に重く響いた。


 苛立たしげに、指先で机を叩く。


 コツ。

 コツ。

 コツ。


「グロガリの奴……一体何をしてやがる」


 返事はない。


 広い部屋の中には、ドラコとカメレオの二人だけ。


 最強部隊|《顎》を侵入者の迎撃へ向かわせてから、すでにかなりの時間が経っている。


 にもかかわらず。

 一切の報告がない。


「あの|《顎》だぞ」


 ドラコが吐き捨てる。


「王国の連中が何十人押し寄せようが、あいつらなら骨まで食い散らかせるはずだ」

「……そのはずなんだけどねぇ」


 カメレオも、いつもの不敵な笑みを完全に失っていた。


 状況が、あまりにも悪すぎる。


 王国側の侵入者は、まるで迷宮の構造を知り尽くしているかのように、確実に奥へと進んできているのだ。


 さらに、決定的な問題は――。


「逃げた王子二人の行方も、まだ掴めていない」

「分かってるよッ!」


 ドラコが激昂し、分厚い机を殴りつける。


 ドンッ!!


「クソッ! あの二人は一体どこへ消えやがった!」


 第一王子リクター。

 第二王子ルクレイン。


 本来なら、この黒の牢獄に閉じ込めて詰みのはずだった二人。


 それが、牢を破壊して逃走。

 その後、完璧に気配を消して姿をくらませている。


「王子どもは見つからねえ。|《顎》からは連絡も途絶えた。侵入者どもだけは、どんどん深部へ入ってきやがる……!」


 ドラコの額に、極太の青筋が浮かび上がった。


「……予定が狂いすぎだ」


(このままでは……)


 ドラコの喉が、ごくりと鳴った。


(あの方に、何と報告すればいいんだ……!)


「落ち着きなよ、ドラコ」

「これが落ち着いていられるかァ!」


 ドラコが血走った目を見開き、カメレオを睨みつける。


「もし|《顎》まで突破されてみろ! ここまで敵が雪崩れ込んでくるんだぞ!?」

「だからこそ、最悪の場合は――」


 カメレオの視線が、部屋の最奥へ向く。


 そこには、一見すると何の変哲もない、頑丈な石壁があった。


 だが――その向こうには、秘密の緊急脱出路が存在する。


 万が一、黒の牢獄まで敵に踏み込まれた場合。

 敵の目を欺き、この部屋から安全に脱出するために用意された隠し通路。


「……あれを使えばいいだけの話さ」

「チッ」


 ドラコが、苛立ちを隠さずに舌打ちする。


「俺たちが逃げる羽目になるとは思えねえがな」


 その時だった。


 パコンッ。


「…………」

「…………」


 二人が、同時に固まった。


 今。

 何かが外れたような、間の抜けた音がした。


 しかも――部屋の最奥から。


「……おい」

「うん」


 ドラコとカメレオが、ギギギ……と、錆びたロボットのような動きでゆっくりと振り返る。


 視線の先。


 先ほどカメレオが見つめていたばかりの、隠し石壁。


 その一部が――ギィ……と、ゆっくり開いていた。


「…………は?」


 ドラコの口から、間の抜けた掠れ声が漏れた。


 ありえない。

 絶対にありえない。


 あれは、部屋の内側から外へ逃げるための非常用脱出扉だ。

 敵が外から入ってくるような構造には、なっていない。


 その扉が、完全に開ききった。


 暗闇の広がる通路の中から。


 ぬっと、一人の男が爽やかに顔を出した。


「おおッ! やっと外に出られたぞ!!」


「…………」

「…………」


 ルクレインだった。


「兄貴! 出口だ! やっぱり抜け道だったぞ!」


 その後ろから、リクターも静かに姿を現す。


「…………」


 沈黙。


 ドラコ。

 カメレオ。

 リクター。

 そして――ルクレイン。


 四人の視線が、完璧に交錯した。


「…………あれ?」


 ルクレインが首を傾げて、周囲を見回した。


 見覚えのある、重厚な黒い壁。

 見覚えのある、豪華な広間。


 そして。


 目の前に立っている、ものすご~~~く見覚えのある、厳つい二人組。


「…………」


 ルクレインの顔から、一瞬で笑顔が消え失せた。


「…………ここ」


 もう一度、ぐるりと周囲を見渡す。


「元のボス部屋じゃねえかァァァァァッ!!」


 黒の牢獄に、魂の絶叫が響き渡った。


「何がショートカットだよ! 長々と暗闇を歩かされた挙句、ボス部屋に戻ってきただけじゃねえか、ふざけんなッ!!」

「……ショートカット……?」


 ドラコが、怪訝そうに眉をひそめる。


「クソッ! あの一本道、外に通じてんじゃなかったのかよ!」


 頭を抱えて暴れるルクレイン。


 一方――。


 ドラコとカメレオは、それどころではなかった。


(な、なぜだ……!?)


 ドラコの額から、ツーッと冷や汗が垂れ落ちる。


(なぜこいつらが……この極秘の脱出通路を知っている!?)


 ここは、緊急避難路。


 存在を知る者は、組織の中でも幹部の中の幹部に限られている。

 ましてや――捕虜だったルクレインたちが知るはずなど、絶対にない。


「……なるほどな」


 ドラコが顔を歪め、低く呟いた。


「そういうことか……!」

「あ?」


 ルクレインが顔を上げる。


「俺たちの逃げ道まで……完全に読み切って潰しに来たってわけか」

「…………は?」

「ここまで完璧にやってくれるとはな、第二王子!」

「いや何の話だよ!?」

「とぼける必要はないよ、ルクレイン殿」


 カメレオも目を極限まで細め、冷や汗を拭った。


「この秘密通路を逆走して、この部屋へ直接乗り込んでくるなんてね……脱帽だよ」

「いやだから! ただの迷子だって――」

「俺たちを生かして逃がすつもりはない、ということだな!」

「話を聞けよッ!!」


 だが。


 そのやり取りを、後ろで静かに見つめていたリクターは――。


 まったく別の次元で、脳が揺れるほどの衝撃を受けていた。


(…………やはり)


 リクターの瞳が、限界まで見開かれる。


 隠し通路を発見した際、ルクレインは迷いなく言ったのだ。


 ――このパターン、知ってる。


 そして、一切の躊躇もなく一本道を進み、扉を見つけた瞬間に宣言した。


 ――いよいよだ。

 ――やっと終わりが見えたぞ。


 そして今。


 開かれた扉の先には、敵の総大将であるドラコとカメレオが待っていた。


(偶然などではない……!!)


 リクターの拳が、ワナワナと震える。


(すべて……最初からすべて分かっていたというのか……!!)


 一瞬でも『自分はルクレインを深読みしすぎているのではないか』と疑った自分を、リクターは心から恥じた。


(浅かったのは……私の方だ……!)


 ルクレインは、自分が考えていたよりもはるかに先を見ていた。

 敵の心理、建物の構造、そして逃走経路――そのすべてを、完璧に計算し尽くしていたのだ。


(ここへ戻ってくることも……!)

(この隠し通路の先で、油断している奴らを追い詰めることも……!!)


 リクターの中で、これまでのすべての疑念が、絶対の確信へと昇華した。


「フッ……」


 ドラコが獰猛に笑う。


「まあいい」


 ゆっくりと、巨体を立ち上がらせる。


「こっちも、お前らを生かして返す気はねえ」


 その巨体から、どす黒い魔力が爆発的に立ち昇った。


「王子二人を探しまわる手間が省けたと思えば、安いもんだ!」


 カメレオも、身体を滑らせるように前へ出る。


「|《顎》がどうなったのかは分からないけれど……」

「お前ら二人をここで殺せば――」


 ドラコが、ギラリと牙を剥く。


「多少の損害なんざ、全部帳消しだぁッ!」


「…………」


 リクターが、静かに前へ出ようとした。


「ならば――」

「兄貴」


 ルクレインが、すっと腕を伸ばしてそれを制した。


「下がってろ」

「何……?」

「ここは俺がやる」

「馬鹿を言うな! 二人で共闘すれば――」

「いいから下がってろって!」


 ルクレインが振り返り、本気で焦った顔を見せる。


「今の兄貴、魔力がスカスカでほとんど残ってねえだろ!」

「しかし――」

「こんなところで死なれたら、マジで困るんだよ!!」

「…………!」


 リクターの目が見開かれる。


 ルクレインにしてみれば、『第一王子の兄貴に死なれたら、ただでさえ崩壊しかけてる原作シナリオが、取り返しのつかない破滅ルートに入る』という、必死の保身であった。


 だが――リクターに、そんな事情が伝わるはずもない。


(私を……)


 リクターは唇を強く噛み締め、拳を固く握り締めた。


(自分が満身創痍でありながら……また私を守ろうというのか……!!)


「おい、アーク!」


 ルクレインが腰へ手を伸ばした。


 短剣ほどの大きさのままのアークを、引き抜く。


『なんじゃい!』

「戻れ!」

『……何だと?』

「本来の聖剣形態に戻れッ!」

『おおおおおッ!』


 アークの声が、一気にテンション高く裏返る。


『ようやく、わしを聖剣として正しく崇める気になったかバカ飼い主め!』

「ただし!」

『なんじゃ!』

「あんまり重くすんじゃねえぞ!」

『注文が細かいわ!!』

「俺が持てなかったら意味ねえだろ!」

『分かったわいッ!』


 カッッ!!


 まばゆい白銀の光が、部屋を包み込む。


 短剣サイズだったアークがぐんぐんと伸び、重厚で美しい、本来の聖剣の姿へと変化した。


「よし!」


 ルクレインが、両手でしっかりと柄を握り直す。


「これなら戦える!」

『当たり前じゃ! わしを誰だと思っとる!』

「性能のいい中古家電」

『聖剣じゃと言っとろうが!!』


「来るぞッ!」


 ドラコが踏み込み、石床を爆砕させた。


 ドンッ!!


「速っ!?」


 一瞬で視界を埋め尽くす、巨大な岩石のような拳。


 ガギィィィンッ!!


 アークの刀身で、どうにか受け止める。


「ぐっ……!?」


 骨まで響く、凄まじい衝撃。

 ルクレインの身体が、勢いよく後方へ滑る。


 そこへ――。


「隙だらけだねぇ!」

「ッ!?」


 カメレオ。


 完全な死角から、蛇のような鋭い刺突が飛ぶ。


「うおッ!?」


 間一髪、身体を捻ってかわす。


 だが――。


「遅えんだよッ!」


 ドラコの重い追撃の蹴り。


「ぐあッ!?」


 脇腹へ、クリーンヒット。

 ルクレインの身体が、派手に吹き飛んだ。


 ドガァンッ!!


「ルクレイン!」

「来んな、兄貴ッ!」


 床を転がりながら、ルクレインは必死に叫んだ。


「俺がやるって言ったろ!」


 強引に立ち上がる。


「クソッ……!」


 強い。


 一対一でも相当厄介なのに、二人が完璧なコンビネーションで攻めてくる。


『ルクレイン!』

「なんだよッ!」

『さっきのやつじゃ!』

「さっきの?」

『悪口じゃよ!』

「あ!?」

『あやつらの動きをピタリと止めた、あの謎の呪いを使え!』

「……ああっ!」


 ルクレインの目が、歓喜に輝いた。


「それがあった!!」


 ドラコの表情が一変する。


「……チッ!」


 以前、ルクレインの言葉を受けた瞬間、全身の自由を完全に奪われた。

 あの不可解で恐ろしい力。


「来るぞ、カメレオ!」

「分かっている!」


 二人が、警戒心全開で身構える。


 ルクレインは仁王立ちになり、ドラコをビシッと指差した。


「このトカゲ野郎!!」


「…………」

「…………」

「…………」


 シーン。


 何も起きない。


「…………あれ?」


 ルクレインが首を傾げる。


 ドラコも、自分の身体を見下ろす。


「…………」


 動く。

 指一本まで、普通に動く。


「なんだ……?」

「いや、ちょっと待て待て!」


 ルクレインが焦って、もう一度指差す。


「顔面爬虫類!」

「…………」

「ワニの粗大ゴミ!」

「…………」

「図体だけデカい脳筋ミジンコトカゲ!!」

「…………」


 静寂。


 ドラコの額に、ピキピキと青筋が怒涛の勢いで浮かび上がった。


「……貴様……ッ」

「待て待て待て待て!」


 ルクレインが冷や汗を流して、手を振る。


「今のなし! ノーカン! もう一回!」

「殺す!!!」

「やっぱ普通に怒るだけかよォォォッ!!」


『何をやっておるんじゃ!』

「やってんだろッ!」

『さっきの【罵倒】をやれと言うとるんじゃ!』

「だから本気で悪口言ってるだろッ!」

『発動しておらんではないか!』

「俺に言われても知らんわ!!」


 カメレオが、鋭く迫る。


「戦いの最中に、何をコントをやっているのかな?」

「遊んでねえよッ!」


 ギィィンッ!!


 迫る刃を、アークでギリギリ弾き返す。


『もっと心を込めて罵れ!』

「心を込めて罵るって何だよ、意味分かんねえよ!」

『もっと魂から吐き捨てるんじゃ!』

「分かったよ畜生!」


 ルクレインが、カメレオを睨みつける。


「この――陰湿そうな顔した変身オタク野郎!!」


「…………」

「…………」


 何も起こらない。


 カメレオの眉が、ピクリと跳ね上がった。


「……ふざけるなよ。普通に腹が立つね」

「俺だって好きで言ってんじゃねえよッ!」


 ドガッ!!


「ぐおッ!?」


 ルクレインが、再び派手に吹き飛ぶ。


(なんでだ!?)


 床を転がりながら、脳みそをフル回転させる。


(前は勝手に出ただろ!?)


 【罵倒】スキル。


 自分でも、発動条件がまったく分かっていない。

 必要な時に、突然勝手に発動するのだ。


 まるで――ゲームのシステムそのものが『お前はここでストーリーを進めろ』と強制介入してくるかのように。


(まさか……)


 ルクレインの顔が引きつる。


(俺の意思じゃ任意発動できねえのかよ、このクソ仕様!?)


「ふざけんなよ!」


 立ち上がる。


「一番肝心な時に役に立たねえのかよ、この欠陥スキル!!」

『スキルに悪口を言ってどうするんじゃ!』

「うるせえ死ね!」


 ドラコが、頭上から迫る。


「終わりだァッ!」

「ッ!」


 ガギィィンッ!!


 アークで受ける。


 重い。

 腕の骨が軋む。


「ぐっ……!」


 さらに、カメレオの追撃。


 避ける。


 ドラコの拳。


 受ける。


 カメレオの刺突。


 かわす。


 ドラコ――。


「がっ……!?」


 拳がかすめた。

 肩から、鮮血が飛び散る。


「ルクレイン!」


 リクターが、前へ踏み出そうとする。


「来んなって言ったろ!!」


 ルクレインが、血を吐き捨てるように叫ぶ。


「兄貴は黙って見てろ!」

「しかし!」

「いいからッ!」


 肩で息をする。


「ハァ……ハァ……ッ」


 まずい。

 本気でまずい。


 アークも、先ほどまでの連戦で、かなり魔力を消耗している。


『……ルクレイン』

「ああ!?」

『……本格的にまずいぞ』

「知ってるよ、そんなこと!」

『このままでは――』


 アークの声が、かつてないほど低く沈んだ。


『本当に死ぬぞ』

「見りゃ分かるわッ!!」


 ドラコとカメレオが、左右から、完全に詰みの配置で迫る。


『ならば――』

「なんだよ!」

『わしに……必殺技を使わせろ!』

「…………は?」

『残っておる全力を、一気に解き放つ!』

「お前、それ……」


 ルクレインの顔が引きつる。


「使ったらどうなるんだよ?」

『ほぼ魔力が空になるじゃろうな』

「またあの惨めなセミの抜け殻になるんじゃねえだろうな!?」

『なるじゃろうな!』

「なるのかよッ!!」

『じゃが、このままではお主が先に抜け殻になるぞ!』

「縁起でもねえこと言うな!」

『どうするんじゃ!』


「…………」


 ルクレインが、奥歯が砕けんばかりに噛み締める。


 選択肢など、ハナから存在しない。


「……クソッ! 仕方ねえ!」


 ルクレインは、腹を括った。


「分かった! やれッ!」

『よしッ!』

「で、どうすんだ!?」

『まず、柄を両手でしっかり握れ!』

「こうか!?」


 ルクレインが、両手でアークを構える。


『もっとしっかりじゃ! 腹に力を入れよ!』

「こうだろッ!」

『そして、切っ先を敵の真っ芯へ向けろ!』


 ルクレインが、迫るドラコとカメレオへ、愚直に剣先を向けた。


「これでいいか!」

『よし!』

「撃てッ!」

『まだじゃ!』

「はあ!?」

『呪文を唱えろ!』

「……何を?」

『決まっておるじゃろう』


 アークが、ボソボソとルクレインの耳元で何かを囁いた。


『――――――』

「…………」

『――――――』

「…………」

『――――――』

「…………マジで言いてえの、それ?」

『マジじゃ!!』

「超恥ずいんだけど!! 中二病かよ!?」

『何を言うておる!』

「普通にビームみたいに出せねえのかよ!」

『若者よ』

「なんだよッ!」

『こういうものは――形とハッタリが大事なのじゃ!!』

「いらねえよ、そのこだわり!」

『必殺技じゃぞ! 格好よく叫ばんでどうする!』

「お前、それ言わせたいだけだろッ!」

『早うせい! 敵が来るぞ!』

「くっそ……!!」


 ドラコとカメレオが、怪訝な顔で足を緩め、二人を見ている。


「……何をごちゃごちゃやっている?」

「知らねえよ! 俺が一番恥ずかしいんだよッ!」

『ルクレイン!』

「あーもうッ!!」


 大きく息を吸い込む。


「分かったよ! 言やいいんだろッ!!」


 聖剣アークの柄を、砕けよとばかりに両手で強く握り締めた。


 その瞬間――。


 白銀の光が、ドクンと音を立てて刀身へ集束し始める。


「――偉大なる聖剣よ!!」


「……っ!?」


 ドラコの表情が一変した。


「悠久の時を越えし、その聖なる力――!!」


 白銀の光が、爆発的に輝きを増していく。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!


 黒の牢獄全体の空気が、物理的な圧力となって震え始めた。


「な、なんだ……この異常なまでの密度は……!?」


 カメレオが恐怖に顔を引きつらせ、思わず一歩後退する。


 ルクレインは、顔を真っ赤にしながらも、咆哮した。


「今こそ我が手に集いて――!!」

『もっと腹から声を出さんか!』

「うるせえ黙ってろ!!」

『威厳がつかんじゃろう!』

「今全力でやってんだろッ!!」


 さらに光が膨れ上がり、部屋全体を呑み込んでいく。


 リクターが息を呑んだ。


「これは……まさか……!」


 ルクレインの全身を、神々しいまでの白銀の光が包み込んでいく。


「すべてを断ち切る――!!」


 アークを、ゆっくりと上段へ掲げ上げる。


「裁きの閃光となれッッ!!」

『今じゃ、ルクレイン!!』

「うおおおおおおおおおッッッ!!」


 ルクレインが、全身の筋力を叩きつけるように。


 聖剣アークを、真っ直ぐに振り抜いた。


「《グレート・アーク・ライトニング》ッッッ!!!!」


 瞬間――世界が、白に染まった。


 ズガァァァァァァァァァァァァァァァァンッ!!!


 聖剣から解き放たれたのは、光の奔流。


 白銀の閃光が、黒の牢獄のすべてを埋め尽くす。


 壁も。

 床も。

 天井も。


 敵も味方も関係なく、すべてが眩い閃光の暴風の中へ消えていく。


 「な――ッ!?」


 ドラコが目を見開く。


「ドラコォォォッ!!」


 カメレオの悲鳴すらも、天地を揺るがす光の轟音に掻き消された。


 そして。


 白銀の光の渦の中から――すべてを断ち切る、絶対的な巨大斬撃が。


 ドラコとカメレオに向かって――。

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