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社会が個人に求める「適性」とは、人間という不確定な部品を使い勝手の良い規格品へと均一化するための、精神的なプレス加工だった。
六月上旬の、熱気がこもり始めた夜。
私は自室のデスクでノートパソコンを開き、STR戦略研究所の一次選考プロセスである「WEB適性検査」の画面と対峙していた。
背後には、不測の事態に備えて、千紗が心配そうに身を乗り出して画面を覗き込んでいる。
画面を照らす青白い光のなか、一問につき数秒の猶予しか与えられない質問群が、無慈悲なカウントダウンタイマーとともに次々と流れていく。
デスクの端、充電器に繋がれたモバイルバッテリーが、スマートフォンの急速充電を処理しながらかすかな熱を放っていた。
本体に埋め込まれた小さな緑色のLEDが、一定の周期で執拗に点滅を繰り返している。
その規則的な光の脈動と、そこから立ち上るリチウムイオン電池特有の金属熱が、触覚ノイズとなって私の焦燥をじわじわと増幅させていた。
「――っ、また、エラー値よ」
私はマウスを握る指先をフリーズさせた。液晶画面には、以下のような設問が躍っている。
【質問:私はチームでの協力が、常に最善の解決策だと思う。】
【選択肢:あてはまる、どちらかといえばあてはまる、どちらかといえばあてはまらない、あてはまらない】
制限時間は残り十秒。タイマーのバーが、視覚的なタイムリミットとなって急速に縮んでいく。
「定義が不足しているわ。タスクの性質、メンバーの平均的なスキル、納期という制約条件が一切記述されていない。例えば、個々の独立した演算が並列処理可能なタスクにおいて、無駄な同期通信を発生させる『協力』はパフォーマンスを著しく低下させる。常に最善、という普遍的な命題は論理的に偽よ」
「英里菜、ストップ! 頭を回しすぎ!」
私の背後から、千紗がさらに身を乗り出して、私の手から強引にマウスを奪い取った。
彼女のシャンプーの甘い香りが、モバイルバッテリーの熱っぽさを一瞬で上書きする。千紗はタイマーがゼロになる直前、迷わず「あてはまる」のボタンをクリックした。
「千紗! 何をするの。偽りの解答を送信するのは、システムに対する明らかな汚染よ」
「汚染じゃないよ! これ、真面目に答えちゃダメなゲームなの!」
千紗は私の抗議をいなすように、すかさず次の質問画面へと視線を走らせる。
【質問:他人の意見に流されず、自分の信念を貫き通すタイプだ。】
「これなんてどうする? 英里菜は完全にこれだけど」
「当然、『あてはまる』よ」
「ダメ! さっき『協調性があります』って答えたばっかりなんだから、ここで『自分の信念を貫き通す』って答えたら、システムに『矛盾した性格』として弾かれちゃうでしょ! ここは『どちらかといえばあてはまらない』をクリック!」
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