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五月上旬の陽光は、私にとってただの苛烈な紫外線と、網膜を痛めつける過剰なルクス(照度)の束に過ぎない。
大型連休が明けたキャンパスは、急速にひとつの巨大な「就職活動」という規格化されたフェーズへと移行していた。昨日まで思い思いの衣服を身にまとっていた学生たちが、突如として黒いリクルートスーツという同一のシェル(外殻)を装備し、判で押したような笑顔を浮かべて歩いている。
その一様な同期の光景は、私の目には不気味なバグの増殖のように映った。
「ほら英里菜、これなんてどうかな? 『アットホームで風通しの良い職場。若手のうちから裁量を持って働けます!』だって。福利厚生もすごく手厚いよ」
数理科学科の共同スペース。千紗が自身の薄型ノートパソコンを私の方へと向けた。
液晶画面には、大手の就職情報サイトが提供する色鮮やかな求人広告が踊っている。笑顔の社員たちが肩を並べ、青空をバックにガッツポーズを決めている。
私はその画面を一瞥し、即座に視線を逸らした。
網膜に飛び込んできたのは、無秩序な配色と、論理的根拠を一切持たない情緒的な文字列のノイズだ。
千紗のパソコンのベゼル、画面の右上のプラスチック部分には、犬を模したキャラクターの付箋が貼られていた。何度も貼り直されたせいで粘着力が失われ、五月のぬるい風を受けて、ブラブラと力なく揺れている。
その不規則な振り子運動が私の視覚を刺激し、軽い偏頭痛の予兆を告げる。
「定義が不透明よ、千紗」
私はこめかみを押さえながら、低い声で言った。
「『アットホーム』という定性的表現には、労働基準法における時間外労働の隠蔽、あるいは業務境界の曖昧さを許容するシステムエラーが含まれている可能性が極めて高い。風通しが良い、というのも流体力学的な根拠が示されていないわ。定量的なデータによる実証がない言葉は、すべて悪質なダミーデータよ」
「あはは、相変わらず手厳しいなぁ。でも、そういうサイトに載ってる言葉って、だいたいそういうものだよ?」
千紗は苦笑しながら、手元のマグカップに口をつけた。
彼女にとっては、この社会の嘘や欺瞞は「そういうもの」として許容できる、ファジーなバッファの一部なのだろう。だが、私には無理だった。定義の崩壊したインターフェースを通じて社会に接続しようとするだけで、脳の奥が焦げ付くような拒絶反応が起きる。
「……自分で解析する」
私は自分のノートパソコンを開き、キーボードを叩いた。
就活サイトのフロントエンドが吐き出す美辞麗句をすべて無視し、裏側にある企業の一次データ――過去五年の財務諸表、有価証券報告書、離職率の推移、平均勤続年数、そして特許出願件数のデータベースへと直接アクセスする。
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