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ささいな悪意

言葉にすれば、「なぜそのタイミングで?」

「一緒に飛び込み助けようと。」

そう大した事では無いのだ。なんなら善意なのだ。

帰りに車の中は行きより和気あいあいとしていた。

日頃のストレスをラフティングで自然の中で発散させて皆の行きの毒気が抜けてる。

蘭子は考える。

多分、脳挫傷は近藤の声掛けと都が上から被さった事で身体が腰から落ちれなくて頭にダイレクトに打撃が入ったせいだ。

3mくらいの高さだが、水面はコンクリート状態になる。近藤の声掛けだけなら、後ろ向きに落ちても腰から身体がくの字に曲がるので水面の打撃は分散した。助けようと身体を抱えたことで草壁の妹さんはコンクリートにまっすぐ倒れ込んだ状態になってしまったのだ…きっと。

近藤も緊張するからと岩場に立ってる女性に声掛けするのも変だし、助けようと飛んで腰を曲げさせなかったのも変と言えば変だ。

でも、その気になれば言い逃れは十分できる!

草壁は、その気になれば主催者がボートに乗らなかった責任や、インストラクターが先に帰ったクラブの責任や近藤や都も訴える事が出来る。

が、あちらにも弁護士が付く。すると、これは長い長い法廷闘争へと発展する可能性が高い。

そこに明確な悪意があったかどうかを争うことになる。

草壁の携帯が鳴り画面を見てる。

「妹が手術することになった。頭を開いて中の血溜まりを除去する手術だ。これで目覚めれば良いが…」と蘭子に告げる。

「…話した方がいいよ。それで反省や謝罪がないなら傷害罪で起訴したら良いし。まあ、難しいけど。」蘭子にはこれぐらいしか言えない。

「あ〜あ、年上のお姉さんにまで置いて行かれそう。

なんか良い雰囲気ですね〜ハアッ、幸せになりたい!」都が盛大にため息をつく。

「あのさ、結婚ってゴールじゃないし幸せか?地獄か?は自分と相手で変わるよ。

私の友だちはほとんど結婚してるけど子供もいるけど、皆、将来は子供が成人したら離婚すると言ってるよ。今は我慢してるって。」蘭子は話す。

「そんなあ〜結婚したこと無い蘭子さんに言われてもね〜信じられませんよ。」都が手をひらひらさせながら否定する。

「そうだよ。蘭子さんの友達は蘭子さんが卑屈にならないように気を使ってるだけだよ〜クックック」と小久保がせせら笑う。

蘭子はカチーンときた。いや、キレた。

やはり、こいつらに地獄を見せないと!

この世のジゴクを!


「じゃあさ、本当に結婚してみない?多分、留置所入るより裁判受けるより、もっと苦しむけど。」蘭子の中で最大の復讐方法が閃いた。

久々だ。この頃、漫画描いててもこんなに閃かない。

「まず近藤さんと京香ちゃん、結婚しなよ。」蘭子がとんでもない事言い出す。

「エッ、なんで?」京香ちゃんが驚く。

「大丈夫だよ。近藤さんは婿養子で京香ちゃんの家から自衛隊に通うから。それに将来的に退役してもらって農家継ぐから。」蘭子が勝手に決める。

「オイッ、無茶言うなよ!俺は長男なんだ!親にも将来的には田舎帰って家を継ぐと言ってるし。」近藤が怒る。「仕事なに?兄弟は?」蘭子が淡々と質問する。

「和食の割烹やだよ。結構大きいんだぞ。法事や披露宴もやってる。弟居るけど、俺が継ぐと決まってるんだ!」近藤が独善的で独りよがりなのは田舎で長男教で育てられたからかもしれない。

「はいはい、弟で良いよね?アナタは京香ちゃんにアプローチしてるんだったら、京香ちゃんが婿養子取らないとダメなの知ってるでしょ?ひとりっ子だって。

エッ、それも聞かないでアプローチしてたの?

本気で婚活する気無いじゃん!そりゃ、フラれまくるわ!自業自得だよ!」とまくし立てた。

「クソっ…」と言ったが近藤は言い返せない。

「本当に婿養子なってウチに入って農家継いでくれるなら…近藤さんでも良いです…」京香は小さな声で返した。

「この身体だもん。良く働くよ。一生を京香ちゃんの家の為に尽くさせな。」と蘭子が勝手に決めた。

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