チームワーク
ぶっちゃければ漫画家なんてヒッキーなのだ。会う人間は担当さんとアシスタントさんだけだ。それも呼ばなきゃ会わない。
友人とたまに会うと怒涛の愚痴大会になるが、ほぼほぼ蘭子は聞くだけだ。話せる愚痴ネタもない。
1人だと自嘲しょうものなら、妬ましい!羨ましい!ゆっくり本やネトフリ、ゲーム見たい!と責められる。ので、皆はよほどストレスな毎日を送ってるようだ。
ラフティングサークル来て、やっと皆が蘭子を責める理由が少し分かった。
『ウザい、早く家帰りたい』すでにそんな気持ちだ。
『ラフティングだけ体験したら、すぐ帰ろ!』と。
漫画のネタ探しで来てるのに、これじゃダメだ!とは思うのだが。
やっとボートの順番が回ってきた。
乗り込むと主催が岸で手を振っている。
「あれ?一緒に乗らないの?」蘭子と草壁が驚いてると、
「今日は満員だからな。空きがあれば主催も乗るけど。まず客を乗せないと金にならないじゃん。」と鼻で笑う。
「前回もそうだったよ。あの時も新しい人飛び込みで入ったから主催が譲ってたし。」都が話す。
「じゃあ、ラフティング中何かあったか知らないのか?あいつは?」草壁が急に都に聞く。
「う、うん、皆経験者だからヨロシクって言われたの。」都が驚きながら答える。
「チッ!なんだよ、それ!」草壁が盛大に舌打ちしたので皆ビビる。
「はい、皆さん集中して!最初の来ますよ!」先頭のインストラクターが言うと後ろのインストラクターがホイッスルを鳴らす。号令が掛かり皆インストラクターが手を上げた方のパドルをこぐ。ホイッスルなるとやっと手を休める。
水かさが増した大岩の間は流れが速くなりボートがガンガンと何度も浮き上がり掛かる水飛沫に歯を食いしばるしかない。
さっきまでバラバラだったのに、皆一度号令が掛かれば息を揃えて漕ぎ止め漕ぎ止めを繰り返す。
「仲がいい人達より上手いですね、このチームは。漕ぐ時右左の切り替えも早い。息が合ってる。さっきのチームよりバウンドした時に皆低く構えて身体が浮き上がってボートから飛ばされそうになる人も居ないし、舵取りが楽だ。」後ろのインストラクターが次のラフティング位置まで、ほとんど1人で漕ぎながら喜んでいる。
ラフティングはチームワークが命だ。
水がボートの中にも入って水浸しになるが、確かにあの車の中のカオスがウソみたいに水が頭から被ってもワーキャー言う人もいない。皆パドルを固定したまま耐えて、次の指示を待っていた。
後ろのボートから悲鳴やら聞こえる。が、確かに誰もいざとなったら悲鳴も上げない。
緩い流れになると、愚痴がすごいが…
「ほんと可愛げないよね。悲鳴上げたり恐い〜とか言ってくれないと。新人2人も全く動じないし!」小久保さんがグチる。
「え〜っ、さっきまでダルい!早く帰りたい!と思ってたけど、楽しかったですよ〜ボートの下に岩に持ち上げられた瞬間ヒュンとなったし!」蘭子はワクワクだ。
小型の地震みたいだ。下から突き上げられる感覚が身体中の神経を呼び覚ます。
「確かに。2年近く経験してるけど1番楽に岩場を抜けれたわ。結構水かさスゴいのに…やだわ…」都もグチる。
「え〜っ、楽しかったです。自分の思い通りの抜け方が出来た感じ。」京香はうれしそうだ。
「良いなぁ〜やっぱり!腰がずっと24時間痛いのに、
ラフティングやってる間は全然痛くないんですよ。」意外に支倉が興奮してる。
「ウソ〜ッ、今回、川荒れてるよ。ほら、前のチーム見てごらんよ。」と凛に促されると前のチームが濁流に飲み込まれて消えた。見えなくなった。傾斜がキツいのだ。悲鳴だけが響く。
「さあ、皆さん!行きますよ!」先頭のインストラクターが構えて号令する。




