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6話 妄想犯行計画のゲームルール 後編

 

 妄想犯行計画のゲームルール 後編


 【ほこやぎ町 現在時刻 16時】



 僕は1時間ぐらいほこやぎ町を散策した後、比較的人があまり来ないであろう安全な場所を見つけ、眠る事で妄想犯行計画の舞台であるほこやぎ町から無事にログアウトした。


【ほこやぎ町からまほらぎ市へ五感転送が完了しました】



【まほらぎ市 ハイツまほらぎ PM22:00】


「ふぅー、やっと戻って来れたよ……時計の確認」


 

 僕は、ログアウトしてからまず最初に時計を確認する事にした。

 例えアニメっぽく、視界にUI表示がされていたとしても、あれだけ五感再現された仮想空間にいたから、どちらが森咲杜鷹である僕が生きてきた世界なのか? 

 それが一瞬分からなくなるほど、小蒼ちゃんが作ったあの妄想犯行計画というゲームは作りこまれていた。


「疲れた………この暖房が効いた部屋、マットレスと掛け布団のこの感触……間違いなく、僕の……」


 僕は、現実世界と仮想空間で合わせて、20時間以上起きていた疲れから、ベッドに横になった瞬間、直ぐに眠りの世界に……入っ……た。



 

『……この事件の犯人は、あなただったのだ!』



 ――これは……偶に見る探偵になった僕が、犯人を暴く夢だ……


 夢の中の犯人が、僕に向かって何かを構えて来た。

 

 『あーあ、バレちゃった! わたしの秘密を知ったあなたをこのまま生きて帰すわけないでしょ……さようなら、探偵さん』


 バァァン!


 犯人の放った無慈悲な小さな球は、僕の頭を貫いた……


 『ゲームオーバー! あははは』


 

「はぁっ! ……夢……か」


 ――胸糞悪い夢だ……まるで僕がゲームオーバーになることを期待しているヤツがいるみたいじゃないか……



「……今、何時だ?」


 目覚めた僕は、デジタル時計の時刻を確認する為に、リビングへ向かった。



【12月XX日(日) AM01:00】



 ――嘘だろ! まだ深夜1時?



 疲れ果てる様に眠り、あの夢で起こされた僕が眠っていた時間は、まだ3時間しかし経っていなかったのだ。



「……ああもう! 気になって、気になって、眠れなくなってしまったじゃないか……」



 5時間ぐらい前から始まり、半日以上も仮想空間にいたという非現実的な出来事を体験したおかげで、僕は眠れなくなった。


【ようこそ! 森咲杜鷹!】



 ――やっぱり気になるな、この非現実的な出来事が始まった元凶である小蒼ちゃん、いや想いを叶える存在である刻想器の正体……


 【KokuSouS起動中……】



『あのさ!』

「うわっ! 小蒼ちゃん……いきなり顔ドアップで出てこないでよ、びっくりするじゃないか」

『あのさ、森咲杜鷹さん。今何時ですかー?』

「今は夜中の1時20分ぐらいだけど」

『あのさ、森咲杜鷹さん? こんな夜遅い時間に私を起こすとかさ、疲れるからやめて欲しいんですけど!」


 ――こんな時間に小蒼ちゃんを起こしたら疲れる? 一体どういうことだ? かなり怒ってるのが、画面越しにも伝わってくる……


「ごめんね、小蒼ちゃん。僕は覚悟してかつて刻想器だった小蒼ちゃんと契約した」

『あのさ、だからなに? 森咲杜鷹さん』

「いやだからさ、覚悟をした僕が今いる部屋も実は仮想空間から本当はログアウトされていない場所だったら考えたら、正直言って怖い」

『ふっ、でもそれはあなたの選択の結果だよね?』

「確かにそうだよ、小蒼ちゃん。でも刻想器は一体なんなんだ? 神様なのか?」

『えっ? ……それは、うーんと? あれ? ……………』



 僕の頭の中が混乱している一番の理由は、森咲杜鷹である僕の瞳が映してきた二十数年の今に、想いを叶える存在刻想器と出会った結果、僕の瞳に映してきた今が、違和感なく別の今が侵蝕し始めているからだ。

 想いを叶える存在である刻想器も本来ならば、僕の瞳に映ることすらない存在で、誰に話しても信じて貰えない存在だ。


「だから僕は、刻想器が何モノなのか? 上位存在なのか? 何が目的なのか? それを確かめたいんだ!」

『ふふっ、ふふっ、……けめ』



 ――なんだ? 小蒼ちゃんは今なんて言った?



「小蒼ちゃん? どうしたの? おい、返事をしてくれ」

『ははは、汝はやはり迷っていたのだな? 小蒼を通じて、汝の紡ぐ時を見ておったが……この腑抜けめ」



 ――小蒼ちゃん? さっきと違う雰囲気……この自信に満ち溢れたドヤ顔の表情……まさか!

 


「ま……まさか、刻想器?」

『左様。我は、汝らヒトの想いを叶える存在である刻想器である。汝が見ておる我である存在は、汝を支える要として我である刻想器から、この機械の箱へと変えた姿、かつて我であったモノ小蒼である。されど、我であることには変わらぬよ』



 ――小蒼ちゃんが刻想器であることは変わらない? 一体どういうことだ?



『汝よ、我は上位存在ではない。例え我が上位存在であったとしても、我は、汝らヒトの想いを叶える存在として、成すべきことは同じである』



 ――刻想器が上位存在でも、僕を始めとする刻想器と出会った人たちに、未来を見せた人に選択させることは変わらないということか……



『左様、森咲杜鷹』



 ――やっぱり頭の中を覗き込むのは、刻想器の能力か。



『左様、汝はどうしたいのだ? 汝はあの星々が蠢く空間で、あの様な形の未来を見た汝自らが、小蒼と刻想契約したのではないのか?』


 ――確かに僕はあのプラネタリウムで、小蒼ちゃんに絶望の未来を観せられて、護りたい大切な人である雪護喜冬さんとハッピーエンドの未来を掴み取る為の想いの契約を小蒼ちゃんとした。



『左様、汝の中にある想いが、邪な想いでは無かったからこそ、我であった小蒼は汝と刻想の契りをしたのだ』



 ――僕の想いが、邪ではない想いだったから契約してくれた?



『左様。我ら想いを叶える刻想器は、破滅の未来が訪れる邪な想いを持つ者とは刻想の契りは行わぬ。

 我であった小蒼は、汝の想いの覚悟を測るために、妄想犯行計画という舞台の用意し、汝は、幸福な未来を汝自身の手で掴み取る覚悟を決めたのではないのか?』



 ――そうだ! 僕は……


『後ろを振り返ることは許されない……これは汝自身が、我であった小蒼に放った言葉である』



 ――そうだ! 後ろを振り返っても何も変わりはしないんだ! だから僕は絶望の未来からハッピーエンドの未来を掴み取る想いの契約を小蒼ちゃんと結んだ!


『左様。我である刻想器は、汝らヒトが選ばなかった、無数の選択肢が形を成したモノであり、故にこの世の理に縛られる存在ではないのだ』


 今を生きている僕を含めた命あるものが行う、無数の選択肢の中で、選ばれなかった無数の選択肢の集合体が、想いを叶える存在刻想器。

 その刻想器であった小蒼ちゃんと僕が契約をした結果、別の今が侵蝕を始めた。

 今、僕の瞳に映る、目の前のゲーミングノートPCであるKokuSouSとメガネ型ゴーグルがあると言う状況も刻想器や小蒼ちゃんが決めた選択の結果ではなく、全て、僕自身の選択の結果だ。



 ――後ろを振り返ることは、僕自身が選択した結果への冒涜だ。



「ありがとう、刻想器。僕は、キミが存在している理由を知りたかった」

『礼には及ばぬよ』

 


 僕が知りたかった事は、刻想器という自称想いを叶える存在が、今も時を紡ぐ僕の目の前にある現実であること……

 僕は、それを知りたかった。



『汝と刻想の契を交わした、かつて我であった小蒼は、汝の合わせ鏡ではなく、汝は汝であり、我は我であり、小蒼は小蒼である事を決して忘れるでないぞ』

「ああ……分かってるさ、僕はもう逃げないよ」

『汝の選択、我はいつでも、…………』



 ――あれ? また沈黙? どうしたんだよ。



『う、う……ん……あれ? 杜鷹?」

「あー、おはよう、小蒼ちゃん」

『ふっ、刻想器と話をして、少しは覚悟はできた?』

「もちろんだよ、小蒼ちゃん」

『ふっ、ならいいけどー。私、もう寝るから』

「あっ、ちょっと待って小蒼ちゃん」

『ふっ、何? 杜鷹』

「小蒼ちゃんは僕と刻想器のやり取りは聞いてたの?」

『ふっ、私が刻想器モード中の杜鷹とのやり取りを私は知らないよ』

「そうか……ごめんね、小蒼ちゃん」

『ふっ、おやすみ、杜鷹』



【KokuSouSをシャットダウンしています】



 刻想器モード中の小蒼ちゃんは意識がない……

 だから今、僕と会話していたのは、紛れもない刻想器だった。



 ――もう疲れた……



「とりあえず寝よう!」



 ――とりあえず僕は寝る、それが今の選択だ!




 6話 妄想犯行計画のゲームルール 後編 完。

 第2章 妄想犯行計画と仮想空間 完。


 次章 第3章 萬屋赤葉と第1の妄想犯行

 7話へつづく!

最後までお読みいただきありがとうございました!


*2026年3月13日(金)  内容の再構築改訂を行いました。

*2026年4月2日(木) 一部内容の改訂を行いました。

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