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5話 妄想犯行計画のゲームルール 中編



妄想犯行計画のゲームルール 中編



「ふっ、まさか直ぐに即答されるとはね……ほこやぎ町へようこそ、森咲杜鷹(もりさきもりたか)



【仮想空間 妄想犯行計画 ほこやぎ町 境界線】



小蒼ちゃんがあのプラネタリウムの出入口の扉を開けた先で、僕の瞳が映し出した光景は、萬屋赤葉の事件帳の舞台、ほこなぎ町と思われる場所の境界線だった。


「ふっ、どう? これがあなたの想いを核として具現化した妄想犯行計画の舞台である仮想現実世界、その名もほこやぎ町」

「どう? と言われたてもな……確かにここは、萬屋赤葉の事件帳の舞台であるほこなぎ町だ。小説の挿絵、アニメや漫画でしか、ほこなぎ町の全体地図を見る機会が無かったけど……実際に見てみると迫力が桁違いだよ……ん? ほこやぎ町?」



――なんでほこなぎ町じゃなくて、ほこやぎ町なんだ? 紛らわしいな……



「ふっ、名前をほこなぎ町にした時点で、あなたの想いの核じゃなくなるから、だからほこやぎ町なの」

「なるほどね……というかさ、さっきも言ったけどさ、僕が頭の中で考えた事を勝手に覗くのやめてくれないかな、小蒼ちゃん」

「ふっ、だったら杜鷹も私が許可してないのに、小蒼ちゃんとか、勝手にちゃん付けで呼ぶのもやめて欲しい」

「それは……名前があって、僕と会話ができるモノや相手なら、基本的に呼び捨てにしないポリシー主義なんだよ」



小蒼ちゃんの事を、小蒼、小蒼と呼び捨てにする事は簡単だ。

でも僕のポリシーとして、会話ができる相手やモノに対しては、基本的に呼び捨てで、名前を言ったりはしない、これだけは譲れない、だから僕は……



「だから僕は、一人の女の子として小蒼ちゃんと呼ぶ!」



――あれ? 小蒼ちゃんが消えた?



「えっ? 『えっ、何、あの人、いきなり大声出して、怪し』くない?」

「ねぇ、『ダメだよー、気づかれちゃうよ。あっ、こっち見て来たし、やばっ!』行こ行こ!」



女の子達がヒソヒソ話をしながら、僕の横を通り過ぎていった。



「ふっ、モリタカはちょっと変わってるんだね」

「変わってるって? 小蒼ちゃん、わざと消えたでしょ?」



――絶対小蒼ちゃんは、通行人の女の子達が近づいて来ていた事を知っていたはず!



「ふっ、正解。でもそんな杜鷹だから、刻想器に会えたのかもね。まあいいや、なるべく! 頭は覗かないようにするよ」

「なるべく! じゃなくてやめてほしいんだよ、小蒼ちゃん」

「ふっ、だから努力はするよ……話がそれてしまったけど、ここは森咲杜鷹であるあなたが生きている現実世界じゃない」

「それは見れば分かるよ、小蒼ちゃん」

「ふっ、あなたが今いる場所は、仮想空間、妄想犯行計画の舞台であるほこやぎ町。言っておくけど萬屋赤葉の事件帳の舞台であるほこなぎ町に、あなたの想いを核に、命あるモノが持つ五感の再現と現実で生きることを追加して、再構築して具現化した世界だよ」

「小蒼ちゃん、当たり前のように再構築、具現化という言葉を使っているけど、現実世界ではあまり聞かない言葉だよ」

「ふっ、だからなに? あなたがハッピーエンドを掴み取る為に私が用意した舞台ですけど!」



――やばっ、小蒼ちゃんがキレた……



「ごめん、小蒼ちゃん。君とプラネタリウムで契約してからあまりにも急展開すぎるからさ、頭の整理が追いついていないんだよ」

「ふっ、ならどうするの? やめるの?」

「さっきゲームクリアするって言っただろ? やめないよ」



 ――でも仮想空間なのに、五感の全てが現実世界と同じ様に認識するVR推理ゲーム……何世紀先の未来で作られたゲームなんだよって考えてしまうな……



「ふっ、ならいいけど、他に聞きたい事はある?」



 僕が小蒼ちゃんに他に聞きたいことがあるとしたら、今何時なんだ? ということだ。

現実世界の自宅で僕が、KokuSouSというゲーミングノートPCの前で、メガネ型ゴーグルをかけたのが22時頃だ。

そこからプラネタリウム空間に五感転送されて、小蒼ちゃんの話を聞いて、それからほこやぎ町に来たが、僕の体感では、3、4時間ぐらいは経っていると考えると……今は一体、何時なんだ?



「あるよ、小蒼ちゃん。現実世界の家に帰りたいんだけど……今、何時なのかを教えてほしい」

「ふっ、杜鷹には現在時刻と現実時刻のUI表示が見えないの?」

「えっ? 現在時刻と現実時刻? えっ、嘘だろ!」

 



【現実時刻 PM22:00】

【現在時刻 PM15:00】



 ――いやいや普通におかしいだろ……午後22時から体感3、4時間ぐらいしか経っていないのに、深夜1時、3時じゃなくて、PM15:00? だからまだ明るいし、あの女の子達とすれ違ったのか? ……いやそうじゃなくて、半日以上仮想空間にいたなんて考えたら……流石に気が狂うよ……



「ふっ、もしかしてさ、杜鷹は初めてやるゲームの説明書やゲームヘルプを読まずに攻略するタイプ?」

「いいや、ゲームの説明書は必ず読んでから攻略を始めるタイプだよ」

「ふっ、ならいいけど。でもゲームヘルプにもちゃんと書いてあるから」

「いろいろと気が利くじゃないか、小蒼ちゃんにしては」

「ふっ、『小蒼ちゃんにしては』は、余計!」



 ――また小蒼ちゃんがキレた様な気もするけど……確かに疑問符がついたマークが、右隅に表示されているな……



「小蒼ちゃん、この視界に表示されているUIを触れても反応が無いけど、どうやって操作するの?」

「ポケットの中も調べないなんて、ふっ」

「ポケットの中を調べろ? ……ん? これはスマホ?」



ポケットの中から取り出した物は、僕が住む日本で一番よく使われているスマホと似た様な形をした白色のスマートフォンだった。



「ふっ、杜鷹には一応言っておくよ。その白いスマホは、妄想犯行計画内にしか存在できないスマホだよ」

「それってもしかして、妄想犯行計画内でしか使えないゲームパッドみたいなもの?」

「ふっ、正解。杜鷹が見ている情報は、ほこやぎ町の住人には見えない。だから、あなたが何もない空間に、指を横や縦にサッと動かしてみたり、2本の指を離したり、近づけたりしているのは、ほこやぎ町の住民からしたら普通に怪しい」

「確かに、何もない空間に向かってそんな事をしたら、現実世界でも普通に怪しいよ」

「ふっ、だからそのスマホは基本的に、杜鷹の視界の情報を操作する為のスマホだから、現実世界に持ち帰ることはできないし、もし仮に持って帰ったら、その時点で不正行為とみなしてゲームオーバーにするから、分かった?」

「分かったよ、小蒼ちゃん。僕がほこやぎ町で活動する為の情報端末ツール兼ゲームパッドの様な物、そういう認識でいいんでしょ?」

「ふっ、正解」

「よし! とりあえずゲームヘルプを見てみよう……ゲームヘルプ……あった!」


僕は、白いスマホを操作して、UI表示の疑問符マークをタップして、妄想犯行計画のゲームルールを開いた。


――えっ? このゲームルール、理不尽すぎる気がするんだけど、気のせいだろうか……



 【妄想犯行計画のゲームルール】


 1.ほこやぎ町以外のエリア移動は禁止。


 2.【探偵ヘルプについて】

 萬屋赤葉などの探偵を呼出ができる機能。

 ただし、Aの事件で探偵ヘルプを使用した探偵は、事件解決後はお手つき状態となり、Bの事件を解決するまでは、呼出不可。

 探偵ヘルプの探偵は、犯人を暴き出す権利はない。


 3.【時刻表示について】

 現在時刻は、妄想犯行計画内の時刻。

 現実時刻は、契約者の住む世界の時刻。

 妄想犯行計画にログイン中は、現実世界の時刻は進まない――逆の場合も同じ。


 4.【各事件の解決期限】

 現実世界換算で七日間の168時間。


 5.【ログイン義務】

 妄想犯行計画の暴く側のプレイヤーは、一日1回は、必ず妄想犯行計画を起動しないといけない。

 ログアウト時から次回ログインをするまでに、二十四時間を超過してしまった場合。

 ペナルティとして、超過した時間分、妄想犯行計画内の時間が進む。


 6.【ログアウトについて】

 基本的に一部条件を除き、任意のタイミングで可能であるが、ルール3に注意。

 事件解決期限が24時間を切る場合は、ログアウトできない。


 7.【暴く側のプレイヤーのゲームオーバー条件】

 事件を暴けない場合。

 事件の解決期限を過ぎた場合。

 妄想犯行計画内で死亡した場合。



 8.【妄想犯行計画について】

 この世の理とは違う概念で作られた推理ゲーム。

 この世の理で作られたモノでは、妄想犯行計画を記録、生配信することはできない。


 9.【ゲームクリアの条件】

 自身の未来を選択し、自身の未来の壁なるものを越えた時、未来への道は開かれる。


 警告.【妄想犯行計画を解析しようとした場合】

 暴く側のプレイヤー又は、暴かれる側のプレイヤーは、強制的にゲームオーバーとなる。


 以上のルールが破られた場合は、暴く側、暴かれる側を問わず、最悪な未来が訪れるであろう。


【閉じる】


「……とりあえず、ゲームルールは大体分かったよ、小蒼ちゃん」

「ふっ、それは良かった」

「あれ? 僕と小蒼ちゃんが今いる場所は、ほこやぎ町の境界線だよね? さっきの女の子たちは境界線の向こう側に行ったよな……よく見たら車も走ってるし……」



 僕と小蒼ちゃんが立っている場所は、ほこやぎ町と隣町の境界線のギリギリ内側だ。



「小蒼ちゃん、ルール1のほこやぎ町から出たらダメのルールなんだけど、もし境界線に足を入れたらどうなるの?」

「ふっ、気になるなら試してみればー」

「よし! つま先だけ足を……入れてっと」


【森咲杜鷹が境界線を越えました、残2秒】

【森咲杜鷹が境界線を越えました、残1秒】

「うわ! 2秒? ……危なかった」

【森咲杜鷹が境界線内に留まりました!】





「ふっ、杜鷹、どうなるのかはこれで分かった?」

「小蒼ちゃん……容赦なさすぎるよ」

「ふっ、杜鷹の覚悟を試す推理システム、それが妄想犯行計画だからね」



 妄想犯行計画が森咲杜鷹である僕の選択と覚悟を試すゲームなのは、たった今、ゲームルールの1つを試して分かった。



――でもゲームルールのあの言葉は、一体どういう意味なんだろうか……小蒼ちゃんに聞いてみるか。



「小蒼ちゃん、ちょっといい?」

「ふっ、なに? 杜鷹」

「あのさ、このゲームルールに書いてある暴く側のプレイヤーと暴かれる側プレイヤーって、どういう意味なの? 暴く側のプレイヤーは探偵なのは分かるけどさ」

「ふっ、やっぱりそこが気になるかー。暴かれる側のプレイヤーは、妄想犯行計画が選んだプレイヤーだよ。だって杜鷹は、A.I相手の推理バトルはテンプレ回答が、多すぎて、飽きたんでしょ?」



 僕が、完結済の推理小説や長期シリーズの推理小説の推理バトルをA.Iとして飽きてしまった理由は……

A.Iが推理小説等のあらすじ等を把握している場合、暴く側の役割を持つ探偵が最強なんですよ説をテンプレ回答の武器として使用してくる事がある。

だから暴かれる側の役割であるユーザーが、A.Iに対してどれだけ反論をしたとしても、テンプレ回答を武器にして、いかにも正論です回答を返してくる。

 僕も最初は、直ぐに少しズレた回答をくれるA.Iの反応を楽しんでいたのだが、それも最初の内だけだった。

 僕は次第に、テンプレ回答しか返して来ないA.Iの単調的な推理バトルをすること自体を飽きてしまった。 

 だから僕はA.Iとの推理バトル自体を、僕の黒歴史の遊びとして、記憶から消したのだ。

 


 ――僕の記憶から消したはずの遊びだったのに、まさか僕の記憶から掘り起こしてくるなんて!

 


「小蒼ちゃんが、僕の記憶を掘り起こしてくれたおかげで、僕のやる気が満ち溢れてきたよ」

「ふっ、それは良かったね、杜鷹」



 暴かれる側のプレイヤーがどんな人物なのか、僕には分からないが、受けて立つ!

 


僕のハッピーエンドを掴み取る未来のために!



5話 妄想犯行計画のゲームルール 中編 完。

6話へつづく!

*2026年3月13日(金) 内容の再構築改訂を行いました。

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