4話 妄想犯行計画のゲームルール 前編
新章突入です!
第2章 妄想犯行計画と仮想空間
妄想犯行計画のゲームルール 前編
【まほらぎ市 ハイツまほらぎ PM21:50】
「よし! なんとかリビングに運ぶ事ができた! ……でもまずは着替えだな」
森咲杜鷹である僕は、約2時間前の映画館……いやプラネタリウム空間で遭遇した想いを叶える存在、刻想器との出会いと契約をした。
僕が、刻想器という得体の知れない存在と契約した理由は、2つある。
1つ目の理由は、未来の僕に訪れるという絶望の未来を僕自身の手で掴みとり、ハッピーエンドな未来へと変えるため。
2つ目の理由は、僕の絶望の未来の要因の1つが、僕が護りたい、大切な人で同僚以上恋人未満の関係である雪護喜冬さんを絶望の未来の要因から変えるためだ。
――あの持ってみたら意外と重かった、あの差出人不明の僕宛の荷物である段ボール箱の中には、一体何が入っているのだろうか……
「よし、着替えも終わった。さあ、開封だ、開封。……えーと、箱の中身は……なんだこれ?」
差出人不明の僕宛の荷物が入っていた箱の中に入っていた物は、一台のノートPCとメガネ型ゴーグルだった。
「……なんだよ、これ? 普通に怪しすぎるだろ……」
僕はこの買った記憶のない、PCとメガネ型ゴーグルを見た時、刻想器との契約をした時の言葉と妄想犯行計画プロジェクトからのメッセージ等を思い返した。
――確か…… 『我……いや私は杜鷹のそばにいるから、それだけは……わすれ…………でね』と神秘的でノイズ混じりの声から、いきなり女の子の声へ変わった様な気がしたんだよな……記憶が曖昧なんだけど……
「ちゃんと梱包されているし……ノートPCを取り出す……って重っ! 普通のパソコン? いやゲーミングノートPCか?」
約2時間前ぐらいから始まった、非現実的な出来事の連続、あの妄想犯行計画プロジェクトからのメールで、これから先の僕自身に起きるであろう今後の展開を何パターン予想はしていた。
しかしこのゲーミングノートPCの異常性を発見した時、想いを叶える存在である刻想器が、僕が予想していたパターンを全て、通り越してきた事を悟った……
「なんで高額なゲーミングノートPCみたいな見た目と重さなのに、ACアダプターが無いんだよ!」
でもこれが本当に刻想器が送ってきた物であるならば、僕自身が観たあの胸を抉る絶望の未来には、護りたい、大切な人である雪護喜冬さんが関わっていると分かっている以上、僕は未来を変える為に逃げる訳にはいかない!
「ふぅ……まあいいさ、電源ボタンを押してみればわかることだ……よし、電源ボタンは押した、さてどうなる?」
【KokuSouS……初回起動中】
僕の瞳が映しているゲーミングノートPCのOS起動画面は、非現実である別の今が、二十数年生きてきた森咲杜鷹である僕の今に対して、少しずつ侵蝕を始めている事を改めて実感させられたのだった。
【KokuSouS……起動中】
――絶対隠す気ないだろ、刻想器! ……待てよ、つまりあれだ! 想いを叶える存在刻想器と契約した人には、このゲーミングノートPCが契約特典としてプレゼントされるのだ!
『ふっ、アホめ。そんな契約者特典がある訳がないでしょ』
――あれ? 今、何処から女の子の声が聞こえたような気がするな……
『ふっ、あなたの目は、やっぱりふし穴ですか? あの時と同じくだりはもう十分なんですけどー!』
――あの時と同じくだり? なんのこと?
『ふっ、アホめ。あなたの目の前には何がある!』
「僕の目の前? ……声がしたのはこのゴーグルからか? よく見たら普通の3Dメガネっぽいのに、耳掛け部分が耳を覆うタイプのヘッドホンになってるな……しかもなんだよこのデスクトップ画面、リアル3Dみたいに奥行きがあるじゃないか……」
『ふっ、感想はいらないからさ』
「やっぱりこのメガネ型ゴーグルから声がする、でも女の子は何処にいるんだ?」
『ふっ、ここだよ、よく見なよ』
「なんだ、そこにいたのか?」
僕は、KokuSouSの3Dデスクトップ画面内に、椅子に座る高校生ぐらいの女の子がいる事に気づいた。
画面の向こう側にいるはずの僕を認識していると思われる女の子は、かなり不満そうな剣幕な顔をしながら、何かぶつぶつ言っている様だった。
「えっ? なんか怒ってない?」
『ふっ、どうでもいいからさ! 早くゴーグルをかけなさい!』
「はい! すいません!」
女の子に怒られて、慌ててしまった僕は、手に持っていたメガネ型ゴーグルを咄嗟にかけた! そして僕の意識は……途切れ……た……
【ようこそ! 森咲杜鷹!】
【五感転送を開始……】
【XXXXX地点への五感転送を開始しました】
――五感転送? なんだその言葉は……?
【場所不明 時刻不明】
「う……ここは? 僕はどうなっ……た? うわっ! なんだ? 視界に文字が浮いてる? これは……UI?」
瞼を開けた僕の瞳に映る景色は、あの天体観測のプラネタリウムで見た星々が煌めく宇宙空間で、景色に重なる様に、僕の視界にはVRゲームによくある地図等の情報が書かれたUIが表示されていた。
「あっ、気がついた、杜鷹?」
「君は……さっきの画面の中にいた女の子か?」
椅子に座っている女の子は立ち上がり僕の方へと向かって来た。
「ふっ、正解、杜鷹」
――この女の子……雪護さんに雰囲気が似ている気がするな……気のせいか?
「ここはどこだ?」
「ふっ、ここは森咲杜鷹であるあなたと私が、ハッピーエンドの未来を自分で掴み取るという想いの契約を基に作り出した空間」
「僕と君が契約した想いの契約を基にした空間?」
「ふっ、そう。ここは杜鷹と契約したプラネタリウムと同じような空間……」
――契約したプラネタリウムと同じ空間? ……あの地獄のVIP席ジェットコースターに乗せられた場所か?
「君の名前は?」
「ふっ、私の名前は、かつて願いを叶えるのではなく、想いを叶える刻想器だったモノである小蒼」
「かつて刻想器だったモノ?」
「そう、私があの想いのプラネタリウムの空間で、森咲杜鷹の絶望の未来を見せた」
「君が、あの黒いスマホだった刻想器で、僕の絶望の未来を見せて来たのか?」
「ふっ、正解。私が杜鷹に見せたあの絶望の未来は、あなたがどれだけ足掻いて、頑張ってもあの絶望の未来に繋がってしまう運命だったの」
――僕がどれだけ足掻いて頑張っても、あの絶望の未来に辿り着く? 非現実的すぎてよく分からない……
「ふっ、少し杜鷹には理解が難しいのかな?」
「僕が考えている事を覗けるのか?」
「ふっ、正解」
「……刻想器だった時の名残かよ……頭の中を覗くのはプライバシーの侵害だからやめてくれ」
「ふっ、じゃあこれからは頭の中は、なるべく! 覗かないようにするね」
「なるべく! じゃなくてやめてくれ……」
「ふっ、努力はするよ」
「ああ、頼んだよ、刻……小蒼ちゃん』
「小蒼ちゃん? ふっ、杜鷹は話の続きを聞く気ある?」
「もちろんさ、小蒼ちゃん」
名前にちゃん付けされる事に、小蒼ちゃんは抵抗があるのか、少しだけ仏頂面の表情に変わったが、すぐに話の続き話し始めた。
「ふっ、まぁいっか。だから私は、杜鷹に絶望の未来の1つの可能性を見せ、杜鷹が自分でどうするのか考えさせて、選択をさせるようにした。これがあのプラネタリウムで杜鷹に絶望の未来を見せた理由、それと――」
「ちょっと待った、僕に絶望の未来を小蒼ちゃんが見せて来た理由は大体分かった。それとって、まだ理由があるのか?」
「ふっ、それは杜鷹とは、別の場所、別の時間で絶望の未来を見たもう1人がいて、あなたはその子も助けてあげないといけない」
「絶望の未来を見た人が僕以外にもいる? 誰なんだ?」
「ふっ、それは教えらない。この場で杜鷹にその子事を教えた所で、今のままの杜鷹ではその子は救えない」
僕以外にもあの胸を抉るような絶望の未来を見た人がいるのか? だから僕がやるべきことは……
「自分自身の絶望の未来を変えたければ、自分の手でその子を救って、自分の手でハッピーエンドを掴みとれ……そう言う事だろ、小蒼ちゃん?」
「ふっ、正解」
「正解ってさ……小蒼ちゃん、君とのやりとりで納得してないことがあるよ」
「ふっ、納得がいかないこと?」
僕が納得したのは、別の今が侵蝕を始めた原因と理由だけで、どうしても納得のいかない事が、1つだけある。
「なぜ、絶望の未来を見せる必要がある? 未来は自分自身で選び、掴みとるモノだ! それはあの映画館……プラネタリウムでも小蒼ちゃんに言ったはずだ!」
――なぜ絶望の未来を見せる必要があるのか? 幸福な未来ではダメな理由を聞いていない以上、納得ができない。
「ふっ、幸福な未来を見せることもできるけどね、はい!」
パチン!
小蒼ちゃんが指を鳴らした瞬間、プラネタリウムのスクリーンに写しだされた映像は、僕の幸福な未来の映像だった。
僕がいて、雪護さんもいて、そして僕と雪護さんの間には子供もいて、3人で手を繋いで歩いていた。
だが、幸せそうな映像からあのプラネタリウムで見た、胸を抉るような絶望の未来の映像へと変わってしまった。
「どういうことだ? 意味がわからない……」
あの幸福な未来の映像から、絶望の未来へと叩き落された映像を見た僕は、小蒼ちゃんに返す言葉すら考えられなくなった。
「ふっ、確かに幸福な未来の森咲杜鷹であるあなたは、雪護喜冬と子供と暮らすという幸福な時間を得た。でもあなたは、幸福な時間に溺れて、いつしか選択することをやめた」
――幸福な時間に溺れた僕が選択をやめた?
「ふっ、でも選択をやめる以外の選択肢は、いくらでもあったのに、それでもあなたは、選択することをやめた」
「それでも未来の僕は、選択することをやめてしまった、というのか?」
「そう、だからその結果、あなたは未来が、あの絶望の未来へ繋がった、ただそれだけのこと……時は命あるモノに、常に選択をさせるモノなのに」
「時は命あるモノに常に選択をさせるモノ…………」
僕は正直、小蒼ちゃんに対して、どう返事を返したらいいのか、考えが纏まらなかったが、刻想器であった小蒼ちゃんと想いの契約をしたあの時の想い。
森咲杜鷹である僕の絶望の未来から、ハッピーエンドの未来を掴み取る想い、大切な人である雪護喜冬さんと護りたいという想い、大切なモノである萬屋赤葉の事件帳のファンである気持ちを護りたいという想いがあった。
そんな僕の想いに応えた、想いを叶える存在刻想器は、かつて想いを叶える存在刻想器だったモノ、小蒼として、雪護さんに似た外見はともかく、再び現れたのではないだろうか……
「小蒼ちゃん、1つ聞いてもいい?」
「ふっ、なに? 杜鷹」
「森咲杜鷹である僕が、絶望の未来を回避するためには、一体どうすればいい? 絶望の未来を回避するための方法はあるのか?」
「ふっ、絶望の未来を回避する為に、杜鷹がどうすればいいか? それはあなたが選択を続けて、もう一人の絶望の未来を見たその子を助けること」
「分かった、他にはないのか?」
「ふっ、これ以上は教えない……でも私が杜鷹の想い核として具現化した推理ゲーム、妄想犯行計画」
「僕の想いを核に具現化した推理ゲーム、妄想犯行計画?」
――妄想犯行計画プロジェクトの意味はこれだったのか?
「ふっ、そう。この妄想犯行計画を攻略しながら、未来を変えるための鍵を集めて、杜鷹がゲームクリアができたら、新たなる未来への道は開かれるかもね」
「僕の絶望の未来を変える、僕のハッピーエンドな未来を掴む推理ゲームか……面白いじゃないか」
「ふっ、森咲杜鷹。このゲームをクリアする覚悟が、あなたにはありますか?」
――何を言ってるんだ、僕の答えはもう決まっている!
「もちろんYESだ! 小蒼ちゃん!」
4話 妄想犯行計画のゲームルール 前編 完。
5話へつづく!
最後までお読みいただきありがとうございました!
12月10日(木) 一部内容を改訂しました。
*2026年3月13日(金) 内容の再構築改訂を行いました。




