42話 フレンチトーストから始まる第3の妄想犯行:5
42話 フレンチトーストから始まる第3の妄想犯行:5
【202X 2月X日 PM12:00】
【仮想:西やぎ区 ほこ西やぎマンション 603号室 ベランダ】
【残解決時間 150時間】
僕はリビングキッチンの部屋から出た後、赤葉さん達がいるベランダに向かった。
「あっ、杜鷹」
「赤葉さん、何か分かりました?」
「えっと、昨日私達が来た時と今のベランダ……何か違う気がしてね……何か違和感があることは確かなんだよねー」
――昨日来た時と何か違うベランダ? なんだろうな。
「赤い葉っぱは、このベランダに何か変化があるとばかり言ってる。森咲杜鷹はこのベランダの、謎は解けたの、かしら?」
「その謎を今から調べるんですよ、赤葉さんと解葉さんと一緒に、ん? 解葉さん、ちょっといいですか?」
「はっ? ちょっと! いきなり顔を近づけないで森咲杜鷹!」
「あっ、すみません……でも解葉さんの後ろにあるベランダの手すり……ナニカの跡がついているみたいですね」
「はっ? だったら後ろにナニカあるって言えばいいじゃない森咲杜鷹」
「あーすみません、解葉さんの顔が手すりより少し高い位置にあったので……イッタァ」
「禁忌ワードを踏んだ森咲杜鷹が悪い」
――そうだった……この人は身長の事を言う事自体がNGなキャラクターだった。
解葉さんのバインダーで叩かれた時、手すりにナニカの跡が付着している事に気づいた。
「うーむ、なにかで見たような……フックの様なモノが擦れた跡?」
「フックの様なモノが擦れた跡? 森咲杜鷹、ここは最上階だからそんな跡をつける必要がないから、その謎は解けない」
「いいえ解葉さん。手すりは太陽光貯照遮断設備のソーラーパネルの様な展開装置の内側にありま――」
「だから? それで謎は解けるの、かしら?」
「だからその謎を解くために、まずソーラーパネル展開装置を格納しましょう」
「分かったわ、森咲杜鷹。では太陽光貯照遮断設備がある物置部屋に行くから、すこし待ってて」
「お願いします」
解葉さんは太陽光貯照遮断設備のコントロールパネルが設置された物置部屋へ向かった。
「流石だね、杜鷹」
「えっ? 赤葉さんがベランダの変化に気づかなければ、僕も変化に気づかなかったですよ」
「またまたー、杜鷹ったらさー」
「いやいや! 言葉から得られる情報も大事ですからね、ありが――」
ガーーーーーガーーーーガチャン!
「あー! ソーラーパネルの先にマンションがある! しかもこのマンションより高いマンション!」
「ふぅ……赤葉さん、はしゃぎすぎですよ……」
――ん? あれは高層マンションの玄関の上部と共有通路部か? あそこからならSF映画でよく見るグラップリングロープが使える? 逃走時にグラップリング付きロープを使用しての逃走ルートは定番といえば定番だ……誰かに見られるリスクと落ちるリスクを考えると……。
「どう森咲杜鷹。この謎は解けたの、かしら?」
物置部屋で太陽光貯照遮断設備の操作をしていた解葉さんが戻ってきた。
「あっ、解葉さん。ほこ西やぎマンション周辺にグラップリングフックの様な物が落ちていたのか分かりますか?」
「グラップリングフックの様な物? チョイ待ちー、……報告には無いわね」
――やっぱり無いか……。
ブーン、ブーン! ブブーン!
――バイクか? ……ホコヤイーツのリュック?
「あっ、ホコヤイーツのリュックだ……そう言えば、喜冬にあの荷物を強引に渡してきたのはデリバリーサービスのバイクの運転手だったよね?」
「そうですね、雪護さんはそう言っていましたね」
「雪護喜冬……ほこやぎ町の町案内をしてくれて、今は私の家な引越し作業の手伝いに来ている赤い葉っぱの萬屋記録局の美人受付事務員さんだね」
――そう言うことか……だから喜冬さんは記録局に来れなかったのか……変なことに巻き込まれてなくて良かったよ。
「私と八色警視が、雪護喜冬を萬屋記録局に送り届けた昨日16時前の直後、デリバリーサービスのバイクの運転手にあの荷物を渡された、と雪護喜冬は言っていたけど……その謎で合ってる?」
――そうか! 喜冬さんがデリバリーサービスと遭遇したのは執眩の妄想犯行の開幕トリガーの前だ。
だからあの子が執眩の妄想犯行のステージ解放ボタンを押したていたとしても、開幕トリガーの前の情報を喜冬さんが誰かに話したとしても、探偵ヘルプルールに引っかからない。
《ふっ、正解。あくまで探偵ヘルプのルール適用開始の合図は、探偵ヘルプの参加メッセージが表示された時だよ》
――なるほどね、小蒼ちゃん……だから僕が任意で探偵ヘルプを選べない訳だ。
《ふっ、正解。だから喜冬はゲームルールに違反していない》
――小蒼ちゃん、何が良くて何がルール違反なのか分かったよ、ありがとう。
《ふっ、じゃあ頑張ってね(ズルズル)杜鷹》
――またラーメン啜っているのかよ……いいや! そんな事を考えている場合じゃない!
「解葉さん、被害者のふじひ――」
「森咲杜鷹、被害者の方の名前はとうとうゆうやさんだよ」
「えっ? 荷物の伝票の宛名とリビングキッチンの冷蔵庫に貼られたFT勢力図メモに"F.Y"のイニシャルが書かれていたからてっきり"ふじひがし"で、藤東と読むものだとばかり考えていました」
「謎は解けたね、森咲杜鷹……で? 藤東さんの何が聞きたいの?」
「それはですね……藤東さんが何者なのか……です」
「それを森咲杜鷹が聞いてこの謎が解ける、のかしら?」
「藤東さんのイニシャルのラインと冷蔵庫のFT勢力図のライン。これが解明できましたから」
「なるほどね……場所を変えるよ、赤い葉っぱと森咲杜鷹」
「えっ? 解葉さん、どこに行くのですか?」
「ほこ西やぎマンション所有者管理人である藤東夕也さんの部屋」
――えっ? 藤東夕也さんって、このマンションの所有者管理人だったの⁈
「管理人室か……よし!」
僕と赤葉さんと解葉さんは、ほこ西やぎマンション所有者管理人である藤東夕也さんの部屋へ向かうことになった。
『現在時刻――14:00』
『残解決時間――148時間』
42話
フレンチトーストから始まる第3の妄想犯行:5 完。
43話へつづく!
お読みいただきありがとうございました。




