40話 フレンチトーストから始まる第3の妄想犯行:3
40話 フレンチトーストから始まる第3の妄想犯行:3
【202X 1月21日 PM18:00】
【現実:まほらぎ市 ハイツまほらぎ 森咲杜鷹の自宅】
ガチャ……バタン!
「ただいまーって、僕は一人暮らしだったな」
――……まさか出前アプリが降雪、積雪でサービス休止中だなんて、まほらぎ家は開いていたからお持ち帰りができたけど……全くしょうがないな。
「よいっしょっと、ただいま小蒼ちゃん」
【KokuSouS起動中……】
僕が座る椅子と目の前のゲーミングデスクの上に置いてあるのは、小蒼ちゃんが搭載されたゲーミングノートKokuSouSだ。
僕はこの3Dデスクトップ画面の中にいる、想いを叶える刻想器だった小蒼ちゃんが何をしているのか? いつも気になっている。
――なーんてこの部屋でこんな事を考えている僕も十分怪しすぎるかもな。
【ようこそ! 森咲杜鷹!】
《ふっ、おかえり杜鷹》
「ただいま小蒼ちゃん……何してるの?」
《ふっ、白いスマホのブラウザ機能の制限緩和》
――白いスマホについてるブラウザ機能の制限緩和? 今更なんでだろう……。
「なぜこのタイミングで、ブラウザ機能の制限緩和をするんだ?」
《ふっ、ほこやぎ町内で白いスマホを使えないのは不自然だから。他に理由がいる?》
「いいや……白いスマホのブラウザ機能で何ができるんだい?」
《ふっ、一応言っておくけど、事件に関係が無いページ開こうとしても、404だから覚えておいてね」
――このページは存在しません……か。
僕は404ではなく、実在するラーメンを食べ始めた。
《ふっ……またラーメンを食べてる。本当に杜鷹はまほらぎ家の特製醤油ラーメンが好きだね》
「(ズルズル)味噌ラーメンも好きだ、(ズルズル)……でも塩ラーメンも好きだし、豚骨ラーメンも好きだ、醤油豚骨ラーメンも好きだよ」
《ふっ、フレンチトーストは牛乳派なのにね》
「(ズルズル)フレンチトーストは別にこだわりはないよ、ただフレンチトーストは普通、牛乳で作るのが定番だからさ」
《ふっ、牛乳で作るのが定番か。今度試してみよ!》
――なんでだよ! まあそれが小蒼ちゃんらしい言えば、小蒼ちゃんらしいけど、慣れって怖いよな。
まほらぎ家の特製醤油ラーメンお持ち帰りを食べ終えた僕は器等を洗った後、テレビをつけた。
《「はい、それでは今日のまほらぎスターなお店紹介のコーナー!」
『夢宮さん! 聞こえてますかー?』
「夢月さん、聞こえてますよー!」
『私が今日、お邪魔させていただいているまほらぎスターなお店さんの名前はですねー! 喫茶まほらぎです! こちらのお店さんはですねー、フレンチトーストにあんこバターを乗せたあんこフレンチトーストが有名なんですよー!』
「へー、美味しそー!」
『美味しそうでしょー、しかもー喫茶まほらぎではー、あんこの上に生クリームトッピングもできるんですよー!』》
――女性アナウンサー達による中継か……あんこ生クリームフレンチトースト? ものすごく食べにくそう、喫茶まほらぎは確か会社の近くにあったな。
「さてと! 24時間ログイン期限ギリギリだしログインするか!」
――ご飯も食べた、戸締りもした、テレビもつけてある、準備は完了だ!
《喫茶まほらぎのあんこは店主さんが毎日、丁寧にほーー》
僕がメガネ型ゴーグルを手にした瞬間、テレビに映る生中継は、中断された静止画へと切り替わった。
――本当に時が止まっているとわかるテレビの画面……店主さんがあんこの目の前で包丁を持っているが、必要なのか? ……まっいいか。
ベッドで横になった僕は、ほこやぎ町に行くためにメガネ型ゴーグルをかけた!
【おかえりなさい! 森咲杜鷹!】
【妄想犯行計画にログイン開始……】
【探偵ヘルプ……ログイン確認中…………ログイン確認完了!】
【探偵のバイタル状態を確認中……異常無し!】
【ほこやぎ町への五感転送を完了しました!】
――確か朝の8時にアラーム設定をしていたな、すぐにあの荷物の中身を確認をしよう。
【202X 2月X日 AM08:00】
【仮想:ほこやぎ町 萬屋記録局 モリタカルーム】
《ほこやぎ町への五感転送が完了しました! グッドラック、探偵!》
『杜鷹! 杜鷹! いつまで寝てるのよ! 大変なことがおきてるのに!』
――赤葉さん? どうしたんだろう?
「ふわぁ、おはようございます赤葉さん」
僕は普通に赤葉さんに朝の挨拶をした……したはずだった。
「なにを呑気に、『ふわぁ、おはようございます赤葉さん』だよ! 藤西さん姉妹が、ほこやぎ警察署に重要参考人として連れて行かれたのに!」
――えっ? どういうことだ? アラーム機能はほこやぎ町の動きを止めたまま、指定した時間に時を進める機能じゃなかったのか!
『どういうことだよ、小蒼ちゃん』
《ふっ、一応言っておくけどアラーム機能はほこやぎ町の時間をスキップする機能。そして杜鷹の視界に映るメッセージが表示されていること、それの意味は?》
小蒼ちゃんが発した言葉と同時に、時間を止められた赤葉さんの横から小蒼ちゃんが現れた。
『小蒼ちゃん、だからあの子がステージ解放ボタンをクリックしたという事だろ?』
《ふっ、正解。1月20日の19時前に、杜鷹がメガネ型ゴーグルを手に持った時間が停止するほんの一瞬の手前秒で、あの子がステージ解放ボタンを押した事を意味している》
頭の中に語りかけてきた小蒼ちゃんの言う通りだった。
僕の視界にはあの子によってステージ解放がされた証である残解決時間が表示とステージの名前が表示されているのだ。
【残解決時間 154時間 執眩の妄想犯行攻略中】
《ふっ、タイミングだよ杜鷹》
『タイミングだって⁈』
《ふっ、ヒトは同じ時間をそれぞれの時の流し方で生きている、だからほんの一瞬の手前秒で偶々、あの子が第3ステージの解放ボタンを押した。だから妄想犯行計画のゲームルール通りだよ》
――なんてことだよ、もしかして!
『小蒼ちゃん、君がフレンチトーストを焼いていたのは? もうステージ解放がされていたからか?』
《ふっ、正解。でも私は杜鷹に中立だと言ったはずだよ、というよりも変だと考えなかった?》
『変? どういうことだよ』
《ふっ、赤葉達はこの妄想犯行計画の世界において杜鷹と喜冬と同じ命あるモノ。だから時間スキップしたら、その分だけ赤葉達は裏で動く。だから賢い喜冬は普段から赤葉達の何が変わって、何が変わっていないのかを見ていた》
『なにを言っているんだ? フレンチトーストが全てあの子によって仕組まれていたというのかい?』
《ふっ、不正解。ただあの子のステージを解放しただけ》
『ステージを解放しただけだと?』
《ふっ、そうだよ。今回の妄想犯行は、犯人として選ばれたほこやぎ町住人が犯行計画を実行した後、ほこやぎ警察署が犯行を把握したタイミングで執眩の妄想犯行が開始された、そしてそれを暴くのが杜鷹》
――つまり双殺のトリックの流れになるという事か……。
『分かったよ小蒼ちゃん。13時間分のロスをしてしまったが、必ず僕がこの妄想犯行計画を暴くよ!』
《ふっ、私はまほやぎプラネタリウムで見てるから、止めた時間を流すからね、じゃあね杜鷹》
『うん、分かったよ小蒼ちゃん》
時間停止されていた赤葉さんは、再び動き出した。
「聞いてるの杜鷹⁈」
「すみません赤葉さん。赤葉さんが今日、出勤したのはいつですか?」
「私はさっき来たばかりよ! 記録局の電話を取ったらやいねぇからで、藤西さん姉妹を603号室で起きた事件の重要参考人として連行した話だったの……」
「つまり八色さん達は、藤西さん姉妹と赤葉さんと僕が接点を持っている事を確認するために電話をしてきた……」
「そういうこと! 杜鷹、昨日の夕方、喜冬がバイクのデリバリーサービスから強引に渡された荷物を調べるわよ!」
「すみません、本当にすみません、赤葉さん」
「謝らなくていい……でも藤西さん姉妹が事件を起こす様な人達にはどうしても見えない、だから私と杜鷹で藤西さん姉妹の無実を証明するしかない。いいわね杜鷹!」
「はい、分かりました」
――なぜ喜冬さんは来ないんだ?
《言ったはずだよ杜鷹、喜冬は探偵ヘルプのおてつき状態だって。だから妄想犯行計画の中で流れている因果律によって、このステージに参加できない様に喜冬の時間が流れてる》
――小蒼ちゃん……赤葉さんが風邪を引いたのもそういうことか……。
《ふっ、正解。だから妄想犯行計画内では、おてつき状態の喜冬と情報共有はできないし、喜冬と情報共有ができるのは現実世界にログアウトしている時のみ》
――恐ろしいシステムだよ、妄想犯行計画は……でも僕、いや僕と喜冬さんが、僕の絶望の未来からハッピーエンドを掴み取るため想いから生まれ、暴かれる側のあの子が僕達の障壁として立ち塞がるなら受けて立つよ!
《ふっ、頑張ってね杜鷹》
【探偵ヘルプ:萬屋赤葉が参加しました!】
モリタカルームから出た赤葉さんは、喜冬さんが昨日、デリバリーサービスから強引に渡されたという荷物を客間テーブルの上に置いた。
――配達伝票に記載されている名前は藤東夕也? さんか。
ベリベリベリリリ! パカっ!
「これは……なんだ? 施設所有者用太陽光貯照遮断設備制御機?」
荷物の中に入っていたのは、ほこ西やぎマンションに設置されている太陽光貯照遮断設備の制御装置らしき機械だった。
「杜鷹。これ藤西さんのご自宅に設置されていた太陽光貯照遮断設備と同じ名前だよね?」
「そうですね。ん? 赤葉さん、この伝票をよく見て見たら住所も書いてありますよ、えーとほこ西やぎマンション、管理人室F.Y宛?」
――藤東さんという人は、ほこ西やぎマンションの管理人なのか?
「本当だ! じゃあさっそくこれを持って、ほこ西やぎマンションに行きましょ!」
「はい分かりました!」
《チョイ待ちー、お二人さん。その機械の謎はとけたの? かしら》
――ん? この声、まさか!
「ほーここが萬屋記録局ねー、多謎乃解葉が来てやったよ。赤い葉っぱ!」
「解葉? なんであなたがここに来るのよ! スキンハゲとやいねぇは?」
「八色警視なら姉を取り調べ中、明堂は妹を取り調べ中、そして私がここに来た理由をあなた達、この、謎はとけたの? かしら」
――謎は解けたの? ……喜冬さん、解葉さんはそのままじゃないか! [た・な・ぞ・の・と・け・は]、入れ替えて[な・ぞ・は・と・け・た・の]、いやでも双殺のトリックも解葉の見る箇所が違っていたから、赤葉が解決できたんだ。
「解葉さんがここに来たのは、僕と赤葉さんを現場に入る事を八色さんから指示されたからではありませんか?」
「正解だよ、森咲杜鷹だっけ? 赤い葉っぱの助手。そして資産家殺人事件とマウント社員殺人事件を解決しただけあるね」
僕の目の前にいる多謎乃解葉は間違いなく、透き通るミディアムストレートの黒髪の女性警察官である多謎乃解葉さんだ。
解葉さんの警察階級は明堂警部と同じ、そして八色警視と同い年でもある。
――メガネをくいっ、くいっとやる癖もあるみたいだけど。
「というよりもワタシの友人である藤西明裡が殺人未遂事件に絡んでいる以上、あなた達の協力が必要。そして、あなた達が見ているその太陽光貯照遮断設備制御機、謎は解けたの? かしら」
――どういうことだ? ただの長細いテレビリモコンに液晶が付いてるコントローラーみたいに見えるけど。
「じゃあ調べてみますよ、よ――」
「チョイ待ちー森咲杜鷹。素手で触ったら、あなたの指紋がつくでしょ、はい白い手袋。この白い手袋をはめる謎は解けたの?」
「あの解葉さん、その謎を今から一緒に見るんですよ」
「流石、赤い葉っぱの助手森咲杜鷹」
「解葉さー、普通に私の名前を呼べないわけ?」
「赤い葉っぱは、赤い葉っぱ。それに一度、私がアカバって間違えて呼んだら、赤い葉っぱが怒って来たから」
「二人共……とりあえず僕は白い手袋をはめたのでこの制御機を調べてみます」
白い手袋を嵌めた僕は、この怪しい制御機を調べ始めた。
「えーと、リモコンのテンキーに、[A・D・G・J・M・P・T・W]……2回押して……AA? なんだこれ?」
――なんだこれ? スマホみたいな入力方式じゃないのか。
「ちょっと貸して! これはこうやるのよ! Aの長押し……ほらB、Cになったでしょ」
「ホントだ、なんで赤葉さんは入力方法を知っているんですか?」
「私はこれでも18歳の街の記録人、そしてやいねぇの支援で萬屋記録局の局長として、杜鷹が来るまで試行錯誤しながら信頼を得てきた経験値があるからね」
「赤い葉っぱにしてはやるじゃない、謎は解けたね」
――そうだ……今回の妄想犯行計画を暴くには、13時間ロスがある以上、現場の環境も変わってしまっているはず……だからその状況を解葉さんに聞くしかないんだ。
「じゃあ赤い葉っぱと森咲杜鷹、藤西明裡の自宅に行きましょうか?」
「はい分かりました、解葉さん」
こうして僕たちは、多謎乃解葉さんが運転する車でほこ西やぎマンションの藤西さん姉妹の自宅である603号室の現場へ向かった。
40話 フレンチトーストから始まる第3の妄想犯行 完。
41話へつづく!
お読みいただきありがとうございました!




