39話 フレンチトーストから始まる第3の妄想犯行:2
39話 フレンチトーストから始まる第3の妄想犯行:2
【202X 1月21日 AM08:30】
【現実:まほらぎ駅 駅入口付近】
――あれから小蒼ちゃんが何枚、ヨーグルトフレンチトーストを食べていたのか覚えてないけど、あんな満面の笑みで食べてるなんて……まぁそれだけフレンチトーストの下味に迷う人がいるって事なんだよな……。
《おはよう杜鷹君、どうしたの?》
「フレンチトースト……あの荷物……でもまだ第3の妄想犯行は始まっていない……太陽光貯照遮断設備……熱ッ!」
「おはよう杜鷹君、ハイ。ホットミルクティー」
――僕が好きな[正午の極ウマ牛乳ティー]! ありがたい!
「いつもありがとう、喜冬さん」
「いえいえ、いつも待たせてごめんね」
「大丈夫だよ! じゃあ行こうか?」
――寒っ! ……本当に雪が降ってるよ。
【202X 1月21日 PM12:05】
【現実:まほらぎ市 会社 企画部:森咲杜鷹のデスク】
昼休憩中の僕は、萬屋赤葉の事件帳の双殺のトリック編をスマホで見ている。
《そうよ解葉! あの人達は双子だった!》
《なぜ双子? その、謎はとけたの? 赤い葉っぱ》
《赤葉ってなんで普通に呼んでくれないの?》
《私が赤い葉っぱと呼んでいるその、謎はとけたの?》
――そうそう、解葉の赤葉の呼び方は赤い葉っぱだ。
《はい二人共、これでは話が進まない。赤葉、なぜあの重要参考人の西林真美さんが双子だと判断したのかしら?」
《八色姉さん、それはね。あの配達伝票に記載されていた名前だよ》
《配達伝票の名前? 赤葉はなにが言いたいの?》
《それはね八色姉さん、配――》
《八色警視、赤い葉っぱの言いたい事は、おそらく配達伝票の名前の事かと》
――配達伝票……デリバリーサービスが喜冬さんに渡した荷物。
《そうよ! 解葉! あの配達伝票に記載されていた名前は、姉の西林真実さんの名前。漢字の一文字違いの名前、でもどちらの読み方でも読める漢字だったの!》
《はいはい! 二人共、一人の命の灯火が消えた事件なのよ!》
僕が観ている萬屋赤葉の双殺のトリックは、配達員の被害者が西林姉妹が住むマンションに来ていて、配達中に妹の西林真美さんとすれ違い、その配達員が歪んだ勘違いと執着の結果、起きてしまった事件。
しかも最終的に配達員を殺めたのは姉の真実さんで、真美さんは姉の真実さんを庇うために警察に出頭し、赤葉と解葉が謎を解いていく話だった。
――簡単に言ってしまえば、いくら仕事で知り得た情報だとしても、それを基に一線越えたプライベートの詮索をしたらダメって事……。
「というよりも解葉の「なぞはとけたの?」のアナグラム口癖がしつこすぎるな……」
「お待たせ杜鷹君。多謎乃解葉もまさかほこやぎ町に来るとはね……」
「そうなんだよ喜冬さん。しかも夕春町じゃなくて、夕秋町に住んでいるらしいよ」
「そうみたいだね。あまり大きな声では言えないけど、杜鷹君達が調査に向かうタイミングで萬屋警視から電話があったじゃない?」
「そうだったね。八色警視の要件はなんだった?」
「解葉さんのほこやぎ町の町案内に同行してほしいってことだったよ」
「じゃあ喜冬さんはもう解葉に会ったの?」
「会ってきた。でもこの画面の中の解葉の印象はなかった気がする……それと」
「喜冬さん、どうしたの?」
「昨日、杜鷹君が小蒼さんに聞いた話を私もされた。次のあの子が解放する第3の妄想犯行は、ゲームルール上、私はおてつき状態。だから赤葉と私との情報のズレに気をつけろと言われたの」
「その話、僕も話そうと考えていたんだ、赤――」
《社員の皆様。昼食時間終了まであと5分です。午後の業務も引き続き頑張りましょう》
「杜鷹君、またあとでね」
「うん喜冬さん。またあとで」
昼食休憩時間が終了し、僕は午後の仕事に戻った。
【202X 1月21日 PM17:00】
【現実:まほらぎ市 会社ビルエントランス入口】
喜冬さんを駅に送り届ける為に、僕は会社が入っているビルの入口で喜冬さんを待っている。
――うーむ。あの箱の中身を見ない事には、考えすら始まらないな。
「お待たせ杜鷹君、お疲れ様でした」
「お疲れ様でした喜冬さん、じゃあ行こうか?」
「はい。よろしくお願いします」
喜冬さんと合流した僕は、雪積もる会社前からまほらぎ駅に向かって歩き始めた。
「あのさ喜冬さん、明日と明後日は休日でしょ」
「そうだね。もしかして……あの荷物が気になるの?」
「えっ? そうだね……あの荷物はどうも嫌な予感がする」
「杜鷹君が気になるのは荷物もだけど、私に荷物を強引に渡したデリバリーサービスの人じゃない?」
「そうなんだよ。普通の荷物なら記録局の灯りが点いているのだから、記録局に荷物を持ってくれば良いのに……と考えていたんだよな」
――寒っ! 今日はまほらぎ出前サービスで晩御飯頼んでおくかな……。
「確かにね。あの荷物の宛名は確か……藤? から始まる名前だった気がするんだけど……ほこやぎ町にいる時の情報を全部は覚えるのは、私は人間だから無理……」
「藤から始まる名前……まあ妄想犯行計画にログインをして荷物の中身を見れば分かるはずだよ」
「そうだね杜鷹君。でももしこれが第3の妄想犯行の始まりだとすれば、ほこやぎ町内での私と杜鷹君の情報共有は簡単にはいかないから」
「そうなんだよな……それが僕の今の悩みの種なんだよ……」
「ふふっ、だから白いスマホのメモで文字を打って頭の中に入れておくね、そうすれば覚えておける情報も増えるから」
「あまり無理しないでね、喜冬さん」
「杜鷹君もね、駅が見えてきたよ」
――喜冬さんと一緒にいる時間はあっという間に過ぎていく……。
「じゃあ喜冬さん、またほこやぎ町で」
「うん、またほこやぎ町で」
僕は喜冬さんを駅まで送り届けた後、そのまま自宅に向かって歩き始めた。
――こんな雪が積もっている日でもまほらぎ出前サービスは注文できるのかな?
39話
フレンチトーストから始まる第3の妄想犯行:2 完。
40話へ続く!




