38話 フレンチトーストから始まる第3の妄想犯行:1
38話 フレンチトーストから始まる第3の妄想犯行:1
【202X 2月X日 PM16:00】
【仮想:ほこやぎ町 萬屋記録局】
僕と赤葉さんは、太陽光貯照遮断設備調査から帰ってきた。
「それじゃ赤葉さん、僕は今日の調査についての調査結果報告書を作りますから」
「りょーかい杜鷹。でもあの太陽光チョなんたら、変な設備だったよねー」
「そうですね……赤葉さん」
「喜冬にも見せたかったなー」
――いやいや赤葉さん、あんな近未来すぎる装置をどうやって喜冬さんに説明するんだ⁈ 僕でも説明しにくい装置なのに。
そんなことを考えながら、目の前にある萬屋記録局支給のノートパソコンで報告書を作成を始めようとしたのだが……
――非常に言いにくいのだが、指がキーボードに触れていないのに、勝手に文字が入力されるってどういう仕組みだよ!
ガチャ! ……バタン!
「あれ? 赤葉さんと森咲君。いつ帰ってきたのですか?」
「5分ぐらい前ですよ、雪護さん。ん? それよりもその荷物は?」
「あ、これ? 記録局の近くで、バイクに乗ったデリバリーサービスの人から強引に渡されたの」
「なんだって? 雪護さん、その人まだいる⁈」
「ごめんなさい森咲君、すぐにバイクで走り去ってしまったわ」
――デリバリーサービス? なぜ荷物を強引に渡して来たんだ?
「喜冬さん。とりあえずその荷物、何が入っているか確認してみよう」
「ちょっと杜鷹! 勝手に開けて変な物だったらどうするのよ!」
「そうですよ森咲君、不審な荷物は開けない方が良いんじゃないかな」
「言われてみれば……そうなんだけど」
「とりあえず今日の仕事はここまでにして杜鷹、喜冬。また明日の朝、明るい時間に開けてみましょ」
「まあ確かに、分かりました。じゃあ明日の朝、この荷物を開けてみましょうか、赤葉さん、喜冬さん」
――さてと……今日はここでログアウトするかな。
着替えを済ませた赤葉さんと喜冬さんは、萬屋記録局から自宅に帰って行った。
【1時間後、PM17:00 萬屋記録局 モリタカルーム】
「うーん、太陽光を貯めて、照らして、遮断して太陽光貯照遮断設備……あとガチほこやみんのフレンチトーストの下味がコーヒー牛乳か……なぜなんだろうな」
今日の出来事を静寂なこのモリタカルーム内のベッドの上で呟いていると、視界にメッセージが表示された。
【妄想犯行計画のログアウトコマンドが雪護喜冬により実行されました! ほこやぎ町から現実:まほらぎ市に五感転送を開始します!】
――うん、約10時間ぶりの現実世界だ、ありがとう喜冬さん……このUIもなんだかアップデートされてる予感がする……な。
【202X 1月20日 PM19:00:01】
【現実:まほらぎ市 ハイツまほらぎ】
《さて明日のまほらぎ市の天気はなんとー! 雪です! それではまた明日、ごきげんよう! ……ポーン! 「その漢はグルメ好きだった! でもその漢の苦手な物はマヨネーズだった! だからその漢はマヨ無しグルメを探す旅に出た!」 「さあ始まりました! 今週の漢、一匹マヨ無しグルメ道中記!――」》
――テレビの音……ふぅ、この次の番組に切り替わるポーン! という音は現実世界に戻って来た感があるな、マヨ無しグルメ道中記……僕もマヨネーズはあまり好きじゃない。
《「マヨ無しグルメを求め、漢が本日訪れた街は夢覚市――」》
現実世界に戻ってきた僕はテレビを消した。
《ふっ、お帰りなさいフレンチトーストには牛乳派の森咲杜鷹さん》
「疲れた、ふぅー。やっぱり現実世界の椅子に座った感触は違うなー……ん? 小蒼ちゃん、一つだけ聞いてもいいかい?」
《ふっ、なに?》
「妄想犯行計画にログインしている間、僕の頭を覗くのはなぜだ?」
《ふっ、太陽光貯照遮断設備の報告書を書いてあげたのにね》
「あれ小蒼ちゃんが書いたのか! おかしいなーってずっと頭の中にモヤモヤがあったんだよ!」
《ふっ、ワタシは中立。暴く側のプレイヤー森咲杜鷹と雪護喜冬、暴かれる側のプレイヤーのあの子、ワタシはどちら側でもない》
「そうだったね、小蒼ちゃんは中立だったね」
《ふっ、だから妄想犯行に関しての支援は一切しない。でもその代わりあれぐらいなら支援はするよ》
――どうやったら僕の目の前にあるゲーミングノートKokuSouSの中にいるはずの小蒼ちゃんが、萬屋記録局にあるノートパソコンをタイピングできるんだろうか……。
「ありがとう小蒼ちゃん。あともう一つ聞いてもいいかい?」
《ふっ、次はなに?》
「僕と喜冬さんが妄想犯行計画外で、あの子の妄想犯行計画を暴く為に、現実世界で考えを共有したり、考えを一緒に整理したり検証したりする事は大丈夫なのかい?」
《ふっ、妄想犯行計画のゲームルールはあくまで妄想犯行計画にログインしている間のルール、ただし!》
「ただし?」
《萬屋赤葉と森咲杜鷹しか知らない情報を、赤葉と同じ探偵ヘルプで、今回はお手つき状態の喜冬が、万が一赤葉達に知らない情報を喋ったら探偵ヘルプルールに違反、ゲームオーバーになるからね》
「つまり……喜冬さんと情報共有しても良い。だけど現実世界で情報共有、整理した事を僕自身が理解してから赤葉さん達に伝える、この認識で良いかい? 小蒼ちゃん」
《ふっ、正解。ただし! 気をつけてね杜鷹》
ジュー! 《よっと!》 ジュー! ジュー! 《よっと!》
――なんでフレンチトーストを焼いてるんだよ……ん? ヨーグルト⁈
僕はその後、小蒼ちゃんがフレンチトーストに飽きるまで、画面の境界線から眺め続けた。
《うーん! ふっ、美味しい!》
――『うーん! ふっ、美味しい!』じゃないよ! 小蒼ちゃん! 数時間前に味噌ラーメンをあれだけ啜っていたじゃないか。
38話
フレンチトーストから始まる第3の妄想犯行:1 完。
39話へつづく!
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