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妄想犯行計画 未来を掴む推理ゲーム  作者: 魔与音・庵
第6章 近未来装置と第3の妄想犯行
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37話 太陽光なんちゃら調査 後編

 

 37話 太陽光なんちゃら調査 後編



【202X 2月X日 AM10:30】

【ほこやぎ町 西やぎ区 ほこ西やぎマンション 603号室玄関前】



 僕と赤葉さんは、太陽光貯照遮断設備の調査の依頼主である藤西明裡(ふじにし めいり)さんの自宅である603号室前に来た。



「はい|杜鷹《もりたか」、インターホン押して」

「分かりました、えーとこれか」



 ピーンポーン! ピーンポーン!



『はい藤西です。お待ちしておりました、今玄関開けますね』

「分かりました、お願いします」



 ガチャ!



 603号室の玄関の扉を開けたその人の名前は、光希乳業(こうきにゅうぎょう)ほこやぎ支店の地域営業社員である藤西明裡さん、右目の右下にホクロが特徴の女性だ。



 ――アニメフィルターがついているとはいえ……やっぱり美人だな。



「お世話になっております、萬屋(よろずや)さんと森咲(もりさき)さん。お寒いので、早く中へお入りください」

「ありがとうございます」



 ――おっ! 良かった暖房が効いてる! 




 藤西姉妹の住まいである603号室の室内は、細長い廊下を1本の軸として洋室3部屋、リビング、浴室、ベランダが枝割れしている。

 僕が立っているのは、北にある玄関から見て奥の洋室3室の一部屋で、この部屋は物置として使われているみたいだ。

 太陽光貯照遮断設備たいようこうちょてらしゃだんせつびと書かれた装置は、この部屋の右隅の壁に設置されている。



 ――いかにも怪しい近未来設備……僕はこんな設備を考えたことないぞ!



 僕も見たことが無いこの怪しい近未来設備である、太陽光貯照遮断設備を見た赤葉さんは、すぐに藤西さんと別の部屋に行ってしまった。



「うーん、またK.S(コクソウ)換気システムと同じような訳の分からない文字の羅列が画面に表示されているな、とりあえず日本語に変更しないと…………あった!」



 僕は、言語設定を日本語に変更した太陽光貯照遮断設備の管理画面を開いた。



 [エラー:太陽光貯照遮断設備の管理画面の操作、稼働状況確認は603号室オーナーのみ可能]



 ――ですよね……この部屋のオーナーは恐らく明裡さんだから、あとで明裡さんに管理画面を開いてもらおう。



 僕は別の部屋にいる赤葉さんと明裡さんの元に向かう事にした。



 《おはよう! じゃなかったこんにちは! ホコヤギアカリです! ほこやみんのみんなは元気ー? 今日は〜》



 ――あれ? この声は、さっきのエントランスインターホンの声? 妹の明理さんか?



 ガチャ!



 声が漏れ聞こえていた洋室の扉を開けると、そこには一人の女性がゲーミングチェアに座りながらゲーミングデスクのパソコンと向き合っていた。



 ジャジャン! ピロロピロ! ピロロピロ! ジャジャン!



 ――やばい! カメラとマイクに向かって話してるし、生ライブ中? また耳に残るような音楽だな……



「えっ? 何? ドアが開く音がした?」



 ――やばっ、すごい睨まれた……やっぱり明裡さんに似てる……明理さんは左目の左下にホクロがあるのか。



 ジャジャン! ピロロピロ! ピロロピロ! ジャジャン!



「……あー、ほこやみんのみんな、これを見ながら待っててね……ふぅ、マイクはオフっと」



 ――明理さんが見ていたあの画面は配信画面? やっぱりバーチャル系生配信者だったのかな。




「あ、すみません……ライブ配信中でした?」

「はははい、えええーと、よ萬屋記録局の人?」



 ――もしかして人見知りかな。



「そうです、萬屋記録局局員の森咲杜鷹です」

「も森咲さんは、ああのー、おおねえーちゃんに、よ用事があるんじゃないの?」

「すみません、部屋を間違えてしまいました……明理さんはフレンチトーストを作る時は牛乳派なんですね」

「えっ? なんで知ってるの?」

「あー、配信画面のコメ欄で[ワタシもアカリちゃんと同じフレンチトーストは牛乳派だよ]というコメントが見えたので……ちなみに僕も牛乳派ですよ」

「そういうこと⁈ 森咲さんも私と同じだ! 私の名前は、藤西明理(アカリ)です! お姉ちゃんは生クリーム派だから森咲さんが牛乳派でちょっと嬉しい」



 ――あー、コメント欄に[自分はコーヒー牛乳派ですなー! 愛しのアカリちゃん]も流れていたが、色々考えると怖いな。



「あー明理さん、赤葉さんと明裡さんは?」

「それなら出て右にある真ん中の部屋じゃないですかね」

「ありがとうございます」

「それじゃ、リスナーが待っているので」

「あっ、すみませんでした」



 僕の返事に軽く笑みを浮かべた明理さんは、またゲーミングデスクに置かれたパソコン前に向かった。



「あ、ほこやみんのみんなごめんねー、それじゃ――」



 明理さんの部屋を出た僕は、太陽光貯照遮断設備が置かれた反対側の部屋ではなく、部屋から出てすぐの右の洋室に入った。

 僕が洋室に入ると、赤葉さん明裡さんはベランダにいた。



 ――夜? えっ、まだ昼だよな……なぜこんなに暗いんだ?



 僕がベランダに向かうと赤葉さんが大はしゃぎしていた。



「杜鷹さ、これすごくない⁈ このソーラーパネルみたいなのが、太陽光蓄電だったり、日差し避けだったり、夜の照明代わりになるんだって!」

「ほほー、それはすごいですね」



 ――これは……暴かれる側プレイヤーであるあの子の家にも太陽光セールスマンが来たという事なのかな? それとこの装置は、僕みたいに太陽光セールスマンの話を聞かなかった他の人達の選択の逆、話を聞いた選択が消えて集まって出来た装置なのか? 現実世界にログアウトした後、一度情報を集める必要があるな。



「萬屋さん、森咲さん。私達姉妹は、強い光をいきなり当てられるとパニックになるのです。それは先日も萬屋記録局の方でお話しさせていただきました。だから明理がこのマンションを見つけて、最上階の603号室を購入してくれたのです……ただ……」

「ただ? どうかされましたか?」



 僕の返事に明裡さんは小声で話し始めた。



「最近、ガチほこやみんと名乗る明理のファンから外回り中に声をかけられたのです、なんでも声の特徴がホコヤギアカリだって事で……」

「えっ? 明裡さんと明理さんの声って似てない気がするけど、その人は明裡さんにどんなことを言ったの?」

「赤葉さん……『僕はフレンチトーストにはコーヒー牛乳派だよ、君は牛乳派だったよね? ホコヤちゃん』……それで訳が分からなくて、咄嗟に牛乳派って返事をしてしまったのです……」



 ――僕も人のことは言えない……だってそれは……



「うーん。でもなんか思い出すなー『うぉぉぉーよろぉずゃああかはぁだあーホンモノだぁぁあ!』って誰かさんがニヤニヤして叫びながらスクランブル交差点で迫って来たやつ、ねー? 森咲杜鷹さん」

「ゔぅん! あの時は赤葉さんが僕が住んでる街でちょっとした有名人だったからですよ」

「はぁ? ……でも色々考えてみたら喜冬(きふゆ)が探していた相手は杜鷹だったみたいだし。まあこうして局員としていてくれてるから、あの時の事は水に流してあげる」



 ――いくら僕の想いから萬屋赤葉の事件帳の世界に五感追加と現実性が追加されて具現化した仮想空間とは言え、本当に記憶力があるから驚きしかないよ、慣れって怖いよな。



「その後からですかね、誰かにつけられている感じがして、警察に相談に行こうとも考えたのですが、とりあえず萬屋記録局に私をつけている人を見つけてもらいたかった」

「そうですか……明裡さんの事情は分かったわ! なら私の姉であるやいねぇに頼んでみるよ」

「いえ赤葉さん。萬屋記録局にご相談に行った後、偶然私の警察官の友人に会って事情を話したのです、夕秋町(ゆうあきちょう)に住む少し変わった名前の子なのですが、その子と赤葉さんと同じ赤髪色の同じ萬屋警視さんに話はさせていただきました」



 ――ん? 今、明裡さん何て言った? 夕秋町って言わなかったか? はぁ、やっぱり彼女もいるのか……



「明裡さん、その夕春(ゆるはる)……いや夕秋町の警察官のご友人の名前、もしかして多謎乃解葉(たなぞの とけは)さんではないですか?」

「え? 確かにそうなのですが、なぜ森咲さんが知っているのですか?」

「ごめんね明裡さん。この人は、偶に変なこと言い出すからさ、気にしないでね」

「いやいや赤葉さん、僕は仕事前にほこやぎ新聞を読んだり、ほこやぎ町の生活の中で色々情報収集してますからね!」

「でも確かに杜鷹は毎朝新聞読んでるよね? でも今の時代はスマホで情報収集もできるでしょ?」

「確かにそうなんですがね……新聞から文字を読むことも情報収集にはなりますよ」

「ふーん、そういうことね」



 というのは嘘だ。

 僕の白いスマホは、小蒼(こそう)ちゃんが搭載されたゲーミングノートであるKokuSouS(コクソウズ)とリンクしている。

 だから僕の白いスマホには、小蒼ちゃんが選んだ探偵が使いそうな機能はインストールされているが、妄想犯行計画内にブラウザ機能も基本的に閲覧制限がかかっているから、ネットから情報収集をするのも難しいのだ。

 現実世界の住人である僕と喜冬さんは、ほこやぎ町で得た情報を覚えて現実世界にある萬屋赤葉の事件帳そのものと照らし合わせながら検証するしかないのだ。



「あっ! 明裡さん、太陽光貯照遮断設備の管理画面を開きたいのですが……」

「管理画面? それなら――」



 僕たちは、太陽光貯照遮断設定がある部屋に向かった。



【3時間後 PM 14:00】



「やっと終わった……」

「杜鷹、お疲れ様。いやーやっぱり金餅邸と同じ訳の分からない近未来設備を作った会社? と同じなだけあったね!」



 太陽光貯照遮断設備は、本当に訳がわからない設備だった。



 [貯光(ちょこう)]は、その名の通りソーラーパネルの様な物で、太陽光を貯める機能。

 [照光(てらこう)]は、貯めた太陽光を照明用として変換する機能だ。

 弱照(じゃくてら)中照ちゅうてら強照きょうてらまでは、住人が自由に調整もできるみたいだが、それ以上はさらに上の中枢管理者の認証が必要だった。

 [遮断光(しゃだんこう)]は、その名の通り、ソーラーパネルの様な物がベランダの前面を障壁の様に覆う機能だ。



 ――この設備にも自動モード切り替えとマニュアル切り替えがある事は理解できた気もするけど……



「今日はありがとうございました」

「いえいえー明裡さん、私達こそ長時間お邪魔させていただきありがとうございました」

「僕が後日調査結果をお届けに参りますので、藤西さんのご都合が良い時間を教えていただけますか?」



 僕が明裡さんにそう告げると、自室から明理さんが出てきた。



「森咲さん! 私が家にいるのでいつでも来てください!」

「分かりました。ではまた後日、お伺いします」

「よろしくお願いいたします」



 長い調査を終えた僕と赤葉さんは、バスで萬屋記録局へ帰るのであった。



 37話 太陽光なんちゃら調査 後編 完。

 38話へつづく!

最後までお読みいただきありがとうございました。

2026年4月22日(水) 一部内容の修正を行いました。

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