#22 第2の妄想犯行 開幕篇
第2の妄想犯行編、開幕!
前回、僕と喜冬さんが暴かれる側のプレイヤー【あの子】が解放する妄想犯行 ステージ2を共に待つことにしてから十数日が経った……
【202X 1月1X日 AM10:00】
【ほこやぎ町 萬屋記録局】
僕は今、萬屋記録局にいる。
本当は今日、調査の依頼が入っていたのだが――赤葉さんが風邪をひいてしまい……依頼主様の配慮によって、調査は別の日になってしまった。
――風邪をひいてしまう人がいるゲームなんて聞いたことないよ……まあ、それが妄想犯行計画なんだけどね。
「う……頭痛い――なんか……頭がぼーとする……」
「赤葉さん、大丈夫?」
「ゴホッ!喜冬さん――今のところ、大丈夫……」
「昨日の夜は、大丈夫だったよ……ゴホッ……」
「今日は、異音調査依頼に行くはずだったのに……ゴホッ……ごめんね……」
「赤葉さん――大丈夫ですよ!依頼主さんも事情を理解してくれました」
「喜冬さん……ありがとね……ゴホッ」
「あ……白葉ねぇからだ……もしもし?」
喜冬さんも表向きは萬屋記録局の事務員として、裏側では僕の暴走を止めるブレーキ役……つまり、僕の探偵ヘルプとして妄想犯行計画にログインしている……
――今の僕は、喜冬さんに妄想犯行計画へのログインも管理されて……ほこやぎ町にいる時間も管理されて……現実世界へのログアウトも管理されてしまった……今日もあと少しでログアウトしないといけない。
「赤葉さん、大丈夫かしら……」
「うーん……僕も赤葉さんが風邪を引くの、初めて見るからな」
「……ん?私が何?……ゴホッ……杜鷹!……ゴホッ――」
「白葉ねぇが、忘れ物したからほこやぎ商事に忘れ物を届けて欲しいって……代わりにお願いしてもいい?」
「はい……これ、白葉ねぇの忘れ物よ――」
「ゴホッ!……私はもう帰るから……2人ともよろしくね」
「分かりました、今日はゆっくり休んでください」
「ありがとね……ゴホッ、ゴホッ」
ガチャ――バタン!
かなり具合が悪そうな赤葉さんは帰ってしまった。
――さてどうするか……一度ログアウトするか……
「杜鷹君、どうするの?」
「忘れ物を届けてすぐに帰ってくれば大丈夫だよ」
「そうだね、ほこやぎ商事があるほこやぎビルは――」
「ここからそんなに遠くないし――すぐに帰ってこれるよね」
「そうそう――じゃあ、行こうか――喜冬さん」
「うん、杜鷹君」
喜冬さんと2人で、ほこやぎ商事のあるほこやぎビルに向かおうとした時。
僕の視界に見覚えある、あのメッセージが表示された……
【ステージ2 暗落の妄想犯行 開幕!】
【残解決時間 168時間】
【雪護喜冬が探偵ヘルプで参加しました!】
「……ステージ2 暗落の妄想犯行?」
「杜鷹君――赤葉の事件帳の暗のトリックは、ほこなぎ寺で起きた事件の話じゃなかった?」
「それと暗のトリックで使われた物はナイフだよね?」
「暗刺の妄想犯行なら分かるけど……暗落?」
「確かに喜冬さんの言う通りだけど――」
「でも匂いの妄想犯行で、トリックに使われたモノは同じだった――」
「でもそれが僕が、あの子のトリックを暴く結果に繋がった……」
「だから多分、トリックの使われる物を変えてくるはす……と僕は予想してる」
――でも僕は暴かれる側のあの子のトリックを暴く!それが僕と喜冬さんがハッピーエンドの未来を掴む為の唯一の方法だから!
「ちょっと待って!杜鷹君!――」
「行く前に一度――ログアウトしよ――」
「今は……10時30分――」
「時計の撮影――完了!――」
「会社を休んだらダメだからね、杜鷹君――」
「明日、会社が終わったらまた来よう?――ね」
「うん、分かったよ……喜冬さん」
「明日、会社でね――杜鷹君」
「うん、喜冬さん」
喜冬さんが白いスマホでログアウトを実行した直後、僕の視界にもう見慣れてしまったメッセージが表示された……
【探偵ヘルプのログアウト……開始】
【探偵ヘルプのログアウト……完了】
【探偵のログアウト……開始】
暗落の妄想犯行か……暗と落と言えば――子供の頃に行ったまほらぎ遊園地の暗闇迷路で、遊園地で貰えたまほらぎコインを落として……お袋に怒られた記憶が甦るな……
【探偵のログアウト……完了】
【まほらぎ市に五感転送が完了しました!】
【次回帰還期限】
【202X 1月12日 PM20:00】
ふぅ……喜冬さんの管理のおかげなのか最近、現実世界に戻って来た時の五感酔いが、前よりかは無くなった気がする。
僕と喜冬さんが、あの日……
『いい?杜鷹君――』
『妄想犯行計画の探偵ヘルプバージョンで――サポート設定をした時――』
『杜鷹君の妄想犯行計画が暴く側バージョンだった事は小蒼さんが教えてくれた――』
『杜鷹君が妄想犯行計画にログインできるのは、私がログインしている時だけ――』
『杜鷹君がメガネ型ゴーグルを手に持っている時は、時間停止の影響を受けない……でも――』
『杜鷹君が、PCとゴーグルが置いてある部屋から出た時――時間停止の影響を受ける――』
『ログイン条件の設定変更はこれだけ――』
『あとログアウトの条件なんだけど……』
『杜鷹君がログアウトの言葉を想い浮かべた時――』
『私のスマホでログアウトが、タップできるようになる――』
『杜鷹君――ここまでは大丈夫?』
『大丈夫、ありがとう――あっ!ひとつだけある』
『なに?杜鷹君』
『喜冬さんの探偵ヘルプ版?のルールは暴く側と同じ?』
『ルール?――杜鷹君の暴く側のバージョンと同じだよ――』
『でも探偵ヘルプバージョンは、あくまで杜鷹君が――』
『暴走しながら匂いの妄想犯行を攻略していたのをずっとモニタリングしていた小蒼さんが、心底呆れながら作ったバージョン!……と小蒼さんは言ってたよ』
『……僕もあの日、小蒼ちゃんに怒られたよ……』
あの日以降、僕と喜冬さんは、趣味友以上恋人未満から共に未来を掴む関係なれたと思っている……
先月のまほらぎシアターで、刻想器に見せられた絶望の未来から、僕の未来は少しは変わったのだろうか……
例え、未来が変わっていたとしても……
それを聞いてしまった時点で、ハッピーエンドの未来を掴む為の選択肢自体が、消えてしまうだろう……
「とりあえず……寝よう……」
今は明日の会社に備えて寝る!
それが今、僕が考えた選択だ!
『ふっ――おやすみ……杜鷹』
「おやすみ……小蒼ちゃん」
――そう言えば……あの子がトリックを完成させた期間は…………
【202X 1月12日 PM12:00】
【まほらぎ市内 会社】
【残帰還期限 8時間】
僕と喜冬さんは、萬屋赤葉の事件帳の暗のトリックの推理パートを観ながら昼食を食べている。
『つまり――赤葉は、あの暗闇通路で目覚めた被害者が――パニック状態になっている時――』
『赤外線カメラを利用して近づいた犯人が、後ろから被害者を刺した……そう言いたいわけね』
『そう!八色姉さん――正解!』
『確かに犯行自体は可能よ、でもそれだけじゃダメなのは分かるわよね?』
――画面越しで観る、赤葉さんと八色さんもほこやぎ町で見る2人のままだよな、当たり前だけど。
「そう――これじゃダメなんだよな……」
「どうして?」
「このトリックはナイフを使ってる――」
「でも僕たちが暴かないといけないのは暗落――」
「ナイフは物理的、だから暗刺……」
「暗落、この言葉がどういう意味なのか……」
「それを知る前に僕たちはログアウトしたからね」
「だから暗落のヒントになればと思って――」
「私に赤葉を一緒に見ようと言ったのね……」
「そう!」
そんな話をしていたら、僕が苦手とする人物が、喜冬さんと僕の会話に割り込んできた。
「おっ!お二人さん!また面白いやつ見てるじゃん!」
「晴山先輩……」
「森咲さぁ……雪護さんとの時間を邪魔されたからってさぁ――そう嫌な顔すんなって――」
「森咲!このほこなぎ寺の事件さ……」
「遊園地によくあるお化け屋敷から発想したって――」
「柊先生のインタビューに書いてあったぞ!」
「晴山先輩、それいつのインタビューですか?」
「先週配信されてたインタビューだよ――」
「もしかして森咲、見てないのか?」
「あー見た記憶があった様な気もしますね……」
「気もするってなんだよ、森咲らしくないぞ」
「そうですかね」
『社員の皆様、お昼の休憩時間終了まで……』
「あ!そろそろ、休憩時間も終わりか……森咲、またな」
休憩時間のアナウンスを聞いた晴山先輩は、自分が所属している慌てて部署に帰って行った。
営業部なのになんで、企画部に来てるんだよ……
「杜鷹君……もしかしてなんだけど……」
「うん、あの子が現実世界側で柊先生のインタビューを見たのであれば――」
「暗刺のトリックで使われたナイフを――」
「別の物に変えたという可能性は高い――」
「ほこやぎ町は、ほこなぎ町を再構築して五感再現した世界だから――」
「光が届かない場所も当然ある――」
「問題は……暗落のステージがどこなのか?……ね」
「そう、僕達がほこやぎビルに向かおうとした時にステージ2の開幕のメッセージが表示されたから――」
「ほこやぎビル周辺で起きてしまう事件だと……僕は予想してる」
「なるほどね、なんか杜鷹君、変わったね――」
「まるでシリアス状態の赤葉さんみたい……」
「これでも赤葉さんと一緒に匂いの妄想犯行を暴いたからね――」
「五感の仮想探偵!森咲杜鷹だ!って感じだよ!」
「ぷっ、何それ……あっ!――」
「課長が睨んでるよ……杜鷹君」
「やばいな……じゃあまた、今晩」
「うん、待ってるね」
遊園地のお化け屋敷か……まほらぎ遊園地にもあった気もしたな……
うーん、今直ぐにでもほこやぎ町に行きたいけど、今は仕事をする!それが今、僕がする事だ!
【202X 1月12日 PM19:00】
【まほらぎ市 ハイツまほらぎ】
【残帰還期限 1時間】
仕事も終わり帰宅した僕は今、晩御飯を食べている。
去年までの僕なら、ご飯は後回しにしていたのだが……『ログインする前にご飯を食べなさい!』と喜冬さんに言われたのもあるけど、去年の年末に僕が倒れて入院した時、喜冬さんはお袋に電話してくれていた。
次の日に退院した僕は、お袋に連絡しないまま、ほこやぎ町で喜冬さんと話した後、それぞれログアウトして、身体をゆっくり休めた……
そうしたらお袋から鬼電が来て、お袋からかなり怒られたんだよな。
家族や大事な人を巻き込まないと僕は、決めて刻想器だった小蒼ちゃんとハッピーエンドを掴む、想いの契約をしたあの日からもう一ヵ月も経つのか……
「時間が経つのは早いな……よし!」
晩御飯を食べ終えた僕は、KokuSouSPCとメガネ型ゴーグルが置いてある部屋に向かった。
『ふっ――杜鷹……喜冬の準備はできてるよ』
「ありがとう――小蒼ちゃん」
『杜鷹と喜冬が、私とした覚悟の契約、私はまほやぎプラネタリウムで観てるからね』
「まほやぎプラネタリウム?あの契約した場所のこと?――」
「喜冬さんから聞いた時は驚いたけど――」
「僕が未来を選択しないといけなくなった――」
「別の今が始まった場所だったからね――」
「勿論、覚えているさ」
『ふっ――覚えていたならそれでいい』
――当たり前じゃないか!忘れる事もできない衝撃的な出来事だったのだから……あのプラネタリウムでジェットコースターとか……
「じゃあ!行くか、あの世界に」
戸締りよし!ご飯も食べて、現実世界に帰って来た時の為のテレビもつけた!
僕が今いる部屋からリビングのテレビを見るとテレビの画面は止まっている……
――でも僕はもう1人じゃない!
そう心に想いながら、僕はメガネ型ゴーグルをかけた!
【おかえりなさい!森咲杜鷹!】
【妄想犯行計画にログイン開始……】
【探偵ヘルプ……ログイン確認中……】
【探偵ヘルプ……ログイン確認完了!】
【探偵のバイタル状態……異常無】
【ほこやぎ町への五感転送を完了しました!】
#22 第2の妄想犯行 開幕篇 完
#23第2の妄想犯行 探索篇 Part 1につづく
最後までお読みいただきありがとうございました!




