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23話 森咲杜鷹と雪護喜冬 前篇

 

 第5章 森咲杜鷹と雪護喜冬と第2の妄想犯行


 

 森咲杜鷹と雪護喜冬 前篇



【202X 12月27日 PM15:00】

【まほらぎ市民病院】

【残帰還期限??時間】



 

 う……うん……ここは……僕は今……どこにいるんだ?




 森咲杜鷹《もりさきもりたか》? の僕は、ほこ……やぎ町で……金餅邸の事件を解決した?




 その後……萬屋記録局で、赤葉さん? 『昨日から寝てないでしょ……』と言われた?




 その後……寝落ちした僕は……現実世界にログアウトした?



 僕が見た……次回帰還……期限の表示が……確か202X 12月27日PM20:00だった……PM20:00!

 その後、メガネ型ゴーグルを外した瞬間、何故か僕の自宅にいた喜冬さんに、後ろから声をかけられて…………




――というよりも今、何時なんだ? 僕は今、一体どこにいるんだ?

 



『こんな所で寝ている場合じゃない! 起きて家に帰らなければ! 喜冬さん! 起きろ、森咲杜鷹!』




「はっ! ここは何処だ? もしかして病院?」



 目覚めた僕がいる場所は、液体が入った透明な袋と僕の腕を管で繋がれている状況等から考えると、病院であることはすぐに理解できた。



 カラカラカラ! バタン!



「あ! 森咲君、目が覚めたんだ!」

「えーと、誰?」

「覚えてないかな、灯凛だよ。同級生だった、天城灯凛(あまぎともり)!」

「天城……灯凛……あー、思いだしたよ、灯凛ちゃん?」

「そうそう、思い出してくれた? 探偵君!」

「いやいや、探偵君は……久しぶりにあった同級生の黒歴史を言うのは、やめてくれない」

「えー? 昔から『僕は将来、探偵になる!』て、皆んなに言ってた人が、何を今さら――」



 天城灯凛ちゃんは、僕の学生時代のクラスメイトだ。

何か書いてる系の女子クラスメイトの印象だったのに、なぜ灯凛ちゃんが病院にいるんだろう?



「灯凛ちゃんは、ここで何してるの?」

「ふふふ、探偵君の癖にこの姿を見て分からないの? 看護師だよ」

「……も、もちろん知ってたさ! 嘘だけどね……」

「ふふふ、先生を呼んでくるから、待っててね」

「……分かった、ありがとう……あ! その前に灯凛ちゃん、今何時なのか教えてくれない?」

「えっ、今? えーとね、今は15時だね」

「……ありがとう」

「じゃあ、先生を呼んでくるね」



 カラカラカラ、バタン!



 「まさか、クラスメイトにこんな所で、会うなんてな……こんな偶然、本当にあるんだな、ん?」



 ――いやいや、そんな呑気な事を考えている場合じゃないよ! 妄想犯行計画の再ログイン期限を昨日見てから、半日以上経ってるし、しかもあと5時間ぐらいでログインしないとほこやぎ町の時間が勝手に動き出すし……それと昨日の喜冬さんのあの言葉……

 


『謝らなくていい。ひとつ聞かせて、森咲君』

『ごめん……喜冬さん、聞きたい事って?』

『森咲君の後ろにある部屋の奥にあるソレは何? それとさっき言ってたあの世界って、どう意味?』



 あの時、僕の部屋には喜冬さんがいた。

 メガネ型ゴーグルをかける前に聞こえた気がした声は喜冬さんの声だった。

でも僕はその声を気のせいだと判断してしまった。

 だから僕が油断して、ちゃんとしなかった結果、KokuSouSPCとメガネ型ゴーグルを喜冬さんに見られてしまった。

 僕と同じ推理モノ好きの喜冬さんの事だから、自ら事件へ巻き込まれに行くなんて事は、恐らくしないだろうけど……でも気になってしまう、喜冬さんが今どこで何をしているのか?

 あの時、僕がちゃんとインターホンに気づいて喜冬さんと会話していれば、ほこやぎ町の臭い干物を利用したあの事件を解決した後、ログアウトして帰ろうとしている喜冬さんを誘って、ラーメンを食べに行けたかもしれないのに……。




「喜冬さんが妄想犯行計画に、巻き込まれていないと良いんだけど……でも!」



 ――喜冬さんを妄想犯行計画に巻き込んでしまったのでは? と考えれば、考えるほど……尚更こんなところでは、寝てはいられない! だから僕は、一刻でも早く家に帰らないといけない!



 カラカラカラ!



「たんて……森咲さん、先生を連れてきました」

「担当医の夢森です、よろしくお願いします」

「……どうも」

「では森咲さん、早速ですが、あなたは昨日、重度の疲労で自宅で倒れて、病院に運ばれて、同僚の雪護さんが昨日、あなたの家にいて、直ぐに救急隊を呼んでいなかったら、あなたの命は助からなかったでしょう」

「はい……すみません」

「はい。でも私は医者として、あなたが倒れた原因によってはあなたの勤務先に対して、然るべき手段を取らないといけません。森咲さん、覚えている限りで結構です、あなたが倒れた原因を教えてくれますか?」



 ――『五感再現VR型の推理ゲームで、30時間以上ログインした結果、事件を1つ解決しました!』……なんて言えるわけないだろ! こんな非科学的非現実なゲーム……夢森先生にどう説明すればいいんだよ。



「あー、夢森先生、ちょっといいですか?」

「どうぞ、天城さん」

「ありがとうございます。えーと、森咲さんと私は、学生時代の同級生で、雪護さんも大学生の頃の友人なんですが……雪護さん曰く、森咲さんは萬屋赤葉の事件帳の大ファンみたいでですね。一昨日の夜から昨日倒れるまで、仕事をサボって、萬屋赤葉の事件帳を仕事を見ていたそうです、しかも仕事納めの日にですよ! 同じ社会人として、どう思われますか、夢森先生?」

「え? ……森咲さん、それは同じ社会人として、感心できませんね!」

「ははは、すみません……」

「笑い事ではありませんよ! あなたの事を雪護さんは、かなり心配されていました」



 ――喜冬さん、本当にごめん……



 僕が、想いを叶える存在刻想器だった小蒼ちゃんと絶望の未来を変えるという想いの契約をした事により生まれたハッピーエンドの未来を掴む為の推理ゲーム、それが妄想犯行計画だ。

僕に訪れる絶望の未来の要因の1つが喜冬さんだったとしても……同僚以上恋人未満の関係だとしても……

僕には喜冬さんを護りたい、大切な人だという想いがある。

 だから僕は覚悟を決めて、妄想犯行計画を攻略していたというのに……



 ――今すぐ喜冬さんに会って話がしたい。



「夢森先生! 雪護さんと直接話がしたいのですが、ダメですか?」

「ちょっと待ってください…………えーと森咲さん、申し訳ないのですが、今日の面会時間はあと1時間ぐらいで終わりますので難しいですね。でも森咲さんの病室は個室なので、病室内であれば電話を許可しますが」

「ありがとうございます! 僕のスマホは……」

「森咲さんのスマホならそこにありますよ。ですが、森咲さんの容態を先に確認したいので、今から3時間ほどお時間いただきます、その後なら電話は可能ですが、院内マナーだけは守ってくださいね」

「はい、分かりました!」

「じゃあ、天城さん……お願いします」

「了解致しました、夢森先生……じゃあ行くよ、探偵君!」

 


 ――3時間か……ログイン期限が来てしまうじゃないか……あ、そういえば……



「灯凛ちゃんさ、雪護さんと友達だったの?」

「えっ、そうだけど? もしかして知らなかった?」

「えっ? 知らないよ、灯凛ちゃんは僕と雪護さんの関係は知ってたの?」

「えっ? 知らないよ。でも最近、好きな人ができたって、キフちゃんが言っていた様な……でも好きな人が誰なのかは教えてくれなかったよ」

「なるほど、そうなのか……」

「でも昨日、探偵君を搬送した救急隊にキフちゃんが、連絡先として名刺を渡してたからさ、世の中、狭いなーと思ったよ……はい探偵君、検査室に着きました!」



 天城さんが車椅子を押してくれて着いた場所は、元気だけが取り柄だけの僕には無縁だと思っていた検査室だった。



「探偵君が検査が終わるぐらいに、迎えに来るからね」

「ありがとう、灯凛ちゃん」



【3時間後】

【まほらぎ市民病院 個室病室】

【残帰還期限??】



「はいお疲れ様でした! 探偵君」

「もう検査はコリゴリだ……」



僕は各種検査などを行った結果、異常無しとの診断だったが、夢森先生の判断で明日の午前中まで入院する事になってしまった。



「はいはい、じゃあまた何かあったら呼んでね」

「……ありがとう、灯凛ちゃん」



 カラカラカラ、バタン!



「……喜冬さん、喜冬さんは……あった、ふぅー」



 僕の瞳が映すスマホの画面には、雪護喜冬さんの名前が表示されている。


 

「さてと、勇気がいるな……何から話せば良いのか」



 ――仕事納めの日に会社を欠勤した挙句、『ラーメンを食べに行こうとしてました!』……なんて、口が裂けても喜冬さんには言えない……でも今は喜冬さんが気づいていようと気づいていないだろうと電話しないといけない状況なんだ。



「よし! 覚悟を決めた!」



 覚悟を決めた僕は雪護喜冬と表示されているスマホの画面の通話マークボタンを押した!


 

 トゥトゥトゥ、トゥルルー! ガチャ!



 ――は、早い……



『……はい、雪護です』

「…………」

『もしかして、森咲君?』

「そうです……森咲杜鷹です」

『……バカ』

「うん……ごめん、喜冬さん」

『私がどれだけ心配したのか分かる?』

「ごめん、喜冬さんがあの時いなかったから、僕は今頃……」

『そういうことじゃないよ!』

「ごめん……ほんとにごめん!」

『杜鷹君、明日の12時、あの場所で待ってるから』

「あの場所?」

『そう。今の杜鷹君が、一番よく知ってるあの場所で待ってるよ』

「うん……分かったよ。あの場所だね、喜冬さん」

『うん、それじゃ明日ね、杜鷹君』



 ツー! ツー! ツー!



「明日の12時? あの場所? 今の僕が、一番よく知っている場所……まさか!」


 僕の予想が、最悪な形で的中してしまっているのだろうか?

僕は病院から出ることが出来ない、でも妄想犯行計画へのログイン期限まで、あと2時間を切ってしまっている。

 ログイン期限が過ぎたら、妄想犯行計画のゲームルール通りにログインするまでに超過した分、ほこやぎ町の時間が動き出す。

 動き出した時の中で、もし赤葉さんたちが僕の部屋に入ってきたら一体どうなるんだ? ……僕はどうすればいいんだ……

 


 ピロリン!



「うわ! びっくりした! こんな時に誰だよ……あれ? 小蒼ちゃんからだ」



【妄想犯行計画、再ログイン期限のご案内】

 森咲 杜鷹様。

 妄想犯行計画への再ログイン期限迄、残り17時間を切りました。

 万が一、ログインがされない場合は、ゲームルールに従い、時が停止したほこやぎ町の時が、再び紡ぎを開始します。


 再ログイン期限。

 202X 12月28日 PM12:00迄。


 以上。


【妄想犯行計画プロジェクト 担当者 小蒼】



 小蒼ちゃんからのメッセージから送られてきた、妄想犯行計画再ログイン案内を見た、僕の最悪な予想は当たってしまっていた。



 202X 12月28日 PM12:00の24時間前は、7時間前の12月27日の正午だ。

 7時間前以上前から病院にいる僕に、妄想犯行計画にログインする事は不可能だ。

なら考えられる1つの答え、それは……


 巻き込むことが絶対に許されない、護るべき大切な人である雪護喜冬さんを巻き込んでしまった……




僕自身の選択が招いた、最悪な結果だ……



 23話 森咲杜鷹と雪護喜冬 前篇 完。

 24話 森咲杜鷹と雪護喜冬 後篇へつづく!


最後までお読みいただきありがとうございました!

2026年3月27日(金)内容の改訂を行いました。

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