#21 森咲杜鷹と雪護喜冬 後篇
前回の終盤。
【妄想犯行計画 再ログイン期限のお知らせ】のメッセージを開いてしまった事で、僕の護りたい人であり――絶対に妄想犯行計画に巻き込んではいけない人を、僕自身の選択により巻き込んでしまったという自覚をしたところで、終わったと思う――
この後、僕に何が起きたのかを話してみるとしよう――
【202X 12月27日 PM19:00】
【まほらぎ市民病院 個室部屋】
【残帰還期限 17時間】
「まさか……1日でこんな大事になるなんて……どうしたらいいんだ?」
『あの場所で待ってる……』
あの場所――今の僕が大事にしているあの場所……
僕の護りたい人、雪護喜冬さんが言っていたあの場所……
「ほこやぎ町か…………」
【萬屋赤葉の事件帳】の舞台【ほこなぎ町】ではない【ほこやぎ町】――
それは【絶望の未来】をかつて刻想器だった時の小蒼ちゃんに見せられて、【想いの契約】を僕がした事で生まれた世界――
萬屋赤葉さんたちが、僕と同じ1秒1秒を生きてる世界でもあり、僕がハッピーエンドの未来を掴むための鍵、暴かれる側のプレイヤーを繋ぐゲームの舞台……それが【ほこやぎ町】――
「……病院にいる今の僕に妄想犯行計画にログインする術はない……」
「でも――次回ログイン期限とあの場所……」
「――全ては僕が選択した結果……だから逃げてはいけない」
そう……僕は逃げてはいけない、彼女の選択を否定する権利は僕にはない……だって彼女も今を生きる1人の女性なのだから――
だから僕は……彼女が選択した事を受け入れる為の覚悟を持たないといけない――
僕、森咲杜鷹と彼女……雪護喜冬さんと2人で、ハッピーエンドの未来を歩むために!
――でも僕に今できる事はない……
【202X 12月28日 AM 10:00】
【まほらぎ市民病院 エントランス】
【残帰還期限 2時間】
「この度は大変、ご迷惑とお世話になりました」
「森咲さん……趣味を楽しむのは良いことですが――」
「ほどほどにしてくださいね」
「はい……すみません、ありがとうございました」
こうして僕は何も出来ずに朝を迎えて、退院する事が出来たのだが……
新たに僕が今、直面している問題がある――
家の鍵がどこにもない!
ポケットの中にも、どこにも!
喜冬さんが持っているのか?……でも昨日の電話の後、喜冬さんが来た形跡もない――
夢森先生も喜冬さんと話をしたのは、昨日の朝だと言っていたし……どこにあるんだ?家の鍵!
あたふたしながら――病院のバスターミナルから僕が病院に戻ろうとした時、病院のエントランスから灯凛ちゃんが出てきた――
「見つけた!探偵君!――キフちゃんから預かり物!――ハイコレ!」
「ありがとう……家の鍵だ!」
「朝早くにキフちゃんが来て、探偵君に渡してくれって――」
「……喜冬さんは、他に何か言ってた?」
「――あの場所で待ってると伝えてって」
「探偵君……あの場所って?」
「あの場所は……僕と喜冬さんがハマってるゲームのロビーだよ!」
「ふうん……仕事サボってゲームは良くないよ、探偵君!」
「はいはい、分かったよ!とりあえずありがとう」
「お礼ならキフちゃんに言ってあげて」
「分かった!」
喜冬さんが灯凛ちゃんに預けていた鍵を受け取った僕は――バスに乗って自宅に急いだ。
【202X 12月28日 AM11:50】
【まほらぎ市 ハイツまほらぎ 自宅】
【残帰還期限10分】
2日ぶりの自宅に着いた僕であったが、ログイン期限が残10分と迫っている中、のんびりしている暇はない――
僕はすぐにKokuSouSとメガネ型ゴーグルが置いてあるリビングの奥の部屋に向かった――
「2日ぶりの五感転送とほこやぎ町……」
「――喜冬さん!今、行くから!」
僕の護りたい人、妄想犯行計画に巻き込んではいけなかった人――雪護喜冬さんに会って、本当の事を話すため――覚悟を決めた僕は、メガネ型ゴーグルを掛けた!
【おかえりなさい!森咲杜鷹!】
【妄想犯行計画にログイン開始……】
【探偵ヘルプ……ログイン確認中……】
【探偵ヘルプのログイン無し】
【五感転送が中止されました……】
「え――?探偵ヘルプのログイン?」
「どういうこと?」
状況がよくわからないが……今まで、メガネ型ゴーグルを掛けたらすぐにほこやぎ町に五感転送されていたはずなのに……
探偵ヘルプのログインという見慣れない言葉と五感転送中止……小蒼ちゃんが何か設定を変えたのかな?
『ふっ――そんな事して私に何のメリットがあるの?』
『一昨日の夜――モリタカに私はちゃんと忠告したよね?』
『――覚えてないの?』
KokuSouSPCの3Dデスクトップ画面に映る少女――小蒼ちゃんに、小蒼ちゃんの視線の先にいる僕は怒られてしまった――
小蒼ちゃんの忠告……あ、思い出した!
一昨日の夜、僕が妄想犯行計画にログインする前に――小蒼ちゃんは、『モリタカ――大丈夫?――覚悟も大事だけど、時には休みも必要――倒れたら元も子もないよ……24時間ルールを作った私が言うのもなんだけど――』って、確かに僕に言ってた!
「ごめん、小蒼ちゃん」
「でもあの状況で――睡眠を取るとか出来なかったんだ――」
『ふっ――だから結果的にログアウトした瞬間に倒れた――』
『だからモリタカが2度と忠告を無視できないように――私は対策をした』
「まさか!喜冬さんを巻き込んだのか?」
『ふっ――もう一度、メガネ型ゴーグルを掛けてみなよ』
「――分かったよ」
小蒼ちゃんに言われたから僕は、メガネ型ゴーグルを掛けるんじゃない!
喜冬さんと……ちゃんと向き合う為に僕は、メガネ型ゴーグルを掛ける!
【おかえりなさい!森咲杜鷹!】
【妄想犯行計画にログイン開始……】
【探偵ヘルプ……ログイン確認中……】
【探偵ヘルプ……ログイン確認完了!】
【ほこやぎ町への五感転送を完了しました!】
【202X 1月X日 PM22:00】
【ほこやぎ町 萬屋記録局 モリタカルーム】
ほこやぎ町にやっと戻ってくる事ができた――
まずは時計の確認をしないと……えっ?
赤葉さんに寝ろと言われたのが確か17時過ぎ……僕がログアウトしてから5時間も時間が経ってる……
――やっぱり喜冬さん……そんなことを考えてる場合じゃない!
ガチャ――バタン!
流石に赤葉さんは帰ってしまったか……
僕は赤葉さんがどこに住んでいるのか知らない――
萬屋赤葉の事件帳の赤葉さんの拠点は――萬屋マンションほこなぎだけど……事件帳には萬屋記録局は無い……
萬屋マンションほこなぎがほこやぎ町にもあるかも僕には分からない……
どうすれば……ん?
僕の視界の左側に映るマップの隅に【Y.K】というピンが表示されている?
マップは常時表示はされてはいたけど……ピンの表示は初めて見た……
白いスマホからマップアプリを開いた僕は――ピンが打たれている場所の詳細を確認したところ――
萬屋マンションほこやぎに【Y.K】のピンがあることが分かった――
【Y.K】……Yukimori Kifuyu……本当にごめん!喜冬さん――
萬屋記録局を施錠した僕は――喜冬さんがいると思われる【萬屋マンションほこやぎ】に急いで向かった――
【202X 1月X日 PM23:00】
【ほこやぎ町 萬屋マンションほこやぎ周辺】
僕は今――萬屋マンションほこやぎの周辺にいる――
喜冬さんにどんな話をしたら良いのか……僕が彼女に背負わせてしまった選択……色々と考えながら僕は喜冬さんがいると思われる【萬屋マンションほこやぎ】に向かって歩いている……
「冬の夜の風は寒い……風邪ひきそう……」
「本当に喜冬さんは――いるんだろうか……」
そんな事をぶつぶつ言いながら歩いていると――僕の背後から女の人の声が聞こえてきた――
その声は僕が護りたい人の声であり、一番大事な人の声であった――
「わ――!」
「うわぁぁ!」
「びっくりした?――半年前と同じだね」
「そう思わない?杜鷹君」
「――喜冬さん……?」
「うん、私は雪護喜冬だよ――」
「とりあえず寒いから――赤葉さんが用意してくれた部屋に行こうよ、杜鷹君」
「……分かったよ――喜冬さん」
喜冬さんと僕は、赤葉さんが【萬屋マンションほこやぎ】に用意したと思われるキフユルームと書かれた部屋に入った――
暖房を点けてくれた喜冬さんは、椅子に腰掛けている――
「あ……杜鷹君も座ったら?」
「うん――そうするよ」
「多分……ここなら誰にも聞かれないと思う――」
「うん……僕は赤葉さんを信用してる」
「それでこそ!萬屋赤葉が大好きな杜鷹君だね!」
「……う、うん」
――物凄く話が切り出しにくいのだが……だけど僕は覚悟を決めたんだ!まずは巻き込んでしまったことを喜冬さんに謝るのが先だ!
「ごめん……巻き込むつもりはなかったんだ……」
「うん、杜鷹君の抱えていた事、私は全て知ってる」
「刻想器さんの事も……小蒼さんの事……妄想犯行計画の事……萬屋赤葉さんたちの事……ほこやぎ町の事……そして――」
「杜鷹君の【絶望の未来】の事……私が杜鷹君の絶望の未来に関わってしまっている事も」
「全て知った上で、私は今、あなたの目の前にいる」
「ねぇ?何で黙ってたの?――杜鷹君」
――喜冬さんは全て知ってしまったんだな……
今度は僕が全てを話す……覚悟を持て!森咲杜鷹!
「…………僕は喜冬さんが好きだ――」
「半年前のあの日から趣味友以上恋人未満の関係だったけど――」
「いつしか僕はあなたに片想いしていた――」
「だからこそ……萬屋赤葉の事件帳を2人で観に行ったあの日――」
「僕が刻想器に見せられた絶望の未来で――」
「絶望の未来の要因の一つが喜冬さんだと知った――」
「だから僕が妄想犯行計画をクリアする事で――」
「絶望の未来が変わり、喜冬さんを護る事ができて、喜冬さんと幸福な未来を掴む事ができたのなら――」
「それこそが、僕のハッピーエンドだから!」
「だから僕は刻想器……小蒼ちゃんと――」
「ハッピーエンドを掴む為の想いの契約をした」
「妄想犯行計画の暴かれる側のプレイヤーがどんなプレイヤーなのか――僕は知らない!」
「でも僕が暴いた匂いの妄想犯行は――」
「萬屋赤葉の事件帳を僕と喜冬さん以上に――」
「知り尽くした人物にしか組めないトリックだと――攻略中も考えていた……」
「だから僕は、本気で20時間以上かけてトリックを暴いた!」
「その後――萬屋記録局で寝落ちログアウトして……」
「現実世界に戻ってきた僕は、事件を解決した自分へのご褒美に――」
「仕事納めの当日、会社を欠勤した事も忘れて…………」
「まほらぎ家の特製醤油ラーメンを食べに行こうとしたんだ!」
「ぷっ――ナニそれ――」
「何で――仕事納めの日に体調不良で欠勤した人がまほらぎ家の特製醤油ラーメンを――」
「食べに行こうと思ったのよ――」
「本当に……私は心配したんだよ」
「でもよかった――すぐに退院できて……」
「灯凛ちゃんに鍵を渡しておいて良かったよ」
「灯凛ちゃんが杜鷹君の学生時代のクラスメイトだってこと――昨日知ったからね」
「でも杜鷹君……杜鷹君が小蒼さんに言われた――」
「杜鷹君以外に絶望の未来を観た子と杜鷹君が暴いたトリックを組んだ――」
「暴かれる側のプレイヤーは、同一人物――私はあの子と呼んでいるけど――」
「私も……あの子も……杜鷹君の絶望の未来の引き金の1つである可能性は、小蒼さんから聞いてる……」
「だから私は、全てを知った上で――杜鷹君と一緒にハッピーエンドの未来を掴む為の選択を自分で選んで、小蒼さんと契約して今、杜鷹君の前にいる」
「だからもう1人じゃないからね――杜鷹君」
「うん、喜冬さん――本当にごめんなさい!」
「はいはい――分かったから――分かったから――」
僕は喜冬さんに全てを話した――
喜冬さんは全てを受け入れてくれた……
僕は喜冬さんを巻き込んでしまった……
でも喜冬さんは自分の意志で小蒼ちゃんと想いの契約をした……
あの子についても小蒼ちゃんは、喜冬さんに正解とまでは言わなかったという――
でも僕が会った事がないあの子について、喜冬さんは――心当たりはあるが、確証がないと言っていた。
喜冬さんとあの子の共通点は、推理作品好きで、喜冬さんとオリジナルトリックを考える遊びをしていたことだけだった。
小蒼ちゃんが教えてくれなかったのは、妄想犯行計画のルールに記載されたクリア条件があるからではないか?――と喜冬さんは推理していたが……
真実は、僕たちの目で確かめなければならない……
だから僕と喜冬さんは、暴かれる側のプレイヤーであるあの子に辿り着くため――共に妄想犯行計画のステージ2の妄想犯行を待つ事にした!
#21 森咲杜鷹と雪護喜冬 後篇 完
#22 第2の妄想犯行 開幕篇につづく
最後までお読みいただきありがとうございました!
1月17日から投稿再開しました。よろしくお願いします!




